Let‘s Enjoy Fishing! part2



<オープニング>


「今年こそ、ヌシを釣るべ!」
 冒険者の酒場でゴタックがぼうぼうに燃えている。何事かと首をひねる冒険者達に、ヴェインはクスクスと笑いながら壁に貼られたポスターを示した。

―――――――――――――――――――――――――――
 今年もこの季節がやってきた!
 ルアン湖フィッシング大会開催決定!!
 勇者よ、ヌシを釣り上げろ!
―――――――――――――――――――――――――――

 ……なるほど、去年釣り損ねたヌシを今年こそはと張り切っているわけだ。あの調子ではまた自分の誕生日を忘れているかも知れない。
「なあ、なあ、みんなも一緒に行くべ! 晴れるといいな〜♪」
 無邪気な顔で竿を磨くゴタック。
 顔を見合わせる冒険者達。
 さあ、Let‘s Enjoy Fishing?


!<注意>!
 釣り大会に参加される皆さまにお願い。

 お好きな数字を5つ、合計が30になるようにして、プレイングに書き添えて下さい。(0は不可)
 例)10・5・5・8・2(合計30)

 釣れた数と大きさを判断する材料にさせていただきますので。
 優勝者は数・大きさの両方で決定します。

マスターからのコメントを見る

参加者
NPC:深緑蒼海の武人・ゴタック(a90107)



<リプレイ>

 小鳥たちの囀りがルアン湖を囲む森から聞こえる早朝――いつもならまだ温かいベッドの中で夢を見ている時間だというのに、湖畔には大勢の人々が集まっていた。そう、今日は年に一度の特別な日。『ルアン湖フィッシング大会』の大きな横断幕が湖を渡る風にそよいでいる。
 朝靄の立つ冷えた空気を胸いっぱいに吸い込んだ深緑蒼海の武人・ゴタックも釣り道具を抱えて意気揚々と大会受付本部に足を運ぶ。その姿を見つけた無垢なる闇払う白雷・リンディはお弁当を配る手を止め元気に声を掛けた。
「おはよう、ゴタックさん♪」
「リンディ! おはようだべ。みんな早いよな〜」
 優しい笑顔に迎えられたゴタックもニコニコ笑顔で挨拶をすると、とっくに受付を終えた冒険者達を見て目を丸くする。
「ふふふ、釣りは朝と夕方が勝負時なのです。ああ、ゴタックさん宜しくです。狙うは優勝です、この釣り場では初めてですが……負けないぜ〜です」
 西の小さな白き城壁・ダンドリオはかなりの釣り通らしい。怪しく笑うと、その場に居た面々に向け堂々の勝利宣言。
「狙うはヌシのみ! ってね〜♪」
 大型専用の竿を持った宿無し導士・カインが悠々とその場を通り過ぎていく。ライバルは多そうだ。
「おらも負けてらんねぇな! 頑張るだよ」
「よし、受付用紙に手形をポンと頼むぜ♪」
 ……手形? 奮起するゴタックに羊皮紙と墨を差し出したのは見るからに怪しいチョビ髭の釣り師。
「……もしかして、ダグラスだべか?」
「いやいや、俺は成長記念のぎょたっく(魚拓)が欲しいだけの、しがない釣り人だ」
「よう、ダグラスちゃん、ヒースちゃん、ゴタックちゃ〜ん、ひっさしぶっり〜ぃ♪」
「おう! ダウザーの旦那♪」
 漢にやりを浮かべて否定したそばから、放浪傭兵稼業・ダウザーの挨拶に手を上げ答えるニュー・ダグラスである。懐かしい顔に出会えたゴタックも嬉しそうに尻尾を振った。
「みんな、久しぶりだべ〜♪ ヒースも元気だったべか?」
「ここでお会いできて嬉しいです!」
 クルクルと華麗にターンを決めた明告の風・ヒースは口に咥えた薔薇をゴタックに飾って王子様スマイル。
「お誕生日おめでとうございます」
「あ、ありがとうな〜」
 思わず照れてしまうゴタックである。
「ゴタックさーん、お誕生日おめでとうですー♪ 大きいのを釣って、ゴタックさんにプレゼントするですよ〜♪」
 にこにこ笑顔で気高き銀猫・エリスもお祝いの言葉を贈る。しきりに照れるゴタックの後ろから、そっと忍び寄っていた見習い仙道士・サツキが抱きついた。
「だ〜れだっ♪」
「!? ……サツキだべ?」
「おっす! 久しぶりなりね、ゴタックっち」
 成長した姿に驚くゴタックにサツキは変わらない笑顔で挨拶すると、楽しそうに釣竿を掲げた。
「今年もヌシ釣りにちゃれんぢするのら、お〜♪」
「お〜♪ だべ」
 つられて一緒に気勢を揚げるゴタック。その視界の端を『託児所』の看板を持つトラ猫着ぐるみがポテポテと歩いて行った。

●午前の部
「いやぁ! ミミズ〜〜〜!? 誰か何とかして!」
「わきゃー!! 虫うにょうにょしてるよ〜、こわいよ〜」
 湖畔に響き渡るエルフの吟遊詩人・リィンとみつあみ眼鏡の・クラウディットの悲鳴。釣りの餌は……女性にはちょっと酷かも知れない。
「苦手なのか? 俺は慣れてるから平気だぞ。つけてやるよ」
 通り掛った蒼の翼雲・グロウがしょうがないな、と大人びた仕草で肩をすくめると、餌を摘み上げる。月下幻想曲・エィリスはそっと自分の餌箱を差し出した。
「特製の練り餌ですわ……どうぞお使い下さいませ」
 私も苦手ですから、とコロコロ笑うエィリスにお礼を言って、練り餌を受け取ったクラウディットは首を傾げる。
「これがお魚さんのごはん? 水の中に入れればいいの〜?」
「……お困りでしたらお手伝いしますぞ?」
 見兼ねたのか、眠らぬ車輪・ラードルフが手助けを申し出た。続けて二匹の大物を釣り上げた後、竿が動かず暇でもあるらしい。
「私でも釣れるでしょうか?」
 彼の魚籠で跳ねる丸々とした魚を見て溜息を零すリィンに、ラードルフは悠然と微笑んで言った。
「あまり気負わずのんびり楽しみましょう。魚も天下の回り物って言いますから、そのうちかかるでしょう」

●午前の部その2
「そこに魚がいるから釣るんですよね」
 とは楽風の・ニューラさんの名言ですが。
「根気の勝負……正直、手早くナパームアローの爆破衝撃によるガッチンコ漁をかましたくなるが……」
 ピクリとも動かない浮に眠そうな目を向けてぼやく朽澄楔・ティキは「我慢だ我慢」と呪文のように呟いている。ゴタックの動きを観察して……とも思っていたが、当の本人が初心者へレクチャー中ときては。
「ランドアース式の釣りの仕方は知らないなぁん」
 大きな錨を用意していた氷狩の粒・メロディに。
「ゴダックさん、釣り教えてくれないか? 初めてでな!」
 頭をかく霧よりの使者・ミストリード。
「どうやったら上手くお魚さん釣れるかな〜?」
 ちょこんと首を傾げるまどろむ子猫・レティ。そんな三人にゴタックは丁寧に釣り糸や針のつけ方、浮の位置などを教えていった。やがてそれぞれに魚がヒットすると、ひとしきり大騒ぎの後、笑顔が広がる。一匹釣れれば楽しさも倍増するのが釣りの魔力かも知れない。
「ゴタックくんに負けないように、頑張ってヌシを釣り上げるぞ〜♪」
「おらも頑張るべ!」
 笑顔で仲良く釣り糸を垂れるゴタックとレティの横では。
「俺って才能あるかも知れないな」
「才能ですか、ふふふふ〜です」
 大物を釣ってご満悦なミストリードをダンドリオがちゃかしていく。
「むう!? く、惑わされるな俺! 心の落ち着きは大切なんだな!」
「なぁん?」
 そんな二人をメロディが不思議そうに見ていた。

 宿命のライバルと言えば、思い出さずにはいられない二人が居る。昨年涙を呑んだ柳緑花紅・セイガは今年こそはと釣竿に念を込めていた。それはもう、真剣に。
「シリアス〜〜〜〜」
 ……本人はいたって真面目です。
「ん? うさぎ……か?」
 ふと、木陰で揺れるウサミミが視界に入り、セイガはゴシゴシと目を擦る。その正体は三角座りでちんまりと佇むヒースだった。
「アンタと、アンタには負けませんから……!」
 と、ダウザーとダグラスに指差し宣言したものの、釣り箱を開けてみれば去年の『漢手紙』が入っていただけで。がっくりうな垂れ、哀愁の釣りうさぎ(着ぐるみ着用)になっているのである。が、そんな事情を勿論セイガは知らなかった。
「うさぎが釣り……? ははは、まさかな〜」
 乾いた笑いで周囲を見渡すセイガ。その様子を『ラッキーアイテム指差し確認』中のエルフの紋章術士・カリュウトが遠目に見ていた。
「セイガさんが挙動不審だ……」
 昨年のチャンプは今日も絶好調。3匹を釣って今は清麗なる空牙の娘・オリエとの釣りを楽しんでいる。オリエの方もカリュウトの教え方が上手いのか、かなりの大物を上げていた。
「どうしたんだい? ああ……セイガが気になるのか。隣に行く?」
「ちーっとも気になんない。綺麗なお姉さんの隣が一番おいしいです」
 微笑ましそうに遠くの蒼と近くの赤を見て、小さく笑ったオリエの言葉にカリュウトは悪戯っ子の笑顔で返す。
 やがて遠くからお昼を告げるリンディの声が聞こえてきた。

●午後の部
 リンディの手料理で腹ごしらえを済ませれば、晴れ渡った空と爽やかな風に眠気を催す者も出てくる。
「ハンゾー先生、釣らないのー?」
「ふむ……拙者は忍び、耐え忍ぶもの。今は唯その刻を待つのみ……」
「カッコイイこと言ってもタポ腹だし。まだお団子食べてるしっ」
 ぴよぴよ・ジーニアスの鋭いツッコミにも、澪標・ハンゾーは青い湖面を眺めてごろ寝を決め込む。ゆるやかに流れていく時間を楽しんでいた。それもまた、釣りの醍醐味なのだから。
「このお茶、美味しいですね。どこで買うんですか?」
「ああ、それは知り合いの茶園で分けていただいているんです。ファミリアさんのお菓子も美味しいですよ」
 蒼の想唄・ファミリアはヴェインの淹れたお茶と持参したお菓子でティータイム中。お喋りに花が咲く二人の会話は市場の話しや、料理の話し、冒険の噂話。他愛のないものばかりだけれど、笑顔は絶えない。
「ゴタックさんは海釣りもなさいます?」
「うん、おら海も川も好きだよ」
 ゴタックも波間の灯火・クレイと釣り談議で盛り上がっていた。今まで釣った魚や釣り道具の話しなど、会話は尽きない。オリエの淹れてくれたお茶とファミリアのくれたゼリーで一息ついていると、狼牙の守護神・アールグレイドが通りがかりに声を掛けていく。
「誕生日なんだって? おめでとう。これ良かったら使ってくれよ」
「ありがとうな〜」
 気さくな様子で手渡された『お手製へんてこルアー』をゴタックは喜んで受け取った。
「それ、へろっと変な動きをするから面白いのが釣れるぜ」
「へろ?」
 きょとんと首を傾げるゴタックを見て、白鴉・シルヴァが笑いを堪えながら肩を叩いて励ます。
「頑張れよ、健闘を祈る」
 そう言う彼も、初挑戦ながら3匹を上げているのだ。
「……釣った魚って、食っていいのかね?」
「うん、焼いて食うと旨いだよ」
 魚籠で跳ねる丸々とした魚を見ながら言うシルヴァにゴタックが頷いて、その味を思い出したのか相好を崩す。
「塩だけの味付けで素材の上旨さを味わうなんていうのもいいですよね。というわけでお塩はユトゥルナの荒塩をどうぞー」
「おら塩焼き大好きだ! 楽しみだべ〜」
 ニューラのさり気ない宣伝が効いたのか、もう夕食が恋しくなるゴタックだった。

 託児所で預かった子供達を見守る剣舞姫・カチェアは近付いてくる影に気付いていた。背中合わせに座りこんだ彼は彼女に背中を預けると柔らかな声で呟く。
「ちょっとばかり眠るから、よろしくな」
 支え合う背中越しに伝わる温もりは彼女に安らぎを与えてくれる。カチェアは静かに微笑むと、囁くように優しく言った。
「……ゆっくりと休め」

●午後の部 ビッグヒット!
 その時は突然来た。浮が深く沈んだかと思うと、メロディの持つ竿が凄まじい勢いでしなる。
「はわわわ〜」
「危ねぇ!」
 湖に引き込まれそうな小柄な体をシルヴァが咄嗟に抱えた。糸が左右に振られ竿が折れそうなほど軋む、かなりの大物だ。
「これはいかん!」
「このままじゃ糸が切れるべ!」
「竿を相手の動きに合わせて!」
「メロディ、頑張れー!」
「が、頑張りますなぁん!」
 自らも大物と格闘していたハンゾーが、ゴタックが、その他大勢の冒険者達が竿を投げ捨て助勢に駆けつけてくれる。皆の応援に守られ、メロディは力いっぱい頑張れた。
 上を下への大騒ぎの中、力みと緊張で顔を真っ赤にした少年は長い戦いを耐え……ついに引き上げた釣り糸の先には、ルアン湖のヌシがいた。銀の鱗が夕日に照らされ茜色に輝く。
 一際大きな歓声と拍手が沸き起こる中、ルアン湖フィッシング大会はその幕を閉じた。

●そして、お祭り騒ぎ〜Let‘s Enjoy Fishing!
「「「メロディ、優勝おめでとう!」」」
「「「ゴタックさん、誕生日おめでとう!」」」
 そんな乾杯の音頭で始まったゴタックの誕生日パーティーには、リンディの用意した大きなケーキを中心にたくさんの魚料理が並んでいる。それは全て、冒険者達が釣った戦利品だ。
「ゴタック、誕生日おめでとー!」
 ホーリーライトでライトアップしたグロウが元気な声で祝福すると、ニューラが白烏琴を手に取った。流れるあたたかな曲は誕生日の祝歌。
「みんな、ありがとうな〜!」
 レティに贈られた花束を手に、ゴタックはとびっきりの笑顔で心から礼を言った。他にも贈られたプレゼントの数々を手に何度も何度も「ありがとう」を繰り返す。
 エリスの作ってくれた焼き魚は本当に美味しかった。リィンのおにぎりはちょっと形が崩れていたけれど、とても温かい味がした。
 ラードルフのくれたワイルドファイア産(?)熱帯魚ぬいぐるみ入りの魚篭も、カチェアのくれた手作りの皮細工も最高に嬉しかった。ジーニアスのくれた『お魚着ぐるみ』だけはちょっと恥ずかしくて着れなかったけれど。
「ゴタック殿、また成長されたでござるな」
 赤いマフラーをハンゾーがそっと巻いてあげると、ゴタックの尻尾がふりふり動く。クレイと乾杯したワインにほろ酔いの彼はその後、メロディに誘われるまま踊り出す。
「自然の恵みに感謝ですなぁん」
 トントントントン、軽やかに。漣のリズムに誘われるよう、踊りの輪は広がっていった。
 
 空に星が瞬く頃には篝火が赤々と湖に映る。
 笑顔と笑い声がルアン湖のほとりにいつまでも響いて―――
 特別な日を大切な仲間と過ごしたゴタックは最高に楽しい夜を過ごすことができた。
 そう、きっと来年も
 Let‘s Enjoy Fishing!


マスター:有馬悠 紹介ページ
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