緑と赤の薬草



<オープニング>


「今回は、北の山にある薬草を探してきてほしいんです」
 戦闘を依頼することの多いドリアッドの霊査士・シィル(a90170)はどこか穏やかな表情で告げた。
「依頼人は二種類の薬草を欲しがっているんです。その山に伝わる、体力回復の緑の薬草と、毒を消去する赤の薬草。これらを混合して飲ませたいのだそうで。あ、病気なのは依頼人の娘さんで、あまり病状は良くないと」
 急ぐ必要があります、とシィル。
「で、薬草が生えているのがちょっとやっかいなところでして、緑は山に入って左手にそびえる崖の中腹、赤は右手に行った先の広い泉の底。この二箇所の対策を同時にやるのは難しいですから、二組に分かれて探すのがいいかと思います」

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参加者
疾風の・アイル(a01096)
空を望む者・シエルリード(a02850)
座敷武道家・リューラン(a03610)
鉄芯・リジュ(a04411)
紫電の月光蝶・ムラクモ(a09245)
希望への導き手・フィリア(a11714)
天譴・イクセ(a18895)
闇の眠りを抱く白翼・エア(a20288)
奏でるは悠久の旋律・ククル(a22464)
詩歌いは残月の下謳う・ユリアス(a23855)
珈琲愛好家・フェティル(a25157)
陰者・ジン(a25715)


<リプレイ>

 山を行く。ひっそりと静まり返った木々の奥から、寂しそうな鳥の鳴き声が聞こえてきた。空気は冷たい。否応なしに緊張感が高まる。
 しばらく歩みを進めると、分かれ道があった。
 左が崖、右が泉に至る。しっかり準備を整えた12人は二手、6人づつに分かれる。
「それじゃあ、またここで会おう」
 誰からともなく声がかけられ、一行は新たに成功を誓った。

●緑の薬草
 落ち葉や枯れ枝を踏みしめて進む。腹を空かせた狼だのちょっかいを出してくる猿だのが出てこないのは幸運だった。ただでさえ疲れる山登りの最中にそんな奴らがやってきては、うっとうしいことこの上ない。
 冒険者の守り神は彼らを確かに見守ってくれているようで、その後も障害や襲撃はなく目的地に到着した。
「おう、こいつはまた豪勢だ」
 疾駆鉄塊・リジュ(a04411)がどこか嬉しそうな顔をする。
 視線の先に、灰色の崖がひょうっと地面から伸びている。ゴツゴツと鎧じみた岩肌だ。長い間風雨に耐えてきた大自然の強靭さを目の当たりにした。
 6人は注意深く目を凝らした。やがて月華の破裏拳・ムラクモ(a09245)があっと声を上げた。
「あれですか。随分と剣呑なところに……」
 彼の指差す先に、一点、生命の輝きのような緑の草が生えている。
 アレに間違いはない。ほかに緑の草は見当たらないのだ。目標まで高さ10メートルというところだろうか。
「崖の上から攻めたほうがいいデスカネ? 上に登れるルートも探してみましょうヨ」
 ストライダーの邪竜導士・ジン(a25715)が提案する。探してみると、崖の裏側が案外なだらかな傾斜だとわかった。そこから崖の上に登る。
 役割を確認する。リジュ、ムラクモのふたりが崖を下り薬草を採取する係。奏でるは悠久の旋律・ククル(a22464)、木陰に眠るモノ・ユリアス(a23855)、珈琲をこよなく愛する牙狩人・フェティル(a25157)、ジンはサポートに回る。
「それじゃロープを出しまして〜♪」
 ククルが背中の袋から命綱を出す。リジュとムラクモはそれぞれロープを手近な木に結んだ。
 いよいよふたりは崖を下る。
「っしょっと……やれやれ、娘時分にはよくやったモンだがね」
 岩肌にピッケル代わりの武器を打ち、露出した岩を足がかりに、慎重に下るリジュ。なかなか慣れた様子だ。
「このまま何もなければいいんですが」
 ムラクモがリジュの左後ろから付いていく。見守る4人はハラハラものだ。
 5メートルほど下ったその時、けたたましい鳴き声が聞こえてきた。
 見れば、かなり大きめの鳥が、崖のふたりに向かって滑空してくる。
「む。何事だい、うるさいね」
 リジュが毒づいた。しかし鳴き声は止まず、鳥はかなり近くまで接近してギャアギャア喚く。近くにあの鳥の巣でもあるのかもしれない。
「ああちょっと、邪魔しないでくれるかな」
「今取り込み中なのよ♪」
 ユリアスとククルが混声で獣達の歌を歌う。何も危害を加えるつもりはない旨を伝えた。途端に鳴き声が消える。鳥はしばらく旋回した後、遠くの空へ戻っていった。
 だがそれもつかの間、今度は別の、さらに大きい鳥がやってくるではないか。
 鋭いクチバシが光る。完全に獲物だと狙っている!
「落ちろ!」
「落ちナサイ!」
 フェティルがホーミングアローを、ジンがニードルスピアを放った。
「ギャー!」
 両翼を吹っ飛ばされ、大鳥はガクガクと墜落していった。
 邪魔者はもう来なかった。崖のふたりは緑の薬草まで辿り着いた。
「では、ふたりで半分づつ採りましょう。その方が負担も少ない」
 ムラクモが言った。ふたりは片手でロープを掴みながら、もう片方の手で薬草を採取した。
「無事に採った! これから登るぞー!」
 リジュが声を出して、上の4人はロープを引っ張る。
 下りのように、襲撃者はなかった。そうしてふたりが登り終えると、拍手が鳴った。
「お疲れ様デシタ」
 ジンが労いの言葉をかける。
「よっし、さっさと戻ろっか♪」
 ククルが緑の薬草を袋に入れた。
「あっちの方も無事に見つけてくれただろうか」
 フェティルはこちらからは見えない泉の方角に目をやった。

●赤の薬草
「見てみなよ、すっごい綺麗だ!」
 先頭を行っていた空を望む者・シエルリード(a02850)がそれを見つけ、大きな声を出した。彼らも血に飢えた猛獣だの毒持つ大蛇だの、剣呑な輩に出くわすこともなく、目的の泉に到着したのである。
「へえ……」
 踊るちゃぶ台の女帝・フィリア(a11714)が息をつく。
 泉は、畏敬の念が浮かんでくるほどに澄んでいた。限りなく透き通った水色。穢れを知らない純粋とは、この水のためにある言葉ではないか。
 透明度の高さから、内部を容易に知ることができる。犯しがたい鏡のように綺麗な水の底に、ゆらゆらと揺れる赤い草がはっきりと見える。辿り着くまでの距離は、10メートルあるかないかというところ。今は別のものは見えない。
「中に何がいるかは潜ってからのお楽しみっつーことか?」
 疾風怒濤の紅チャイナ・リューラン(a03610)がポキポキと拳を鳴らした。
「しかし、冷たそうだねぇ」
「ええ」
 疾風の・アイル(a01096)といそいそと水着に着替え、準備運動している。闇の眠りを抱く白翼・エア(a20288)も手早く服を脱ぎ、事前に着用していた白のワンピースタイプの水着になった。リューランなどはさらし一丁だ。天譴・イクセ(a18895)が心配そうに女性陣を見る。
「いいのですか? 女性の方は上で待っていた方が気が楽かと思いますが」
 全員が平気、と返答した。
 さて、潜るのはアイル、リューラン、フィリア、エア、イクセの担当。シエルリードはひとり陸で待機である。
 木に結んだロープを腰に付け、準備は整った。まずリューランが一番に飛び込む。続いてアイル、フィリア、エア、イクセと続く。フィリアがホーリーライトを照射し、視界を確保する。
 リューランとアイルは底を注視し、あとの3人は周囲に気を配る。何もなければ、このまま潜って薬草を採り、また浮上するのみ。至極簡単だ。
 が、そうは問屋が卸さない。中間あたりまで潜った時、異変は起きた。
 どこからともなく巨大な魚が現れ、横から前を行くふたりに近づいている。この泉の主かもしれない。
 ふたりは気付かないままだ。魚が大口を開けて迫る!
「ハッ!」
 イクセがチェインシュートを飛ばした。槍が鎖の勢いを得て超速で伸び、魚の背中に突き刺さる。赤いものが滲んで溶けてゆく。途端に、魚が暴れだした。
「ああ、ダメ、おとなしくしていてください」
 エアが眠りの歌を歌うと、今度こそ魚はおとなしく沈んでいった。
 水底まで着いた。薬草が物静かに佇んでいる。その美しい血のような赤には刺々しさはなく、生命の神秘さを感じることができた。
 リューランとアイルがそれを手に掴む。薬草は意外にもあっさりと抜くことができた。
 引き返すぞ、とリューランが目で言う。5人はロープを伝って浮上してゆく。
 一斉に水面に顔を出した。仲間の無事に胸を撫で下ろしつつ、シエルリードが順々にロープを手繰っていく。
「お疲れ様。さあ暖まって」
 全員上陸するとすぐに、起こされていた焚き木を囲った。
「リューランさん!」
「んん?」
 フィリアの視線の先。――リューランのさらしがずれ、大事な部分が露になっている。
 何人が見たかは知らないが、とりあえず彼女はこう言った。
「……今のは忘れとけ、な」
 火で体を乾かしつつ、エアが用意した温かい紅茶を飲んで暖を取った。泉の水は何とも美味しく、清々しい心持ちになった。
 休憩もそこそこに、では帰りましょうかとイクセが言った。
「崖班も、きっと今頃は緑の薬草を見つけているはずです」
 その通り、崖班と泉班はすぐに合流して互いの無事を確かめ合うことができた。

●依頼完了
 一行は駆けに駆けて依頼人の家までやってきた。
「何と、こんなに早く……」
 ふたつの薬草を確かに渡すと、依頼人は泣きそうな顔になった。
「ありがとうございます。さっそく娘に飲ませます。何とお礼を言ってよいやら」
「薬の調合、お手伝いしますよ」
 エアが提案すると、依頼人は深々と頭を下げた。
「もちろん、調合した薬草はお分けします。……あと、この上差し出がましいお願いですが、娘を元気付けてやってくださいませんか。お強い皆さんと話をすれば、きっと回復も早いでしょう」
 全員、快く了承した。


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作成日:2005/04/30
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