スイート・マシュマロ



<オープニング>


「冒険者の皆さん、ご一緒にマシュマロを作ってみません?」
 とある日の昼下がり。そんな風に、にっこりと微笑みながら酒場を訪れたのは、栗色の髪に眼鏡の小柄な少女……お菓子職人のアリアだった。
「マシュマロ?」
「あー、エルルちゃん。そーです、あのふわふわなマシュマロですよ〜」
 首を傾げた、リボンの紋章術士・エルル(a90019)に気付いたアリアは、懐から何やら一枚の紙を取り出すと、それをエルルはじめ、冒険者達の方へと向ける。
 そこには――『ふわふわの美味しいマシュマロを、貴方の手で作ってみませんか?』と、お菓子講座の告知文が書かれている。
「ふぅん……まあ、前も言った気がするけど、僕はあまり作る方は――」
「あ、ちょっと待った」
 ストライダーの霊査士・キーゼルは、さほど興味無さそうに呟くと、奥の方へと移動しようとするが……その袖をぐいっとアリアは引いて。
「……あのね」
「今回は、どちらかというと殿方向けのお菓子講座なんです。ランララ聖花祭から、そろそろ一ヶ月ですよね。チョコレートを貰った方は、この機会に、お礼のお菓子を作られてみては如何でしょう?」
 危うく転びそうになったキーゼルは、振り返るとアリアを見るが、それを綺麗に無視しつつ、アリアはにこやかに語る。
 チョコレートが女の子の想いを込めたものならば、マシュマロは男性の想いを込めた物。例えばチョコレートを入れたマシュマロを作れば……女性の想いを柔らかく包んで、ありがとうと返す……そんな素敵なプレゼントになる、と。
「マシュマロ作りはそう難しいものじゃありませんし、良ければ一緒に作ってみませんか? ……あ、男性向けとは言いましたけど、それは時期的な話なだけで、勿論男性限定という訳ではありません。老若男女、参加資格は不問ですから、興味があれば、どなたでもどうぞ」
 アリアは周囲にいた冒険者達に、そう微笑んで。にこやかに話を終えると、腕を掴んだままのキーゼルを見やる。
「……という訳でお兄さんも一緒に如何です?」
「……考えとくよ」
 そう答えてアリアの腕を振り解いたキーゼルは、今度こそ背を向けるが……その様子を見たアリアは、あれはきっと来るなと、一人確信するのだった。

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参加者
NPC:ストライダーの霊査士・キーゼル(a90046)



<リプレイ>

●マシュマロ作りに工房へ
「皆さん、いらっしゃいませ〜」
 三月のとある日、アリアのお菓子工房には、そこで行われるお菓子講座の話を聞いた、五十名ほどの冒険者が訪れていた。
 そんな中で、皆の目を惹いている冒険者が一人。水兵コスチュームのマシュマロ人間、といった感じの着ぐるみに身を包んだ、破戒天使・アイシャ(a05965)だ。何故そんな格好を……という視線を受けつつ、アイシャは最後に入ると扉を閉める。
「あ、あの、えと……ありがとうございました、です」
 微笑みの風を歌う者・メルヴィル(a02418)はアリアに先日の礼を伝えると、よろしければ……と手伝いを申し出る。
「じゃあ……お言葉に甘えて、お願いしちゃいますね」
 アリアは微笑みながら頷くと、材料や道具の準備の手伝いを頼み。冒険者達にそれらを配る。
「あ、僕も手伝うよ」
 二人だけでは大変そうだから、とストライダーの狂戦士・ファリ(a22852)も声をかけ。初めてのお菓子作りに胸を膨らませつつ、荷物を運ぶ。
「楽しそうですね。頑張って作ってみましょう!」
 善悪定めるは残月に微睡む邪帝・イリヤ(a18802)は、必要な道具を前に、やる気マンマンといった様子で腕をまくる。
「それでは頑張りましょうか」
 双閃焔翔・シェード(a10012)も、そう微笑みながら口にすると、愛する人の為に……と、エプロンをつけて準備を整える。
「ありがとうと大好きの想いを込めて、素敵なお返しを作らないとね♪」
 緋妖華・マーク(a05390)は長い髪を纏めると、ピンクのエプロンを着け……一見どこかのお嬢さんといった格好をしながら笑う。
(「上手く……作れるだろうか」)
 永遠幻創・イゥロス(a05145)は内心不安に思いながらも、材料に手を伸ばす。折角あの日は誘ってくれた……そのお返しの為に、精一杯作ろうと。
「チョコをもらったからには、お返しをちゃんとしないとな」
 昊天の疾風・ワスプ(a08884)は呟きながら、彼女の顔を思い浮かべて……甘いのは作った経験が無いからと、アリアに教えを請う。
「マシュマロは、ゼラチンにメレンゲを混ぜて作るんです。具体的には、まず……」
 アリアは、彼のように作り方を知らない冒険者達に向き直ると、手順を説明し、実際に作ってみましょうと呼びかける。勿論、途中で解らない事があれば、その都度改めて説明しますから、と。
(「彼女に喜んで貰えると、良いのだけれど……」)
 説明を一通り聞いた、春待雪・ファフニール(a06956)は、お菓子作りはあまりしないから……と不安に思いつつも、アリアの説明通り作業を始める。
「ゼラチンにメレンゲだったかぁ……」
 マシュマロって何で作るんだっけ、と首を傾げていた流水の道標・グラースプ(a13405)は、アリアの説明に頷いて。血は繋がっていなくとも、可愛い愛娘の為にと、マシュマロ作りに取り掛かる。
「……なんだ? こういうのは、愛しい人の顔を思い浮かべながらやるのか?」
 グラースプが愛娘の名を呟いたのを聞いた、打砕く焔・エルド(a13954)は、瞬きすると……「むむむむむ、ソエルちゃんラブ!」と念じつつ、ぐわしとボールを握る。
「なるほど……」
 きっとランララ祭のように、このマシュマロも何か秘密の儀式に違いない……と参加した、パタパタ新米探検者・エリン(a18192)は、手順をメモすると、儀式的な要素がないか確認しながら、自らもマシュマロ作りに挑戦する。
(「何とか形にして、彼女に……渡してあげたい」)
 不器用で料理下手という自覚のある、蒼翼の剣士・デューン(a19559)は、ちゃんと作れるか物凄く不安に思いつつも、思いを込めて作業を始める。
「ほのかな甘みがいいですよね……」
 聖魔神王・ヒカル(a19954)は、微笑みながら呟くと、うまくできるといいですが……と、ゼラチンを煮溶かしていく。
(「ママにマシュマロあげるんだ!」)
 そんなヒカルを見つつ、灰赤の右腕・ルゥレイス(a21665)は胸をわくわくさせながら、楽しそうにボールへと手を伸ばした。

●美味しいマシュマロを作りましょう
「えーっと……」
 虚無を奏でる戯言師・ウィン(a08243)は、見よう見まねながらも、自分を父と呼んでくれる娘の為に、愛情を込めて一生懸命マシュマロ作りに挑む。
「……酸味のあるヨーグルトクリームを入れたマシュマロにするかな」
 自由を探訪する紅狐・アズマ(a17378)は、甘い物が好きな恋人を思い浮かべつつも、あえて甘いだけではないマシュマロを作る事にする。
(「そういえば……マシロとマシュマロ……何か……語感が似てるな」)
 月光の魔法騎士・アルム(a12387)は、ふとそんな事を思いつつ……彼女への感謝と愛情を込めつつ、メレンゲを泡立てる。
「んー……形に凝ってみるかな」
 どんな物が良いだろうかと考え込んだ、銀鎖・ワルツ(a07074)は、女の子なら可愛らしい形が良いだろうかと思い。うさぎの形に作ってみようと型を整える。
「星型、ハート型……音符型も面白いかもしれませんわね」
 日溜まりの旋律・ラクシェル(a16967)は、幾つかの型を用意し微笑んで。キーゼルなどの近くにいた者達を誘いつつ、様々な形のマシュマロを作っていく。
「マシュマロを食べると、幸せな気分になりますよね〜★」
 門出の国の夜鶯鳥・マルティーナ(a13778)は、ほんわかと笑みを零しつつ。ジャムやココアなどを入れた変わりマシュマロを、ハート型に整えていく。
「失礼ですけど……マシュマロを誰に差し上げるんでしょうか……?」
 なんとなく、モテモテのように見えるなぁ……とキーゼルの側で作業をしていたストライダーの忍び・レイヴス(a22042)は、ふと気になってビターチョコを用意しながら問いかける。
「ああ……チョコを貰ったから、そのお礼に、くれた人達にね。あとは多めに作って、子供にもあげようかと思ってるけど」
 マシュマロを型に移しつつ、そう答えるキーゼル。どうやら、特定の誰か一人だけに渡すという訳ではないようだ。
「……結構楽しいな」
 お礼の為にチャレンジしてみよう、とマシュマロを作っていた焔獣・ティム(a12812)は、意外と性に合っているのか、合間に笑みを零しつつ手を動かす。
「お返し……じゃなくて、あげるものですけど……心こめてつくるですよー♪」
 隣では、劫火灰滅・ヴァル(a17028)が、一つ一つ丁寧に作業しながら、マシュマロ作りを進めている。
「てめーこっち見んじゃねぇヨ!」
 そんな中、不意に工房の一角で上がった声は……伊達眼鏡で術士・シェイ(a08492)のものだ。
「むぅ……なら、わたしだってお見せしません!」
 そんなシェイ言葉に頬を膨らまし、しあわせ羽桜・チェリート(a16606)はボールを抱え込む。シェイとチェリートの間に、何やら火花が散ったような気がした……間に、狼牙の守護神・アールグレイド(a15955)を挟みながら。
「……チェリート殿はまだしも……シェイ、お前いい歳こいて、何やってんだよ……」
「チェリートさんもシェイ殿も喧嘩しないで仲良くしましょうね。あまりアールグレイド殿を困らせては駄目ですよ?」
 アールグレイドは溜息混じりに呟きつつ、やれやれといった様子で止めに入る。そんな様子を見て、薔薇のエッセンスを混ぜながらマシュマロを作っていた、博愛の道化師・ナイアス(a12569)も言葉を重ねる。
「――そういえばアールさん、作業は順調ですか?」
「――アンジェ、上手く作れてっか?」
 彼らの言葉に、二人は睨み合っていた視線を外して。チェリートがアールグレイドの様子を気遣う一方、シェイは、蒼月を抱きしめる涼風・アンジェリカ(a22292)へと笑いかける。
「え、あ……はい」
 言い合いが止まった事に、微かに安堵しつつ頷くアンジェリカ。そんな彼女の前には、ノソリン型を始めとした、動物の型に入ったマシュマロがある。
「……しかたないから、かずでしょーぶね」
 その隣では、着ぐるみ二十四時間営業・フォクサーヌ(a14767)が、作ったマシュマロを前に呟く。どうやら、自分よりも大きい程のマシュマロを作ろうとしたようだが、大きすぎて途中で潰れてしまったらしい。フォクサーヌは仕方ないといった様子で、持っていたバスケットが一杯になる位マシュマロを作る。
「白ときたらやっぱり……うさぎさんですなのぉ♪」
 一方では、桃色四葉の祈り姫・メルクゥリオ(a13895)が、楽しげに声を上げながら、ウサギのマシュマロを作っている。その額にはチョコでハートを四つ並べ、四葉をデザインしていく。
「……ん」
 メルクゥリオと肩を並べ、一緒に作業をしていた遥碧の邪竜導士・シェンド(a09748)は、マシュマロに細工を施して。溶かしたチョコで文字を書くと、上出来といった様子で目を細める。
「………」
 少し離れた場所では、聖魔・アモン(a08033)が、人型のマシュマロを作っている。生地を幾つかに分け、それぞれに淡く色付けすると、綺麗な人型になるよう、慎重に生地を流し込む。
「マシュマロだけでも美味しいけれど……取り出したるは御煎餅なぁ〜ん」
 ぽやぽや突撃娘・エフィリフィア(a21317)は、完成したマシュマロを前に煎餅を取り出すと、それをいそいそと挟み『マシュマロセンベー』を作る。
「マシュマロ〜ふ〜わふわ〜♪ ウサギさんのマシュマロ〜♪」
 歌いながらマシュマロを作り、ラッピングしたロリっコな深窓の妹姫・イヴ(a13724)は……こそこそっと、丁度マシュマロを完成させた所らしい、霧玄ノ月・シェルティ(a12731)に近付いて……
「美味しいにゃ〜」
「あ、イヴ!」
 もぐもぐとつまみ食いして笑みを零すイヴ。そんな彼女の姿に、シェルティは溜息混じりに「……まぁいっか……」と呟くと、残りは食べられないうちに、素早く包むのだった。

●マシュマロが完成したら、その後は……
「……よっし完成っ!」
 煌く蒼き光・サルサ(a09812)は、完成したマシュマロを前に一息つくと、喜んでくれたら良いなとラッピング用の箱を準備する。
「アリアさん、試食して貰っていいかな?」
 材料まみれになりながらも、マシュマロを完成させた深淵の微睡・リュフィリクト(a17971)は、アリアを呼び止める。
「ええ、構いませんよ。……ん、美味しく出来てますよ」
 アリアは、差し出された一つを口に含んで。指先で作った輪を掲げつつ、これなら合格ですと微笑んで。その言葉に、リュフィリクトは胸を撫で下ろす。
「なんか、でかくなりすぎのような気が……混ぜ過ぎ?」
 空色の風・トウキ(a00029)は、大きなマシュマロを前に頭を掻きながら呟くと、ま、気持ちはこもっているし……カンベン、と、滝汗を流しつつそれをラッピングする。
「一応、ソレらしいものが作れましたね……」
 照れ臭いから、と隅の方で作業をしていた、天藍顔色閃耀・リオネル(a12301)はアリアに教わり、いびつながらもマシュマロを完成させると、それを小瓶に詰める。
 その近くでは、光撃の魔弾・ルーシェン(a16220)がチョコ入りのココアマシュマロを完成させると、それをラッピングして。更に、短くメッセージを記したカードを添える。
「怪奇マシュマロ男の完成です〜♪」
 マシュマロに何やら顔を書いていた、うっかり医師・フィー(a05298)は、作業を終えて顔を上げると、笑顔でそれをプレゼント用に包む。
「………よし、なんとか完成だ。もはや芸術だな♪」
 不死蝶・サガ(a09499)は、雪ウサギを模して作ったマシュマロを前に、自画自賛しながら何度も頷く。……後ろには失敗作の山が見えるが、あえて見えない事にしておこう。
「かんせーい!」
 ストライダーの武道家・ヤタ(a22254)の前には、ノソリン型のマシュマロ……いびつで、言われなければノソリンに見えないような物体だが、本人は満足そうに尻尾を振る。
「……できました」
 白妙と舞う黒雪花の殺刃姫・プレスト(a17802)は、どこか不穏な空気を纏いながら、試食会と言いつつマシュマロを周囲に配る。……ワサビを生地に混ぜた、ワサビマシュマロを。
 しかし……何人かに配ってみたものの、特に叫び声などは聞こえてこない。プレストが試しに食べてみれば……それは意外にも美味しくて。失敗した、と沈黙する。
「残りのマシュマロでケーキを作ってみましたので、良かったら食べてくださいね♪」
 そういえば、誕生日だった人が多かったようだから、と、新人パーソナリティ・テルミエール(a20171)はマシュマロで用意したケーキを置くと、それを皆に振る舞う。
「いやー、作った作った!」
 特売・シシャモ(a18361)は、皿に山盛りのマシュマロを前に……マシュマロあんま好きじゃないんで、とぶっちゃけると、それを皆に提供……という名目で押し付ける。
「はとこの子、味見して良い?」
 蒼の閃剣・シュウ(a00014)は、そんなマシュマロを味見していたキーゼルに近付くと、了承をえた上で手を伸ばし。代わりに自分の作ったマシュマロを差し出し、互いに試食しあう。
「美味しいですね。次は……」
 その輪に混ざっていた、忘却の風・カナタ(a08780)は、とあるマシュマロを口に放り込み……悶絶しながら火を吹いた。
(「こ、これは私が……!」)
 そう――それはカナタが自分で作った激辛マシュマロ。誰かを罠に嵌めようと作った物だったが、ふとした拍子に自ら食べてしまったのである。……勿論、その様子を見た他の者達は、誰もそれを食べようとはしなかった。

 そして、冒険者達は無事に全員がマシュマロ作りを終え……後始末や、マシュマロを持ち帰る用意を終えた順に、一人、また一人と、工房を後にする。
「皆さん、今日は、お疲れさまでした。――良ければまた、何かの折にお菓子作りにいらして下さいね」
 そう微笑むアリアに見送られながら、冒険者達は、それぞれの帰路についた。


マスター:七海真砂 紹介ページ
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参加者:53人
作成日:2005/03/17
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