昆虫大決戦



<オープニング>


「ある森に突然変異した昆虫が三匹現れたの。今回みんなにお願いするのは、その三匹の昆虫退治よ」
 目の前に置いてあったレモンティーに口をつけ、月影の霊査士・エルフィール(a90177)が更に話を続ける。
「変異したのはカマキリとカブトムシ、それと蜂ね。カマキリとカブトムシが6m、蜂が2mほどの大きさで、カマキリは攻撃力、カブトムシは守備力、蜂は素早さが特化して高いわ。後はカマキリが広範囲に攻撃できる事と、蜂が毒を持っている事に注意するくらいかしら」
「他には無いんですか?」
「無いわよ。だからこの依頼をみんなに回してるんじゃない。デビュー戦の相手にはちょうど良いでしょ♪」
 デビュー戦――。
 その言葉が示す様に、今回集まった冒険者達は、これが初めての依頼と言う者が多い。
 敵の能力は手頃、目的は殲滅と、内容も非常にシンプルで、駆け出しの冒険者達に経験を積ませるには、ちょうど良い依頼だ。
「モンスターと違ってアビリティは使ってこないけど、能力的にはそれなりに高いものを持っているから、くれぐれも油断しないようにね」
 そう言ってエルフィールは、笑顔で冒険者達を送り出すのだった。

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参加者
パペットマ・ペット(a14089)
不朽の魂・オージュン(a20345)
黒焔の執行者・レグルス(a20725)
死女の恋・ジゼル(a21297)
デタラメフォーチュンテラー・ネミン(a22040)
桎梏の代替者・シグルド(a22520)
天倪・アーシュ(a22694)
太陽に愛でられし元気っ娘・シャネル(a22731)
月白の忍び・レイート(a23206)



<リプレイ>

●初めての依頼
「依頼を受けるのは初めてじゃねェんだが、退治の依頼は初めてだからなァ。おぢさん頑張っちゃうぜェ。一つ宜しく頼むぜェ」
 と、にこやかな笑顔で不朽の魂・オージュン(a20345)が右手を差し出す。
「あ、はい。宜しくお願いします」
 その手を緊張した面持ちのヒトの忍び・レイート(a23206)が握り返す。
 初めての依頼に緊張している様子のレイートも、オージュンの笑顔を見て、少し緊張がほぐれる。
 そこへ今度は、暁闇に惑う天児・アーシュ(a22694)がやってきて、右手を差し出した。
「俺もこの前依頼に参加したんだが、あれはピクニックだったからな。仕事としてカウントは出来ねぇだろ。つー訳でこれが俺の事実上のデビュー戦だなっ。宜しく頼むぜ」
「こちらこそお願いします」
「おう。頼むぜェ! 何、わしらが力を合わせりゃ、森に沸いたっつードデカイ奴サンも目じゃねェぜ! わっはっはっは!!」
 と、オージュンが豪快な笑い声を響かせる。
 本人の性格もあるだろうが、人生の酸いも甘いも噛み分けた熟年のオージュンは、今回の依頼にもまったく気負っている様子は無い。冒険者としては同じ駆け出しだが、人生の先輩として、若い冒険者達を引っ張ってくれる事だろう。
 しかしそんなオージュンのすぐ傍で、デタラメフォーチュンテラー・ネミン(a22040)がガタガタと震えていた。
「どうした、ネミン? 気分でも悪いのか?」
 ネミンの様子を心配した誓約者・シグルド(a22520)が優しく声をかける。
「いえ、そういう訳ではないです……。あの……6mの虫って……よく考えるとすっごい怖くないですか……?」
「確かにね……。虫クンはそんなに嫌いじゃないけど、そんなにデカイとなったら話は別っ! やっぱり気持ち悪いよ……」
 太陽に愛でられた元気っ娘・シャネル(a22731)も、6mの虫を想像して思わず体が震える。
 普段見慣れている物でも、大きさが違えば印象が変わってくるというのに、それが虫という元々女の子にあまり好かれていない物であれば尚更だ。6mなどという巨大な虫は恐怖の対象でしかない。
「俺はそうでもないんだが……。やっぱり男と女の違いか? まあどっちにしてもそんなに怯える事は無いだろう。俺達が付いてるんだからな」
「……ですね。皆さんと一緒だからきっと大丈夫ですっ。緊張するですけど、頑張るですよ!」
 そう言うとネミンは、パンパンと軽く頬を叩いて気を引き締める。それでもまだ恐怖心は抜けなかったが、仲間が傍にいてくれると思うと、幾分気持ちが楽になるのを感じた。
「それではそろそろ行こうかなぁ〜ん。昆虫退治に出発なぁ〜ん!」
 パペットマ・ペット(a14089)が声をかけると、それぞれの想いを胸に、冒険者達は変異昆虫の潜む森を目指して出発した。

●荒れ果てた森を行く
 冒険者達が出発して数時間が経過した頃――。
 彼らは春の心地良い日差しを全身に受けながら、三匹の変異昆虫を探して森の中を進んでいた。
 森の中は新しい命が芽吹いている一方で、無残にへし折られたり、切り倒された木々で溢れていた。それは延々と続き、冒険者達の行く手を阻んでいる様だった。
 多くの冒険者が木々に足を取られ、苦労しながら進んでいく中、死女の恋・ジゼル(a21297)だけは、苦労している様子も無く、自作の歌を歌いながらマイペースに進んでいた。
「大きいのは良い事だ、なんてのは嘘ですよ〜♪ まー虫けらには哀れみもわきませんね〜♪ さくっと退治したいところですね〜♪ ふんふ〜ん♪」
「いやァ、元気だねェ。わしらもあんな風に進みたいもんだなァ。わっはっは!」
「感心してる場合じゃないですよ。まったく……中々前に進めない……」
「しかしこれだけ視界が開けてるのに、三匹とも影も形も見えないな。どうやらこの辺りにはいないみたいだが、どこを探していいものやら……」
 木々が倒されているお陰で視界は広がっているが、それでも変異昆虫の姿を発見する事ができない。この辺りにいない事は間違いないが、かといって他の場所を探そうにも、木々が倒され、荒れ果てた森の中をただ探索するのでは時間と体力の無駄だ。
 倒された木から虫の進行方向を読むという方法もあるが、メチャクチャに切り倒されているこの状況では、その方法も無理だ。
「しょうがねーな。どうやらここは俺の出番みたいだな」
 どうしたものかと思案している冒険者達を掻き分けながら、黒焔の執行者・レグルス(a20725)が得意気な顔で前に進んでくる。
「レグルス君、何か良い方法があるの?」
「ああ。俺は追跡が得意だからな。こんな状況でも軽く連中の足跡くらい探し出してやるぜ」
 レグルスが微笑むと白い歯がキラリと光った。
「何!? じゃあなんで今まで何もしなかったんだ!?」
「まあいいじゃないか。そんな細かい事いちいち気にするなって」
(「きっと美味しい場面が来るまで待ってたんだね……レグルス君……」)
 そう言うとレグルスは、所々に見えるいくつもの足跡をチェックする。他の者にはただの足跡にしか見えないが、レグルスには様々な情報が読み取れるらしく、何度も小さく頷いて、情報を整理していく。
「よし、分かった! このまままっすぐ行けば大丈夫だぜ!」
「……本当なんですか、レグルスさん?」
「俺を信じろって。さあ、俺の後について来い!」
(「ディアスポラの神槍よりもデカイ態度の奴だ……」)
 本当にこの方角で合っているのか、一抹の不安が無い訳でもないが、現状では追跡が得意と豪語するレグルスを信じるしか手段は無い。ずんずんと前に突き進んでいくレグルスの後に、他の冒険者達も続いていく。
 そのまま一時間ほど進んだ頃だろうか、どこからとも無く物音が聞こえてきた。
 例えるならその物音は、蚊や蝿が飛ぶ時に聞こえる羽音を大きくした様な音だ。
 冒険者達はその音の主が、変異昆虫の一匹である2mの蜂だと確信すると、武器を手に取り、戦闘体制に入る。
 ブブブブブブブブブブ……。
 けたたましい羽音が段々と大きくなってくると共に、緊張が高まっていくのを冒険者達は感じた。

●変異昆虫現る
 けたたましい羽音と共に、巨大な蜂が冒険者達の目の前に姿を現した。
「……虫けらが」
 と、冷え冷えと呟き、シグルドは戦槌を蜂目掛けて振り下ろすが、蜂はその攻撃を素早くかわし、冒険者達に襲い掛かってくる。
「2mの蜂って気持ち悪〜。ああもう、やだぁ!」
 蜂が大の苦手というシャネルが、ビビリながらもブラックフレイムを放って攻撃する。黒い炎の蛇が蜂に絡みつき、その身を焼き焦がすが、蜂は止まる事無く突っ込んでくる。そして長剣ほどはあろうかという鋭い針で、シグルドの腹を串刺しにしようと襲い掛かってきた。
 ブシュウッ!
「くっ……」
 串刺しにされる事は免れたものの、針はシグルドの腹を切り裂き、傷口からは鮮血が噴き上げる。
「わひゃ、大丈夫ですか!? 今回復するです!」
 シグルドの腹から噴き出す血の量を見て、慌ててネミンが駆け寄っていく。
 だがその時、大きな影がネミンに覆いかぶさった。
「危ない! 避けろ、ネミン!」
「え?」
 その言葉に反応したネミンが後ろを振り返ると、そこには大きく腕を振り上げたカマキリの姿があった。
 ビュウウウッ!!
 凄まじい風切り音を響かせながら腕が振り下ろされると、鋭いカマがいとも容易くネミンの体を切り裂いた。
「きゃあっ!!」
 辺りに血飛沫が舞い、地面を朱に染めていく。
 そのままよろよろと前に数歩進んだ後、ネミンはその場に倒れ込んだ。
「急げ、オウカ! ちゃきちゃき働け!」
「分かっていますわ」
 レグルスの指示を受け、雪月歌の斎女・オウカ(a05357)がヒーリングウェーブを放とうする。が、そこに物凄い勢いでカブトムシが突っ込んできた。
「邪魔はさせませんよ!」
 オウカがヒーリングウェーブを使う間の時間稼ぎをしようと、レイートが六花輪を投げつける。
 だが雪の結晶を象った蒼く氷を思わせるチャクラムは、カブトムシの体に当ると、鈍い音を立てて跳ね返された。
「効かないっ!?」
 黒光りするカブトムシの強固な外皮の前では、少々の攻撃は全て無効化されてしまう。
「だったらボクが止めてみせる!」
 歩みを止めないカブトムシをに、シャネルがスキュラフレイムを放つ。
 スキュラフレイムはカブトムシに命中すると、獅子と山羊が体に喰らい付き、蛇が毒を流し込んで、爆発炎上する。
 その衝撃でカブトムシはひっくり返され、足をバタつかせて悶えている。
「……今ですわね」
 カブトムシの動きが止まった隙をついて、オウカがヒーリングウェーブを放ち、二人の傷を癒していく。熟練の冒険者であるオウカのヒーリングウェーブは、二人の傷をあっという間に全快させた。
 そしてその隙を見逃さなかった者がもう一人。
「表は固そうだが、腹はきっと柔らかいんだろうなー」
 この時を待ってましたと言わんばかりの満面の笑みを浮かべ、レグルスがニードルスピアをカブトムシに放つ。が、幾百本の鋭い針が、次々とカブトムシの腹に突き刺る事は無かった。
 まだ未熟なレグルスの実力では、表面に比べれば多少柔らかいとはいえ、カブトムシの強固な外皮を貫くまでには至らなかったのだ。
「くっそ〜。俺もスキュラが使えたら……」
 攻撃が通用せず悔しがるレグルス。と、その時。ひっくり返っていたカブトムシが元の体勢に戻った。勿論、その目にはレグルスを獲物として捉えている。
「じょ、冗談じゃないぞ!? 俺は打たれ弱いんだからな! お前の相手なんかしてられるか! 前衛さん、宜しく頼むぜ!」
「なら私が相手しますね」
 レグルスは自分の身に危険を察知すると、実に素早く後方へと退避する。そしてレグルスと入れ替わりに、ジゼルがカブトムシと対峙する。
「虫の王様カブトムシ。これだけでかいとさぞかし高く売れるかもね♪ 容赦はしないけど……」
 ペキペキと拳を鳴らしながら、ジゼルがカブトムシに近づいていく。
 正直、カブトムシの硬い外皮の前では、ジゼルの攻撃も効果的とは言えないだろう。
 だがジゼルの表情には余裕さえ感じられる。いったいそれは何故なのか。
 先に仕掛けたのはカブトムシ。その硬い体を活かした体当たり攻撃で勝負をかける。 ジゼルは体当たりをかわしながら、カブトムシの体に軽く手を触れ、大きく深呼吸する。そして――。
「はぁっ!!」
 ドゴオオオッ!!
 気合いと共にジゼルの体から放たれた爆発的な気は、カブトムシの硬い外皮を完全に無視してダメージを与え、更にその強い衝撃で圧倒的な巨体を軽々と吹き飛ばした。
「この技なら防御力は関係ありませんものね」
 3mほど吹き飛ばされたカブトムシは再びひっくり返り、足をバタつかせて悶えているが、その動きは先程と違い、とても弱々しい。
「虫は叩き潰すに限ります」
 ズドォンッ!!
 何とか起き上がろうとするカブトムシに、ジゼルがもう一度気を叩き込むと、カブトムシは永遠の安らかな眠りについた。

●勝利まで後一歩
 その頃――。
 残りの冒険者達と変異昆虫の戦いも大詰めを迎えていた。
「ウガアアアアアーーッ!!」
 裂帛の気合と共にオージュンが叫び声を上げるが、蜂とカマキリの動きを止める事はできなかった。動きの止まらなかったカマキリは鋭いカマで、周りの冒険者達を薙ぎ払う。
「わっはっは! 中々やるじゃねェか! そうこなくちゃなァ!」
 お返しとばかりに、オージュンがデストロイヤーでカマキリを叩きつけると、べキッと鈍い音が聞こえ、カマキリが地面に膝をついた。
「よし、このまま一気にカタをつけるぞ!」
「おう!」
 それに続いてアーシュのソードラッシュと、シグルドの兜割りがカマキリにヒットする。傷だらけの体を震わせながら、立ち上がろうとするその姿からは、もはや生気が感じられない。
「これで決めてやるぜ!」
 と、アーシュがトドメの一撃を放とうとした時、目の前を蜂が猛スピードで飛んでいった。突然の出来事にアーシュの手が止まる。蜂はその一瞬の隙を見逃さず、素早く旋回すると、アーシュの脇腹に針を突き刺した。
「アーシュ!! くそっ……蜂をなんとかしないと……。ペット、サポートを頼む!」
「わかりましたなぁ〜ん」
 ペットは弓を構え、蜂に狙いを定める。
「先輩冒険者として、ここは一つ良い所を見せるなぁ〜ん」
 そう言うとペットは蜂に向って矢を放った。
 ペットの弓から放たれた矢を蜂は難なくかわす。だが矢はそのまま飛んでいかず、蜂を追いかけて再び飛んできた。
 グシャアッ!!
 卵の殻を割った様な音と共に、矢が体を突き抜け、蜂は地面に叩きつけられる。
「今なぁ〜ん! 早くトドメを刺すなぁ〜ん!」
「分かってる!」
 蜂が飛び立つよりも早く、シグルドの戦槌が蜂に振り下ろされた。
 ズダァンッ! と大きな音がして、大地が揺れる。
 シグルドがゆっくり戦槌を持ち上げると、地面には体を叩き潰され、絶命した蜂の姿があった。
 残るは後一匹……だが最後の一匹となったカマキリは既に虫の息だ。
 放っておいても死にそうだが、このまま長々と苦しませるより、一思いに楽にしてやった方がカマキリの為だと、ネミンがスキュラフレイムを放つ。
「虫さんに恨みはないですけど……ごめんなさいです!」
 スキュラフレイムの爆音が辺りに轟くと同時に、黒焦げになったカマキリが静かにその場に崩れ落ちていった。

●今夜は眠れないかも……です
「こんな感じですかね?」
 大きな土の山をシャベルで叩きながら、レイートが言う。
「そうですね。それで良いと思うです」
 目の前にできた三つの大きな土の山に、ネミンが花を供えて手を合わせる。
「本当は倒したくなかったけど……」
 そう呟いて、レイートも手を合わせる。
「レイート君、ネミン君、そろそろ行くよ〜」
「分かりました。すぐ行きます」
 シャネルに呼ばれて、レイートが仲間の方へと駆け出していくが、ネミンは未だに手を合わせたままだ。いったいどうしたというのか。
「うう……依頼が成功した喜びですっかり忘れてましたけど、思い出したらやっぱり怖いです……。あの虫さん達怖いです……」
 目の前で眠っている三匹の変異昆虫を思い出して、ネミンがガタガタと震えている。
 どうやら体が思うように動かず、レイートの後についていけなかったようだ。
「ごめんなさいです……。ネミンもう行くです……」
 変異昆虫の恐怖が甦った今、もうこんな場所には居たくない。
 ネミンは震える足を一生懸命前に出して、その場から立ち去った。
「もう虫は十分です……当分の間十分です……」
 と、呪文の様に何度も繰り返す。
 ちゃんと供養したんだから、お願いだから化けて出ないでと、ネミンは祈らずにはいられなかった……。


マスター:月影絶影 紹介ページ
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参加者:9人
作成日:2005/04/02
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