ユークリドでお花見を 〜わたしさわぐひと〜



<オープニング>


「……春、やなぁ」
「……春、ですねぇ」
 まだ朝夕は底冷えするけれど、そよと吹く風は優しく、昼の日差しは真冬の頃より明らかに強い。
 春が来た――そう、しみじみと実感したくなる陽気だった。
「……平和、やなぁ」
「……平和、ですねぇ」
 取り立てて急ぎの依頼も無く、まったりムードの冒険者の酒場。ほこほこした窓際で、2人並んで尻尾パタパタ。片やレモネード、片やエスプレッソをノンビリすすっていたり……縁側で茶飲み日向ぼっこ状態だったりする。
「……なぁ、ジェイおじさん」
「…………そのおじさんは止めてくれませんかね」
 幾ら何でもそんな年じゃないです、私――恨めしそうな享楽の霊査士・ジェイナス(a90171)の表情にも、明朗鑑定の霊査士・ララン(a90125)はしらりとしたもの。
「何や、つれないなぁ。うちとおじさんの仲やない」
「だから……」
 その実、2人は母親が姉妹同士で、ラランの長兄はジェイナスと同い年だったりするのだけど。
「でな、ジェイおじさん」
「…………はぁ」
 まあ、2人揃えば挨拶代わりのいつものやり取りだ。
「ほら、ユークリドの桜並木。そろそろ満開の時期やねんて」
「おや、もうそんな時期ですか」
 律儀に兄さん達が教えてくれたんよ――苦笑混じりに封筒をヒラヒラさせるララン。
「花見するから、帰って来いやて」
 ユークリドの桜並木は、近隣でも有名な花見の名所。3月末から約1ヶ月、その近辺は薄紅の花霞に包まる。何でも、桜をこよなく愛した当時の領主が様々な桜を植えさせたのが始まりらしい。
「でな、折角やしジェイおじさんも一緒せぇへん?」
「そう、ですね……」
 ラランの誘いに考え込む風のジェイナス。
「……ララン、いっそ皆さんもお誘いしませんか?」
 楽しい事は大勢の方が楽しいです――青年の言葉に、少女もパッと顔を輝かせる。
「あ、せやな。皆で仰山ご馳走持ち寄って」
「お菓子やお酒も忘れちゃいけませんよね」
「パーッと無礼講で大騒ぎ♪」
「しっとり夜桜見物も、きっとオツですよ?」
 うんうんと楽しそうに頷き合う。善は急げとばかりに、ラランは手を打って席を立った。
「そしたら、ジェイおじさん。よろしゅう頼むわな!」
「ええ、お任せを――って、あ、あの。ララン……?」
 ノリと勢いで胸を叩いてしまったジェイナスだが、慌てて少女を引き止める。
「頼むって、何を……」
「宴会の料理にきまっとるやん♪ 心配せんでも、酒の用意と場所取りはちゃーんとうちがやっとくさかい」
「り、料理って」
 またの名を『くっちゃねダラダラシンフォナー』にあっさり準備を押し付けるリス尻尾。この辺りで、2人の関係も知れようというもの?
「うん♪ 今から楽しみやなぁ」
 眩暈を堪える面持ちで微妙に青くなっていたりするジェイナスを余所に、早速あれこれ思案を始めるラランだった。

「そしたら、一足先行って場所取りしとくわ♪ 夜桜もものすごぅ綺麗な処やけど、花見はパーッと景気よぅにやりたいなぁ。あ……けど、乱闘騒ぎはやめといてな。うちもジェイおじさんもぶっ倒れるしかないさかい」

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参加者
NPC:明朗鑑定の霊査士・ララン(a90125)



<リプレイ>

「目指すはイヴからアフターまでロングラン宴会ですねぇ……さて、飲みながら待ちましょうか」
「え、えっとぉ……」

 春霞、そして花霞――ユークリドの桜並木は今が盛り。
「お花見……桜鑑賞ですのね。ホワイトガーデンではした事がございませんので、楽しみですわ♪」
「そうなん? 空の上のお人には珍しいんかなぁ、花見」
 まずは場所取りの道すがら。アフロディーテの言葉に、明朗鑑定の霊査士・ララン(a90125)は小首を傾げた。
「そういう訳でもないんですけどね」
 すかさず、やはりエンジェルのネイネージュから訂正が入る。まあ、アフロディーテがいた浮島には、桜がなかったのかもしれない。
「1番綺麗な桜はどれかなぁ♪」
 ワクワクと足取りも軽やかなバーミリオンはあちこちキョロキョロ。そんな彼を、スージーが微笑ましく見守っている。
「皆さんとお花見……ものすごく楽しみです」
「はいです♪」
 今回は仲良しも沢山。嬉しそうなファオと顔を見合わせふふっと笑う。
「去年は昼やったから、夜はまた違う雰囲気なんかなーて楽しみなん」
 ウキウキと狐尻尾を一振り、カガリは抱えた荷物ごと振り返る。
「そや、ラランはん。ちょい気になったんやけど。お兄さんと同い年なら、ジェイナスはんもお兄さんちゃうの?」
「何で? ジェイおじさんはジェイおじさんやし……あ、そこの広場なら大人数でも平気や……けど」
 絶句――唐突に開けたスペースをぐるりと囲むロープの仕切り。
「あ……おはようございます」
 桜の木に隠れて手を振るヒリヨの足下には、既に空の酒瓶が3本程。
「お待ちしてましたよ……ああ、これは前夜祭ですって」
 泊り組その2のソルティークは、グラス片手にあくまでもにこやかだった。

 用意のいいヒリヨとソルティークのお陰で、ジェイナスに押し付け……もとい頼んだ料理が届くまではお茶の時間になった。
「膝掛け、全員に回った?」
「お茶が入りましたわ」
「梅干湯も用意しました。桜の塩漬けを浮かべると素敵ですよね」
「わぁ、アップルタルトとチーズスフレ♪」
「カガリさんにはまだまだ叶わないですけど……えと、バーミリオンさん。食べてくれますか?」
「勿論! 絶対おいしいよねっ!」
「あ、ええなぁ。バーミリオンはん専用なんや」
「え、えと……勿論、皆さんも食べていただければ。ファオさんもどうぞです」
 からかうカガリのにんまり顔に、スージーは思わずわたわた。桜色より赤くなって差し出されたタルトの皿を、ファオが笑顔で受け取る。
「……あ、こっちこっち!」
 スフレを堪能していたラランが、大きく手を振る。
「ラランちゃーん! お待たせやでー!!」
「お兄さん……人の目もあるんですから」
 幸せなシャウトに、思わず頭を抱えるイワン。
「いいじゃない。ちゃんとお酒も仕入れたんだし」
「兄とは背中で語るものですよ」
「それは父の背中では……まあ、一理ありますが」
 小さな酒樽を積んだ荷車を引きながら、能天気に笑顔振り撒く次兄に肩を竦める三兄、冷静に突っ込んだのは長兄だ。ラランの兄達とも知り合ってそこそこな分、イワンも簡単に丸め込めなくなってきたようで。
「……料理も、来たようですね」
「うん♪ ご馳走楽しみや♪」
 兄にお使いを頼んだのはラランだが、花の10代は寧ろ食い気。
 ラランが手を振ったのは、その後ろから来るジェイナス達にだとは……口が裂けても言えないと思うヒリヨだった。

「空が桜で染まってるみたい。幻想的で……すごく綺麗です」
「うん。皆で綺麗な桜を見て、美味しい物食べるって幸せだよね」
 一足早く、桜並木を2人でお散歩。思い切り見上げて溜息を吐くスージーに、バーミリオンが後ろから寄り添っている。
 料理が届けば三々五々、人も集まって広場も俄かに賑やかに。
「ラランにゅと一緒にお花見、嬉しいにゃ〜」
 イヴが歌うような可愛い声できゅっと抱き付いてくる。
「うわ〜、こんなに沢山ならやっぱ手当たり次第に食べないとね♪」
 早速食べる気遊ぶ気満々のスレイツは、ワクワクと顔を輝かせる。
「シェカ〜、こっちが綺麗なのじゃ〜。あ〜、あっちも〜♪」
「うん。桜……綺麗、だね……」
 大はしゃぎでシェカの手を引くイーリスも、早速食べ物を取りに行こうとして。
「あ……」
「あの木の枝が欲しいのじゃ〜!」
 突然駆け出した少女は、満開の枝をせがんでくる。
「枝……欲しい、の?」
 首を傾げたシェカは躊躇いもなくポキリ。
「嬉しいのじゃ〜♪ シェカにも半分なのじゃ」
「う……くれる、の? ありがと……」
 桜の枝を半分こ。イーリスの笑顔とプレゼントが嬉しくて、シェカの犬尻尾も表情より雄弁にパタパタと。
(「あー、桜切る何とやらってなぁ……」)
 その光景に目を細めるティキだが、口を挟むのも野暮。肩を竦めてお手製の器を並べ始めた。

 ゆっくり日が陰る。黄昏の朱の中、淡やかな花弁が柔らかな風にはらりと舞うのもまた一興。
「こちらの芸は傘の形から末広がりの縁起物♪ ユークリドの益々の発展を願って、いつもより多めに回しておりまーす♪」
 照明係なソルティークのホーリーライトに照らされて、タケマルの明るい声が響き渡る。
「桜が咲きまして、おめでと〜ございま〜すっ♪」
 回転する傘の上で勢いよく転がる升。そこへオレンジが投げられて――でも、タケマルは慌てず騒がず。見事な回しっぷりにやんやの拍手喝采。
 こうして、ユークリドのお花見は賑やかな幕開け。
「……ランララランラランランラララ〜♪」
「ヒ〜カ〜リ〜さーん!!」
 幕開けたは良いが、早速ラランのテーマ(何時決まった)をヒカリとキリに大熱唱されて、フルフルと拳を震わせるララン。
「……細かい事は気にしないで一緒に歌って踊るのです」
「草原を駆けるように踊るですにゃ♪」
「ちょっ……待ってぇな。うちは――!?」
 無理矢理引っ張られたラランは抗おうとして――唐突に気絶。
「ララン!?」
 血相を変えたジェイナスの肩を、ネイネージュが抑える。
「ほら……ちゃんと介抱されてますし」
「でも、あれは……!」
 一緒に楽しく踊れば問題なかったが。たとえノーダメのフールダンス♪でも、抵抗すれば霊査士の制約は容赦ない。
「お説教は後で。今は、宴会ですから」
「……判りました」
 渋々腰を下ろすジェイナス。兄貴達の方もイワンとヒリヨが何とか抑えている。
「……大丈夫ですか?」
「はは、柄にもなく貧血かいな」
 程なく気が付いたラランが笑みを見せたので、緊迫した空気も解ける。
「まあ、こういう時はラグケンサンバにラランさんのテーマソングですよね」
 懲りないヒカリは、次にアカディ相手にダンシングのようだが……まあ、今度は誘われた方も楽しそうだし。
「いつもありがとうなの」
 バーミリオンはにこにこと、桜を浮かべた淡いピンクのゼリーを日頃お世話になった人達に。
「思い切り作り過ぎたから」
 ツィッギーは、バスケット3個分ものスコーンを景気よく配っている。
 他にも、飲み物は酒の他に粒入り蜜柑ジュースに果肉入り林檎ジュース、熱いお茶は緑茶に紅茶。食べる物は一口サンド、キッシュ、おにぎり、粕汁、春キャベツのスープ、楓華伝来のおせち料理。あしらいは桜の塩漬け、デザートは旅団朧月の和菓子に、草団子、桜団子、抹茶シューに苺シュー等々、お好み焼きとパイの屋台も並んで盛り沢山。
 ご馳走と一緒に酒も回れば、宵の内から無礼講?
「酔っ払いはその人の本質が見えますから」
 なんて観察モードのソルティークは、気ままにお酒をちびちびと。
「あー、喉渇いた。これは……ジュース?」
「ブドウのジュースなぁ〜ん?」
「お子様には禁止ですよ〜。代わりにこっち」
 グラスを覗くロロとリリルには、料理の皿を渡す。
 道徳云々というより、子供に飲ませるなら自分が飲むという事らしい。
「これなら酒精がきついって訳でもないし、僕らでも大丈夫だよ」
「わ〜いなぁ〜ん♪」
 桜ご飯の白胡麻おにぎりを頬張りながら、スレイツの酒饅頭に大喜びのリリル。無邪気な笑顔に、ソルティークはしみじみと。
「嗚呼、こんな純真な子がどんな風に黒く染まっていくかを思うと、ご飯3杯は――」
 スパァァンッ!!
 何処からともなく飛んできたツッコミに敢無く撃沈。
「折角、家族水入らずのつもりだったのになぁ」
「まあまあ。彼女は見てないようでしっかり見てますよ。ここは大人の余裕ってヤツで」
「ですね、地道にポイントアップですよ? ラランさん、お兄さん達が皆と仲良くしていて嬉しそうですし」
 イワンとヒリヨ、2人がかりで宥めているのを聞いて、ティキは樹上で思わず苦笑。
(「あの兄達の必死さに親しみが湧くなぁ……寧ろ応援したくなってくる」)
 恐らく、妹との距離感を調節出来れば上手くいくのだろうが……余所の家庭事情に、ちょっかいが過ぎるのも無粋な話。今は花見を楽しむ事にして、戯れに枝を揺らしては散りゆく桜を堪能する。
「……そろそろ止めないと、天国の階段上るですね」
「あ、ありがとなのよ……」
 踊り踊ってちょっと息絶え絶えぽいアカディは、さくらんぼジュースで何とかこの世に帰還する。その隣で置物と化しているのが約1名。
「……ぐ……ふぉ……」
「誰か水!」
 ロシアンおにぎり(中身はハズレ)が咽喉に詰り、どうやら肉体と魂が接続不良を起こした模様。
「……おぉ、ラランさんや。ええとのぉ………………はて? 飯はまだかいのぅ?」
「おじいさん、今食べたところやないですか」
 元置物――コネロスのボケに、つい律儀に答えるラランだった。

 日差しを浴びて絢爛の桜が、闇の帳にその趣を変える頃――月が出ていた。
 夜風に吹かれ、騒ぐ人達を眺めて……イヴは楽しそうに歌う。満開の桜の下、少し拙い小琴の音色が静かな彩り。

 この巡り合わせは この時の為のものか
 今までの繋がりも 今日の出会いも
 この空の下……綻び微笑む花に見つめられ 強く結びつくの

「……花見は好きだけど、ね」
 イヴの歌声を遠くに、ツィッギーは小さく溜息を吐く。
 独りで見る花はちょっと寂しい。でも、他の人とでは切ないから。
(「でも、あの人は私の事なんか……」)
 それでも桜は好き。限られた期間を一生懸命に咲き誇るから……。
「……あの人と見たいな」

「わぁ〜っ! 凄い……綺麗ですの〜っ」
「夜桜って、桜色だけど青い雰囲気が凄ぇ綺麗だよな……っと」
 木の根に躓いたリィラを抱留めて、アルミユラは手を繋いで夜桜デート。
(「夜桜は初めて……ドキドキしますの〜っ」)
「……っ!! ミ、ミユ!?」
 リィラのキラキラした笑顔が嬉しくて、思わずキス。
「だ、誰か見てたらどうするんですか〜っ!」
「あー、そう言えば。桜の花弁、持って帰れないかな?」
「あうぅ〜……」
 アルミユラの照れ隠しの笑顔に、何も言えなくなるリィラだった。

 桜色の淡い薫
 優しい日差しに包まれ 風に揺られ
 花びら舞い降り 肩にそっとぬくもり

 伴奏はオルティネートの軽やかな馬頭琴。チュナの歌声がしっとりと夜桜に映える。
「わたくしの舞ごらんあれ!って、姉ちゃんの口癖だったな……」
 なんて懐かしみながら、ロロが披露するのは剣舞。音楽に合わせて二刀のリボンが翻り、力強くも艶やかな舞に誰からともなく溜息が漏れる。

 届いたの もうひとつの春
 側にあるの まごころと共に

 大勢と一緒はとてもとても嬉しい。沢山の人に見て貰えるのはとてもとても楽しい。
 チュナとロロの気持ちが伝わってきて、ファオも思わず笑み零れて手拍子。
(「綺麗な桜、素敵な春の……何だか幸せ、ですね」)
 ほんの少しのお酒の所為もあるかもだけど……チュナの羽根を撫でながら、ウトウト夢うつつ。
「桜は、2度咲くと聞ききました。咲いた時と散る時と……出来るなら散るを知りながら、咲く事を恐れない桜になりたいですね」
「うーん……」
「カガリさん?」
「んー……」
 心地よい重さに、思わずカガリの顔を覗き込む。1日大はしゃぎだった彼女も……いつの間にかタケマルに寄りかかり、寝息を立てている。
「いい夢、見ているのでしょうね」
 微笑を浮かべた寝顔にそっとキス……なんて出来ようもなく。腕を回して、抱き締めるのが精一杯のタケマルだった。

「おはなみ、たのしかったなぁ〜〜ん」
「うん、ココアもあったかいなぁ〜ん」
 並んで夜桜を見上げるサチとトゥルネ。
 夜になると肌寒くなったけれど、ココアがあるし……くっついていたら平気。
「こうすると、もっと温かいなぁ〜ん」
 寄り添って頬すりすり。こうして一緒だともっと何かしたくなるから不思議。
(「トゥルネさんといると〜、むねのおくがあったかなぁ〜〜ん。大切にしたいきもち…なぁ〜〜ん……」)
「サチさん? ……今日は、ありがとなぁ〜ん」
 すぅすぅと寝息を立てる少女の頬に、トゥルネはそっと唇を寄せた。

「ま、騒ぐ人やオールナイトな人は頑張れ!」
 確かに宴会も悪くないけれど、こんなに綺麗な夜桜なら独り占めもしたくなる?
「こんばんは、シャランさん」
 だから、ローズウッドの挨拶にも、シャランは軽く杯を振っただけ。
 酒をちびちび飲みながら……見上げれば月。仄白い桜花は、まるで月影が凝ったよう。
「夜桜に寄り添う月を愛でながらのお酒も、なかなか乙やと思わへん?」
 シャランの言葉に頷くローズウッドだが、のんびりしたい様子を察して少し離れた所に腰を下ろす。
「満開の桜と夜空のコントラスト……綺麗だなぁ」
 花は桜が1番好き。ヒラヒラと舞う花弁を眺めていると、時間がゆっくり流れるようで……いつしか遠くの喧騒を聞きながら、ローズウッドは眠りに落ちていた。
「暖かいでしょう?」
 酔っ払いの介抱もかいがしく、寒そうな者には笑顔でアフロを被せて回るアフロディーテ。ついでに風邪を引かぬよう気遣いもあるらしく、夜桜に見惚れながら寝てしまったスレイツなどにもやはり被せて回っている。

 薄紅色に 宵い やみ染めて
 散りゆく花の 舞いに見惚れて

(「宵桜も、趣深いけど」)
 月夜にざわめき舞う桜もまた格別なもの。興に任せて詩を吟ずるオルティネート。

 薄桃色に 酔い ほお染めて
 溜め息ひとつ きみに見惚れて

 馬頭琴の音色が、遠い。
「キリさん?」
 静かな足音。でも、キリは振り向かなかった。
「綺麗だね。きっと、これからも咲き続けるんだろうね」
「何れは散る花なれば……でしょうかね」
 肩を並べたヒカリから桜餅を受け取って、キリは微笑を浮かべた。
「また何時か……来年も、その次もまた見に来たいな。2人で」
 思わず深呼吸。自然と頬が紅潮する。
「今の関係じゃなくて、その……付き合ってくれないかな?」
「!!」
 息を呑む。忽ち頬が朱に染まる。
「う、うに……私、は……」
 その返事は……満開の桜とキリだけに聞こえた。

 こうして和やかに賑やかに、ユークリドの夜は更けていく。
 桜と戯れる冒険者達を、ただ静かに――月が見ていた。


マスター:柊透胡 紹介ページ
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参加者:28人
作成日:2005/04/13
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冒険結果:成功!
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