黄昏の虚城



<オープニング>


「非常に多くのグドンが、とある古城に巣くっているのです」
 マットソンという依頼主の名をあげると、薄明の・霊査士ベベウは彼が町長であることを付け加え、多くの冒険者による速やかな作戦の実行を希望する旨を伝えてきたのだと言った。
「以前から田畑が荒らされ、森から生物がいなくなっていると、マットソン氏は人々から不穏な出来事を知らされていたそうなのです。ですが、それがグドンの仕業とは明らかになっていなかった。つい先日、ひとつの村が滅ぼされるまでは……」
 凍てつくような眼差しであった。だが、ベベウは瞬きをすると、灰の瞳にいつもの落ち着きを取り戻して、椅子の脚も寄り掛からせていた黒い革の鞄を取りだした。この鞄は平たい四角形をしていて、彼がパチンと金具をはじくと、本のように開かれた。中には、やや黄色がかった紙が納められていて、ベベウはそれを広げると、右の人差し指を這わせながら説明を行った。
「ご覧ください。中央の三角形は、この流れる河のほぼ中央にある中州です。この島には、廃墟となった城址があるのですが、グドンの群はここを占拠しているのです。島の周縁は、ほぼ5メートルほどの城壁に囲まれており、河から内部へ入り込むには、いくつかの限定されたルートを辿らねばなりません」
 
 ベベウが提示したルートは、以下の通りである。
【北東】三角形の頂点付近の壁は、崩れかけている。河の流れが急であるが、壁面に取り付くことさえできれば、侵入は容易い。
【南東】陸地と繋がっていた橋の跡がある。橋脚など。壁面に登れば、内部へ降り立つのは容易であろう。
【南西】水門と船着き場がある。水の流れが最も緩やか。もっとも侵入しやすいが、内部からは見えやすい。
【北西】浅瀬がある。陸から船を使わずに移動できる唯一の場所。城壁は乗り越えねばならない。
 
 黒髪の霊査士が蠢かせていた指先は、図面の4点を巡って、左手の傍らに置かれていたカップへと辿り着いた。唇に紅い液体を含むと、霊査士は言葉を続けた。
「グドンの群は、古城からなんらかの方法で陸地へと揚がり、村を襲撃したものと思われます」
 ――その数は? という問いに対して、ベベウはさらりとした口調で言った。
「数にして、200を優に越えているものと思われます」
 驚く者もあったが、平然としている者のほうが多かった。幾多の戦いを切り抜けてきた彼らなのだから――ベベウはそう想い、唇の端を歪める。
「人々の暮らしを守っていた砦が、人々を脅かすもの共の根城なっている……皮肉なものですね。人々のために、そして、古き建物のためにも――作戦の速やかな成功と、皆さんのご武運を祈っています」

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参加者
六風の・ソルトムーン(a00180)
蜂蜜騎士・エグザス(a01545)
疾風神雷の鵙・クルツ(a04433)
潤心の治療師・ダフネ(a05226)
闇の獣性が心に巣くう・エンハンス(a08426)
至高の光・サルサ(a09812)
蒼闇の魔剣士・ラディアス(a10323)
旅人の篝火・マイト(a12506)
払暁の藍櫻守・レイシ(a15922)
悪もぶっ飛ばす邪竜の申し子・キャロライン(a16160)
黒翼に抱かれる魂・コクセイ(a16410)
渡り鳥・ヨアフ(a17868)
魔王様・ユウ(a18227)
闇を祓う虚無の焔・カノン(a18799)
虹兎・イーリス(a18922)
刃物狂いの・モルバ(a19666)
みんなの桃色ナース・マリー(a20339)
不完の盾・ウルカ(a20853)
千変万華・スミレ(a21496)
地上の星・ティーダ(a21932)


<リプレイ>

●北西からの嚆矢
 流れは早かったが、深さは膝までしかなかった。
「不思議な城塞ですね……」
 水音をたてながら、赤と白の狩人・マイト(a12506)は高く丸みを帯びた石壁を見上げた
 六風の・ソルトムーン(a00180)は磨き上げられた三日月の型をした刃を手にして言う。
「ふむ。なかなかに趣のある古城ではないか」
 彼らにとって膝丈の水も、彼女にとっては違う。武道着の裾を濡らした少女へ、赤い瞳をした仲間が「大丈夫か」と声をかけたが、能なるも之に不能を示す・スミレ(a21496)はささやくように言いながら流れの中を進んだ。
「グドン……倒さないと、困る人……いるから……」
 闇の獣性が心に巣くう・エンハンス(a08426)は少女を気遣っていた。だが、こう述べるに留まった。
「そうか。ならば、さっさとグドンどもを消しに行くぞ」
 無愛想な少女と無口な重騎士の姿に、微笑ましいなと口元を綻ばせていたのは煌く蒼き光・サルサ(a09812)であった。
 
 五名の冒険者たちが、城壁に佇んでいる。
 歩み出たマイトは、紅の防人に矢をつがえて、おごそかに言った。
「皆々様方、これより……参ります」
 赤く透けた胴を持つ矢が、白の空間に鋭い軌跡を描いて飛んだ。
 小さかった火の玉は飛び散り、その爆音は反響を轟かせた。
「唯一の陸路と考えれば逃さぬ事こそ肝要かもしれぬ故、我はここに留まろう。進むべき者は進めばよい。我は此処で逃亡を阻止する」
 ソルトムーンはその場に残る旨を皆に伝えた。
 冒険者の到来に驚いたグドンを、ソルトムーンのハルバートが一閃する。仲間を殺された敵の長い腕を、ひらひらと蝶のように舞ってスミレはかわし、返す刃で斬撃を浴びせた。
 振り返ったエンハンスの視線に気づき、少女は言った。
「……残って……警戒します……」
 サルサたちは狭い城内に密集して建てられた石の建物、その残骸が作りだした迷宮へと足を踏み入れていた。
 ふいに現われた敵へは、サルサが光の雨を差し向け、入り組んだ迷路の先からの叫声にマイトが放った矢は、蛇のように空を這い進み敵の喉元を貫いた。
「消えろ」
 地獄の門番を意味する鎚を叩き付け、グドンの頭蓋を粉砕したエンハンスは、再び振り返った。
 背後には静けさと靄だけが佇んでいた。
 
●北東からの叡知
「地下通路の痕跡も伝承すらもなしか……」
 ――ならば、砦から陸へ向かうには、崩れた橋か浅瀬を渡るしかない。渡り鳥・ヨアフ(a17868)がそう結論づけたのは、まだ陽も登りきらぬ早朝のことであった。
 ダン、と弾むような音がして、ヨアフが足下を見入る。突き刺さった矢は、まだ羽を痙攣させていた。
「攻城戦か……」
 少しかすれているが、澄んだ声――それだけを残して、疾風を纏いし百舌・クルツ(a04433)は船上から姿を消した。
 崩落しかけた城壁の合間には、赤黒い影が浮かび上がっている。長く垂れ下がった腕に弓を持つのは、砦を根城とする猿グドンの群である。
 キィ、と叫声をあげる群から矢が放たれ、小舟を形作る板を次々と穿っていったが、そこに冒険者たちの姿はない。
 それでもグドンらは無数の矢を放っていたが……侮蔑の色を帯びていた鳴き声は、やがて痛みと恐れに怒り狂う悲鳴へと変わる。
 薄い金属を重ねて鍛え上げた刀剣で空を薙ぎ、巻き起こした風によって矢を返したクルツに続いて、背徳の十字架を背負いし魔王・ユウ(a18227)は愚者の断末魔と呼ばれる漆黒の杖を、靄の中で狼狽した影を浮べる者共へと差し出した。
「血飛沫に舞いなさい」
 そう言う彼の目前で、無数の針によって身体を穿たれたグドンたちは、歪な形に手足を折り曲げた影を披露した。……そう、ユウが求めた通りに彼らは舞っていたのだ、死へと至る舞踏を。
「そりゃ騎士道にも任侠にもそぐわねぇ……よなぁ?」
 戦いの意義を仲間に問うたが、すでに戦いは始まっており、返事はなかった。髪が剃りあげられた頭を撫でて息を吐くと、喧嘩上等騎士道御免・ウルカ(a20853)は敵の顔面にフレイルを叩き付けた。騎士の何たるかは見えないが、おいおい片づけていけばよい問題である。今は、躊躇なく敵を潰すだけだ。
 オーブが光で充ちると、ヨアフは心の力を解き放った。宙に刻まれた黄金の紋章から伸びた幾条もの光は、影に潜もうとしたグドンの影をも照らし出した。
 思っていたよりも近くに敵がいると知り、黒穣の恵果・ティーダ(a21932)は怯えていたが、光の雨にうたれてふらつく敵の逃亡を、みすみす許すわけにはいかないのだともわかっていた。びしびしと音が響いたが、少女が手にするのはエンシェントロッドであり、音とは関係がない。衝撃を放ち、一体の敵を見事に倒したティーダの頬は、なぜか赤く染まっていた。
 戦いを続けながら、ヨアフはまたしても思索に耽っていた。それも、先ほどまでのものとは異なる経済の問題である。
(「……グドンの巣にはもったいないな……待て、河を使った交易の拠点になり得るか?……川下の町の特産品は……」)
 砦についての思いを巡らせ、帰り道となる浅瀬へふらふら向かったヨアフを、怪訝そうに瞳を交わした仲間たちは追いかけることにした。
 
●南東からの清風
 翠碧色の布地を風にはためかせ、潤心の治療師・ダフネ(a05226)は舵を操った。仲間たちを乗せた小舟は、無事に崩れた橋桁を避け、三角州の周縁部に辿り着いた。
 深い紫の天鵞絨で背を覆い、黒い帽子の淵に手を伸ばしていた少女は、その指先に幾つかの鈍い輝きを湛えると、銀の髪を振り乱してその光を手元から放った。銀の破皇・コクセイ(a16410)の狙いは、未だに水面に屹立する橋脚である。敵の逃走に使われぬよう、破壊すべきと考えたのだ。
 衝撃に剥離した、それ以上に崩落を始めた石材が、水面を叩いた。
 そこへ、大気をじりじりと揺るがせるコォという余韻が響き、コクセイたちは橋脚から城壁へと視線を移す。
 合図を察知したのは、自分たちだけではなかった。丸い背をした影共が、城壁でひしめき合っていた。
「盟友に海神の加護を!!」
 奏鳴杖で空を切り裂き、ダフネは黒い瞳で一心に見つめた。その先には、白銀の光をまとった剣を持つ、これまた銀の髪を頬に垂らした少女がいて……。
「ダフネ殿、ありがとう。でも妾だって守られてばかりじゃないのじゃ! 皆を守るのじゃー!」
 にっこりと微笑む耳長癒者へ、きらきらとした笑顔を贈ると、スクランブルハニー・イーリス(a18922)は途端に駆け出した。そして、降り注ぐ矢の勢いにもめげず城壁へとよじ登り、輪郭を大きく波打たせ、神々しいばかりの輝きを発し続けるシルバーソードで空を薙いだ。
「……それでは、私も大掃除を、始めるとしましょうか?」
 城壁からばらばらと落下してくるグドンへは目もくれず、幼き邪竜の申し子・キャロライン(a16160)は術具を空へと向け、秘密めいた光を湛える漆黒の瞳で城壁のグドンを陶然と見遣った。
「我、汝等がため、彼方より力を解放せり……汝等に与えられしは、慈悲無き銀槍!」
 大気が震え――キャロラインを囲んだ針の群は、渦巻いて城壁に陣取る者共に襲いかかる。
「……黙ってもらうよ」
 両手に光る短剣の刃は、敵の身体を刻むたびに、その切れ味を増すようだった。城壁の上部で舞い踊るコクセイの姿は、凶刃を翼のようにはためかせ、風に乗る黒鳥さながらである。
 砦の内部に真っ先に降り立ったのは、蹂躙する者・モルバ(a19666)だ。蹂躙する者を意味する巨大な刃を頭上で旋回させると、彼は一挙に空を薙いだ。シケから一転して波打った海のごとく、怒濤となった衝撃が群がる赤黒い毛並みを散らしていく。敵を討った彼は、嬉々としていた。
 
「今回は仕方ありませんね」
 砦の内部へ向けて、元気よく走り去っていったイーリスたちの背を瞳で追い、モルバは言った。誰かがグドンの退路を塞がねばならない。
 だが、現われた敵に、彼はにんまりと笑う。
 巨大な影を持つ刃が空を切り裂き、放たれた衝撃によってグドンは倒れ、モルバは快い感覚に浸っていた。しかしそこへ、仲間の死骸を踏みつけ、血走った目をひんむく大柄なグドンが駆けてくる。
 けれど、その突撃は中途で終わった。靄の中から現われた刃が、その煌めきをグドンの喉元で交差させたのだ。
 足下に転がった首を一瞥して踵を返したのは、コクセイであった。
 
●南西からの救い
「……ここはどこなのです?」
 ストライダーの医術士・マリー(a20339)は一生懸命に辺りを見渡したが、見覚えるあるものはいっさいない。だが、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あ〜あ、やっぱここって見つかりやすいんだよなあ……。まあ、別にいいけどね!」
 暗い闇色をしたヘブンズインフェルノの刀身を、闇を纏いし者・カノン(a18799)は仄暗い向こうへと突き出した。両手を彷徨わせて避けようとするグドンらの努力も虚しく、散開した黒い針は次々のその毛皮を貫き、身を穿っていった。
 彼らが辿り着いた扉を朽ち果てさせた水門の向こうには、無数の猿グドンたちが蠢いていた。
 まずは、突破せねばならない。
「さぁて、楽しませてもらうぜ!」
 青玉の魔剣士・ラディアス(a10323)は言うなり、澄んだ湖を思わせる碧を漂わせる刀身を大気に晒した。目の前に構えられた刃は、その主の鋭い眼差しを透かしていたが、瞬秒の後には迫り狂うグドンの群へと翻り、鮮やかな剣致を披露し、敵を斬り伏せていた。
「俺が敵の注意を惹く。狙える奴を確実に仕留めていけ」
 蜂蜜騎士・エグザス(a01545)は組んでいた腕を解き、足下に突き立てていた斧を手にした。そして、タワーシールドを掲げて最前線に立つ。
 彼の頭上から飛び散った白光が靄を貫き、影から目を潜めた現われたグドンは光の源を目掛け這い寄ってきた。
 ――余さず殲滅せよ、そう心の内で繰り返しながら、彷徨いて舞う枝垂桜・レイシ(a15922)は術扇を揮った。流水花車と名付けられたそれは、靄を小さく渦巻かせて払いのけると、そこに宙に輝く紋様を浮かび上がらせた。
 光の雨に吹きつけられ、倒れていく敵を視界の端に捉えながら、マリーはエグザスの背後に駆け寄り、合わせた掌からこぼれ落ちる水滴を傷口に這わせた。
「あぁ〜ん……元気出してくださいです〜っ」
 エグザスは奇麗になった肌を少女へ見せると、斧を振り上げたまま敵地の奥へと侵入していった。
 
「怖いですぅ〜……怖いですぅ〜……」
 騒ぎながら回復を怠らないマリーに助けられ、そして、彼女を護りながら、カノンは水門の背に戦いを繰り広げていた。
 そこに、エグザスたちの姿はない。あるのは、幾許かの焦燥と、グドンらがもたらす喧騒だけである。
「俺の炎で天国に連れて行ってあげるよ? でも……地獄に行ったらごめんね!」
 駆け出した銀狼によってグドンは組み伏せられ、そのまま動かなくなった。
 
●死地でも折れぬ刃
 黄昏の虚城、その一角に、彼は孤独な影を伸ばしていた。
 ハルバートで身体を支え、ソルトムーンは立っていた。その足下には、手足を投げ出して倒れ込むスミレの姿がある。
 陸から浅瀬へとやって来た赤黒い背の波――数十というグドンにふたりは苦戦を強いられた。やがて、城壁の戦線を維持できなくなったソルトムーンは、深い傷を負ったスミレを肩に、城内への撤退を余儀なくされた。
 手応えのなさ、砦から陸の村々を襲ったグドンの手口、複合的な問いの答えが北西の地に集約され現われていたのである。
 砦の内部では、生き残ったグドンが彼らを待ち構えていた。血で滲んだ唇で何事かを囁こうとするスミレを、武人は指先で制した。置いていけと言いたかったのだろう、だが、矜持に反する真似など誰が選ぼう?
 廃墟へ逃げ込むか……額からの血で狭まった視界でソルトムーンが決断した瞬間、轟音が響き渡り、崩された壁によってグドンが下敷きとなった。
 瓦礫から這い出たものを、さらに、黒い炎が襲い焼き殺す。
 巻き上がる粉塵の向こうには、重厚な刃を肩に負うエグザスと、銀鎖の手甲で護られた左手で汗を拭うレイシの姿があった。 
 傷ついた仲間へと迫るグドンへ、目眩しの中から現われた蒼い刃が一閃を浴びせた。それは、ラディアスの剣であった。
「俺もいつかあんな風になってやるぜっ!」
 ウルカには状況が一目でわかった。髭をたくわえた古参の冒険者が、何を成していたか……。そして、同じように自分もやり遂げたいと熱望する。
 壁面の上部を駆け抜けてきた少年は高く飛んで、落下点のグドンへ武具を叩き付けた。
「きゃーっ!! いやーっ!! 怖いよう!!」
 両腕をばたばたとはばたかせながら、ティーダは叫んでいた。だが、それだけではない。仄かな光が裾野を広げ、傷ついた仲間の元へと辿り着いていた。
「上様サンバ弐!! そして、暴れん坊上様のテーマだっ!!」
 鮮やかな足取りは、まるできらびやかな舞台の上にあるようである。クルツは陽気なリズムから、颯爽とした旋律へと動きを移し、そのさなかで幻像を分裂させた。
「求めるは紅蓮、現すは化生、スキュラフレイム!」
 クルツの一撃で葬り去られた仲間を追うように、魔炎に食らい付かれたグドンは死んだ。焔を放ったユウは……冷たい笑みを浮べていた。
 空から羽虫のように耳をつんざく音が降ってきた。そして、ドボドボという音が続く。
 杖の先端を空へと向けるキャロラインの脇を駆け抜けたイーリスの手許から、刀剣が凄まじい勢いで撃ちだされた。針に襲われるも、未だに城壁に留まっていたグドンが的となり、悲鳴をあげながら石積みの向こうに消えた。
「治癒の雫よ津波となって速やかに傷を洗い流せ!」
 さらなる癒しの光を傷ついたふたりにもたらしたのはダフネである。
 次いで飛来した小さな火球は、瞬く間に膨れ上がって爆ぜた。
「勝負はこれからでしょうが!」
 彼なりの激励だったのだろう、弓を手に叫んでいたのはマイトだ。
「仕事が終わったら、みんなで飲み明かそうぜぇ〜」
 髭をたくわえた口元が綻び、それを目にしたサルサは表情を明るくした。星煌剣で宙に鮮やかな軌跡を描き、漂う紋章から白い輝きを撃ちだす。城壁から影がひとつ減った。
「目障りだ」
 頭上に掲げられた鉄の塊を、エンハンスは真一文字に敵へと叩き付けた。赤い断面を晒し、グドンは両断された身体を左右に広げ、それぞれが地に伏す。
 ソルトムーンの肩を借り、スミレは自分の足で立ち上がった。
 その姿を、瞬きをせずにエンハンスが見つめていると、少女は恥ずかしそうに手櫛を髪に伸ばし、小さく頭をさげた。
 
 赤黒い毛皮で包まれた者共は滅びの時を迎えた。
 古の城塞を包み込んでいたおぼろな薄衣は、冒険者たちが去ってからも影なき姿を留めていたが、やがて上流から吹き抜けてきた冷たい風によって一掃される。
 靄の晴れた砦は、滅びてはいたが、美しかった。


マスター:水原曜 紹介ページ
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