バラのフラワーアレンジメント



<オープニング>


「諸君! 暇か? 暇だろ。 よし、暇だなっ!!」
 バラを育てるのを趣味にしている、人の話しは聞かない男が酒場へ顔を出して、言った。きっぱり、暇と決めつけられたらしい。手にはバラを持ち、なぜかポーズを取っている。
「バラを使ったフラワーアレンジメントをしてみないか? バラを広めるいい機会になるからな! 何より、今、バラは花盛りだからなっ!!」
 よくわからない理屈だが、要するにこの男の屋敷にある、バラの庭園やら温室やらが今花盛りと言う事のようだ。そこで育つバラを好きに選び、花束とか、ブーケとか、コサージュにして見るのはどうかと、そう言いたいらしい。
 男の名はタピス。奇妙な人物なのである。巻き込まれた形で連れ出された厳粛なる石と白髭・ゲランは、それはそれは迷惑そうな顔を、していた。

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参加者
NPC:厳粛なる石と白髭・ゲラン(a90189)



<リプレイ>

●バラの庭園
「暇か? 暇だな? よし、暇だ! 悪かったな暇で!!」
 タピスの言葉に、つられたらしいハッター。自分で言ってみて傷ついたらしく、めそりとしている。どうせ酒場でうろつくだけだからと、ついて来たようだ。
「……。……なんつーか」
 思わず、言葉を止めるティキ。タピスの勢いに少々引いたらしい。
「……中々面白味のある組み合わせだな」
 巻き込まれたゲランと巻き込んだタピスを眺めて、ティキは思わず小さく呟いた。
「お邪魔します、お世話になりますです、なぁん」
 チャザはそう言いながら、ぺこりと頭をさげた。庭園の様々なバラに視線を奪われつつ、作りたい物は頭の中に浮かんでいる様子。
「たぴすさんお久し振りなのですよ〜♪ 相変わらず正義と真実とバラの人っぽくて安心なのです〜♪」
 そう言って笑顔を向けるフィー。なにか間違っている気がしなくもないが、一応あっている気もする。多分、気にしてはならない事なのだろう。
「こんなに大勢を招待するなんて、タピス氏は太っ腹だな〜。バラは取り放題なんだろ?」
 笑顔で言い切るハロルド。種を取るつもりでなければ、バラはいずれ切ってしまわなければならないわけで、そう言う意味では、取り放題とも言える。さすがに咲いていない物も含めて、全て切るのそうでなければ構わないだろうと言うタピスの言葉に、ハロルドは少々驚いたようだ。
 深深と頭をさげて、タピスとゲランへ挨拶をするリン。
「素敵なお誘い、ありがとうございます。アレンジメントするのは初めてなんですが、どうかよろしくお願い致します」
 そう言うと、再び彼女は頭をさげた。バラの花を眺めて、幼い頃に深紅のバラが似合わないと、からかわれた事を思い出したりした様子。けれど綺麗なものに憧れる気持ちは変わらず。友人の為に選んだバラに彼女はそっとはさみを入れた。
 そんな、リンからほど近い位置で、鼻歌を歌いながらシエルリードは艶やかな赤いバラを切る。歌の歌詞のように、真っ赤なバラで広場を埋め尽くす事は出来ないけれど、今出来る精一杯の花を用意しようと彼はバラを選んだ。
「ここに来るのも久しぶりだよねぇ……。今日はゆっくり、鑑賞させてもらうね♪」
 バラの花咲く庭を眺めて、クラウディアはしみじみとタピスへ言う。以前は仕事で慌しくて、ゆっくりと眺めるどころではなく。今までに受け取った事のない色のバラを選ぼうと庭を眺めながらも、クラウディアはバラを探して歩き出した。
「バラなんて華やかな花、地味なオレには無縁なもんだよな〜」
 そう言いつつも、フラワーアレンジメントも楽しそうだと、参加する事にしたトゥース。屋敷の飾りに必要と、昔仕えていた主人にやらされた事もあったっけと少し懐かしく思ったりしている。
 53歳でこの貫禄、この髭……素晴らしいと胸の内で呟きながら、シェードはゲランを見た。ついでに、タピスの笑い声にあわせて、一緒にわははと笑ったりもする。
「その心意気……素晴らしい!」
「なかなかやるな。みどころがある!」
 タピスの偏った正義論を聞いた後で、そう言ったシェードの肩をたたいてタピスは言った。とても気に入られたらしく、ひっそりと特別なバラを譲ってもらえたりしたようだ。
「うぁぁ……タピスさんお久しぶりですーvv またお会い出来るなんて……」
 そう言って、涙を拭うルゥ。シェードが特別なバラを譲ってもらうのを見たルゥは、恋人へあげる予定なのかなと考えたりもして。そんなルゥへ、正義の活動は続けているな!? いい事だ! などと勝手に結論付けるタピス。それはともかく、バラのアレンジメントをと、彼女は早速作りたい物に合わせたバラを切り始めた。
「ふふふ、シアさんはバラがとってもお似合いなのですvv」
 様々な色のバラを切り、抱えるシアを見て、ルゥが笑顔で言う。言われたシアは照れつつも、礼を言ったりした様子。
「バラ……。とげとげもありますが、それでも惹かれる綺麗さがありますよね」
 目に優しい黄色のバラを見つけ、ファオはそう言いながら笑みを浮かべる。どうやら彼女はコサージュを作るらしい。
「シラユキ発見ーっ♪」
 勢い余って飛びつくように声を上げたイーリス。彼女の視線の先には白いバラを選んでいるシラユキがいる。コサージュにすべく、バラを選んでいたユウはそんな彼女らの姿を見て笑みを浮かべた。
 サガは妹のユウリと共にブーケにするべくバラを選んでいた。
「……喜んでくれるかな……」
 ユウリは小さく呟きながら、薄いピンクのミニバラを選び、はさみを入れる。
「うわ、トゲ刺さったッ!」
 花の扱いになれていないサガ。注意していたにもかかわらず、トゲを刺してしまったらしく、ユウリに気をつけてね? と言われながら治療をしてもらった。

「今日はエイルさんに教えてもらおうと思って、張り切って来たのですよ〜♪」
「こういうのんは始めてやよって……色々と教えてもらえると助かりますわぁ〜♪
 笑顔でそう言うエリスと、その隣で頷きながら言うルエア。
「基本的な事くらいしか、お教え出来ないと思いますが……。よろしくお願いしますね♪」
 2人に笑顔を向けて、エイルは答える。アンディも教わる気ではいるようだが、今はとにかくバラ選びに夢中のようであった。

●フラワーアレンジメント
「わぁ、すごくキレイですぅ〜!」
 目を輝かせ、感嘆の声を上げたリュイ。義理の父へのプレゼントにする為に来たらしい。喜んでもらえるかどうかと、不安に気持ちを揺らしつつ、かなり真剣な表情だ。
「バラのフラワーアレンジメントだなんて……っ! す、素敵ですのー……」
 頬を染めるような勢いで、嬉しそうに言うルーツァ。大好きな花だけに、うきうきな気分らしい。淡いピンクのバラを選び、彼女はヘアコサージュを作る様子。
「そう言えば……部屋に1つも花らしいもの、ないですね……」
 トゥウィルはそう呟いて首を傾げる。朝食時に、花を眺めて今日も1日がんばれるぞ! と言う気持ちになれるアレンジメントを作ろうと決めた。
 ファンは誰かのアレンジを手伝えないかと、きょろきょろ見まわす。
「お、アールもいる。何だ〜? そのバラは誰にあげるんだ〜?」
 ニヤリと笑いながら、アールグレイドを見つけ、ハロルドは彼の傍へと移動した。
「バラを片手にポーズ取ったら、似合うんじゃないか?」
 言われたアールグレイドはハロルドへちらりと視線を向けて、そう言い返しつつ、バラを1本差し出してみたり。そんなやり取りをしつつも、本気の喧嘩にならないのは、お互いそれなりに気心が知れているからであろう。
 カレンは小さなカゴと、バラを手にしている。
「あ、でも、ハサミが必要なのは想像が付いたのです〜♪」
 初めてアレンジメントをするエリスは必要な物がわからず、はさみだけは用意してきたと胸を張る。他に必要そうな物をエイルに教えてもらい、タピスに用意を頼む。
「エリスは、髪が赤いから、白い方が似合うかなと思ったんですけどぉ……」
 センスに自信はないらしく、白いバラの髪飾りを作るつもりなのだが、どうだろうとエイルを伺うエリス。
「うーむん。うちのは誕生日の贈り物用に……女の子になんやけども、やっぱり花束もらったら嬉しいモンかな?」
 食べられればいいのにと言いつつ、少し不安気にルエアは呟く。バラもジャムにはなるわけで、食べられる事は食べられるのだが、好みは人それぞれだ。
 アンディは黙々とバラのトゲを取り、抱えきれないほどに大きな赤いバラの花束を作る。重くて運べなくなる事に気がつき、結局彼は目標よりも一回り小さな花束を作った。
 そんな3人へ、エイルはバランスや色具合の助言をする。
「……バランスが難しいですよね」
 そう呟きながら、コサージュを作るヒカリ。
 様々な種類のオレンジ色のバラを眺め、どれにしようか迷っているエィリス。彼女はその中から、淡いオレンジ色の物を選び、コサージュを作るようだ。
「このブルームーンとスプレーウィットっていうバラがよさそう。薄紫と白できれいよね」
 マーガレットはそう呟きながら、バラのトゲを取り、リボンをかけて花束にする。
「このバラで冠を作ってあげたら、あの子たち喜びますかね?」
 そう呟いたランカが思い浮かべたのは、義理の子供。現在6歳の外見をした彼女は何年生きていてもドリアッドゆえに精神年齢が6歳なわけで、義理の子供がいるのは結構謎だが要らぬお世話であろう。多分。
「バラの花……どれも、凄くきれいですv 見ているだけで、幸せな気分に……」
 そう言いながら、にこ〜っと嬉しそうに笑顔を浮かべるリィラ。
「と、いけません。ちゃんとブーケを作りませんと……」
 人に贈るブーケを作る為にタピスの言葉に乗ったのだからと、リィラは少し慌ててバラを手にし、ブーケ作りに取りかかった。
 カイトは花束を作りながら、歳の近い同じ種族の冒険者を探し、きょろきょろする。どうも歳が近いと思われる人物はエンジェルであったり、ヒトノソリンであったりして、残念ながら彼の望む交流相手は見つからなかいようだ。
「あら……青いバラさんですの〜♪ きっと髪飾りにしたら素敵ですね……よし、そうしますの♪」
 バラを見て、目を引いた青いバラを手に取り、アクアラルは笑顔になる。そうして、彼女は髪飾りを作り始めた。
「お花はだいすきですーv しあわせとぽかぽかをもらえるです」
「あたしと同じはちみつ色の花束にするんだ〜♪ 」
 そう言って笑顔でコサージュを作るチェリート。彼女の手元をクラウディットはそう言いながら、一生懸命見ていた。
「器用なもんだなー、俺は器用じゃないからな……」
 ハッターはそう呟いて花束を作る。
「色んな色のバラを束ねるですよ〜♪ カラフルで賑やかな事、間違いなしです〜」
 そう言いながら、フィーは嬉しそうに様々なバラを集めた。
「蕾〜蕾〜蕾〜……」
 こそこそしながら、綺麗に咲いた花と、これから咲く蕾を集めるのはキュオン。いい機会だから、好きな相手へ花束を渡そうと考えている為、どうにも恥ずかしいらしい。
「バラは育て親である夫人が好きであったが……」
 そう呟き悩みつつもユダは、師と仰ぐ女性へ贈る為に、紫色のバラをブーケにする事に決める。
「いつもは言えたもんじゃないが……」
 感謝の心は常に、胸の内に。けれど、恥ずかしさが先に立ち、とても口に出来ないのだ。だから花を贈ろうとユダは花を丁寧にまとめ、ブーケを作った。
「色々作ってみたいのはあるんだけど……」
 ユラは散々悩んだ後で、コサージュを作る事にした。薄紫のバラを見つけ、それを使う事にしたらしい。実に楽しそうに笑みを浮かべて、彼はバラと、バラを引きたてる花をまとめる。
 ユリリスは白いバラを手にした。蕾と咲いた花と、そして緑の葉からとげを取り、リボンを使って花冠を作る。
 ケーキを持参したクレイはそれをタピスへ渡すと、その後でバラを選び、小さなブーケを作った。

●のんびりお茶を
「花自体を扱うより、こっちの方が自分には合っていたかもしれんなあ」
 そう呟きつつバラにちなみ、バラの形をした和菓子を持参したスルクは、ゲランへよければと感想を求める。それに対し、白あんや黄身あんも使い、何種類か並べると目にも鮮やかで楽しいのではとゲランは答えた。
「ところで、梅見の件からすると、花に興味がないわけではないとお見受けするが……。バラはバラでも薔薇輝石や砂漠の薔薇などへ興味が強いと思われるが、どうなのじゃろうか?」
 少々首を傾げて尋ねたスルクへ、ゲランはそうだなと頷く。ゲランは花が嫌いなわけではなく、タピスと馬が合わないようだ。あの独特のペースに構うと、精神的に疲れてしまうらしい。
「ゲランさんは緑茶とシナモンティと、どちらがお好きなのかしら」
「どちらがよりと言われれば、緑茶だな」
 ローズティを傾けるゲランへクレイが尋ね、クレイの言葉へゲランはそう答える。
「ゲランさんにプレゼント。うーんと、日ごろの感謝の気持ち……かな」
 ゲランへと花束を差し出すマーガレット。石を好きなのは知っているが、花はわからず、気に入ってもらえるといいのだけれど、と少し不安そうだ。そんな彼女が差し出した花束をゲランはほんの少し、目をゆるめて受け取った。
「あのね、ゲランさんはいつ頃から石を好きになったのかな? 後、どんな石が好き?」
 せっかくの機会だからと、マーガレットは聞きたかった事を尋ねる。元は、石よりも化石に興味があった事。そして、どうやら一番好きな石はアンモライトと呼ばれる、アンモナイトの化石に遊色効果がある物らしい。コーライトとも呼ばれるその石は、オパールにも似ていた。
「……こう言う場所でのんびりと言うのは、贅沢ですね」
 用意して来たスコーンを広げてヒカリが言う。本当ですね〜とヒカリに同意するトゥウィルは以前教わり、レシピを持っているお菓子をいくつか用意し、広げている。
「ローズティを飲みながらバラを見るとか……いいよね」
 頷きながら、カップに注がれたローズティに口をつけるユラ。
「バラのお茶、一度飲んでみたかったのよね〜♪」
 嬉しそうに言うリィンは、作り上げた白薔薇のコサージュをテーブルに乗せる。
「今、ワイルドファイアでは、お仕事の後にシュークリームを食べるのが大流行しているので、皆気に入る事間違いなしなのです〜」
 流行はしていないが、そう言いながら、シュークリームを配るフィー。ランカはバラの花びらが入ったゼリーや、バラのジャムを使ったタルトをテーブルへ広げる。
「お、お茶か、お茶だな!! よし、シュークリームをいただく!」
 ずかずかとタピスが顔を出し、椅子へ座ると広げられた食べ物を口へ運び、カップに口をつけた。一瞬ゲランが疲れた顔をしたのは言うまでもない。
「リュイもお茶会に参加させてください〜」
 元気よくそう言い、テーブルに向かうリュイ。
「ゲランさんのお髭と髪、真っ白で長くてすごくカッコイイですぅ」
 茶を口にしていたゲランへそう言った後、リュイは受け取ったカップに口をつけて、お茶の味に笑顔を浮かべた。
「あのね。お花も石も、自然の作り出した奇跡なの。ただ、そのきらめきの時間が違うだけなのよ。だから同じくらい、いいこいいこしてあげないとめーなのよ」
 そう言いながら、ユリリスはゲランへブートニアを渡そうとして、さすがに断られた。ブートニアの由来がそもそも、愛を告白された女性が愛を受け入れた証しに、相手から受け取った花束の中の1輪を返す事から来ている為だ。愛を告白したわけでもない相手から、ブートニアを受け取るわけにはいかないと思われた様子。
「花は嫌いではない。騒がしいのが好きではないのだ」
 ユリリスの言葉にゲランはそう答える。
 タピスが目指すバラの布教は、一応、成功に終わったようであった。


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