【おやびん】休憩中



<オープニング>


 おい、こびんっ。
 へい、なんすか、おやびん!
 いっちょ、使いっぱしられやがれっ。
 がってんだ!

 旦那旦那ぁ〜。
 いやもう毎度お世話になってるでやんす。
 御陰様で偉い人らも大喜び、おやびんの株もまた上がるってなもんですよ。あっしぁ我が事のように嬉しいでやんすよ。
 それぁそうと、先日の商売敵でやんすがね。
 おやびんの香が凄いのは、素材のせいだって因縁つけてきやがったんすよ。やな奴でやんすよねー。おやびんは腕がいいから素材も引き立つってのに。
 あっしぁもー……
 ぺっ。
 てな気分でやんすよ。
 あっしの胸の内ぁいいから内容って?
 そらごもっとも。
 まぁともかく、野郎がんなこと言うもんで、それじゃぁそれなら最高の材料をどっちが上手く使えるか勝負しようじゃねぇか、ってな話になったんでやんすよ。
 逃げも隠れもしねぇ、受けて立つぜと、おやびんはそらぁもう男前に……っとと、いけねぇ。
 おっ、流石霊査師の旦那。判ってらっしゃる。
 そうなんでやんす。
 最高の材料こと、七色の木の実を、もう一つ取ってきて貰えねぇかってお願いに上がった訳でやんすよ。
 こないだの話だと、一個ずつしか採れねぇようですが、おやびんがそろそろ次の実も熟れてきたんじゃねぇかってんで、あっしが遣いっ走りにきたってな次第でやんす。

 こないだ使った実の皮持ってきやしたが、もっぺん視ときやす?
 でっかい鳥ぁ前に退治しやしたし、道もわかってるし、冒険者様々にぁ楽勝っすよね!
 ……へ?
 またなんかでっかいのが見えるっすか?
 今度はなんです?
 むかでっすか!
 横幅が両手広げたくらいってそんな!
 ひー! あっしぁ足の多い虫は苦手なんすよぉ!
 お前は行かねぇだろって?
 ごもっとも。
 失礼しやした。
 おっ、でかい以外はどーってことなさそうっすか。そいつぁよかった。
 そんな虫の一匹や二匹や十匹くらい、冒険者様々方なら雑作もねぇっすよね! あ、一匹しかいねっすか。すいやせん。

 おっとと。
 聴こえてやんしたか、姐さん、兄さん。
 どっすか、引き受けちゃ貰えませんかね?

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参加者
荷葉・リン(a00070)
緋の剣士・アルフリード(a00819)
空を望む者・シエルリード(a02850)
風舞彩月・シリック(a09118)
眠らぬ車輪・ラードルフ(a10362)
食医の紋章術士・アルト(a11023)
春謡・ティトレット(a11702)
朱焔凛朗・オウリ(a15360)
緩やかな爽風・パルミス(a16452)
旅団裏の昏倒者・アウラ(a24803)


<リプレイ>

●一日目
 登り始めは曇っていた空も、徐々に青みを増してゆく。
 まだ見通しのいい山道。緋の剣士・アルフリード(a00819)が覗く遠眼鏡の中の景色も穏やか。
 歩調を合わせる為、心持ちゆっくりを足を進めながら、風舞彩月・シリック(a09118)は転々と続く花を見やる。
「マリーゴールドかと思っていましたが」
 時節柄、彼の言う花も見られるが、それと比べると、道標となる橙の花は、大きい割には何なく貧相ないでたち。
「前の道もこんなだったんですか?」
 皆の足取りから、まだ危険地帯ではないことを何となく察し、小春日・ティトレット(a11702)も今はまだ少し花見気分で辺りを見回す。
「中腹まではこんな感じだよ」
 坂は段々きつくなるけどねと、空を望む者・シエルリード(a02850)が少し息を切らせつつ応じた。先頭を行く眠らぬ車輪・ラードルフ(a10362)も頷いて、警戒がてら振り返る。
「二日目からが大変なんですよ」
「花見は今の内、ってことですね」
 時折、目にした山菜を手折りつつ、朱焔の武を目指すもの・オウリ(a15360)もまた、穏やかな景色を見回す。
 その頃、食医の紋章術士・アルト(a11023)の覗く遠眼鏡には、霧のようなものが見えていた。
「でも今日中には無理かな」
 見通しのいい今だから見えるにしても、結構な距離。そして、進む周囲には、徐々に木々が茂り始める。
 道標の橙に負けぬ程、山が朱色に色付き始めたのを機に、皆は野営地の準備を始める。
「ご飯作りますね〜」
 どうやって納めているのか、鞄から鍋釜一式を取り出して、緩やかな爽風・パルミス(a16452)が道中に採取した食材を手際よく調理していく。オウリは自らの集めたものを、沈香・リン(a00070)に託し、自らは薪拾い。
「異常はなし、です」
 見張りをしていた彷徨者・アウラ(a24803)が戻った所で、皆は夜の花を眺めつつ、のんびりと夕食。
 ゆっくり休めるのは今日だけになるかも知れない。
 ちょっぴり不安を抱きながら、皆は安全な寝袋に護られ、一度目の眠りに就いた。

●二日目
 木々の合い間に警戒しながら、一行は朝露の残る道を更に進む。
「断崖が見えます」
 見上げる角度でアウラの遠眼鏡に映る景色。
「前に通った道かなあ。こっちにはない、よね?」
 シエルリードが他に辺りを警戒している者達を振り返る。リンは頷くと、クリスタルインセクトの使役の為、一度立ち止まる。
「崖は無いですが、凄い霧が」
「そのせいなのかな」
 足場に気を配りながら進んでいたせいか、アルフリードが真っ先に足元のぬかるみに気付く。そういえば、アルトもこの辺りに霧があったと話していた。
 湿気を含んだ空気の気配。
 心なしか、視界も悪くなってきているような……気がする、と思っているうちに、辺りは真っ白に。
「この道は、体でなく、心を試しているかのようですね」
 カンテラでは間に合わないと悟り、ホーリーライトで頭上を照らすシリック。ティトレットは準備してきたゴーグルと防水マントに身を包む。
 僅かに見える橙の花の蔓を辿る中。
 不意に、霧の中から響くアルトの声。
「……何か居るよ!」
 まさかむかでが?
 一行に緊張が走る。
 蠢く影に気付いたオウリが、鋭く踏み込んで一撃。
 甲高い悲鳴に続き、重い荷物が落ちたような音が霧の中に響く。
「野生動物……の、群れか?」
 警戒の為か、少し厳しい口調になっているラードルフの視線の先にも、別の影。
 そこへパルミスが容赦なく飛燕連撃。
 あちこちから上がる甲高い悲鳴。不利を悟ったのか、群れの気配は、じきに霧の中に溶けた。
 一息つきつつも、見えない視界に緊張を保ったまま、更に歩みを進め……
「足元……」
「うわー!?」
 注意を促そうとしたアルフリードを遮って木霊する声。
「し、沈むよー!」
「落ち着いてロープをこっちに!」
「ここも沈みますね〜」
「皆さん、少し戻って!」
 見えない故に思わず焦る一行。しかし、沈没の速度は遅く、ロープを投げたり結んだり引っ張ったりする余裕はあった為、沈んだ者も事なきを得た。
 その後は、リンがクリスタルインセクトで足元確認、シリックが光で先導、これを繰り返し霧を抜ける。
「少々掛かりましたね」
 斜めに降り注ぐ木漏れ日。木の根が生い茂る道が続く。傾斜が厳しいことを除けば、それ程大変ではない。輝く花々を見遣りながら、アウラは歩みを進める。
 と、唐突に。
 壁のような岩が目の前に。
 中央に真っ直ぐな亀裂。それに沿って、岩の上まで橙の花が。
「登らねばならぬ訳ですが」
 茜色に染まった岩を見上げるラードルフ。横ではオウリが、落石が起こらないか注意深く観察。
「大丈夫そうですね」
「不穏な気配もなし」
 アルトが草むらに向けていた遠眼鏡を降ろす。
「じゃぁ〜、ご飯にしましょうか〜」
 少しだけ道を戻り、平らな場所を選んで、皆は二日目の野営の準備に取り掛かった。

●三日目
 幾ばかり早まった朝に目覚め、早速岩登り。
 亀裂は広いものでなく、両手足をつっかえにすれば、案外容易く登れるのだが。
「う、美しくなぁい」
 先に登るラードルフの姿に、アルフリードが思わず漏らす。なお、これはかに登りする自分を想像しての発言である。その辺りは知ってか知らずか、シリックも確かに、と頷く。
「ロープを使いましょう」
「僕もその方が助かるなあ」
 肉体労働はだめだし。小さく付け加えて、亀裂を見上げるシエルリード。ティトレットは仕方ないなぁ、とあるだけのロープを全員から回収。それが結構な束になったので、アウラが半分を持ち、二人で先に亀裂を登って行く。その間もずっと、オウリが亀裂の状態を、アルトが遠眼鏡で茂みを、じっと観察していた。
 暫くの後、上から投げ渡されるロープ。
 胴に結び付けたり、自分の代わりに荷物を先に上げて貰ったり。
 高さ故、全員が登るまでに多少時間は掛かったが、疲れはそれ程でもなく。
 不意に振り返ってみれば、眼下に広がる虹の山。
「そろそろ〜、山頂でしょうか〜」
「ええ。すぐ先に、滝が見えます」
 新たに喚んだクリスタルインセクトの偵察状況を、リンが手早く伝える。
「むかでは木の実の所かな」
「洞窟の中では会いたくないねえ」
 かつての道より険しい想像をしていたせいか、思ったよりも楽な道程に、一行の足取りは軽やか。
 草木分けて進んだ先。水飛沫上げる滝の裏に、赤と橙と黄の花。
「前はあちらから来た訳ですね」
 別の茂みに続く黄の花を一瞥し、皆は表情を引き締める。滝の中は濡れているとの指摘に、足元の装備も再確認。
 カンテラの明かりを頼りに、細長く続く道を、油断ない視線で睨め回しながら慎重に進む。
「……きゃー! むかでー!」
「ど、どこ?」
「シリックさん、帽子帽子」
「……あ、普通のですか」
 道中、天井からの不意打ちでちょっとした騒ぎになったりしながら、一行は七色の花咲き乱れる山頂へと、遂に足を踏み入れた。
 花の続く先、周囲の木々を押しのけるように生える一本の立派な木。アルトが遠眼鏡を覗くと、木のてっぺんに新たに熟した木の実。
「むかでは……居たっ」
 別方向、這い回る影を認め、アルフリードが遠眼鏡を荷物に突っ込む。その様子に、皆が一斉に武器を構えた。
 洞窟側に回り込むように。壁面を床のように余裕で進み、巨大な顎が姿を現した。
 刹那、間髪入れずにリンが岩壁に張り付くむかでに気高き銀狼。飛びついた銀狼に驚いたか、むかでが壁から剥がれ落ちる。
 そこへ飛来する無数の木の葉。
 銀狼と、緑の束縛を振りほどこうともがくむかで。
 その頭部に、無造作に踏み込んだオウリの達人の一撃が。
 何事か。
 余りに訳が判らなかったのか、痛みももがくことも忘れた様子で、むかでの動きが鈍る。
 そんなむかでを、新たに飛来した燃える木の葉が取り巻く。容赦なく燃え上がる緑の業火。
「この一巡でいけそうです!」
 魔炎すらも切り裂く勢いで駆け込んできたティトレットが、軌跡を描く蹴りを腹に叩き込む。彼女が飛び退くと同時に、アウラがデストロイブレードの力を得た斧を振り落とす。
 流石に効いたか。小刻みに痙攣を始めた関節に、パルミスが飛燕連撃。更に動きを鈍らせるむかで。
「満身創痍のようですが」
「せめて美しく散らせてあげよう」
 眼前に閃く、三つの銀光。
 流星のような速度で描かれた輝く軌跡に生まれる、無数の薔薇の花びら。
 むかでの頭部に、連撃によって何度も閃く軌跡。
 辺りを覆い尽くす程に飛び交う薔薇、薔薇、薔薇。
 それは、薔薇の剣戟三重奏。
 三つの剣の洗礼を受けたむかでの頭部が砕け散る。
 むかでの欠片は、花びらに混じって降り注ぎ、三人の翔剣士を彩った。
「まさに薔薇薔薇……」
 拍手しながら、誰かが言ったとか言わないとか。

●四日目?
「忍びの方のように楽々とはいきませんな」
 実を抱えて木から降り、ラードルフは一息。シエルリードがこびんから借りてきた実の皮を取り出して、念の為に見比べる。
「うん、熟れ具合もいいみたいだね」
「これが香に」
 アルトと一緒に、実をまじまじと見つめるティトレット。
「少し休憩したら、青の道を通って帰りましょう」
 荷物袋に仕舞われていく実を確認し、オウリが皆を見回した。

 青の道は、衝撃的だった。
「……えっと」
「何でしょう、これは」
「ただの道ですね〜」
 傾斜がある以外、本当に何もなかった。
 黄色を知っている者は、涙が出そうなくらい、何もなかった。
 余りにも何もないので、二日で帰れそうだった。
「これはでも、いい機会ですよ」
 ただ帰るのは余りにも難なので、皆は食料を調達し、お花見をしながらゆっくりと、山を降りたのであった。


マスター:BOSS 紹介ページ
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参加者:10人
作成日:2005/05/09
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