星祭り・ほしくずひろい



<オープニング>


「星屑って言っても、所詮はこれだけどね」
 そう言って手にしていた小さな塊をエルフの武道家・クリュ(a90246)の口の中に放る。
「……ん、甘いんだな。それに……とんがってて……ちょっと硬い」
 口の中の塊をガリっと音を立てて噛み砕く。
「……金平糖?」
「当たり♪」
 クリュの確認のつもりの問いに動植物好きの霊査士・ラミリア(a90212)は笑顔で肯定する。

 季節によっては町中が甘い香りに包まれるような、小さな町。そんな町に伝わる星祭り。それは家族のための、子供のためのお祭り。
 昔、夜の森で迷子になり泣いていた子供に、空から流れ落ちてきた星屑。それは甘くて、美味しくて。泣き止んだ子供が星屑を拾いながら進んだ先に、家族が待っていた。
 町で作られる金平糖の由来としても語られる伝承。その時期として語られるのが、7の月。それ以来、袋詰めにされた金平糖を町の近くの自然の中に隠し、子供達がそれを探すという宝探しのようなイベントが毎年行われていた。

「……俺も参加していいの?」
 食べ物が絡んでいるために、いつになく瞳を輝かせて尋ねるクリュ。
「うん。折角だから、みんなで行って拾おう?」
 しかし、ラミリアの言葉に怪訝そうに見つめる。
「……もう子供って年じゃないだろ? それとも、子供ですって押し通すのか?」
「そんなわけないでしょ! 全く……。観光客は年齢に関係なく参加してもいいの!」
「あっそう」
 祭りだし、それもありなのだろうか。しかしそんなこともクリュにとってはどうでもよくって、その頭の中はすっかり町の金平糖のことでいっぱいである。

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参加者
NPC:動植物好きの霊査士・ラミリア(a90212)



<リプレイ>

●花畑
 青々とした緑が生い茂るこの季節。色とりどりの花々も、競って咲き誇る。
「お〜兄ぃ〜ちゃん〜とぉ〜お姉〜ちゃ〜んと〜おほ〜しさまぁ〜ひろうのぉ〜♪」
 アーシェリアは思い浮かんだ言葉をリズムに乗せ、楽しそうに歌う。スキップをしながら先を行く彼女の後を、兄妹が続く。
「シェリアもルシアも、転ばないよう気をつけてな……」
 アイズは二人の妹が可愛いらしく、優しく声をかける。
「心配しなくとも、大丈夫よ」
 そう言って兄を見上げるアティルシアも、優しげな笑みを浮かべる。
「お姉ちゃ〜ん。一緒にお花でワッカ作ろぉ〜」
「うん、いいわよ」
 目的を置き去りにして花を摘みだした二人に代わり、アイズは金平糖を探す。
(「二人の好きな色は……この色……かな?」)
 花を摘んでいる二人が自然に見つけてくれるように。見つけた金平糖を花達の間にそっと忍ばせる。拾った二人は喜んでくれるだろうか?
 大切な人と一緒に、探す。その時間すら、愛おしい。
「お星様のお菓子を捜す……なぁ〜ん♪」
 欲しい色が見つかるかは運次第。でも、希望を持ってショコラーデは星屑を探す。
「可愛いなぁ〜ん……」
 愛する人の一生懸命な姿を目にし、コノハがポツリと漏らす。
 こっそりと近づいて……。その頬に口付ける。
「えへへ♪ なぁ〜ん」
 仕掛けたコノハも驚いたショコラーデも顔を赤める。それ隠すように向けた背。それを後ろから抱きしめられる。
「コノハー。……大好き♪」
 恥ずかしいけれども、言葉にすることも大切な事だから。照れているのはお互い様。
(「……久しぶりに会えたわけだけど、やっぱり金平糖に行っちゃうのね」)
 花畑の中に全身を潜り込ませながら金平糖を捜すクロスを眺めながらルシアは物思いにふける。しかしそれも、漂う花の香りに中断させられる。
(「綺麗だなあ」)
 蕾のものも開いたものも、色とりどりの姿を晒し風に揺れる。
「見つかった?」
 尋ねたクロスの尻尾は情けなくへにょんと垂れ下がっている。ルシアは首を横に振る事で答える。
「そっか。じゃあ、喫茶店に行こうよ」
「……うん」
 探さなくても見つかるものもある。
「あるかな〜? 見つけられると良いね」
 一歩先を歩くファルアは後ろを振り返る。視線の先には愛しそうに見つめるキースが。確認できた存在に、自然と笑みが浮かぶ。星屑を探しながらもキースは自分とファルアの距離を確かめながら足を進める。時折重なる視線に笑みが深くなる。
 再び地面に落とした視線が、星屑を拾う。
「見〜つけたぁ〜!」
「良かったですね」
 見つけた星屑を嬉しそうに空にかざすファルアに、同じくらい嬉しそうにキースは微笑みかける。
 一緒にいるから、もっと楽しい。
「一緒に探しませんかぁ?」
 今回連れのいないアスティナは同じように一人で探していた人影を見つけ、声をかける。
「ええ、私でよろしければ。初めまして、リンと申します」
「アスティナですぅ。お花畑で星屑探し〜、わくわくしますね〜」
 人懐っこい笑みを浮かべるアスティナにリンもつられて微笑む。
「金平糖って、ころんって可愛いですよね。見つけられるだけで幸せ気分になれそうです♪」
 見つかったら友人達へのお土産に。景色に見とれながらも、ささやかな会話と共にゆっくりと探していく。

●草原
 風が草原の緑を揺らす。香り立つ緑の匂い。
「こんぺーとー、なのなぁ〜ん?」
 この草原のどこかに隠されているはず。エルムドアはきょろきょろと辺りを見渡しながら、勧めてくれた団長の言葉を思い出す。……体を震わせながら。
「走るな、迷子になるぞ」
 お守りとして付いてきたアッシュは、慌てて走り出そうとしたエルムドアを止める。
「肩車してやるから、な?」
 果たしてそれで探しやすくなるのやら。アッシュは疑問に思わないわけでもなかったが、エルムドアは喜んでその肩に乗った。
「一人で、っていうのも寂しいね……」
 一緒に探している人達を見つめ、スレイツはポツリと漏らす。誘った相手は忙しくて、来ることが出来なかった。一緒に探せることを楽しみにしていたのに。
「……後でプレゼントしようかな」
 そう考えると、別の楽しみも生まれる。かがんで生い茂る草を掻き分け、地面を探す。
「言い伝えのお子さん、親元に無事たどり着けて良かったですよね」
 ファオがふんわりと微笑む。親を恋しく思うような年でもないが、親元にいた時の安心感を懐かしく思い出す。それを受けてリリーも微笑み返す。
「そうだね。獣に襲われることも無く無事でなによりだよ」
 会話を楽しみながら探すのだが、広い草原で背のある草の間に潜む星屑はそう簡単には姿を見せない。
「あ……」
 地面に置いたフォアの手が不自然なふくらみに触れる。拾い上げたのは薄緑色の金平糖。
「リリーさんもどうぞ」
 一粒は自分の口の中に、もう一粒はリリーの口の中に放る。広がるのは優しい緑茶の味。
(「デートじゃ! 気張れわし!!」)
 しかしながら、意識すると余計に照れるもので……。シリアはつなぐための手を伸ばしかけては引っ込める。そうやって迷っている間に、ユーリアは星屑を見つけ、拾い上げる。
「瓶に入れて眺めても可愛いかな?」
 袋詰めにされたそれを見つめた後、シリアに微笑みかける。
「そうじゃのう」
 つられて微笑み返すその頬はほんのり赤い。
(「……相変わらず駄目じゃー」)
 進展のための成果はなし。それでも増えた二人の思い出。
 フュステは草を掻き分け、一生懸命探す。無表情ではあるが、尻尾は機嫌良く揺れている。
「星屑を拾ったなら、わたしにも……」
 訪れる前に聞いた伝承を思い出し、小さく呟く。その物語の子供に自分を重ねながら。そんな想像をしながら、足を進めていく。
 自分の分を見つけ、顔を上げて辺りを見渡したシラユキはまだしゃがみこんで探している人影を見つけ声をかける。
「探すの、手伝おうか?」
 顔を上げたスィは一瞬驚いた顔をするが、にこりと微笑む。
「…………ありがとう……一緒に……探す……」
 持ってきていたネックレスのチェーンを通した小瓶を握り締める。
「……この小瓶に……金平糖……入れる……」
 想像して嬉しそうに笑うスィにつられてシラユキもにっこり笑う。
「見つかるといいな」
 スィはその言葉に強く頷いた。
 そんな捜索に当たる人達から少し離れたところで。
「ダフネさん、あーんなのです」
 ユイリンは拾った青い金平糖をダフネの口に入れる。
「んー甘い。はいユイも」
 お返しに、とダフネは自分の拾った薄緑色の金平糖をユイリンの口に運ぶ。
「あま〜い。幸せ〜」
 満面の笑みを浮かべ、ほほを押さえてじたばたと。
 一緒にいられるのは久しぶりだから。二人っきりを満喫する。
 拾った金平糖はそれぞれ二人で半分こ。幸せは何倍にもなる。

●林
 木漏れ日揺れる木々の間。吹き抜ける風は他よりほんの少し涼しく感じられる。
 双方の希望の中間点ということで林を選んだリオネルとハロルドは目線より低い場所を探す。
「子供向けのイベントだから、あまり高い所には隠してないと思うんだよね……」
 根っこ付近や茂みの辺り。木の洞にでも隠してあるのだろうか? さすがに木の上はないだろう。ハロルドは木を見上げる。
「リオ、見つかったか? ……って、何いきなり食ってんだよ」
「え、何?」
 振り返るとそこには、拾った金平糖の味見をしているリオネルの姿が。
「黒糖味かな? 甘くて美味しい♪」
 ハロルドは笑ってリオネルを小突く。
 木々の間を無駄に元気に走り回るエルフが一人。きょろきょろと見渡しながら足早に移動するため、見落としが多い。立ち止まりため息をついている姿を見つけ、フォルティナは持ってきていたお煎餅を差し出す。
「美味しいオセンベあげるなの♪ 一緒にガンバルなの!」
「もらっていいの?」
 クリュの問いかけにフォルティナは笑顔で頷く。
「ボクは桃味のを探すなの。きっと桃だから木の実がなるみたいに林に隠してあるなの!」
「ん……。見つかるといいな!」
 もらったお煎餅に気をよくしたクリュはフォルティナに笑顔を向ける。
 他のみんなとの後に続き、一緒に探していたアルトは金平糖を先に見つけた人に気づき、問いかける。
「どこに落ちてた?」
「これですか? 木の枝に、葉で隠すようにして吊るされてましたよ」
 淡い水色の金平糖をかざしてラスクは答える。
「そっか。ありがとう。参考にさせてもらうよ」
 礼を言い、駆けていくアルトを笑顔で見送ったラスクは、持っている金平糖をじっと見つめる人影に気づく。
「……クリュさんも食べますか?」
 瞳を輝かせ頷くクリュにラスクは柔らかい笑みを浮かべ、少し分けてあげる。
「ありがとう」
 リアンは木々に止まる小鳥を見つけ、獣達の歌で話しかける。
「♪ 賢き林の守護者達よ〜。林に落ちた星屑のありか〜聞かせてもらえないかしら〜♪」
 小鳥から返ってきた囀りは「星屑って?」と尋ね返すもの。
「……どうしましょう?」
 連れに相談しようと振り返るのだが、その姿はない。
「あら?」
 いつの間にはぐれたのだろうか。辺りを見渡すものの、それらしき姿を見つけることはできなかった。
 一方、その連れの方も、リアンを探していた。
「またかよ……」
 ベクトルは友人が迷子の常習犯だと改めて認識し、ため息をつく。金平糖の方は見つかったというのに……。

●広場
 祭りの間だけ特設される喫茶スペース。しかし大半の人々は星屑広いに出かけているため、閑散としている。
「子供達も楽しみにしているお祭りでしょうからね」
 イングリドはお茶と一緒にじっくりと金平糖を味わう。
「それにしても、こんなお菓子、誰が考え出したのかしら……」
 星のような形をした、可愛いお菓子を。金平糖をつまみ、空にかざし見る。
「不思議だよね」
 イングリドの言葉に頷くラミリア。
 ゆったりと穏やかな時間を楽しんでいると、星屑広いから戻ってきた人達がぽつぽつと姿を見せる。その中に、ラミリアを見つけて寄って来る人影が。
「ラミリア殿、山羊乳じゃぞ」
「これを飲んで大きくなりなよ」
「セクシーな女性になるのを楽しみにしておるぞ」
「頑張れー」
 楽しそうにポンポンと喋るクルティアとアレスを交互に見比べ、とっさに反応できずきょとんとした顔をする。だが次の瞬間。
「余計なお世話だー!!」
 真っ赤な顔をして机に両手を叩きつける。二人はそんなラミリアの頭を笑ってポンポンと撫でる。
 素直に怒れて素直に笑える。それもまた、大切なこと。

 みんなが幸せでありますように。


マスター:白樹 紹介ページ
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