<リプレイ>
●情報収集 初夏の日差しが眩しい街中。 「ここら辺で腕が良いと評判なケーキ職人っているかい? もしくは腕が良かったとか騒がれていた人物とかを」 白き雷光の虎・ライホウ(a01741)が道行く人々に訊ねて回っている。 「美味しいケーキというなら何処かで購入しているかもしれませんね」 真面目に働いているライホウをよそに、緋燕・ソルティーク(a10158)は顎に手をあてて考え込んでいる。 「……なぁ〜ん」 天衣無縫なつむじ風・マイラ(a14685)は首と尻尾を項垂れて元気が無い。 「犯人が作っている可能性もありますが、それならそれでプロのパティシエが犯人という可能性があります」 む? と何か思いついたのか顔を上げるソルティーク。 「……ヒトノソだから冒険者でケーキ駄目なんてあんまりなぁ〜んよ……」 マイラはブツブツと同じ言葉をループさせていた。 「……で、男一人によるケーキ屋巡りは流石に世間の目が冷たいので付き合っていただけると幸いです、ちゃんと奢りますから」 名案を思いついたとばかりに良い笑顔でマイラに微笑みかけるソルティーク。 「もちろん行くわ!」 その手を掴んだのはキラキラと瞳を輝かせる、琥珀色の偽乙女・ラーゴット(a21634)。 「……男に奢る趣味はありません」 ソルティークの冷たい視線がラーゴットに突き刺さる。 「……酷!」 ヨヨと泣き崩れるラーゴット。 「ソルティークさん、早く行くなぁ〜ん」 マイラは、囮としてケーキを食べられない悔しさを今晴らさんとばかりに、既にケーキ屋の前で待機していた。
――店の中では覆面の店員2人がテキパキと働いていた。
一方、情報収集を真面目に続けていたライホウは……、 「そうザマス。あのケーキ屋のクリームが美味しくてボクちゃまも大好きなんザマス。ねぇボクちゃま?」 「あの、俺そろそろ……」 「あら、奥様向かい隣のケーキ屋さんもチョコレートのパテリングが――」 「……あの……」 「ショートケーキを置いてい無いケーキ屋は――」 近所の奥様集団のエンドレストークに捉まっていた。
●愛ゆえに ソルティークとマイラ、そしてその後ろを付けて行ったラーゴットを生暖かい眼で見送りると、氷輪に仇成す・サンタナ(a03094)は振り返りながら言う。 「それでは、夜にここに集合ですじゃ」 振り返る際に、黒をベースに赤いリボンを所々に結んだ、可憐な中にもアダルトさが見え隠れするドレスの裾が翻る。 奏・アイシャ(a04915)(以降、アイシャ(吟))はそんな夫であるサンタナの髪を黒いリボンで結んでいる。 (「夫が真に欲っするものを理解出来ていなかった事、妻として失格です」) サンタナがハイヒールを用意していた事に彼女は気付いていたのだ。 そして、そんな夫の力になろうと、リボンを用意していたのである。 「似合うかえ?」 妻の気持ちを知ってか知らずか、満面の笑顔でサンタナは問う。 「みなまでおっしゃらないで……」 夫の唇にそっと人差し指をあてて彼女は微笑む。
「え〜っと……バカップル?」 サンタナ夫婦の姿を見ていた、彷徨者・アウラ(a24803)は言った。 「新しい夫婦の愛の形かも?」 悠久の誘い・メルフィナ(a90240)は思った事を口にして見た。 「むー……」 何故か男装している、破戒天使・アイシャ(a05965)(以降、アイシャ(医))が唸った。 「どうしました?」 アウラが聞いた。 「敵はモテナイ独身男性の秘密結社なのだからして、無差別におにゃごを襲うとは思えないのですよ」 なるほどなるほどと、アウラとメルフィナが肯く。 「そんなわけで、せいぜいバカップルを演じるのですね♪」 「……え? え!?」 アイシャ(医)は言うや否やメルフィナの腰に手を回すと、そのまま連れ去って行った。
「さてと……」 アイシャ(医)とメルフィナを見なかった事にしたアウラは、呟くとサンタナ夫婦の後を追った。
●ケーキが食べたい 「男二人で開業しているケーキ屋は在りませんか?」 ソルティークが覆面の店員に聞く。 「この店くらいだな」 店員はさらっと答えた。 「んと、苺のモンブランと、ナポレオンパイ追加なぁ〜ん」 一皿目のケーキを食べ終わったマイラが追加を要求する。 「そうですか、この店くらいですか」 ソルティークは頷くと、ケーキをパクパクと食べるマイラを眩しそうに見えていた。
「あーうらやましいっ」 ソルティークに奢って貰っているマイラを羨ましそうに見つめるラーゴット。 「このケーキ美味しいですね」 アウラはケーキにご満悦だった。
一通り被害者の家を回ったサンタナ夫妻はお茶をしていた。 「素朴な疑問ですが、ケーキを一気に食すと弊害は脂肪でしょうか……又はお腹壊しでしょうか……」 アイシャ(吟)は気になっていた事を口にする。 「両方らしいですじゃ。あと、出来物も出来たと言う人もいましたのじゃ」 そうですか、と肯いたアイシャ(吟)とサンタナの前に、覆面の店員がケーキと紅茶を運んでくる。 「お菓子は良いのぅ……アイシャの作るのが一番じゃがな」 サンタナ夫婦はフフフと笑い合うのだった。 午後の日差しはとても穏やかで……2人が夫婦だと知らなければ、午後の紅茶を楽しむ貴婦人2人組みに見えたかも知れない。
一方、情報収集を真面目に続けていたライホウは……、 「それでね、隣の旦那様がザマスね?」 「……あの、俺そろそろ……」 「あら! まぁ! そんな事が? 嫌ザマスねぇ」 「……あの〜」 昼はまだまだ長そうだった。
●覆面現る 街の明かりが消え始める頃。 一行はサンタナとラーゴットを囮に犯人の誘き出し作戦を行っていた。
「触れただけで手折れてしまいそうなキミの繊細さが、僕の心を捉えて離さないよ★」 「まぁ……」 何故かメルフィナをお姫様抱っこしているアイシャ(医)と、頬を赤らめているメルフィナ。 「例によって、相変わらず傍目には私達が一番の不審者、変態さんですよね……」 アウラは遠い目で呟く……確かに色んな意味で怪しい集団だった。 「あなた……頑張って」 アイシャ(吟)はハンカチを片手にサンタナを応援している。 「まぁ、暗いし十分囮にはなっているか」 ライホウが言うように周りが暗いのでサンタナとラーゴットでも十分女性に見えなくも無い。 「……来たようですよ」 一行はアウラの言葉に頷くと行動を開始した。
「よう、お嬢ちゃん達、こんな夜中にお出かけは危ないぜ? へっへっへ」 「そうそう、わるーい人達に捕まっちゃうぜ? へっへ……」 そこまで言って覆面2人組みは気付いた、2人のガタイがやたら良い事に。 「「なんだ、オカマかよ」」 声を揃えて言う覆面達。 サンタナはガーンと言う表情でハラハラと眼から涙を零している。 ラーゴットは手をフルフルと震わせ……、 「てめぇ! 誰がオカマだゴルァ!」 「うぐぁ!?」 突如両手で覆面の首を絞めながらガックンガックンと揺すり出した。 「アァ? もう一度言って見ろオンドリャァ!」 「あ、兄者!? 俺を置いて逝かないでくれアニジャァァ!!」 「ケーキ食べたいなぁ〜んよぉぉぉぉぉつ!!!」 揺すり続けるラーゴット、口から泡を吐き出した覆面、うろたえる覆面、叫ぶマイラ、泣き崩れているサンタナ、そしてそんな夫をそっと慰めているアイシャ(吟)。 「まぁ、まぁ、取りあえずコレにサインを」 そんな修羅場に乗じて覆面(弟っぽい方)を捕まえたアウラが、怪しげな契約書にサインさせる。
「あらやーねぇ、冗談でやってるに決まってるじゃないのー♪」 ハッ! と正気に戻ったラーゴットは既に遠い所に飛んで行ってしまった覆面に言った。
●ケーキを食え! 覆面達を捕らえた冒険者達は説得を開始した。 「で、女性がそんなに憎いんですか? ……の割には中途半端ですし、まさかこれで好かれると思っていたとか?」 ソルティークの言葉が覆面達の心を抉る。 「何でこんなことをしようと思ったの? いくら女の子はちょっとぽっちゃりしてる方が可愛いからって、やっていい事といけない事があるわよ!」 「ふ……我らの悲しみなぞ……」 「……オカマのお前達には解るまい!」 クワッ! と言い放つ放った覆面。
――ラーゴットの気が晴れるまで暫くお待ち下さい。
「なぁ、店出せよ。儲かるだろ? それだけの腕があれば。もし『食べ過ぎで……』って事なら甘くても太らないようなケーキを作ればいいんじゃないのか? キャロットとかパンプキンとかあるだろ?」 すっかり怯えた表情でラーゴットの方を警戒している覆面にライホウが語りかける。 「……うう、そうであるな」 「……兄者、もうこんな怖い思いをするのはイヤダ」 咽び泣く覆面2人。 そんな覆面達の肩に手を置き、ニッコリと微笑みながらアウラは言う。 「貴方達なら大丈夫ですよ。……ほら、お迎えが来ましたよ」 何時の間にか現れた屈強な男達が覆面を囲む。 「「え?」」 事態が飲み込めていない覆面達。 「ほら、契約書」 満面の笑みで先程ドサクサに紛れて契約させた書面を見せるアウラ。 「「はかったな……はかったな! きさまぁ!」」 覆面達は何処かへ連れ去られていった。
「美味しいなぁ〜ん♪」 「美味しいですじゃ♪」 マイラとサンタナが覆面達が残していった大漁のケーキを頬張っていた。 「あなた……」 そんなサンタナの様子を見たアイシャ(吟)はらりと涙を流す。 「ケーキか。 俺にはよく判らんが女の子達は好きみたいだな」 ライホウ自身にケーキの味は判らないが、大切な人へのお土産にと見た目の綺麗なケーキを見繕っていた。
【おしまい】

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参加者:8人
作成日:2005/07/11
得票数:ほのぼの3
コメディ17
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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