【熱血志向!】 無茶なくらいでちょうどイイ



<オープニング>


「今回相手してもらうモンスターは、山頂までの一本道の上に陣取ってる」
 鳳蝶の霊査士・フロストが自分の霊査の結果を話はじめるのを、酒場に集まっていた冒険者達が耳を傾ける。

 曰く、左右を高い断崖にはさまれた谷間の一本道。かなり急な斜面なので、登って行くのは中々骨が折れるだろう。
 
「それって体力勝負ってこと?」
 風翠・クィンスが小首を傾げて尋ねると、霊査士は左右に首を振った。
「んーにゃ、それなら良かったんやけど、相手のモンスターは土を固めて作った団子を転がして来よんねん」
 上のほうから転がり落ちてくる巨大な土の塊。
 そのスピードと質量は中々すごいんじゃないか……?
 冷や汗混じりの内心にさらに追い討ちをかけるように霊査士は続ける。
「ついでに作ってた団子が無くなったらそこら辺の岩を転がしてくるみたいや」
 つまり、挑戦が長引けば段々とデンジャラスさが増していくというおまけつき。
 お手上げや、とでも言いたげな仕草でそこまで言い切りフロストは、それでもと力強い視線と言葉を投げかけた。
「長さ1kmの障害物レースin坂道。それさえ乗り切れば力だけで大したことない相手やから……皆なら出来ると信じてる。絶対倒して無事に帰ってきてくれ!」
 ゆけ! 冒険者たち!
 試練の道を乗り越えて、頂上で待つ魔物を撃破するのだ!
「まっかせて! ボクが一番でゴールするからね!

マスターからのコメントを見る

参加者
暁へ向かう黄昏・ライオル(a12876)
白鴉・シルヴァ(a13552)
黄金の林檎姫・ルゥル(a14115)
青嵐の拳・イェル(a15615)
風舞歌・リオル(a17014)
生涯未完・ジェド(a17065)
銃神・ガンナー(a19434)
雲穿銀華・チハヤ(a19827)
忘我の彼方・カトン(a20813)
駆け出し武士・トウヤ(a26142)
NPC:風翠・クィンス(a90196)



<リプレイ>

●第1組
「うわ、すげぇ急斜面……降りる時も大変そうだな」
 白鴉・シルヴァ(a13552)が坂を見上げてスーツを着てきたことを後悔する。
「これは……想像以上の険しさですね……」
 ペアの漂流は標・ライオル(a12876)も同じような感想を漏らす。
 そんな彼らの耳に不吉な音が響いてきた。

 ゴロゴロ……ドンッ!

 慌てて横に避けたその目の前を勢い良く転がっていく物体。
 土団子。それはそのまま突き出ていた岩にぶち当たりガラガラと崩してしまった。
 血の気がさぁっと引いていく音すら聞こえそうな光景だったりする。
 
 彼らが最初の弾よ……登るペアに選ばれたのはついさっき。

「最初はぐー! じゃーんけん、ほいっ!」
 と黄金の林檎姫・ルゥル(a14115)の掛け声の下で公正を期す大ジャンケン大会の末に決定した順番だ。
 後ろを振り向くと仲間達がとても良い笑顔で見つめている。
 逝ってこい、と。
 二人は絶対に登りきってやる、と決意を込めて歩き出した。

●第2組
「土とか岩とかってやっぱ当たると痛いかなぁ?」
「泥団子、ねぇ。ガキの頃、よく作ったもんだが……」
 準備体操をしているクィンスの言葉に継がれし魂・ジェド(a17065)が答えるでもなく呟く。
 カチカチに固めるとそれなりに痛いと思う。
「岩に追いかけられるのは何度経験しても良い気がしないからサッサと走りぬけてしまおうよ」
 しかし、泥よりも岩に判のしたのは銃を帯びる者・ガンナー(a19434)
 出発を促す彼女に、二人は肯き先行の1組を追いかけて歩き出した。

●第3
 前の組との間を100m取り、罪を湛えた紅色の眼・カトン(a20813)と北の黒紫竜・リオル(a17014)が出発する。
「とりあえず頑張るので、リオル、よろしくな」
「障害物競争みたいで結構楽しそうですねぇ〜♪」
 間を開けすぎな気がしないでもない。
 そして何故か体力の無いカトンが前に立って歩き始めた。

●4
「トウヤ、よろしくな!」
「こちらこそ。イェルさん、よろしくお願いしますね」
 武士見習い・トウヤ(a26142)と青嵐の拳・イェル(a15615)の登山趣味コンビ。ワンゲルコンビ(?)が出発を開始する。
「んじゃ、てっぺん目指して駆け上がるか!」
 完璧な登山装備の上に砂粒や岩の欠片から目を保護するためのゴーグルまで完備したイェルが先に立って歩き出すと、少し後ろを歩きながらトウヤが小さな声で話し掛ける。
「こちらに出てきて始めて依頼を受けたのですが……なんだか凄く嫌な予感がします、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だろ。きっと初めての依頼だからだよ」
 楓華列島出身の彼の不安。多分きっとそれは初めてだから。それ以外の理由はありません。
 ですよね?

●5
「体力だけは自信あるんだよね♪ よっし、山登り頑張るなぁ〜んっ」
「それじゃ、私たちも行きましょうか」
 最後に出発したのは、雲穿銀華・チハヤ(a19827)とルゥル。
 元気良く登っていく。


 転がってくる泥団子に、ライオルは銀狼を放つ。
「行け! 銀狼!」
 銀狼は団子にぶつかり……小さく砕くことは出来ずに大小の塊が飛び散った。
「っぅ……すいません……」
 破片が当たり頭を押えながらライオルが振り向くと、跳ね散りまくった土の欠片でドロドロに汚れたシルヴァ。
 案の定彼のスーツは既に汚くなってきている!
「き……気にするな。このまま進もう……」
 そう、かなりピクピクとするこめかみを引きつらせながら言っていると、次の団子が!
 さっきの惨状を思い出し、ライオルがささっと避ける。と、
「へ?」
 彼が迎撃するとばかり思っていたシルヴァが少し間の抜けた声を出し……目の前に存在した団子に驚愕する。
「ぐはぁ!? 先に行け!」
 助からない、と確信をしたシルヴァが叫び 
「わかりました。シルヴァさんもお気をつけて」
 ウソ臭い叫びにウソ臭い涙で返し決意の表情で頂上方向へ視線を向けた瞬間。
「……落ちる時は一緒だ!」
 シルヴァはライオルに必死に手を伸ばしその服の裾を掴んだ。
「なにするんですかあぁぁぁ……」
 ゴロゴロゴロ……っと二人で遥かな道のりを落ちていった。


 凸凹な道のせいで不規則にバウンドをする土団子。
 その軌道を予測することは非常に困難だ!
「カトンさ〜ん! 頑張れ〜負けるな〜!」
 リオルは何もする気が無いのか気楽に声を掛けているだけだ。
 一方のカトンは
「ふっ……任せろ。俺に秘策あり、だ」
 と、地面に手をつき、声高らかに叫び、召還をする。
「出でよ、我が影武者よ!」
 召還に応え、そいつは姿を現した。身長60cmの土で出来た影武者が!
「これで、どちらが本物か判らないだろう。来るがいい土団子」
 本体がビシリと転がり落ちてくる団子へ指を刺すと、造形は荒いがそれらしいといえばそれらしいかもしれない影武者も指の無い手をワンテンポ遅れてそっくりな仕草で団子へ向けた。
 そして迫る土団子は……

 ぎにゃぁぁぁぁーーーー……

 長い悲鳴を引きながらカトンと影武者を巻き込んで落ちていった。
 転がってくる団子がそもそも何かを狙うとかそんなものあるはずもなく、当然といえば当然の結果だが。この時団子に轢かれるカトンと影武者の動きがピタリとシンクロしているのをリオルは目撃していた。
 何の役にも立たない発見だが。
「えーと……?」
 一人残されリオルは困った顔をしたのも一瞬。とてもいい笑顔を浮かべて駆け出した。
「君の事は忘れないよ!」


「ここに関しては、速度を上げず慎重に行く……て事でどうでしょう、お二方?」
 ジェドが指す光景が魅惑の魅惑のドロベタ地帯なのだろう。
 明らかに泥だと判る汚い水溜りが幾つもある。
「きたないよー」
 パチャパチャと手をつけてみたクィンスがうんざりしたように言ったところで、団子が転がってきた。
 バシャッ! と勢い良く飛び散る泥水。
「ぅぇ〜」
 泥水を被ったクィンスは涙目になる。そして泥水は最後尾にいたジェドやフラフラと登ってきたいたガンナーにも被害を及ぼす。
「それにしても……おかしい……絶対におかしい……」
「何がっスか?」
「禁酒禁煙し運動したら身体が軽く感じるって話を聞いてたけど……」
「未成年はお酒もダメだしタバコもだめだから、ガンナーさんには関係ないよね?」
 小首を傾げながらクィンスは聞く。悪びれも無く。
「えーと……でも、何だかいつもより呼吸も辛いし……」
「山に登ってきてるからだね♪」
 返答に詰ったガンナーがどう応えようかと悩んでいるところに、次の土団子は転がってきた。
 水を含んだ土団子の表面は泥へと代わり、そんなガンナーを弾き飛ばしたのだった。

「ボクの事は良いから先に! 速く!!」
 といい、団子に轢かれて転がっていく彼女は器用にゴソゴソとポケットを探っていた。しかし一瞬の静止。
「俺が止めるっスよー!」
 がっしりと。この時のために最後尾を歩いていたジェドが団子ごと彼女を抱きとめる!
 いや、抱きとめようとした。だが、静止は一瞬。巨大な運動する質量を止められるはずもなく、一緒になって転がっていく。
 ちなみに。
 クィンスは二人を助けようと団子に向かって粘り蜘蛛糸を絡ませ、引き摺られるようにやっぱり一緒に転げ落ちていった。


「結構……急ね」
「ふぁいとぉーいっぱぁーつなぁ〜ん!」
 フック付きロープを使って、チハヤを引き上げながら良くわからない掛け声を上げるルゥル。
 そんな彼女達の目に、転がってくる団子が見えた。今度のは大きめに見える。
「ナパームで勢いを落とすから、後はお願いね♪」
 ぎらーんと目を光らせてチハヤは弓に爆裂の力を込めた矢を番え、ルゥルは斬鉄蹴の構えを取る。
 そして、ルゥルが駆け出すのと同時に矢を放った!

 爆発。
 その強力な衝撃で勢いを弱めた団子。炸裂した時に悲鳴のようなものが聞こえたのは気のせいだろう。
「転がってくる土団子は、斬鉄蹴で粉砕なぁ〜ん!」
 スピードの落ちた団子へ向かって、踵がその中央を砕くように、回し蹴りを放ったルゥル。

 げぶぅ……

 だが、その足先に返った感触はなんと言うか。
 良くわからないけど良く知っているものを蹴ったような感触で。
 メキとかボキとか何かの砕ける音と潰れたカエルの悲鳴のような音が聞こえた。
「な、なに? 今の音は?」
 あまりにも予想外の音に砕けた団子の破片を良く見ると……
「きゃー!? 二人ともしっかりしてくださいなぁ〜ん!」
 そこに居たのは体から何かが抜けかかっているライオルと口から何か大事なものがちょっっぴり出ちゃっているシルヴァだった。


「あ! 誰か倒れてますよ!?」
「おい、大丈夫か!?」
 お前達の尊い犠牲は無駄にはしねぇ! と無駄に爽やかに言い放って落ちていく仲間を横目にまったり崖崩れゾーンまで登ってきたイェルとトウヤが駆け寄って助け起こした人物はリオルだった。
 彼は剣を握ったまま岩塊の散らばる中で倒れていた。
「う……ぅ〜ん……」
 頭を振って起き上がるリオル。その額にはデカイたんこぶが出来ていた。
「あれ? 二人とも……ありがとう」
「一体何があったんですか?」
 トウヤが尋ねるとリオルは痛む額を押えて思い出しながら話し始めた。
 
 カトンと逸れ一人になってしまった自分が、ドロベタ地帯を抜け(服がドロドロな所をみると転んだらしい)なんとかここまで登ってきたこと。
 そして、ここで転がってきた団子のせいで崖が崩れて落ちてきたので、デストロイブレード! と叩き割ってみたのはいいけれど、その勢いが消えるわけでもなく、結果として岩の欠片で頭を打って倒れていたこと。

 つまり、ある意味自爆だった。
 とそんな話をしていると、例によって例のごとくあの音が聞こえてきた。
 ゴロゴロゴロゴロ……
「なんか……今までよりも音が重くないですか?」
 汗混じりに呟くトウヤ。
「何回、土団子転がってきたっけ?」
「数えてないですけど……結構落ちてきてるんじゃないですか? イェルさんみたいに壊した分もあるでしょうか……」
 何かを悟ったらしく。皆まで言わずトウヤは鎧進化をする。そして必死のガードモード。
 対してイェルの方はというと、ここまでの道のりでは爆砕拳で団子を潰してきていたのだが、流石に崖崩れの危険を孕むこの状況では不味いと思ったのか、こちらも身軽にかわす気でいる。
 ……否。飛び越す気でいる!
 無謀! ということ無かれ。勇者とは時として無謀に思えることにも挑戦しなければいけない生き物なのである。
 ギリギリまで岩を引きつけ……
「今だ! でぇぃ!」
 まるでキノコ喰って大きくなったり花喰って火を吐くと言う伝説の髭親父・マ○オのような華麗なジャンプ!
 そう。マ○オのようなのである。
 ただあの髭親父とイェルが決定的に違った点は、踏んでも相手の動きが止まったり倒されたりしてくれないことだった。
「ちくしょうー! こんなところで脱落なんかしてたまるかああぁっぁぁぁっぁ……ぁ……ぁ……」
 リフレインは聞こえなくなる。
 二人は視線を一瞬絡ませ頷き合うと、”友の屍を越えていけ”作戦を実行した。ようは見捨て……絶対にきてくれると信じて先を急いだわけです。


 華麗なKICK!
 砕ける岩(と色々と体の大切なもの)!
 飛び出る悲鳴(と色々なもの)!

「大丈夫ですかなぁ〜ん?」
「無事でよかったわ」
 ヒーリングウェーブをかけて貰って立ち上がったイェルがルゥルとチハヤを見る目はちょっと怯えていたとか。
 見回すと、偉く大所帯。
「皆も大変な目に会ったんだな……」
 しみじみとイェルが呟くと、ジェドは涙を滲ませる声音で答えた。
「うう、これ位でへこたれる程やわじゃないぞ」
 そんな彼の腕が変な方向に曲がってるのはきっと岩のせいだろう。

「ゴメ〜〜ン♪ 待った〜〜〜?」
 と「補給」に出ていたガンナーがデートに遅刻した人の様に戻ると、落ち組はシルヴァの掛け声で駆け出した。
「気合いと友情パワーで何とか登り切ってみせよう。ふぁいと!」 「「いっぱーつ!」」
 彼らの瞳は、ここまできて殴り合いに参加できなかったら莫迦みてぇだからな、と言う意思の焔を湛えて燃えていた。


「どーうやら、ボク達が一番に着いたようだね〜」
「力はあるとのことなので当たらないように。受けるよりは流すか回避しましょう」
 頂上に上るとそこには、デカイモンスターが待ち構えていた。ゴリラ?
 だが、二人のことなど眼中に無いのか、岩を持ち上げ転がすことに集中している。
 その姿に剣を携えて近づいていくリオル。
「デストロイブレードを叩き込んでおしまい。まあ、一人で十分に倒せそうですねー」
 だが、そこで気付く。
 なんかモンスターが焦っている?
 何故そう思ったのかはわからない。
 だが……
 ぅぉぉ……ぉぉぉおお!
 凄まじい遠鳴りのようなものを挙げながら、バコン! ボコン! と岩を砕く音を轟かせて段々と近づいてくる。
 10人近い人間の足音!

 そして、ついに!
 モンスターが投げた岩を飛び出るように崖の向こうから姿を現した集団が空中で砕いた!

「危ないじゃないのっ」
「ライオルの仇は俺が討つ……!って、無事か」
「あ。今わかってていったでしょう? わざとでしょう今の!?」
「ボクの仇ー!」
「よ・く・も……面倒をかけてくれましたね〜……判決は<爆殺>で決定です!!」
「語らず、ただ行うのみ……お前も何も言わずに殺されるっス!!」
「死ね……」
「喰らえ! 恨み辛みの奥義! 斬鉄蹴ぅ!」
 爆炎とか炎葉とか雷刃とか銀狼とか怒りに震える肉体とか。
 いろいろな力の渦に巻き込まれて散っていくモンスターを見ながら、トウヤは
 鎧進化しておいてよかった……
 それだけ考え、涙を浮かべた笑顔で力の本流に巻き込まれていった。


「俺達が必死になって登って来るのをコイツに上から見られてたって思うと、無性に腹立つな……」
 モンスターの遺骸に火を着けて処分しながら、シルヴァは呟く。
「だいぶ……疲労困憊ですが、友情が深まったということで良しとしましょうか」
 ハァハァと息切れしながらライオルが含みのある表情で彼に話掛けると、シルヴァは平気な顔をして答えた。
「ふっ……この程度。俺は何でもなかったけどな?」
 そんな見栄を張っているだけの彼の足はカクカクと震えていて、今にも倒れそうだった。

「リオルさんもお弁当どうっスか?」
 ジェドがお弁当をつつきながら声を掛けるが、リオルはショックに頭を抱えていた。 
「ボクの見せ場が……最初に頂上についたのに……」
「デザートはアップルパイですなぁ〜ん」
「早く帰って、水浴びしたいね。」
 依頼で駆け上がってきたけれど、とても綺麗なピクニックポイント。
 ガックリと着ているのと、ピクピクとしか動かない人を除けば楽しい昼食会だったそうだ。
「無事に麓に辿り着くまでが登山だ。帰り道も気をつけていこうぜ〜 」
 引率のイェル先生も張り切っていたらしい。


マスター:仁科ゆう 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:10人
作成日:2005/06/19
得票数:コメディ24 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。