吹き荒ぶ六つの嵐/烈風を纏いし緑風



<オープニング>


 ギュンッと空を切り裂いて迫る触手。
(「かわした!」)
 そう六風の・ソルトムーン(a00180)が確信した瞬間、触手は軌道を変え、彼を捉えた。
「軌道が読めぬだとっ……?」
 同盟でも屈指の実力者である彼にすら読み切れない軌道。戦慄すら覚える。だがそれと同時に決意も生まれる。
「こんなものをのさばらせておくわけにはいかんっ!」
 続く攻撃は鎧を貫き、ソルトムーンは血を吐いた。次の触手は触れると爆発。よろめいたところに来たさらなる攻撃は彼を締め付け、傷を抉る。
「くっ……」
「敵の力はわかりました、ここは一旦退きましょう!」
 後方に控えていた聖地の風碧・ワンダ(a17641)がソルトムーンに声をかけた。身体を締め付ける触手を引き千切り、脱出。……撤退。幸い敵は巨大な樹木の姿をしたモンスターであり、すばやく動くことはなく、撤退は容易だった。今回はそんな敵の特性を知った上での偵察である。その意味では色々な攻撃を見ることが出来、成功と言えるだろう。
(「だが……かなり手強い」)
 戦いは厳しいものとなるだろう。ソルトムーンは仲間たちにそれを報告するために彼らの待つキャンプへと向かった。

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参加者
旋風の武人・フォルト(a00064)
六風の・ソルトムーン(a00180)
灰の朔風・ヴェクレサス(a07528)
華麗なる夜風・アローシュ(a07546)
夕闇ノ剣・アリス(a10585)
軽業拳法使い・ヤイチ(a12330)
夜風に舞う絢白の星・オパール(a13455)
聖地の碧風・ワンダ(a17641)


<リプレイ>

●ランダム・アタック
 それはいつからそこにあったのだろう。答える者もなく、また問う者もない問い。挑み、討つ。冒険者とモンスターの関係とはそういうものである。
「それが、私達のやるべき事であり存在価値だから……」
 藍染の浮雲・アリス(a10585)が確かめるように呟き、仲間たちに鎧聖降臨をかけた。彼らの前には邪悪な気配を放つ巨大な樹木がそびえ立つ。
「滅びるまでの名ではあるが、受け取るがいい。貴殿の名は緑風!」
 灰色の流離人・ヴェクレサス(a07528)がそう言い放ち、応えるかのように緑風がざわめく。そして戦いは始まった。

 冒険者たちは緑風を半包囲するような陣形をとった。長い射程を考えると気休めではあるが、術者である聖地の風碧・ワンダ(a17641)と夜風に舞う絢白の星・オパール(a13455)は後衛に位置させている。
「まあ、前で殴ってるのがいるのに後ろまで攻撃してはこないよね」
 とは軽業拳法使い・ヤイチ(a12330)の弁。油断というよりは経験則。高い知性があるわけでもない動物の場合、接近してる者への対応をまずする。……が、緑風はそれを上回る知性の無さで予想を裏切ってきた。
「いや、もー、全く無茶苦茶だぜ!」
 ワンダが避けた触手が地面を抉る。あれは鎧を貫く触手だろう。ワンダは防御力をウリにしているタイプではないので、触手の特殊性が高い効果をあげることはない。が、当たれば当然ながら痛い。
「ここまで適当に攻撃してくるとはな」
 六風の・ソルトムーン(a00180)が苦い表情で言う。緑風はその長い触手の射程を生かしているのかいないのか、周囲にいる者を特に脈絡もなく攻撃しているのだった。偵察の際は彼だけが戦闘を行っていたのでわからなかった特性である。
「そもそも後ろに居てもらう以上のことは出来ないし、このままやるしかないですね」
 前衛右翼の武人・フォルト(a00064)はそういって緑風からやや距離をとる。後衛も等しく狙われるなら見極めは当初の予定以上に重要な役割になるだろう。
「一気に肉薄し本体を削る! より速く! 続け!」
 長期になれば被害は食い止めれない、そう判断したソルトムーンは指示を出し、自らも触手の猛攻の中に攻め入る。ほぼ同時に華麗なる夜風・アローシュ(a07546)も続く。イリュージョンステップを戦いの要として用意していたため、彼も速攻を仕掛けるつもりだったのだ。何度かの攻撃をかいくぐった後、彼らは緑風の本体を射程に納めた。

●アヴォイド・フォーム
「アリスさん、貫通がきます」
「オパール、爆発が来るぞ!」
 ワンダとフォルトがそれぞれ注意を促し、応じて回避。
「ワンダ、左へ飛んで」
 爆風で視界を遮られたワンダへは方向まで忠告された。ちなみに忠告したのはヤイチである。彼らの攻撃により触手は何度も切り落とされているが、まるで無尽蔵にあるかのように攻撃は続く。既にそれぞれも何度か触手を受けて手傷を負わされている。狙っての連続攻撃はないが、連続攻撃してこない保証もなく、いつまでも気が抜けない。そんな状況は精神的疲労も助長させていた。
「しかもやたら丈夫だし。……性質悪いね」
「全くだ、回復優先にしといて正解だったかな? っと、来たっ!」
「……決め手に欠けていますね。攻め込んだ2人も決定打を放てないでいる」
 このままではいけない。誰もがそう感じていた。

 本体の前まで踏み込んだソルトムーンとアローシュだったが、それでもまずは触手の相手をすることになった。ソルトムーンの流水撃がまとめて薙ぎ、間を縫って来る攻撃をアローシュの剣が切り払う。
「ナイスコンビネーション。……しかしこれでは埒があきませんね、少し無理してもよろしいかな?」
 アローシュが狙うのは薔薇の剣戟。幾度かの攻撃を重ねることで対象を完全に戦闘不能に追い込む技である。未完成とはいえ、決まれば決着となるため切り札と言える。
「……よかろう」
 ソルトムーンが重く響く声で答えた。まずはアローシュに攻撃が来るタイミングを待つ。
「右、左、左」
 短く回避する方向だけを告げる声。思考を放棄し、反応だけを行う。タイミングが合わないと判断したものはソルトムーンが自らの身体と武器ではじく。そうして生まれた……否、作り出した攻撃の機会に技は放たれた。1、2、3。軽快なステップから繰り出されたアローシュの攻撃が緑風に決まる度、薔薇が舞う。そして4度目の薔薇が舞う。……アローシュと共に。
「アローシュ!」
 カウンター気味に触手を受けたアローシュは自ら大きく後ろに跳ぶことでダメージを減少させていたが、それでも膝をついた。自らを盾にしたソルトムーンのダメージも大きく、彼も一旦下がって来ている。オパールがヒーリングウェーブで2人を癒した。

 2人も戦線を離脱した状態になると当然1人に対して加えられる攻撃も増える。ヴェレクサスとヤイチがそれを必死で捌いていた。総崩れになる危険を避け、フォルトとアリス、ワンダはあえて射程から下がり、カバーリングと回避指示をする体制である。そうして彼らは短期の回避に集中し全員の戦線復帰を待つのだった。

●フェイタル・ブロウ
 短く長い時が流れた。陣形は前衛にソルトムーンとアローシュを再び加えた戦闘開始直後のそれに戻っている。ただし、それぞれの疲労の色は濃い。特に最も過酷な状況を乗り切った直後のヴェレクサスとヤイチに顕著である。
「本気でヤバイね」
「これは撤退した方がいいかもしれないな……」
「……無理は禁物か」
「いや、もう一度だけやってみましょう」
 ソルトムーンが撤退の指示を出そうとした時、アローシュが言った。
「次で決めれなかった場合、命に関わるかもしれんぞ?」
「次ならまだ大丈夫……ですよね?」
 ソルトムーンに問われ、後衛の2人へ聞くアローシュ。
「ギリギリ……かな」
「次の次は絶対ないけど」
 2人はしばし逡巡してから答える。
「では、そういうことで……」
「でも! ……無理はしないで欲しい」
 緑風に向かおうとするアローシュをオパールが引き止めた。
「無理じゃないと判断してくれたのでしょう? だから信じます、貴女と仲間を」
 そう言ってウィンク。ちょっと照れるオパール。
「あー、らぶらぶこわーい」
 棒読みで誰かが言った。
(「これならまだいける……か」)
 危険だと思ったときが撤退時、それは真実。しかし、気持ちだけでも変われば、そこにまた勝機が生まれることも確かである。ソルトムーンは戦闘継続の判断を下した。

「っしゃあ! いくぜ!」
 ワンダがエンブレムシャワーを放つ。数は多いが耐久力が高いわけではない触手は、ほとんどがそれで攻撃不能となる。彼は温存していたそれを容赦なく撃ち、彼以外の接近のための隙を生み出した。突き進む冒険者たち。爆発をともなう職触手が迫り、着弾する前にヤイチに切り落とされた。軌道を変えて迫る触手はフォルトが見極め、防ぐ。トゲを持つ触手をアリスがあえて我が身で受ける。鎧を貫く鋭い触手はアローシュに届く寸前で影から伸びた六連の銀閃で輪切りになった。あと一歩。
「上からも来るっ!」
 不意をうって上から来ていた触手は間一髪、ソルトムーンの警告でかわした。冒険者たちが、先ほどよりも大きな好機を作り出すために攻める。攻めて攻めて、攻める。
「なんとか敵さんも弱ってきたみたいだが……何か動きが変だ、気をつけろ!」
 ワンダが警告を発すると同時、緑風自身が大きくたわみ冒険者たちの上にその巨体を振り下ろした。

 ……振り下ろしたかに見えた。緑風は振り下ろそうとした姿で止まっている。
「我が一撃は……朔風が如く」
 緑風の切り札が放たれる直前、ヴェレクサスのシャドウスラッシュが一瞬早く決まっていたのだ。緑風は戸惑うように揺れる。その好機が見逃されるわけもなく
「遥かな眠りの旅を……」
 2度目の、そして最後の薔薇の剣戟が緑風を捉えた。

●エンド・フェイズ
「なんとかなりましたね」
 ほっと息をつくフォルト。
「最後のアレ、どういう技だったんだろうな」
「見たかったかな?」
「いや、勘弁」
「私もだよ」
 ヤイチとアローシュが笑う。勝利を手にした者だけが得られる達成感がそこにはあった。そんな中アリスは少し離れ、緑風の死骸を見つめていた。
「これが、我々の成れの果てと言うのか……とは言え、哀れなものだ」
 呟く。
「どうしたんだ?」
 アリスが振り向くと、仲間の輪から離れた彼女を心配してワンダがやって来ていた。
「いや、哀れなものだなと……」
「って、ああっ!? 血が出てるぜ!」
 問い掛けておいて、聞かずにワンダが腕に応急処置を施す。文句を言おうとするアリスだったが
「悪いがアビが底をついたから今はこれで勘弁な」
 照れたように笑うワンダを見て黙って口を閉じる。
「らぶらぶこわーい」
 誰かが棒読みで言った。


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