【グラスランナー】眼鏡職人の飽くなき挑戦!!



<オープニング>


「ヒトノソリンの皆さんに似合う眼鏡を、一緒に考えて下さい!!」
「…………」

 久々に冒険者の酒場に現れたデル・ヴァーン(ルベリア村産眼鏡職人。1つ歳食って29歳)の真剣も極まれりの第一声に、クラリと大きな眩暈を覚える明朗鑑定の霊査士・ララン(a90125)17歳、春爛漫の昼下がりだった。

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参加者
凪・タケル(a06416)
メガネマイスター・コロクル(a08067)
赤烏・ソルティーク(a10158)
ヒトノソくノ一・シス(a14630)
リトルスター・ジャジャ(a18306)
黄金の貴族令嬢・ジェニファー(a18462)
此岸の・シス(a20449)
神獣姫・ミルファ(a25665)
NPC:陽だまりを翔る南風・リリル(a90147)



<リプレイ>

 ――この日。漢達は、萌え……もとい、燃えていた。

「なるほど……同盟文化の流出で、ヒトノソリンさん達にも眼が悪くなる方が現れる。そうなれば、ヒトノソリン用眼鏡は必須」
「…………何でやねん」
「それを見越してとは……見事な千年の計です、デルさん!」
 リス尻尾霊査士の突っ込みはサラリとスルーして、目を爛々と輝かせるミイラ男……もとい、緋燕・ソルティーク(a10158)(先の戦役にて絶賛重傷中につき火気厳禁。だったら咥え煙草も止めとけ)。
「はい! どのような方にも素晴らしい眼鏡をお届けする。これが僕の使命ですから!!」
「流石はデルさん! ナァイスメガネや!」
(「ここは、小1時間ぐらい昨今のメガネ事情について語り合いたいとこやけど、そういう訳にもいかんのが残念やね!」)
 ビシィッとサムズアップの眼鏡聖省派遣執行官・コロクル(a08067)は、既に黄昏モードの霊査士にも「ラランさぁ〜んっ! 相変わらずナァイスメガネ!」と挨拶を忘れない。
「よっしゃ! これで完璧やねー」
「……何がですの?」
 若干名を中心にゴンゴンと燃え盛る酒場の一角の様相に、黄金の貴族令嬢・ジェニファー(a18462)は早くも腰が引けている。
(「判らないわ……面白そうだから勢いで参加したけど」)
 そもそも、ヒトノソリンに似合う眼鏡とは……大丈夫、きっと答えは見付かる筈だ。その為のモデルも事欠かないのだし。
「がんばるのはとっても良いことなぁ〜ん。デルさんはとってもとってもがんばってるから、『眼鏡』もきっとイイモノなぁ〜ん。僕もいっぱいがんばるなぁ〜ん♪」
「リリルもガンバるなぁ〜ん♪」
 やる気てんこ盛りのリトルスター・ジャジャ(a18306)。陽だまりを翔る南風・リリル(a90147)はワクワクと楽しそうだ。
「耳の色が白、黒、緑の三色揃っているから、モデルとしてもバランスがとれているなぁ〜ん。ピンクは私が染めて対応するなぁ〜ん」
 尤も、最年長の夜陰の風花・シス(a14630)でさえ、大人びて見えても12歳。
 何処でどうやって引っ掛けて来たのやら……こんなイタイケナお子様達に何をさせる気か、と周囲の目が生温かいのは――きっと気の所為だ。そういう事にしておこう。(何気に視線を逸らしつつ)

 ――こうして、漢達の挑戦は始まる。

「そう言えば、デル殿とは本当にお久し振りですね。コロクル殿とは、何か……というか、眼鏡の縁でしょうけど」
 デルとは約1年ぶりの再会となる我路行・タケル(a06416)は、物珍しげに周囲を見回した。
 殊眼鏡となるとハイテンションな本人と打って変わり、デルの工房自体は如何にも『職人気質』な落ち着いた空間だった。使い込んだ道具の手入れも行き届いている。
「ふーん。デザインとかは、ここで描けばいいのかな?」
 立派な製図台を興味深そうに眺める此岸の・シス(a20449)。
「ええ、道具は自由に使って下さい。宜しくお願いしますっ!」
 威勢のいいデルの返答に、此岸の・シスは少しばかり皮肉げな表情になる。
(「何でまた、ヒトノソリン用眼鏡なんだろうね? デルさんと言えばエルマさん絡みと聞いたんだけど」)
「取り敢えず、色々考えるねー」
 内心の邪推はおくびにも出さずにっこり笑顔。早速お仕事に取り掛かる。
「これが、『眼鏡』? うん、似たのをロリエンでも見たなぁ〜ん。顔に付ける飾りで、お耳と鼻にくっつけるなぁ〜ん」
「ラランおねーさんも、おんなじの着けてるなぁ〜ん」
 モデルさんの出番は暫く後になる。待つ間、興味津々で見本の眼鏡を眺めるジャジャとリリル。夜陰の風花・シスは、何やら持参した大荷物を整理している。
「設計図とか色々あったような気がするけど……よく判んないし、パスパス。フィーリングに任せれば、その内イイのも出来るってもんさぁ〜♪ ちゃんと出来るといいなぁ」
 今回が初依頼という深緑に吼える紅の神獣・ミルファ(a25665)は、気の向くままに工作に取り掛かる。やはりワイルドファイア出身のミルファ自身、眼鏡に馴染みが薄いだろうがそれなりに下調べはしてきたようだ。
「えー? トンボ眼鏡のどじっ娘メイドも捨て難いですよ」
「そんなっ! このフォルムは、エルマさんのような『出来る』メイドさんが1番似合うんですっ!」
 でーぃぷ通り越して深淵まで逝きそうな眼鏡談義に花を咲かせるソルティークとデル。作業の手は休めないのが流石といった所だろうか。
「あーっ、僕も話に入れてぇな!」
 そこにコロクルが加われば……まあ、還って来られる程度で存分に。
 そんな中――突如、工房に響き渡る高笑い!
「わたくし、悟りましたわ!」
 ヒトノソリンの眼鏡とは何ぞや――悩みに悩み抜いた末の結論を出して、芝居がかった仕草でゴージャスブロンドをかき上げる。
「ヒトノソリンではなく、ノソリンに似合う眼鏡にすれば良くってよ! オ〜〜〜ホホホホホホ……ホ…………何よそれ……」
 勝ち誇った表情から一転、他からの突っ込みの暇も与えずガックリ膝を突くジェニファー。中々に小技が効いているが、本当に引いてしまっては貴族令嬢の名が廃る。
「……もういいわ。わたくし好みに変えるつもりでデザインしてしまってよ」
 立ち直りも早ければ、早速取り出だしたるは某グリモアガード特産(?)の七色羽根。
(「眼鏡に対する想いを込めて……でも、きっと一筋縄では行かないんでしょうねぇ」)
 思い思いに楽しそうな仲間達を眺めて、タケルは微笑ましげに眼鏡越しの目を細めた。

「モデルついでに、眼鏡に合う服もコーディネイトなぁ〜ん」
「シスちゃん、ぐっじょぶ!」
 夜陰の風花・シスの主張に、誰がサムズアップしたかはさて置いて……まず始めは、オーソドックス(?)な所から。ザマスメガネ、星型メガネ、ミラーシェード、モノクル、ヅカ風アイマスク(って何)、掛けると3倍速で動ける某アイマスク(更に意味不明)etc.etc.……ミルファの用意した眼鏡をとっかえひっかえ。
「ついでにジャジャも着せ替えなぁ〜ん」
 にんまり笑顔の夜陰の風花・シスは、わざわざ用意してきたらしい。衣装もこれまた、ゴシックにフリルに着物(楓華土産だが、着付けは激しく適当)、水着(……マテ)、パンダの着ぐるみ(マテマテ)等等、お子様モデルもとっかえひっかえ。
「獣耳の眼鏡っ子……嗚呼、幸せですねぇ」
 ……誰ぞのしみじみとした呟きもこれまたさて置いて。
「……きゅう」
「わわっ、ジャジャちゃん大丈夫なぁ〜ん?」
 ビン底メガネの度の強さに、病弱な風の文学美少女が(オトコノコです、念の為)くらりと倒れるハプニングもあったが……ここまで試着すれば、自ずと問題点も見えてくる。
「やはり難点は、『つる』の部分ですか」
「せやなぁ。『どうやって掛けるか』が最大の問題やで!」
 ソルティークとコロクルの言う通り。ヒトノソリンの耳では、他の人間の姿をした種族のようにつるの先が引っ掛けられないのだ。
「……なぁ〜ん?」
 結局ズルズルとずり落ちて、辛うじて鼻で引っ掛かる眼鏡に困り顔のジャジャ。
「耳が大きいから、ふつーのだとずり落ちるんだよね……あれ? 前に見たヒトノソリンに、普通の眼鏡っ子も居たけど……」
「あははは〜。浮くんですよ、グリモアパワーでふわふわと〜」
 妄想をこじらせるにはまだ日は高いのだが……ソルティークの爽快な笑顔に、此岸の・シスも思わずクスクス。
「あー、それは多分、こんな感じではないでしょうか」
 デルが取り出したのは、一見普通の眼鏡。よく見ればつるの先が曲がっておらず、フレームの素材も硬い物を使っているようだ。
「直接、つるで顔を挟んで固定するんですよ」
 如何にもお堅い眼鏡なら……やっぱり似合うのは制服だろうか。スチールフレームのその眼鏡は、胸リボンが可愛いスモークピンクの制服(本人の自前らしい)を着た夜陰の風花・シスにお似合いではあったけれど。
「……痛いなぁ〜ん」
 固定出来る締め付け具合は、顔に痕が残る程。これでは宜しくない。
「私も、来る前に調べてみたのですが……多くの方を当たってみた所、ヒトノソリンの耳はどうやら頭の両側から頭頂に近い場所にかけての範囲に付いているようで、結構個人差があるのですよ」
 うーんと考え込むタケル。
「そういう時はこれや! 名付けて『バンドメガネ』。これなら、幾らぷらぷらしたお耳でも無問題!」
 早速、コロクルがパンパカパーンと掲げたのは、つるの部分をベルトに替えた代物。
「……ってコレじゃ、ゴーグルやんけー!! 認めへん! こんなん僕は認めへんぞ!!」
「ですね……モノクルや鼻眼鏡と同じく、負けを認めるようなものです」
 掴みはOK(何)。1人突っ込みで滂沱の涙を流すコロクルに、うんうんと頷くソルティーク。そこへ此岸の・シスがすかさず爆弾を投下する。
「あ、ちなみに僕は眼鏡派じゃなくてゴーグル派だから」
「何やねん、それは!」
 ズビシィッとコロクルの裏手突っ込み。傍から見る分には漫才そのもの。
「あ、でも。レンズの端に布を付けて、その布を耳に結べば落ちてこないんじゃない?」
 最初から布を輪っかにしてもイイかも――と、ミルファが提案すれば。
「紐の方が良くない? 耳に掛ける部分は紐を2つ、結んで固定出来るようにするんだよ」
 ワイルドファイヤ風に獣骨製のゴーグルのようなフレームに、革紐を付ける此岸の・シス。
「金属とか木製のフレームでも面白いよね。紐の部分に、銀のチャームやビーズとか付けたら可愛くない? ねぇ、デルちゃん、これなら出来そう?」
(「楽しいね、好き勝手考えて良いっていうのは。ちょっと若返った感じ♪」)
 嬉々として、デルにアイディアを持ち掛けている。
「リリルちゃん、おいでおいで〜」
「なぁ〜ん?」
 手招きで呼び寄せてリリルに着けてみると、中々具合は良さそうだ。
「紐だと、耳を通すには長さが必要ですよね。どうしても後ろの紐が余ってしまいます……ループタイのように調節しましょうか? 手持ち式は実生活に不便ですし」
 先をクリップ状にして髪の毛で留めるのは、髪も痛みますし――ソルティークの意見に、夜陰の風花・シスは苦笑を浮かべたようだ。
(「まあ、実用性はゼロだしなぁ〜ん」)
 彼女は彼女で、つるの代わりがチェーンとバレッタが繋がっており鼻と髪で固定するタイプを考えていたのだけど……自分の意見を言う代わりに、コロクルに話を振ってみる。
「……せやな。掛けるとこを、パチンと耳を挟むタイプにしたらどないやろ? デザインは……故郷のワイルドファイアを思い出させるマンモーの骨フレームに、つるの部分はマリキン……何やったけ?の彫刻とか」
「……これ、何か怖いなぁ〜ん」
「う……ま、まぁ、ええやん! せや、タケルさんの眼鏡の調子はどないな――げふぅっ!」
 取り敢えず、コロクルのデザインは女の子に不評だった模様。
 慌てて話を逸らそうとした所で、夜陰の風花・シスのぱんだくろー(ぱんだ着ぐるみ標準搭載)がぶち込まれ撃沈。
 まあ、クリップ式は耳が痛くない挟み加減では弱く、運動すればすぐに緩んでしまう。その点も問題になったようだ。
「クリップ、ではなくて……デル殿、こんな感じはどうでしょうね。耳の形からしてつるは長め。先は、巻き込んだ形状ですね」
 3人の顔のサイズを測ったタケルは、デルにフレームの試作を頼んだ。フレーム自体はやや幅があり、耳に向かって斜緩やかに弧を描いている。その先はU字型に強く巻き込んだ形状だ。
「調整は、やはり個人個人の彫りの深さとかによるかと。フレームの一部に琥珀を使ってみるとか、石でレンズを作るのも良いかもしれませんね」
「耳が小さい人だと、これでもいいかもなぁ〜ん」
 試着した夜陰の風花・シスには、そこそこ良かったようだ。だが、リリルのように幅広のノソリン耳には、ちょっと不恰好になってしまうかもしれない。
 万人受けするヒトノソリンの眼鏡は、中々難しい。
「あら、もう終わりですの?」
 揃って考え込む中で、今まで黙っていたジェニファーが満を持したように立ち上がる。
「ジェニファーさんのは、どないなモンなん?」
「宜しくってよ。何と言っても、わたくしはゴージャスが好き! だから、ノソリンがゴージャスになる眼鏡を考えましてよ!」
 そう、自信満々でテーブルに置いたのは、黄金に輝く鳥の顔を模した鼻先の尖った眼鏡。縁から色とりどりの長い羽毛が伸びており額には宝石が瞬いた、これまた……。
「これ、眼鏡じゃなくて、ゴーグルでもなくて……仮面、だよね」
「え……」
 ミルファの突っ込みに、思わず焦るジェニファー。
「い、いいのよ! ノソリン用なんだから、これで!」
「えっと……ノソリンじゃなくて、ヒトノソリンの為の眼鏡なんだけど……」
「あ……い、いいのよ! ノソリンもヒトノソリンも一緒じゃないっ!」
 かなり苦しいジェニファーの言い訳に、パッと顔を輝かせたお子様が約1名。
「ノソリンの時も、着けてられる眼鏡なぁ〜ん?」
 確かに、ヒトノソリンならばノソリン変身する時もある訳で。踊ると外れちゃったり、踏んでも壊れたり、落としてしまったら困るのだ。
「これ、欲しいなぁ〜ん」
 じーっとおねだりの眼差し。その無邪気な瞳に言葉が詰まったジェニファーだが、やがて髪をかき上げそっぽを向く。
「よ、宜しくってよ。特別に差し上げますわ」
「ありがとなぁ〜ん!! キラキラなぁ〜ん♪」
 早速着けようとしたジャジャだけど。どうもサイズが大きかったようで、結局紐を通して尻尾飾りに。それでも、実はリリルの尻尾のリボンサンダルが羨ましかったお子様は、御満悦のようだ。
「うーん、結局オーダーメイドになりそうだね。これぞという案は出なかったし」
 そんなやり取りを微笑ましそうに見詰めていたデルは、此岸の・シスの苦笑に頭を振った。
「とんでもない。僕1人では考え付かないアイディアばかりで、とても参考になりました。これからですよ。必ず、ヒトノソリンの皆さんに満足していただける眼鏡を作ってみせますからっ!」
 眼鏡職人の飽くなき挑戦は、まだまだ続く。

 ――歴史はかく語る。
 繰り返される試行錯誤。試作の数だけ繰り返される挫折――だが、漢達は挫けなかった。
 様々な辛苦を乗り越え、遂にヒトノソリンの為の眼鏡の創造に、漢達は成功したのであった!

 …………きっと、多分、十中八九……。

 ぷろじぇくと×(罰) 〜完〜(突っ込み無用)


マスター:柊透胡 紹介ページ
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