宝地図屋グレッグ-神の槍とパラダイス



<オープニング>


 ちょっと聞いてくれよそこのルフェル。
 地図だよ地図。
 いやもうな、これが落ち付いてられるかってなシロモノでな。
 ぐわー。
 いやちょっとたらいコントは勘弁しろよ。
 五枚も重ねたら落ち着く前に死んだ祖父が手を振って見つめてくるってばよ。
 あぁ、こら、そこの、ミヒャエル。
 凄い面白そうにアンデッドみたいとか言わない。
 いやだからそうじゃなくて。
 これ。これ見ろよ。

 そうして、興奮覚めやらぬ軍医・ザイン(a00835)が見せた地図を、紫焔揺らめく宵闇の虚空・ルフェル(a07584)が覗き込む。
 地図に記されたばつ印。
 その傍らに書かれた、『神の槍』の文字。
 むう、と唸るルフェル。
 瞳輝かせ、凄いだろう、凄いだろうと念を押すザインの眼は、しかし、ルフェルとは別のものを映していた。
 もう一つ書かれた文字、『パラダイス』を。
「確かに、興味深いな」
「行くしかねーだろ?」
「その価値はありそうだな」
 絶対、絶対この二人、別々のものを指して言ってるよ!
 心の中で叫ぶ陣風若旦那・ミヒャエル(a01793)。
 だが、面白そうだ。
 そしてミヒャエルも同伴し、顛末を見守ることにしたのであった。

 森を分け、荒地を抜け、辿り着いたそこには、地の底へ続くような大穴が待ち構えていた。
 苦難の末に待つ、厳重に奉られた槍と。
 苦難の末に待つ、うひょーな世界と。
 それぞれを胸に描き、暗き穴へと、一歩を踏み入れた。

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参加者
六風の・ソルトムーン(a00180)
軍医・ザイン(a00835)
陣風若旦那・ミヒャエル(a01793)
疾風神雷の鵙・クルツ(a04433)
紫焔揺らめく宵闇の虚空・ルフェル(a07584)
軽業拳法使い・ヤイチ(a12330)
聖地の碧風・ワンダ(a17641)
剣刀士・ガイゼ(a19379)


<リプレイ>

●諸君、俺は軍医・ザイン(a00835)だ。
 鼻歌交じりにレッツゴーですよ。
 勿論、他の連中より先になっ。
 長い棒は持ったか?
 束ねたロープは?
 天井から落ちてきてぐわんぐわん鳴るたらいの準備はOK?
 宜しい。
 それではダンヂョンだ。
 俺はやるぜ俺はやるぜやっちゃうぜー。

●新手の罠
 探索に適した装備に身を包み、火を燈したランタンを掲げた六風の・ソルトムーン(a00180)が、不意に眉間に皺を寄せた。
「……一人足りぬな?」
 中央より心持ち後ろに位置をとり、前後を見回すソルトムーンに、紫焔揺らめく宵闇の虚空・ルフェル(a07584)が溜息交じりに頷きを返す。
「ええ、一番乗り気だった奴が……」
「興奮して先に行っちまったんじゃね?」
 一体何を想像して突撃していったのだろう。妄想があらぬ方向へ膨らんで、陣風若旦那・ミヒャエル(a01793)は自分で考えたのにちょっと気分が悪くなったりしてみる。
 ああそういえばと、疾風を纏いし百舌・クルツ(a04433)が思い出したように手を打つ。
「さっき物凄く嬉しそうに走ってく後ろ姿が見えたよ」
「……ザインの?」
「間違いないと思うよ」
 刀家・ガイゼ(a19379)の確認に、クルツはうんと頷く。
 やはり、彼は先に中へ入って行ったようだ。
 俄かに一抹の不安が沸き上がる中、聖地の風碧・ワンダ(a17641)が威勢良く声を上げる。
「用意はいいかー」
 頷いたり、手を上げたりで全員が反応したのを確認すると、ワンダもカンテラを手に、暗い穴へと足を踏み出す。
「罠にやられてないといいんだけど」
 軽業拳法使い・ヤイチ(a12330)もまた十尺ほどある棒で、壁や天井を叩きながら進む。
 と、先頭のミヒャエルが足を止めた。
「……落とし穴?」
 穴に入って殆どすぐの地面に、ぽっかり空いた穴。
 そして、激しく誰かが登った痕跡。
 もしや予想通り?
 様々な思いを抱きつつ、穴を越えたすぐそこに、蜘蛛の巣状に張り巡らされた縄。
 向こう側には、三股に分かれた路地がカンテラの光でぼんやり浮かんでいる。
「……ふむ?」
 ソルトムーンが縄を棒で叩いたり突付いたり引いたりするが、特に何か起こる様子はない。警戒は続けたまま、ヤイチが縄の解除に取り掛かる……が。
 何故か解いていた筈の縄が、上手い具合にヤイチの体に絡まっていく。
 そして、次の瞬間。
 ごごんっ。
「った!」
 突如落ちてきたものに頭部を打たれ、縄塗れのままうずくまるヤイチ。
 慌てて駆け寄ったクルツの目に映ったものは。
「大丈夫……って、たらい!?」
「……この縄、新しくないか?」
 ガイゼがぽつりと言ったそれで、皆ははっとした。
 奴の仕業だ……!
 よくよく見れば、足元には薄ぼんやりした闇。
「アビスフィールドまでっ」
 なんて用意のいい。
 だがしかし。先行するということは、真っ先に罠に掛かるということでもあり……多分、そのうちやられるのではなかろうか。
 そんな事を考えながら、一行はまた歩みを進めるのだった。

●盛り沢山
 何処へ行こうか。
 迷った挙句、ガイゼが持ってきたピックを倒し、三股の道は向かって左側が選ばれた。ワンダは迷わぬよう、壁に白粉や口紅で印をつけてから、喚び出したクリスタルインセクトを使っての偵察。
「行き止まりだな」
 これ見よがしに古びたカンテラがおいてあったが、怪しいのでそれには触れずに舞い戻る。
 その間に真中の道の様子を見に行ったミヒャエルも戻ってきた。
「扉があったぜ」
 曰く、扉までの道程に、天井から落ちてきたらしい無数の槍が突き立っていたとか。
「あと、害はないけど美味くないって紙の付いたケーキも」
「……新しい罠だよね」
「罠だな」
「悪戯だろ」
 その時、かすかに舌打ちする音が聴こえたとか聞こえないとか。
 だが、扉は気になる。一行は連れ立って、槍の間を抜け、慎重に奥へ進む。
 扉を開けると槍が降って来るであろう事は察しがつくが、それは止められるのだろうか。だが、それよりも先に。扉を棒で突付いて感触と音を確かめていたクルツが眉をひそめた。
「向こう側に何かぎっしり詰ってない?」
 言われた皆が、注意深く音を聞いたり、扉を叩いた感触を確かめると……
「土壁っぽいな」
「この扉は偽装か」
 となれば、残るは向かって右の道。
 一度通ったからと安心はせずに、皆は殊更注意深く道を引き返すと、先ずはインセクトを偵察に向かわせる。
「扉だ。壁には矢が刺さってる」
「本当に尽く引っ掛ってるんだね……」
 なんだか心配になりながらも、カンテラの灯りを頼りに、ゆっくりと進む。
「この扉は本物みたいだ」
 確認を終えると、何とか罠を止められないものかと、ヤイチがあたりをつけた場所を壊してみたり、ガイゼが縄を掛けてみたり。
 皆が身構える中開かれる扉。
「……お、いけたぞ」
 何かが軋む音がしたのみで、矢は飛び出てこなかった。ほっとしたせいもあったのだろうか。インセクトに続いて先行しようと、ミヒャエルが一歩を踏み出した時。
「待てっ」
 ソルトムーンの静止の声よりも早く、ミヒャエルの体が浮遊感に包まれる。
「っ、わっ!」
 咄嗟に繰り出した粘り蜘蛛糸。天井に張り付いたそれが、彼の身体を宙に繋ぎ止めた。大丈夫かと覗き込む仲間のカンテラの光に浮かび上がった足元には、竹槍が据付けられている。
「くっそ、インセクトは穴に掛かんねぇんだった」
 狭いとはいえ、飛んでいるのだから道理。ガイゼの垂らした縄と、粘る糸を手繰って穴から脱しつつミヒャエルは苦笑。
 そのインセクトが見ているものを、ワンダが告げる。
「分かれ道だ」
 今度は二股。また壁や床を棒で叩き、突付き、警戒しながらそこへ辿り着くと、ガイゼがまたピックを倒してみる。
「今度は右だな」
 そして進む先には再び扉。先ほどの穴のこともあり、壁や天井、床も念入りに調べるが、傾斜がある以外、特に異常はない。扉の向こうにも、どうらや空間がある様子。
「……いい?」
 振り返った皆が身構えつつ頷くのを確認し、ヤイチが場違いに据付けられている金属性の扉を押し開けた。
 真っ暗な扉の向こう。
 重苦しい何かの音が……
「総員退却!」
 即行で発せられた号令に駆け出す後ろを、道幅天井一杯一杯の巨岩が転がり迫る。
「どっちだ!?」
「行き過ぎたー!」
「チキンスピードっ」
 傾斜のせいか存外な速度で追い縋る岩玉に追われ、なんと皆はワンダがつけた印をうっかり行き過ぎ、未探索の左の通路へ全力疾走。
 そして、カンテラの光に徐々に浮かぶ進路の先は。
「行き止ま……っぉ!?」
 また浮遊感に包まれるミヒャエル。再び糸にぶら下がる足元には、やはり槍が。
「止むを得ん」
 ルフェルが獲物を手に、さっと岩へ向き直った。ヤイチもそれに倣うように、構え足を踏み留める。
 渾身の力を込めて打ち込まれた大地斬。激しく減り込んだ槍が丸い岩に穴を穿つ。勢いの衰えた穴へ向かい、ヤイチが続けて斬鉄蹴を打ち込むと。
「とま、った」
 かと思った次の瞬間には、岩の裏側にまで急激に広がったひびによって、岩はいくつかの大きな塊となって、崩れ落ちた。
 安堵も束の間、岩の欠片を踏み越え、改めて通路を突付きながら元来た道を引き返していると。
「……今」
「うむ、動いた」
 より一層警戒しながら、皆してその壁を弄くっていると、回る壁の向こうに道が見えた。
 そして、その道には何故か無数のたらいが。
 なんだこれはと、気を取られたその瞬間。
「ぬおっ」
 垂直に落ちるソルトムーン。
 急ごしらえなのか、穴は胴くらいまでしかなかったが、中にぎっちり詰められていた蛙と蛇と蛞蝓のせいで、生まれて初めての三竦み半身浴をする羽目に。
 命に別状はないのに、なんだこの脱力感。
 そして這い出した目の前に、今までにない大きな空間が現れる。
 行き止まりだろうか。
 各自がカンテラと棒で以って、壁を調べていたその時。
「ぎゃん!」
 退路を閉ざさんと落ちてきた鉄壁が、仲間が罠に嵌る様子を観察していたザインに直撃していた。
 同時に、天井に開いた穴から、大量の水が流れ込む。
「扉をこばごぼもごご」
 水はあっと言う間に頭上を越える。カンテラの火が消え、右も左もわからなくなった中、ガイゼが流れ込む水の音だけを頼りに、チェインシュートでピックを天井の穴へと飛ばす。
 巻き上げられる、思った時には、ガイゼの体は、水面の上に脱していた。そして、彼がぶら下がっているのは、水が流れ込むその穴よりもさらに上。
「こっちだ! 出られるぞ!」
 急いで水分を払ったカンテラに火を点け、引っこ抜いたピックで穴を崩し、光を翳して呼びかける。
 顔だけ出してあっぷあっぷしていた皆は、一斉に光に向かい、水位の上昇とともに、穴の外へ。ルフェルの鎧聖降臨で軽装になっていたお陰で、鎧を着ていたものも含め、全員が事無きを得る。
「……ザインは?」
 見回せば、横に続く通路の方へと、血痕と水滴が続いている。
 頷き合い、横なりの通路を進むと、その先には奈落の底へ続くかのような、狭い石階段が。
 僅かに吹き込んでくる風。
 ちゃり……ちゃり……
「……心臓に悪い音だな……」
 何処で鳴っているのか。
 ちゃり……ちゃり……
 鎖のような音に未だかつてないほどの警戒心を芽生えさせながら、皆は慎重に、もうこれ以上はないというほどに慎重に、階段を下る。
 その間も、鎖のような音は、ずっと鳴り続け……
「扉だ」
 隙間から零れる僅かな光。血痕も閉まった向こう側へ続いている。
 ここが終着点か。
 薄明かりの中、頷き合い、遂に、扉が開かれた。

●凄かった
 光は、太陽だった。
 数十メートルはあろう吹き抜けの空から、光が差し込んでいる。
 そして、円形のその空間の中央。
 聳え立つのは、超巨大な石像。
「えー」
「えぇ〜」
「すげーけど……」
「確かに神級だな……」
 そして、その周囲には、すっぽんぽんで様々なポーズをした沢山のおねぃさんの石像が並んでいた。
 つまりこれは、神の槍をおねぃさんが一生懸命お世話しているという、あははうふふな……
「いーやーぁああぁああー!」
 刹那、ルフェルの渾身の一撃が炸裂した。
「神の槍が!」
「槍っていうか息子?」
「ジュニアだな」
「っていうかルフェルだけ女じゃないか」
「そりゃしゃーねぇな」
 真っ二つになって倒される神の槍。
「……くそう、俺の罠よりずっと嫌そうな顔してやがる……」
 砂煙巻き上がる中、瀕死のまま皆を観察しつづけたザインは、とても悔しそうな顔をしていたそうな。


マスター:BOSS 紹介ページ
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