<リプレイ>
どこまでも高い空。 流れて行く清清しい風と白い雲。 胸いっぱいに広がる、懐かしい空気。 風が爽やかな香りをそっと運んできた。 それはまるで、同胞の帰還を祝うかのように。
●帰郷 「サチ、約束叶えてくれてありがとうね」 「思ったとおり、とてもいいところです〜」 「なぁ〜〜ん……気に入ってくれて〜……サチも〜嬉しいなぁ〜〜ん……♪」 ユギとティフェルの言葉に、にこにこと頷くサチ。 懐かしい故郷へ帰ってきたのも嬉しいが、こんな風に仲のいい友人たちを連れて帰ってこれたことが何よりも嬉しかった。 「すごい……色々大きいの……」 セフィリアは珍しいワイルドファイアの風景に興味深々だ。 「さぁっ、いっぱいお野菜や果物を収穫するですぅ〜〜」 「……背負えるものぐらいにしないともって帰れないんじゃないかしら?」 今にもジャングルに特攻しそうなファナに笑いながらアヤが言う。 「着替えて来て正解でしたけど……暑いです……」 そう呟くセレンはいつもとは違い身軽な涼しげな格好をしてはいるが、うっすらとその額には汗が光っている。 「さすが常夏の国です……」 スイが同じく汗をぬぐいながら感心したように呟いた。 「ジャングルの中は〜もう少し涼しいなぁ〜〜ん……もうちょっと〜なぁ〜〜ん……♪」 足取りも軽く皆を先導するサチは、汗一つかいていない。 さすがワイルドファイア生まれ……などと皆は妙な感心をしたが、この暑さは決して不快なものではなかった。 むしろ、さっぱりした暑さとでも言うのだろうか。 ワイルドファイアのおおらかさを表しているかのような,そんな暑さだった。
●懐かしい抱擁 ジャングルの中は、確かに外よりはひんやりしていた。 巨大な樹がわっさわっさ生い茂っていたりするので、先導のサチから目を放すと迷子になりかねない広さである。 全員がついてきているのを確認しながらとことこ歩いていたサチが、不意に走り出した。 「ただいま〜なぁ〜〜ん……♪」 向かう先には木々が途切れ、開けた広場。そして、仲良く寄り添う二頭の怪獣……サチの輝く表情を見るに、どうやら彼女の両親の様であった。 怪獣たちの巨大さに、全員が顔を見合わせる。 話には聞いていたものの、やはり目の前に実物がいると圧倒されてしまう。 そんな彼女達を尻目に、サチは怪獣達にすりすりしたり甘噛みしたりして、ただいまの挨拶をしているようだ。 「みんな〜紹介するなぁ〜〜ん……サチの〜両親なぁ〜〜ん……♪」 サチに手招きされて、大慌てで全員が整列する。 その様子に彼女は少しきょとんとした顔をしたが、鳴き声と仕草で仲良しの紹介をしているようだった。 「ふつつか者ですがサチさんにお世話になってます〜」 ティフェルがどこからともなく土産のふかふか枕を取り出しつつ、深々と頭を下げた。 サチの通訳に、怪獣達は興味深そうに枕を見ている。 「ファナって言うですぅ〜よろしくですぅ〜」 元気良くファナが言ったのを、サチがゆったりと伝えると彼らの尻尾が歓迎を表してゆっくりと揺れた。 「♪あっあ……あの初めましてスイって言います」 勇気を振り絞って、自分で伝えたスイに怪獣達は優しい眼差しを向ける。 「♪セレンです。……えっと、こちらはアヤさんです〜」 「だ、抱きついてもいいでしょうか……?」 セレンがぺこっとお辞儀をしたとなりで、アヤが期待に満ちた視線をサチに向けた。 「かまわないって〜いってるなぁ〜〜ん……♪」 早速抱きついたアヤの気持ちは怪獣達にも伝わったようで、一層彼らの発する雰囲気が柔らかくなった。 「……あ、あ、あの、セ、セフィリア……です……」 緊張でがちがちのセフィリアにむかって、不意に怪獣の片割れが首を伸ばす。サチの通訳を待たずとも大体わかったらしかった。 驚いてますます固まった彼女の頬を、ぺろりと舐める。 その瞳は、どこまでも優しかった。 「♪サチはランドアースで元気でやってます、ごはんもちゃんと食べてます。……大好きです」 ユギの言葉に、怪獣達は目を細め、感謝を表すかのごとく首をゆっくりと下げた。 「みんな〜来てくれて有難うなぁ〜〜ん……これからもよろしくお願いしますって言ってるなぁ〜〜ん……♪」 サチがくすぐったそうな顔をして両親の心情を通訳する。 こちらこそ、といわんばかりの全員の笑顔が空に弾けた。
●充実のひととき 「きゃははっ、た〜か〜い〜で〜す〜!」 怪獣に服をくわえられ、ぽーんと空に放り投げられてファナが心底楽しそうな声を上げる。 もちろん柔らかな背中に着地できるように加減はされているが、それでも相当な高さだ。 「うわ〜凄いです……これがワイルドファイアなんですね」 スイはもう一頭にくわえられ、高いところからの景色を満喫していた。 「ティフェさんもアヤさんも上げてもらいましょうよ。すっごく見晴らしが良くてとっても素敵なんですってば」 遠慮する二人を容赦なく引っ張り、怪獣の前へ連れて行くと、三人いっぺんはくわえ難いと見たのか、彼はしゃがみ込んで頭を差し出した。 「頭に〜乗れって言ってるなぁ〜〜ん……♪」 サチがにこにこという。 覚悟を決めて頭に三人が乗ると、怪獣はゆっくりと首をもたげて立って見せる。 「ティ、ティフェルちゃんー、怖いですー」 「……こ、ここ怖いけど確かに綺麗です……」 恐怖はあるが、景色は見事だった。雄大なワイルドファイアを目の当たりにして感動がこみ上げる。 が、怖いものは怖い。抱き合って震える二人の様子を感じ取ったのか、怪獣はすぐに首を下げて三人を背中に下ろしてくれた。 その横では今度はセフィリアが高い高いされ、余りのショックに彼女は怪獣の首にしがみついている。 セレンは彼らの大きさに圧倒されながらも、高い高いの申し出に恐る恐る乗っていた。 「ユギ〜?? 何してるなぁ〜〜ん……?」 いつの間にか離れたところで黙々と何かを作っているユギに気付き、サチが尋ねる。 「ああ、かまどを作っているのだよ〜。もうすぐできるから……」 本を片手に中々悪戦苦闘している様子だが、着々とそれは組み上げられていっていた。 怪獣達が興味深そうに製作中のかまどを見つめている。確かに、彼らには無縁のものなので珍しいだろう。 「完成!!」 小ぶりではあるが、しっかりとしたかまどを完成させると、ユギは自分も遊びに加わるべく仲間達の方へと駆け寄った。 さっそく咥えられて空高く放り投げられたりしている。 「すべり台〜なぁ〜〜ん♪」 怪獣達に首を地面に下ろしてもらって、一気に滑り降りる遊びは、全員に好評だった。 実に上手くすべるサチにならって次々と皆が滑り降りる。 何度も何度も背中に乗せてもらってまた滑ってを繰り返したりして、摩擦でお尻が熱くなって慌てて中断してみたり。 サチの家族と仲が良かったらしいお友達の怪獣も加わって、その背に少女達を乗せ、ごろごろと転がりまくられていたりと、そこには笑い声と歓声があふれていた。 童心に帰って全員が全身を使って遊び、笑う。 ひょっとすると明日は筋肉痛かもしれないけれど、これだけ楽しいのなら明日のことなんて今は考えないでいい。 「ちょっと……お腹すいたかな?」 時間が飛ぶように過ぎる中、誰からともなく上がった声に食材調達の狩りに行くことが満場一致で決定した。 先程通ってきた場所とはまた別のジャングルにある狩場へと、サチが先導する。 普段からのんびりゆったりしている彼女だが、やはり勝手知ったる生まれ故郷。結構俊敏に入り組んだ道を通ったりするもので、仲間は一生懸命ついていく形だ。 暗黙のうちに出来た役割分担で、ばらばらっと戦闘班、収集班等に分かれて散開し、それぞれ食料調達に走っていった。 サチがふと、止まった。 視線を凝らすと確かに小柄な怪獣が一頭、群れから離れてぼんやりとしている。 その一頭を狙うことにしたらしく、スーッと身体を低くして必殺の間合いまで近づいていった。 その後ろを杖を握り締めたティフェルと懸命に真似をしてみるセフィリアがついていく。 まずサチが一気に飛び出し、力を込めた一撃で急所を狙って殴りかかった。 それにティフェルが思いっきり杖で殴りかかる。一呼吸遅れてセフィリアが、意識をなくして崩れ落ちた怪獣にべしっと攻撃した。 「……上手く行かないの……あっちでファナさんのお手伝いしてるの……」 ちょっとしょんぼりしてセフィリアは、籠を背負って通りかかったファナについて巨大果物の収集に行った。 「なぁ〜〜ん……もう一頭ぐらい〜捕まえるなぁ〜〜ん……♪」 「がんばりましょうです!」 ティフェルはぐっと拳を握り締め、とりあえず運びやすくするために今捕らえた怪獣を縄でぐるぐると縛り上げて次の場所へとサチについて行った。 「薪まき……ああ、これもいいかも〜」 ユギはバーベキュー用の薪を集めて回っている。 「うゅ? この植物はなんでしょうー? でも何だか美味しそうです〜♪」 アヤは見知らぬ植物にわくわくしながら、食べられそうなものを選んで集めていった。 「これを落とさないように運んでくださいね〜」 セレンが土から生み出した下僕に荷物を運ばせてかまどの周りに運んでいっている。 一気にもって帰ると大変だから、ちょっとづつ。 「わ、これはおっきいですぅ〜これもすごいですねぇ〜〜」 ファナは背中の籠に山と巨大野菜を積んで歩き回っていた。 そうこうするうちに、もう一頭捕まえたサチ達が仲間のところに戻ってきた。 「凄いです、大漁ですね!」 スイがすごいすごいと獲物を見て手を叩いている。 「これ食べられますかね〜?」 珍しい果物を片手にたずねるセレンに、「おいしいな〜〜ん」と帰ってくる言葉。 基本的に毒になるようなものは収穫していないようで、みんなで手分けして持ったり下僕に運ばせたりして、かまどのところに運んでいく。 「……あ、あった!」 セフィリアが少し開けたところに見つけたのは、色とりどりのお花畑。 獲物を抱えて先導するサチの目を盗み、全員が意味ありげな微笑を浮かべた。 一本づつ、自分の気に入った花をそーっと摘んで、もって帰る。 「……喜んでくれるといいなぁ」 その花を贈ろうと思う彼女に、自分が一番似合うと思ったものを。
●しあわせのかたち わいわいとバーベキューの準備が進められている。 肉は捌いて、巨大な野菜は食べやすく。 「これをこうやって……あ、こっちきちゃ駄目だよ〜」 一角では粉や果物と奮闘するファナとセフィリア。 幸い隠しておきたい人物はそちらよりも肉を捌いたりする方に忙しく、気がついていないようだ。 ちゃんと怪獣の両親分も捕らえてきて、それは別に生のまま差し出されていたりする。 あたりが薄暗くなってきて、全員のお腹が限界になったころ。 全ての準備が整い、お待ちかねのパーティタイムが始まった。 あたりを肉や野菜の焼けるいい匂いが支配する。 「あむあむ……やっぱりみんなで食べるご飯はおいしいですねぇ〜〜」 ファナがいっぱいに頬張りながら、満面の笑顔で言った。 「お腹もすいてるし、空気も美味しいし、みんなと一緒だし格別だね!」 ユギがかまどの様子をみながらうんうん、と頷く。 「自分でとったお肉……感動です〜」 ティフェルはじーんとしつつ肉を頬張った。 「このお野菜美味しい〜」 アヤの食べている野菜はランドアースでは見たことのないものだったが、確かに美味しい。 「私、踊りますね〜♪」 スイが立ち上がって自慢の歌と踊りを披露した。 盛り上がってくると全員が歌ったり踊ったりを始める。 「一緒に、どうですか〜?」 セフィリアが怪獣たちに笑いかけると、彼らも歌に合わせて尻尾を揺らしたり身体を動かしたりし始めた。 それをにこにこと眺めながらセレンはの〜んびりとご飯を食べている。 「なぁ〜〜ん……幸せって〜こういうのをいうなぁ〜〜ん……♪」 サチが、うっとりと呟いた言葉は、全員に伝わって、暖かい気持ちを残した。 あれほどあった食材も、大方綺麗に全員の胃に収まっていっている。 食べる方も踊りも一段落した頃。 「サチさん! サチ!」 全員がそれぞれの想いを籠めて彼女の名前を呼んで。 「お誕生日おめでとう〜!!!!」 その一言と共に驚く彼女の目の前に差し出されたのは巨大なケーキと花束。 ワイルドファイアの果物をふんだんに使った力作と、全員がサチのために摘んだ花を大きなピンクのリボンでひとまとめにしたものだった。 「なぁん!? うれしい〜なぁ〜〜ん……みんな〜本当に〜ありがとうなぁ〜〜ん……♪」 全員の唱和するハッピーバースデーの歌が、ワイルドファイアのジャングルを暖かく包んでいく。 大好きなお花も美味しそうなケーキも嬉しいけど、みんなの気持ちが一番嬉しかった。 歌にあわせてティフェルの頭上に浮かぶ光が、優しく色を変える。 全員がサチを撫でたりぎゅーっと抱きついて、口々にお祝いを伝えた。 心底嬉しそうなサチの様子に、親の怪獣たちも嬉しそうである。 彼らは彼らなりに、このゆったりした娘が元気でいるかどうかを心配していたのだが、そんな心配を撥ね飛ばしてしまうような仲間がいるというのは、今日の娘の様子から十分に伝わった。 ファナとセフィリアの力作ケーキは、怪獣たちも食べられるぐらいの大きさで、全員分を切り分ける時にもちろんそちらにも分けられている。 彼らにしてみれば初めて食べるものだが、口にはあったらしくあっというまにそれはなくなっていた。 ケーキも食べて、お腹もいっぱいで、疲れて眠くなり、だんだん口数が少なくなって。 月が皆を見守る中、全員が夢の中でまだまだ遊びの続きを楽しんでいるようだった。
夜明けの太陽の光があたりを爽やかに照らす頃、みんなで元気に起き出す。 いつもはお寝坊さんな人物もいたりしたが、何故かぱっと目が覚めた。 名残惜しいが何時までもここにいるわけにも行かず、サチの両親に別れを告げ、ランドアースへの帰途へつく。 「また、来ようね!」 誰からともなく言い出した言葉に、全員の同意と弾ける笑顔。 思い出は風に乗ってどこまでも高く舞い上がっていくようだった。 貴女に、ハッピーバースデー。 生まれてきてくれたこと、今ここにいてくれることに最大の感謝と祝福を。 これからの一年が貴女にとって素晴らしい一年でありますように!

|
|
|
参加者:8人
作成日:2005/04/01
得票数:ほのぼの16
|
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
|
|
あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
|
|
|
シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|
|
 |
|
|