<リプレイ>
●ところによりあめ 遠くでばらばらと乾いた音がする。 村人へ避難のお願いをして回っていた緋炎を狩る者・チェリム(a03150)が、渋い顔をしている喰えない老人・ジュラン(a01956)に気付いて足を止めた。 「何してらっしゃいますの?」 「おお。いやなに、釣られてくれんでのう」 喚び出した土塊の下僕に指示を与え、あめふらしを広い場所へ誘き出そうとするも、中々思うように行かないらしい。 少し考えて、チェリムは先ほど村人から聞いた話を思い出す。 路地しかうろつかないこと、障害物があると避けて通ること。 「道を塞いでみては?」 「おお、おお。それはよい。流石、若い者は冴えとるのう」 「まあ。鼻の下が伸びていましてよ」 にこりと笑って言い残し、チェリムは再び避難のお願いをしに、路地の角へ消えていった。 一人、また一人と村人が移動する中、大地の歌い手・フェンネル(a02415)の高らかな凱歌が響く。 人々を包み込む歌は、あっと言う間に傷を癒していく。 「これで大丈夫ですわ」 傷が癒えたことを確認すると、フェンネルは暫く安全な場所に居て下さいねと念を押し、あめふらしの動向を注視する仲間達の元へ。 皆はひらけた路地で、あめふらしがやってくるのを待ち構えていた。 飴避けの大盾を持ち直し、神殺騎士・サファイ(a00625)が矢返しの剣風で自身を包む。 飴が屋根で跳ねる音が、段々近付く。 「上手く誘導されてるな」 紅き断罪の双剣士・ラスク(a19350)も矢返しの剣風で身を包み、近付く飴音に耳を傾ける。 確実にやってくるであろう先を注視するその後ろ、別の路地から、射干玉の捜索者・カルーア(a01502)が姿を現す。 「終わりましたよ」 どうやら、辺りの住人の避難は済んだようだ。 「こっちも終わりました」 何故か飴売りの姿で現れた千変・ギネット(a02508)に、しかし、そのことについて誰も附言しないのは、きっと何となくだろう。 いよいよ、飴が跳ねるのが見えた。 「やんないよりはいいよね」 転がり落ちてくる飴を前に、悪をぶっ飛ばす疾風迅雷・フィオ(a06729)がストリームフィールドを展開する。 「おいしいのかなっ……」 「え」 風舞・ティナ(a10082)の呟きに、飴を食べてみようかと思っていたフィオが振り返る。そう思っていたのが自分一人でなかったと知って、何となくほっとした表情。 体液なのになぁ、などと二人を見て思いつつ、香水茅・シトラ(a07329)は、剣風を纏う二人を始め、近くに居る仲間に片っ端からディバインチャージを施す。 そしてそこへ。 いかにも飴色なあめふらしが、細い角を曲がって、姿を現した。
●あめあめふれふれ 黒炎覚醒で暖かいというよりは熱そうな外見となったギネットが、範囲ぎりぎりからデモニックフレイムを撃ち放つ。 「丸ごと溶けないものでしょうか」 あめふらしにしてみれば、今までにない出来事だったのだろう。飛び出た目を白黒させているそこへ、なんともう一度、悪魔のような炎が。 今はまだ回復の必要なしと判断したフェンネルが、同じくデモニックフレイムを撃ち込んだのだ。 驚き、機嫌を段々斜めに傾けながらも、あまり動きの鈍らないあめふらし。 「体力がおありのようですわね」 「硬くなったりするのかな」 先ずはこれでと、フィオの放ったソニックウェーブは見事あめふらしを捕らえ、その身体を衝撃波の形にぐにゃりと凹ませる。 凹みが収まるより早く、鎧進化を済ませたカルーアが接近、ホーリースマッシュを叩き込んだ。 思ったよりもずっしりした手応え。 「弾力がありますね」 引き戻した剣には、うっすらと水飴のようなものが付着している。 痛そうに身悶えしながら、元の形を取り戻していくあめふらしの表皮で、飴の体液が流動を始めた。 何か撃つ気だ。 だが、それよりも早く。サファイがあめふらしの間合いへと、無造作に足を踏み入れる。 またもや起こった突然の出来事。 あめふらしはやる気をなくしたのか、叩き込まれた一撃にさらに身体を凹ませながら、流動していた体液をねとりと地面に垂れ落とす。 「……こいつは確かに、食らうと面倒そうだぜ」 剣に付着した飴が糸を引く様子に、小さく舌を打つ。 ティナは粘りゆく飴とあめふらしの様子を伺いながら、次々にリングスラッシャーを喚び出していく。 「えとえと、まだ元気そうだねっ」 範囲外であることに気を配りつつ、飛んでいく衝撃波達を見送る。 そして、それらが飛来するよりも早く。 ラスクもまた、あめふらしの間合いへと、無造作に踏み込む。 目の前に次々現れる敵達。 飛び出た目を右往左往させて戸惑っているあめふらしへと、ラスクが目一杯の力で一撃を放つ。 ばしゃり。 気力を奪われていたせいか、粘性が低下していた飴が、剣を叩きつけた衝撃で跳ね返る。 「……俺だけっ?」 ちょっぴり損した気分だが、今はこいつを倒すのが先だ。ラスクは気を取り直して、再び距離を取る。 そこへ飛来する闇色の矢。 他の仲間よりもまた少し後方、曲がり角を利用して捕捉から逃れつつ射たチェリムのそれは、命中はしたものの、あめふらしの動きを止めるには至らない。 すると今度は、炎を纏った木の葉が無数に飛来、あめふらしの身体に纏わり付いて激しく燃え上がった。そして、その木の葉に混じったいくつかのリングスラッシャーが、あめふらしの身体を切り裂こうと次々魔炎の中へ衝突していく。 もんどりうって身悶えするあめふらし。 ただ、今の攻撃でやる気を取り戻してしまったのか、再び表皮の飴が流動を始め…… 次の瞬間、無数の針の飴が降り注いだ。 今までとは明らかに違う音で、路地を、屋根を、冒険者達を撃ち据える茶褐色の針。 「うわっとと、やっぱり跳ね返らないね」 ぎりぎりに届いてきた飴をかわしながら、飴がストリームフィールドの影響を受けないことを確認するフィオ。 グリモアの加護によって、この手の攻撃の威力は軽減されるものだが、それでも結構な威力。 ジュランがよろめいたのも、歳のせいではなく、体力の低さゆえであろう。 「あれの体液……うぅー、やだやだ」 ぶんぶんと頭を左右に振ると、飴の範囲外にいたシトラが、皆に効果を届かせる為、数歩だけ前に出てヒーリングウェーブを発動する。 降り注ぐ光に、徐々に塞がっていく傷。 入れ替わるように、未だ緑の業火の名残で魔炎に包まれているあめふらしへと、再びデモニックフレイムが襲い掛かる。 「まだまだお元気そうですね」 怒りのせいだろうか、体表に模様を描く勢いで、流動する体液。 残る傷を全快させるべく高らかな凱歌を歌っていたフェンネルは、その時にふと、違和感を感じた。 「縮んでませんこと?」 眉間に皺寄せる目の前で、フィオがソニックウェーブを放つ。命中した衝撃波は再びあめふらしの身体を凹ませ…… 「……ほんとだ」 確かに、縮んでいる気がする。 身悶えするあめふらしへ、そして、更に凹ませる為、カルーアが徐々に平らになっていく部位へと、ホーリースマッシュを叩き込む。 そこへまた踏み込んでくる、二人の男。 両側から時間差で打ち込まれる達人の一撃に、あめふらしはまたやる気をなくして、体表の飴を地面に垂れ流す。 「……縮んだな」 はじめ見たときは、自分達の倍かそこいらあったはずなのに。 「中身が出たのか」 そう、確かに。 質量分の飴が足元に広がって、動きを阻害されているような違和感はあった。 「えとえと、そろそろ弱ってるよねっ」 広がっていく飴溜まりに足を取られながらも、なんとか踏み越え一気に接近、ティナの薔薇の剣戟があめふらしの体を捕らえた。 舞散る花びら。 飛び散る飴飛沫。 そして、縮めば縮むほど、凹みは大きく。 「狙い辛くなりましたわ」 角から弧を描いて飛来したチェリムのホーミングアローに、あめふらしはごっそり凹み、更に半分に。 そこへまた飛来する緑の業火。 「これで終いにならんかのう」 まるで、溶けていくかのように小さくなっていくあめふらし。 なんだか、塩を振ったなめくじを見ているような気分だ。 しかし、そんなになっても、あめふらしは必死に抵抗する。 「……槍が針に……」 最早回復の必要もないだろうと判断したシトラが、近付いて覗き込んだ時には。 魔炎の残り火に焼かれて、すっかりただの飴と化していた。
●あめのちそうじ 飴溜まりの中に残った小さな飴を埋葬し、数名が手を合わせる。 「お前に恨みがあったわけじゃなかったが……すまないな」 小さく告げるラスクの横で、拳で語りたかったと、ギネットが今は亡きあめふらしに思いを馳せる。 弔いを済ませたフェンネルが振り返れば、戦闘に使った路地にたっぷり零れた茶褐色の水溜り。 「さあ、お掃除のお手伝いをしなくてはなりませんわ」 「ええ。修理も」 同じくカルーアも戦場跡を振り返り……針の飴に打たれ、崩れた屋根を見渡した。 「……結構、皆食べようとしてる?」 既に掃除を始めていたフィオが、拾った飴をまじまじと見つめている仲間を注視。ティナに至っては袋に詰めてお土産状態。恐らく他人に食べさせるつもりだ。 そんな中、真っ先に飴を食べたチェリムの第一声。 「お、大人の味ですわっ」 その様子に、興味を持っていた皆が次々に一口舐めては。 「……うっ、甘いけど苦いっ」 中々複雑な味だったとか。 掃除と修繕を終えた皆は、やっと体についた飴を洗い流す。 目の前の皆は、なんだか凄く苦労している。 サファイは大盾やマントに刺さった飴を引き抜き、剣に付いたねばねばを洗い流しながら、これが溶けなくて良かったと、つくづく思うのであった。

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参加者:10人
作成日:2005/05/30
得票数:ほのぼの5
コメディ13
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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