お料理教室



<オープニング>


「秋といえば食欲の秋。ですよね」
 出来立てのパイを嬉しそうに眺めて、霊査士は言った。
「今回はちょっと息抜きかもしれないです。実は、とある町のとある方々が、りんごを使ったお菓子作りをするそうですが……」
 とぎると、パイを一口。
 『が』出来るということは、何か問題があるのだろう。いや、あるはずだ、間違ってもパイを食べるための区切りではないと信じたい。
 思いながら、パイをほおばる霊査士に、催促した。
「ん…むゅ……はい、えー実は、その人達、極度の料理オンチなんですよ。お菓子はもとより、普通の料理もめったに作らないそうで……」
 もう一口パイを食べてから、にっこりと微笑むと。
「皆さんでお手伝いに行ってくださいませんか?」
 告げるのだった。
「ふぅん、楽しそうね……」
 呟いたのは、冒険者の女。サザだった。
 どうやら、行く気満々の様子。だが、彼女に料理が出来るのか。激しく疑問だ。
 それはともかく。霊査士はそんなサザをニコニコと見つめた後、続けた。
「お料理好きな方はもちろん大歓迎ですし、苦手な方も、この機会に一緒に教わるのもいいですよ」
 説明完了とばかりにパイを口に運びかけたが、「あっ」と何かを思い出したように、再び手を止め顔をあげた。
「忘れていました。今回の依頼の場所は、サロナという女性の自宅です。集まるのは彼女を含めた四人の女性ですが…彼女達が普段なら出来ないお菓子作りを思い立った理由は…解りますよね?」
 つまりは、意中の男のため、だ。
「恋の行方までは関与できませんが、とにかくお菓子を作り上げねば話になりませんでしょうし…。本人の手で作り上げることを第一として、お手伝いくださいね」

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参加者
NPC:快活陽姫・サザ(a90015)



<リプレイ>

「みんな美味しいお菓子を作りたいか〜!!」

 お〜〜!!

 のっけからハイテンションでマイクを突き出すのは剣闘士・ラファエル(a02286)。
 応える女性群の言葉に私もよ。と絶叫する様に、天狼の黒魔女・サクヤ(a02328)は何があったのかと首をかしげていたそうな。

 そんなこんなでお料理教室開催中。四苦八苦しながら作る様は、まるで戦闘状態でもあった。
「料理に重要なのは加減とタイミングだ! できることからやりゃいいんだよ」
 緊張気味の乙女たちに境界の医術士・リタ(a00261)が微笑みかければ、彼女らはそれぞれに林檎を手に取る。
「何にしても、まず、林檎ジャムを作ると、いろいろ応用利くデスよ♪」
 電波系ろりぃたアイドル・ファル(a02233)はうきうき鼻歌交じりで林檎を掲げる。その様子は限りなく楽しそうだ。
「まずレシピどおりに作ってみましょう。レシピ通り作っても難しいお菓子ですから、ね?」
「は、はい!」
 超絶笑顔な水鏡の不香花・ヴェノム(a00411)。それを受け、サロナは真剣にレシピを見つめる。
 そんな彼女に微笑みかけ、市場で買ってきたばかりの材料を取り出し手渡していく紫苑の術士・ニクス(a00506)。
「笑顔で作った料理は本当に美味しくなると思うよ」
「そうですね。あ、違う作業をする前に『このお菓子を食べたらきっと彼の素敵な笑顔が見られる』って呟きなさいね」
 にこり、アドバイスする真紅か漆黒の菓子職人・ユース(a03370)は、不安げだったサロナの勇気付けになったようだ。
「はい、頑張ります!」

「イユリさん、林檎入りのレアチーズケーキの作り方教えるよう♪」
「ハイ、教えてくださいな♪」
「ミュールさん、超簡単なふわっと林檎オムレット作ろうよ」
「ご指導、よろしくお願いします」
 こちらはまた別サイド。可愛く微笑みながらごろごろと林檎を置いていく漆黒の閃光・シュテルン(a00753)は、今回の先生役に奮起している。
 優しき雫の・エレアノーラ(a01907)もまた、ミュールに徹底指導を行うようだ。レシピもバッチリ用意済みである。
「技術を身につけることも大事だけれど、先ずは作ることの楽しさを味わって欲しいな。何より食べる人の喜ぶ姿を思い浮かべて、ね」
 白陽の剣士・セラフィード(a00935)もまた、懇切丁寧な指導を進めていた。
「いい? 炎を恐れて立派な中華料理人にはなれないわよ!?」
 炎が危険な二人組みの肩をがっしと掴んで教授する爆裂中華的道士・シューファ(a00377)何か違うような気がするのは気のせいではあるまい。
 そんなことは本人気にせず、仄青き片翼の天使・セラ(a00120)にマンツーマンでの指導にはいる。
「好きな人のため、か…」
 そのセラはというと、指導の合間、想い人をよぎらせ、照れたように微笑んでいたのであった。

 エイカの前にでん、と置かれたのは、砂糖。隣には、塩も置いてある。
「分からなくなったら、どっちかほんの少し舐めてみたらいいよ?」
「途中、味見も忘れずにすれば、料理の方向性も纏まりますよ」
「そ、そっか…」
 ほぅ、と微笑むエイカに、仄蒼き閃光弓・カグラ(a00384)とブランネージュ・エルシエーラ(a00853)は顔を見合わせて笑んだ。
「私…頑張れそう…お手伝いお願い……ね…」
 もじもじしながら小声で言うエイカ。二人は見合わせていた顔を再びエイカに戻すと、
「喜んで」
 笑顔満面で、答えていた。
「取り込み中悪いが、良かったらこれもアクセントにでも使え」
 辺りに広がるハーブの香り。朽澄楔・ティキ(a02763)は、ハーブを差し入れると、遠巻きに調理風景を眺めていたのだった。

「指を切るならナンか手にはめとけ! そりゃ直着火で燃えるって油わ。マヨネーズで消せや! 焼くと火が出る? じゃ、煮ろ! 砂糖と塩の見分けがつかねぇだ? 他の調味料使いやがれ!」
 本人いたって真面目です。
 ナナイロ・ハチャック(a02091)は、見かねた朱陰の皓月・カガリ(a01401)にどつかれ、ぺ天使・ヒカリ(a00382)のフライパンをモロに受け、マッスルチャージ使用の無垢なる銀穢す紫藍の十字架・アコナイト(a03039)によって窓から廃棄された後にすべきことと言えば、合掌だろうか。

 さて。乙女たちとは別に、プチ料理教室状態が、あちこちに伺えた。
「いや、だからもうちょっと弱くだ」
 先ほどブラックフレイムで火をおこし、ソードラッシュで材料を斬るという荒業により窓から廃棄されていたはずの死の右腕・ガイラ(a00438)が、いつの間にかエルフの武人・サザ(a90015)を指導していた。
「サザさん、これ作ってみたんだけど、試食していただけ…」
「だから無茶だって言ってるじゃないの!」
「包丁持ったままだと危ないですぅ…」
 どきどきを顔に表した内気な見習看護士・ナミキ(a01952)がサザの元に自作のお菓子を持ってきたのと同じタイミングで、ガイラの無茶な要望に思わず包丁握った腕を上げたサザ。
 そんな様子に苦笑していた柳緑花紅・ホカリ(a00802)が立派に男の子であることは、忘れず語っておこう。
 「サザさんはじめまして〜一つちょーだい♪」
 摘み食い担当を自称していたお気楽極楽・リドリィ(a00312)は、ひょいっとお菓子をつまむと、幸せかみ締めながら次の獲物へ向かっていった。
 そんな彼女より更に向こうでは、失敗作を口に含み、思いっきり噴出している暴走せし重戦車・リナリア(a01331)の姿も見えたそうな。

 別のところでは。
「いつも御師様のお手伝いばっかりだったから、教える側になるのは初めてなのネー」
 林檎の芯をくりぬきながら、にこぱっと笑いかける梁山泊の包丁・シュハク(a01461)。  作っているのは焼き林檎。実は金髪の・アゼル(a00436)の好物であると言う。ゆえに、同じように芯をくりぬく闇に舞う白梟・メイプル(a02143)は、張り切っていた。
(「アゼル様が好きなものですもの…一生懸命に…」)
「それにしても、戦い以外でメイプルとこうもゆっくりすごせるとは…霊査士に感謝しないとな」
 何気なく呟きながら、アゼルはメイプルを見やり、笑む。
 料理の出来云々にいささか不安を持っていたメイプルだったが、その笑顔に、とにかく頑張ろうと、思えたのだった。
「微笑ましいですね…」
 隅っこでほのぼの見つめながら、ストライダーの牙狩人・カイ(a00513)は呟く。隣には蒼き若葉の・アリエ(a01091)もいたが、何故か元気が無い。
「あの…さっきもらった試作品…食べます?」
「え…いいのかい? ありがとう…。あ、なんか美味しい…」
 ホロリ涙しつつぺろりと平らげたアリエは、いささか元気も出たようで、皿を返しに行くついでに、これならいけるぜ。と笑顔で感想を述べていた。
 やっぱり、微笑ましい光景であった。

 はたまた。ヒカリは、氷眼もつ無銘の白銀鋼刃・マルグリッド(a00061)に指導中。
 愛しい者に贈りたい。その想いはなにも特別ではない。マルグリッドもまた、食べさせたいその者のために、あえて不得手である料理に挑戦だ。
「今日はありがとうな、ヒカリ」
「いえ…マーちゃん、また一緒に料理作りましょうね」
 にぱこっと笑うヒカリ。そんな彼女にもまた、心に秘めた想い人がいたりする。
「いっつも心配ばっかりかけてるアーシーにお礼の意味で贈ろうっと♪」
 愛しい人、と言うわけでなくとも、贈りたい者はいるもの。贄・セシル(a01346)は料理本を片手に、手際よく作業をしていった。
 一人もくもくとシュークリームを作っている記録者の眼・フォルムアイ(a00380)の胸中も、大切な人の姿がある。知らず、口許も微笑むものだ。
 そうやってあげたい人がいるのが羨ましい。何て思いつつ、カガリは手にしたクッキーを眺め思案している。
(「バーミリオンはん、食べてくれるやろか…」)
 心に思いながら、持ち帰り用クッキーの味を、確かめていたのだった。

 そして。一番にぎやかなのはココだろう。
 鴉羽舞う銀なる十字架・クリスティナ(a00280)の前に置かれる二つのお菓子。製作者である星射抜く赫き十字架・プミニヤ(a00584)とエルフの紋章術士・マロン(a00825)は、お互い自信ありげにクリスティナに勧めていた。どうやら、料理勝負らしい。
 が。クリスティナは迷っていた。方や姉。方や恋人。どちらも出来に文句ナシ。さて。どちらを選ぶべきか。
「ってねー様、どんどん口に突っ込むのはやめて! むぐぐ…」
 プニミヤがケーキをがつがつ押し込んだがためか、クリスティナはどちらと選ばずダウン。
「プニミヤ、なんてことするのさ!」
「マロンちゃんも勧めまくってたにゃ―!」
「クリスちゃん、またおすそわけ…って、もうダウン?」
 口論する二人が一番の要因が失敗作を食べさせ続けていたアコナイトにあると知ったのは、後のことだった。

「出来ました――!!」
 そんなこんななお料理教室。試行錯誤と熱い指導、そして数名の犠牲の末、ようやく四人は愛しい彼のためのお菓子を作り上げた。
 見てくれは少々悪いが、味は毒見で保証付。何よりたくさんの愛がこもっているのだ。贈り物としては十分だろう。
「形や味よりも、思いを込めて一生懸命。これが大事ですよね」
 ヒトの紋章術士・ミア(a00968)の言葉には、四人とも大きく頷いた。
「どれだけいいものを作っても、片付けが悪いと100年の恋も冷めてしまいますわ。片付けだけはきちんとなさいまし?」
 にっこりと微笑むヒトの紋章術士・イングリド(a03908)。見れば、会場は見るも無残な状態が広がっている。これでは、イングリドの言うような結末も否めない。
 四人は即効で片づけを終えると、早速愛しい彼のもとへ。
「…ところで、皆さんの想い人は同じ方じゃないですよね…?」
 ミアの呟きは四人に届くことなく。謎は謎のまま残ってしまったのであった。

 ちなみに。後にラファエルの手から、最優秀助演賞としてユースに記念カップが贈られたそうな。


マスター:聖京 紹介ページ
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