<リプレイ>
●遭遇×芝居 「おら達が不甲斐無い真似してしもたで、村の人をとんでもない目にあわせてしまっただな…せめてこん人達ば助けねぇと…」 「あぁ……何がなんでも、な…」 旅の田舎重騎士・オーレイ(a07266)の言葉に強く頷く、両義・シェイ(a12634)。その瞳に宿りしは、何より強い決意。 「悲しみの責任がオレ達にあるなら…謝んなきゃ…」 蒼の翼雲・グロウ(a20019)も続けて呟く。 「ならば……ここはミュントス軍に一泡吹かせてやるでござる」 「ええ。…行きましょう」 そう言って、皆の言葉を受けた蒼月鋼鉄鳳凰覚醒武人・シオン(a12390)、そしてツバサに概要を説明していた碧翠蓮・アティー(a18829)が、強く頷く。 (「絶望の淵にある、村娘。あの時の私、そのまま……」) アティーの脳裏に、あるシーンだけが繰り返し流れていた……。
※※※※※
「嘘だろっ、まだお姉さんたちを送り届けてないのに!」 上ずった声のグロウ。その様子からは明らかな焦りが窺える。 「…なんで…もう、大丈夫だって、言ったじゃないですか…!」 冒険者たちを責める『村娘』のアティー。それに、真あんこ熊王・ティータ(a13708)とツバサも同様…。そんな彼女らの非難には応えられないまま、闇を祓う虚無の焔・カノン(a18799)が衝撃を口にする。 「……くそっ、こんなところで出会うなんて…冗談でしょう」 ……ゴフッ… 「今日は運が無いな……」 咳き込んだ口元に朱を滲ませながら、自由と風の槍使い・タカトール(a12435)までもが、苦々しく吐き捨てた。勿論、他の者たちも概ね似たり寄ったりの状況……皆、迫真の演技と言えた。 そんな彼らの目前に迫り来るは、2人のノスフェラトゥ冒険者と小型骨の城、そして、その周囲に群がるアンデッドの群れ。 「おや? まだ役に立ちそうな女たちが居るようね〜」 「確かに。だが、一緒に居るのは冒険者のようだ…死にかけのようだけどね……」 「なら…そいつらを殺して、女は連れていきましょうよ…ねぇ」 申し訳程度の、紐状の薄衣を纏ったノスフェラトゥの号令に従い、アンデッドたちの半数がその周囲に密集…、残りがそれぞれ攻撃態勢に移る。 「くそっ、連続して戦うはめになるなんて…」 シェイが仲間たちの前に立ち塞がり、右手に短剣を握り締めた。同様に、饗宴の思索者・アレクサンドラ(a08403)を始め、幾人かが共に並び、娘たちそして傷の重そうな仲間たちを庇った。 「…逃げろぉッ……ぐぁっ!」 先行して飛び掛ってきたアンデッドの獣が腕に喰らいついた。 「離れるだよっ!」 オーレイが、わざと不恰好を承知で獣に組み付き、力任せに引っぺがす。それを受け、程近い辺りに居るアンデッドたちが数体、ゆっくりと彼らの元へと進み出た。 「やっちゃって!」 (「掛かった! 今だっ!!」) ノスフェラトゥたちが指示を飛ばしたのを見て取り、重傷を装った冒険者、闇貫きし黒き雹牙・ユウ(a15210)と夜駆刀・シュバルツ(a05107)が、仲間の影に隠れつつ、目立たぬ闇へと、その姿を眩ましたのだった……。
●隠行×意表 (「これで後は、ノスフェラトゥ冒険者さん達を拘束するまで粘れば良いですね〜。頑張ってくださいです〜」) 皆に囲われながらのティータ。村娘に扮しているが故に手が出せない。それはそれで辛いものだが、そんな中でも彼女は不遜なことを考えていた。 (「美しくて××の上手そうな娘たちを連れ去って独り占めにするとは許せませんね〜♪ 美しい娘さん達と××するのはわたしなのですよ〜♪」) と。 そんな彼女を含めた現時点での戦力外を除き、残った7人は死力を尽くしてアンデッドたちとの攻防を繰り広げる。ある程度の傷はやむなし……形勢は不利ながら、がむしゃらに粘っているように…。 「くぅぁぁ、拙者の体はもうぼろぼろでござるぅ〜」 「ゴメン、回復これで最後っ…」 シオンの訴えにも、疲れ、虚ろな表情を醸しつつ、ヒーリングウェーブを放つグロウ。放ちながらも『最後』のアピールを忘れない。それもすべて『あと一押し』の演出の為だ。 「すまない、少し休むでござる……」 おどけた態度で少しづつ骨の城へと近づくシオン。それは同時にノスフェラトゥたちにも近付くことになる。 (「これで…ヤツらが出てきてくれれば……」)
しかし…! 残虐でサディスト、なおかつ嗜虐性が高いと予想していた敵の反応は、全く持って冒険者たちの予想を裏切るモノだった。 「もっと死にかけかと思ってたけど…案外モッてるわね〜」 「……退こう。こいつらを殺したところで、たかが女3人。…これ以上時間を掛けてやるような事じゃない…」 「………そうね。そろそろ飽きちゃったし……」 スレンダーな方の言葉に納得する薄衣の女冒険者。そして互いに納得し合うと、骨の城を誘いつつ、再び死の国へ向けて動き始める……。 「そんな……まだ早……」 「くっ…、もう少しなんだが……」 微かな声音のツバサが…、そして影に潜みて敵への接近を試みるユウとシュバルツが呟く。 ハイドインシャドウは気配を断つ技であり、本当に影に入るわけではない。ノスフェラトゥ冒険者に気付かれずに近付くには、周辺のアンデッドたちが邪魔過ぎた。せめて……前に出ていてくれれば……。
そう…冒険者たちの作戦はまだ半ばにも達していないのだった。
●脅迫×拒絶 「仕方ないか……」 辛うじて射程内に敵の姿を収めたユウが、影縫いの矢を放つ。 その一矢は、見事に片側の敵を突き通したが、それでもその動きを束縛するには至らない。このレベルでの戦いに初級アビの効果は薄い。 それでも、敵の注意が僅かでもそちらに向く。 (「今だっ……」) シオンが一気に骨の城を目指す。同時に、これまで演技に集中していた面々が互いに頷きあった。 「仕方ねぇべな……」 アンデッドの攻撃を喰らいながら告げたオーレイの台詞が、新たな戦いのステージの始まりを告げ、同時にツバサを守る誓いを立てる。 「芝居は終わりだ! 確かにたちは敗北した……だがお前たちに屈する者は同盟には誰一人いないぞ!!」 「その通りだ。貴様らの罪、許し難し! 人々の嘆きと苦痛、その身体で味わうがいいッ!」 タカトールに続いてアレクサンドラが吐き捨てる。同時にエンブレムシャワーでアンデッドたちの一角を崩す。 「芝居ですって!? ココの冒険者たちは毎回、下らない猿知恵だけは回るのねぇ…」 「まったく…半端な知恵なら無い方が良い」 そう言うと、2人が骨の城に向けて手を翳す。無論…その手の意味する所はただひとつ。 「どうする〜?」 薄衣の女冒険者が決断を迫る。即ち…戦闘の継続か、人質の命か、と。 「くっ……!!」 一同が唇を噛み締めた瞬間、逆に、ノスフェラトゥたちの露わな身体が粘る糸に絡み取られ、その表情を凍りつかせた。そう…アレクサンドラの作った隙間から距離を詰めた、シュバルツの粘り蜘蛛糸だった。 「どうやらまた、形勢逆転だな…」 傷ついた仲間にヒーリングウェーブを施しながら、グロウが言った。 「ツバサはんは、奴らを……。万一の時は抑えて欲しいだ…」 そう言い残したオーレイを先頭に、時間稼ぎの盾代わりにティータの呼び出した土塊の下僕が眼前のアンデッドに立ち向かい、アティーの銀狼、そしてエンブレムシャワーが道を切り拓く。その間隙を縫うように、皆が娘たちの救出に向かう。
ガシッ!!
一足早く、シオンが骨の城の一部を破壊……。 「さあ、今の内に脱出してほしいでござる」 それまで啜り咽く声だけを響かせていた娘たちが静かに面をあげた。 「こっちだ! 早く!!」 一刻も早く離れなければ……その想いで懸命に呼びかけるユウ。 「今頃……今頃現われて助けに来たつもり? 余計な真似はやめて!」 「そうよ! あの人たちを怒らせないで! 私たちも殺される!!」 娘たちから感じられたのは、明らかな拒絶。非難は如何様にも…と覚悟していた冒険者たちも、さすがに衝撃を受けた。 「躊躇うな!」 タカトールの一喝! (「昔から沢山の死を見てきた……だが、俺の前では、みすみす殺させはしない!」) その声で、ユウとシオンは自らの果たすべき努めを思い出したかのように、半ば強引にそれぞれが1人ずつ連れ出す。 引きずるようにして骨の城から娘を抱え出る2人……。その先頭、ユウの元に、悪魔の頭部を模ったかのような昏き炎の塊が迫る。どうやら蜘蛛糸の拘束から脱したらしい。 「危ないっ!!」 カノンの声が響き、その手からニードルスピアが放たれ、炎の塊に降り注ぐ。 だが、無論アビリティ同士の相殺などは出来るはずもなく……。死をも覚悟し、ユウが娘を庇うように抱き寄せる。そんな彼を、炎は無情にも灼き尽くす……。 「ヤバイですよ〜」 ティータが走り、そして高らかなる凱歌を奏でる。 その旋律が、ユウたちの身体を包み、そして炎をかき消してゆく……。無論、2人の火傷や負傷もともに……。 「…何それっ?」 デモニックフレイムを撃ったノスフェラトゥに驚愕が浮かぶ。 「ツバサはんっ!」 グリモアエフェクトが招いた静寂の中、オーレイが我に返った。その合図で、ツバサとシュバルツが再び拘束すべく、暗黒縛鎖と粘り蜘蛛糸……が、それよりも一瞬だけ早く、もう1人のノスフェラトゥの身体から禍々しき暗黒の鎖が伸び、冒険者たち皆の身体をガッチリと掴んだ。動けるのは、距離のあったシオンとユウ、そして薄衣の女冒険者とアンデッド、更には囚われの女たち……。 「どうするの? まだ足掻いてみる? もう1度、奇跡が起きるか……」 余裕を取り戻し、そう言いながら再び女たちに向け手を翳す。選択肢とも呼べないけれど……たぶん、これが最後の……。
●逡巡×怨嗟 「……どうする?」 冒険者たちに課せられた『最後の選択』。アビリティーを抑えて演技していただけに、拘束さえ解ければ勝ち目がない訳ではない……だが。救出できなかった時の事までは詰めてはいなかった。
「どうせ……どうせ私たちの事なんかどうだって良いくせに!」 一瞬の逡巡に、人質の1人が叫んだ。 「助けるなんて言って。自分たちが助かるために見捨てたんでしょ!」 「勝てもしないくせに逆らうから…」 1人のそれを皮切りに、次々と怨嗟の声が飛び出す。 「違う! 我らは本気で……」 思わずシオンの口から抗いの言葉が漏れる。 「本気で…何? それなら何で村は襲われたの? 何で私たちが捕まったの? 何で……?」 涙も喉も涸れ…声はいつしか苦しげな嗚咽に変わる。 (「……この状況を招いた責任の一端が我々にある以上、何を言われても仕方ない……甘んじて受け止めよう」) (「オレ達冒険者を怨んでるかもしれない。憎んでるかもしれない。……でも、嫌われてるからどうでもいいなんて思わない。でもオレたちは一人でも多くの命を救う為に、全力をつくす!」) アレクサンドラが、シェイが、心を固めた。次いでアティー、そしてユウ。 「…これ以上はもう…沢山ですよ、ね……どうか、護らせて、下さい…」 「今だけは信じて欲しい。必ず救ってみせるから…生きて欲しいから」 絞り出した言葉は降伏の証。そんな彼らに、人々の怨嗟の声が再び続く。 「良い子ね……じゃ、そのまま動かないで。動けば女たちは殺す!」 「良いの? こいつらは……?」 「必要以上に追い込む事はないわ。最良の選択とは『リスクを負わないこと』。それにね、余計な傷を負わないことこそが、彼らには苦痛なの……」 「ふ〜ん」 ノスフェラトゥ冒険者たちは、そんな会話と共に、笑いながら悠然と死の国へ去って行く。 冒険者たちは、それを……唇を噛み締め、ただ見送るしか出来なかった。 「守れなくて、ゴメンなさい…」 ただただ謝り続けるグロウ。同じようにオーレイも、1人も救えなかった事に項垂れている。 「……ミュントス軍は、他でも暴れてるんですよね? せめて他は無事に救出できているといいんですけど…」 1人、天に願うかのように呟くカノン。 「ザンギャバス! 必ず貴様を倒す!」 自らの血の苦みを感じながら、シオンは覚醒剣を天に掲げ、いつまでも叫び続けた。
【終わり】

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参加者:10人
作成日:2005/05/26
得票数:冒険活劇1
ダーク31
ほのぼの1
コメディ2
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冒険結果:失敗…
重傷者:なし
死亡者:なし
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