止めろ! 進撃の岩巨兵!!



<オープニング>


……ン、ズ…ーン、ズズ…ン

「ん? 何の音だぁ? 山崩れでもおきたのかな?」
 ここは山の麓にある平和な街。人々が行きかい、日々の暮らしを営んでいる。
 だが……

「な、なな、なんだありゃあああぁぁぁ!?」
 一人が街の向こうを指す。その向こう側には森があるはずだ…と、頭を巡らす人々。
「う、うわぁ、なんだぁ!?」
 木々の間から、岩…いや、岩でできた頭が見える!
「きょ、巨人だー!」
「いや、巨大な岩の像だぁぁぁぁ!!」

ズズーン、ズズーン!、ズズーン!!!


「事態は非常に切迫しています」
 と、いう台詞とはうらはらに、やっぱりどこかのほほんとしたフル。
「今回の敵は、巨大な岩の巨人です。仮に【岩巨兵】とでも呼称しましょうか。この岩巨兵、何が目的かはわかりませんが、直線状に進撃を続けています。既に、進路上にあった街が一つ被害を受けました。幸い、進路上の建造物を破壊するだけで人的被害はありませんでした。ですが、このまま放置して置くわけにもいきません。次の街に到達する前に、討伐してください」
 そして、相手の詳しい説明に入る。口調にわずかながら熱がこもってきたような気がしたのは、冒険者達の気のせいであろうか。
「相手には幾つか特徴があります。まず、巨大であること。次に頑丈であること。そして、恐るべき能力を秘めているのが、両手の部分です。なんと、その両手にあたる部分が巨大な剣になっているのです。さらに、その刀身が回転し打ち出されてくるという…。 ああ、なんて燃える設定…。まさに男のロマンです…」
 なんか陶酔しちゃってるフル。
「おおっと、失礼。その他、両手を組み合わせるようにして、両の剣を一つの剣としての強力な一撃。周囲をなぎ払う攻撃もしてきます。また、変形…もとい、防御力を上昇させるアビリティも使用するようですね。ある程度の戦術的判断もできる、遠近の両攻撃、防御にバランスの取れた強敵といっていいでしょう」
 静まり返る一同。まさに動く要塞とでもいうべき敵のようだ。
「また、岩巨兵と街の間には平原が広がっています。ある程度の時間的猶予はあるとはいえ、タイミング的に小細工なしの勝負となるでしょう。協力して、なんとか勝利をもぎとってください」

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参加者
ちっちゃな重騎士・パン(a00909)
人間失格・リリス(a00917)
白妙の巫女姫・ミラ(a19499)
天雷の剣凰・ライガ(a20728)
黒薔薇に魅入られた銀の堕天使・カナメ(a21595)
大地を翔ける蒼き翼・カナメ(a22508)
大敵・フウカ(a24764)
雄風を纏いし碧眼の黒猫・ユダ(a27741)


<リプレイ>

●咆哮
 夕日が世界を赤く染めてゆく。
 その、沈み行く太陽を背に受けて、大きく伸びる影一つ。
 あまりにも巨大な影。
 それが地平からやってくる。

 …ン、ズ……ン、ズズ…ン!!

 迫り来る巨大な岩の巨人、岩巨兵。
 それらを正面から迎え撃つのは、ちっちゃな重騎士・パン(a00909)、少女地獄・リリス(a00917)、雄風乱舞・ユダ(a27741)、黒薔薇桃色堕天使・カナメ(a21595)の4人。
 また、白銀を纏いし氷狼の美姫・レイル(a12761)が怪我を押してのサポートに着いている。
 と、彼ら4人に向かって、正面から走ってくる影。
 赫焉・フウカ(a24764)だ。先の戦役で受けた傷が癒えていないため、今回は戦況の把握と後方からの支援に回っている。
 そのフウカが岩巨兵の偵察から帰って来たのだ。
「岩巨兵が、弓の射程にはいります」
「頃合、か。カナメ、遠距離からの攻撃を頼む」
 フウカの報告を受け、黒薔薇のカナメに弓による攻撃を頼むユダ。
「はいはい、了解しました。では、行きますかね」
 ユダに答えるやいなや、カナメは愛弓の白百合に矢をつがえる。
 その矢に、グリモアからもたらされる力が込められる。
 戦闘開始とばかりに、パンが仲間に鎧聖降臨をかける。そして、自分には勇猛の近いを合わせて使用。
「必ず…此処で食い止めるです…!」
 誓いの言葉とともに、もたらされる守護。
 それは、戦場からの逃走をも不能にする諸刃の剣…パンの決意がそれだけ固いということの証。
 そんなパンの様子を横に見やりつつ、
(「怪我とか無茶しそうな子とか多そうとは思ったけど…、まぁ、最悪、俺が盾代わりになるかね」)
 武具の魂と守りの天使を自分にかけながら、内心で呟くリリスの頭上を、カナメの矢が岩巨兵に向かって飛翔する。
 獲物に狙いを定めたハヤブサの如く空を翔け、吸い込まれるようにして岩巨兵の右胸を貫く。
 しかし、何事もなかったかのように前進をつづける岩巨兵。
「おやおや、これはこれは…」
 さして驚いた風でもなく呟くと、すぐさま次の矢をつがえる黒薔薇のカナメ。
 その間、ユダは相手のアビリティの射程ぎりぎりのラインに陣取り、
 前進を続ける岩巨兵の正面には、パンとリリスが立ちはだかる。
「ここから先は…通しません…!」
「残念ながら、ここから先は通行止め…お帰り願おうか?」
 進路を阻む物を認知した岩巨兵の目が、赤く輝く。

 ルォォォォオォォォォォ……!!!

 辺りに響き渡る彷徨を上げる岩巨兵。
 その体が、異様な振動音を上げつつ変わってゆく。
 より鋭角的で、戦闘的なフォルムへと。

 ゴ・ゴゴ…ゴゴゴォォォ……ン

 後方から岩巨兵へと接近していた天雷の剣凰・ライガ(a20728)、櫻の姫巫女・ミラ(a19499)、大地を翔ける蒼き翼・カナメ(a22508)。
 彼ら三人は、後方から岩巨兵に接近し、撹乱することが任務である。
 ユダの師匠である、艶風に舞う煌紫の華・アコ(a14384)もサポート要員として参加している。
 その三人の眼前で変形が始まった。
「ふむ、成る程。これが変形という奴か」
 変わりゆく岩巨兵の様子を見つつ、呟くライガ。
「な、なにっ? この敵はぁっっ!」
 呆然とするミラ。今までの敵とは異質なその様子に、武器を持つ手が震える。
「なに、どんな敵であろうと、オレ達はオレ達にできることをするだけさ。さぁ、いこうか」
 蒼き翼のカナメがミラの肩を叩きつつ、そう励ます。
「…そう、ですね。あいつの好きにさせるわけにはいきません…!…地獄の業火に焼かれよっっ!!」
 励ましをうけて立ち直ったミラは、岩巨兵に向けて緑の業火を打つべく、手にした杖にアビリティを注ぎ込んだ。

 変形を終える岩巨兵に、リリスとパンが左右反対方向から距離を置きつつ、弧を描くようにして駆け寄る。
 敵をぎりぎりまで引き付けてから、一気に分散・接近。
 ドリルパンチ…もとい、チェインシュートを封じるためだ。
「確かにロマンかもしれんけど、流石に抉られたり刺されたり潰されたりってのは遠慮…抉ったり、のほうが好きだし」
「いくですよ…!」 
 銀色に輝く剣を構えて、駆ける勢いそのままに大地斬を決めるパン。
 曲刀を無造作に叩き込むリリス。
「防御が高ければ、それに応じた戦をするまで」
 背後からは、ライガの貫きの矢を乗せた攻撃。
 さらに、ミラの緑の業火、黒薔薇のカナメの貫き通す矢、ユダと蒼い翼のカナメが放ったソニックウェーブが、それぞれ炸裂する。
 巻き起こる爆発。
 立ち込める煙。
「やった…の?」
 もうもうと立ち上る煙を見上げながら、思わず呟くミラ。
「いえ……、まだ、こんなもので倒れる相手ではないです」
 少し離れた位置で呟くフウカ。
 それと同時に、ぐぉぉぉ…! と言う効果音を上げつつ、煙の中から現れる岩巨兵。
 煙をなびかせながら、両腕の剣で周囲をなぎ払う。
 巻き起こる風が凄まじい旋風となり、周囲に接近していた者達に襲い掛かる。
 恐るべき威力を減殺しきれず、少なからずダメージを冒険者達。
「パターンは単純だが、その圧倒的なパワーでそれをカバーする、か」
 レイジングサイクロン後にできる岩巨兵の隙に、仲間とともに打撃を与えつつ、そう結論をだすライガ。
「手ごわい…ですね。でも…通しません…。盾・壁としての…僕の役割ですから……」
「俺らがここで頑張る限り、他の仲間の負担が減るからね…。そうそうへばってられないのさ」
 前衛の三人はトライアングル状に岩巨兵を囲み、辛抱強くアビリティで隙を作り、攻撃し、敵の攻撃を耐え続ける。
 それに対し、岩巨兵は前衛と中衛をまとめて排除すべく、レイジングサイクロンを主軸として攻撃を繰り返す。
 命中精度に難はあるが、巨大なダメージが予想される兜割りと、回転式チェインシュートを封じることはできた。
 あとは、レイジングサイクロンで押し切られるのが先か、こちらが押し切られるのが先か…。
 正面からの打撃戦が始まった。


●苦闘
 既に戦闘が始まってから、いくばくかの時間が経っていた。
「そう何時も相手に隙ができるわけではない…か」
 レイジングサイクロンや、達人の一撃、気高き銀狼で作られる隙に応じて、ソニックウェーブを叩き込み続けているユダ。
 今現在も、額に汗を浮かべつつ、岩巨兵の隙をうかがっている。
 その汗は、緊張のせいだけではないだろう。既にかなりのダメージを与えているはずの岩巨兵が、いまだに衰えることなく攻撃を繰り返す様に、流石に焦りを覚える。
「だが、ここで焦って前に出ても、皆の足を引っ張るだけだ…な」
 平常心を保つため、あえて声にだして、自分に言い聞かせる。
「皆を信じて、耐えましょう。こちらが苦しいときは、相手も苦しいときと言いますし…ね」
 ユダの声が聞こえたのか、同じく辛抱強く射撃を続ける黒薔薇のカナメが答えを返してくる。
 それは、カナメ自身も同様に焦りを抑えているからなのだろう。
 頷いて、岩巨兵に向き直るユダ。
「そうだな…、一つ根競べといくか……!」

「…はぁ…しつこいなぁっ…いけ、気高き銀狼たちよ!」
 肩で息をしつつ、未だ倒れない敵に、そして倒せない自分を歯がゆく思いながら紋章を描くミラ。
 何匹目かの輝く銀狼が岩巨兵に襲い掛かり、その動きを封じ込める。
 魔法に対する耐性はそれほど高くないのか、思惑道理に銀狼は岩巨兵の動きを封じてくれている。
 だが、その代償として、既にミラはかなりの手傷を負っていた。
 アビリティの射程がレイジングサイクロンの射程と重なってしまうこともあり、攻撃と回復を行うには、どうしても敵の間合いに踏み込まなくてはならなかったのだ。
 アビリティと、攻撃の反動で動きを封じられる岩巨兵の攻撃回数は、決して多くはない。
 だが、一撃の威力があまりにも巨大すぎた。
「ミラさん、相手の攻撃は強力です…! 一旦引いたほうが…っ」
 後方からヒーリングウェーブを飛ばしつつ、フウカが叫ぶ。
 回避系、防御系、いずれのアビリティも無い上に、君を守ると誓う、などのダメージ軽減アビリティなどもかけていない状態でのミラの戦闘は、あまりにも危険と見て取ったからだ。
 ここまではヒーリングウェーブで持ち堪えてきたが…!
「ミラ、無理はするなっ、次は俺がソニックウェーブを…!」
 ミラにディバインチャージをかけつつ、隙を見てソニックウェーブによる攻撃を繰り返していた蒼い翼のカナメも、ミラを後方へと下がらせようとした。
 刹那。

 ォォォォォォォオオオオオオ!

 銀狼を振りほどき、岩巨兵がその巨大な刃を振るう。
 巻き起こる竜巻に吹き飛ばされ、ミラの繊細な体が宙を舞い、地面に叩きつけられる。
「くぁぁっ!? こほっ……ごめんなさい…後は、頼みます…」
 ぼやける視界に駆け寄ってくるカナメとフウカを写しながら、ミラの意識は遠のいていった…。 
 倒れて意識を失ったミラを抱き上げ、呼びかけるカナメ。
「ミラ、ミラ…! …っ、お前の頑張りは、無駄にしないぞ…!」
 カナメは一旦後方に下がり、安全圏にミラを横たえる。
 その青い瞳に、真剣な怒りが篭る。
「あたしが、全力でバックアップをする。カナメ、あいつを…倒してくれ…!」
 眼前で仲間を傷つけられた怒りと、負傷している自分に対する怒り。
 フウカは岩巨兵に向かって切りかかりそうな、激発寸前の自分の感情を必死に抑えてながら、カナメに語りかけた。 


●崩壊
 ミラが倒れ、回復アビリティも残り少なくなってくる。
 流石に、幾人かの脳裏に撤退の文字がちらつき始めていた。
 このままでは、相手の生命力を削りきる前にこちらが…そんな予感が、冒険者達の頭をかすめる。 
「退けません…これ以上被害は…出させないのです…」
 それでも諦めず、執拗に大地斬を叩き込むパン。
「不退転か。…俺も付き合おう」
 その様子に、ライガも覚悟を決め、両手の煌天雷凰 双燕翼を構えなおす。

 ビキィ……!

 不意に、低い、異様な音があたりに響き渡る。
 パンが大地斬を決めた岩巨人の一点、本当に僅かなものではあるが、ひび割れが生じていた。
「…よし、勝機だね。…倒させてもらうよ」
 この機を逃さず叩き込んだリリスの達人の一撃。
 自然すぎる動きが岩巨兵の不意をつく。
 その動きが止まる。
「ふぅ、やっとですか…待ちかねましたよ」
 隠しようもない喜色を声にまぜ、ここぞとばかりに、ひび割れに向けて矢を放つ黒薔薇のカナメ。
 放たれた矢が光り輝き、雷光となって空を斬る。
 同時に、
「穿て! 雷霆の如く!」
 文字通り雷霆と化したライガの一撃が
「喰らいな、こいつはミラの分だ!」
「終わりにさせてもらおう…」
 ユダと蒼い翼のカナメの、前後からのソニックウェーブが襲い掛かる。
 冒険者達が見守る中、攻撃を受けて大きく傾いだ岩巨兵が、再び攻撃をするべく両腕を振り上げる。
「…まだ…戦うですか……!」
 武器を構えるパン。
「…いえ、どうやら終わったようです……」
 フウカが言うのと同時に、岩巨兵のひび割れが一気に全身へと広がる。

 ズ・ズズ……ズズズズズ………!

 その巨体が、地鳴りのような唸りを上げて崩壊してゆく…。
「やれやれ、一時はどうなることかと思ったけど…、退屈しのぎにはなったかね」
 言いながら、大きく息をつくリリス。
「退屈しのぎ、か…。俺も、それくらいの事を言えるようになりたいものだ」
 返答しながら、助っ人に来てくれた師匠に礼を言わなくては…そう考えるユダ。
 そんな生真面目なユダに、リリスは苦笑で答える。
 その傍らで、お互いの健闘を称えて、無言で手を叩き合うライガとパン。
「いや、病み上がりなのに無茶してましたねぇ。無理しないって言ってたのに…いえ、格好良かったですよ?」
「うるせーっ。無茶と無理は違うからいいんだよ…。お前だって、結局後方にいて、守ってくれてないじゃんか…」
 後ろのほうでは、二人のカナメが腐れ縁な会話を繰り広げながら、崩壊する様を眺めている。
「あ…敵…は……?」
「よかった、気がつきましたね。大丈夫、ミラさんの頑張りのおかげで、他の人は無事なまま倒すことができましたよ」
 気がついたミラに、微笑みながら報告するフウカ。事実、もう少し岩巨兵が倒れるのが遅ければ、他にも数人の怪我人がでていただろう。
「そっか、よかった…。なんとかなった、ね」
 そういって笑うミラに、フウカは同じく笑顔で答えたのだった。


マスター:PE2 紹介ページ
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