<リプレイ>
● 鳥の声が間断なく鳴っている。潮の香りが少しづつ強まっている。海が近いのだ。空は一点の曇りもない青とまばゆい太陽の黄金。海水浴にはこれ以上ないというコンディションだった。 道中には水着を着用した4人の女性。不埒な人さらいたる盗賊たち、その囮になる役目を負った先発隊である。 月華明亮・ルフィリア(a25334)と無垢なる茉莉花・ユリーシャ(a26814)はワンピース、古の銀の調べ・ヘルミオーネ(a05718)はビキニにパレオ、そして深き底に眠る花・アズミ(a24593)はスクール水着。どこからどう見ても、一般の海水浴客に扮していた。その後方には残りのメンバーが不自然でないように付いてきている。 「お似合いですわね。そのスクール水着」 ユリーシャが気楽そうにアズミに声をかける。早いうちから囮として振舞った方がいいです、と小声で付け足して。 「……似合ってる?」 疑問形で答えるアズミ。ヘルミオーネが頷く。 「似合ってるわよ。私なんか胸ないから、せっかくのビキニがあまり映えないわ。本当は恥ずかしいからルフィリアさんみたいなワンピースがよかったのだけど」 「……まあ、仕方ないです」 雑談しているうちに、いよいよ目的地に到着する。 水着の4人は砂浜を踏み、波打ち際まで歩いていった。盗賊出現の報が広まったのか、他に人影はなかった。 彼女たちはめいめい遊びを演じ始めた。水をかけあったり、ボーっとしたり、寄せる波を蹴り返したり。その様子を遠くから他のメンバーが眺める。 「……お? さっそくお出ましのようやね!」 紋章術士の菓子職人・カレン(a01462)がユリーシャたちの向こう側を指差した。離れていてもわかる野蛮な格好をした男8人が、ぞろぞろと隊列を成してやってくるではないか。 「きゃああ!」 ユリーシャが甲高い悲鳴を上げてみせた。演技にしてはなかなかだ。 「こいつは美人が揃ってるな。丁重にお連れ去りしなければなぁ」 盗賊のひとりが下卑た笑いを漏らした。盗賊たちが4人を囲んだ。 「な、何をするの!」 「……やめて……離して、ください」 「あ……あ」 二の腕を掴まれたヘルミオーネがいやいやと首を振る。ルフィリアは力なく抵抗を試みる。アズミはなされるがまま。もちろんこれも演技だが、怪しまれている様子はない。 そうして彼女たちは軽々しく盗賊たちの肩に担がれた。盗賊たちは笑いを残しながら元来た道を引き返しに行く。 「では、作戦開始でござるな。よろしく頼むでござる。なぁん」 リザードマンの重騎士・ノリソン(a29633)が言った。何人もいては目立つので、尾行は闇夜の鴉・タカテル(a03876)と銀髪の掃除人・シャル(a23469)、前進する想い・キュオン(a26505)がすることになった。 「あ、あの……気をつけてくださいね」 救助班の見習いメイド医術士・セラ(a18939)、宵闇の天を寿ぐ者・ルーセス(a18444)、青銀の剣舞魔術師・リヴン(a19791)の3人も待機である。 タカテルたちは盗賊たちの尾行を始めた。一切の音を立てず、ただ精神だけを研ぎ澄まして。
● タカテルとシャルはハイドインシャドウで身を隠し、キュオンはその後方に位置する。シャルが遠眼鏡で確認しつつ、充分に離れて慎重に後を追った。 下品な談笑が聞こえてきた。 「お前さんら、俺らの噂は耳にもしなかったか? さすがにもう女はいないだろうと思っていたが」 「だから言ったじゃないすか頭領。念のためチェックしてみて大正解でさ」 「おい、そろそろ交代してくれよ」 「あと1分。ああ、柔らけえ」 盗賊たちは水着の4人をとっかえひっかえ肩に担いだ。さらわれた女性はこうして屈辱的な体勢で運ばれたのだ。歩かないでいいのは楽だが、あちこち触られ通しでやり場のない怒りが込み上げる。4人とも、一刻も早く体を洗いたいと思った。 浜辺からはだいぶ離れ、ずいぶんと入り組んだ森の中に入っている。アジトは森を切り開いたところにある丸太小屋というところだろうか、とタカテルは思った。 やがて、それが見えてきた。 予想通り、木々を切り開いた先に丸太小屋が建てられている。10人もの人間が住むだけに、かなり大きい。 「お帰りっす、頭領」 見張りだろう、入口の前にいたふたりがニヤつきながら扉を開けた。 「女たちはおとなしくしてるか」 「そりゃもう」 4人はそのままアジトの中へ運ばれた。 嘆息が聞こえた。中には水着姿の若い女性がいた。10人以上。あなたたちも連れてこられたのね、と全員が悲しげな目で言ってきた。 「私たちをどうする気?」 ヘルミオーネが怯えを交えて言った。盗賊の頭領はいやらしく邪笑する。部下たちも同様に唇を歪める。 「ここで俺たちの世話だ。水着のままでな」 ――そうして、気付かれないまま一部始終を見届けた。あとは乗り込むだけだ。 「じゃ、救助班を呼びに行こう」 キュオンが言った。 急ぎに急いだ彼らが戻ったのは、それから30分後のことである。
● 突撃班、救助班全員で入口を睨む。出入口はあの一箇所だけのようだ。 「もうすぐとっちめてやるから……」 「うむ。卑劣な輩め、懲らしめてくれようぞ」 愛しき暴走娘・リール(a27896)と七枝刀の巫女・ユミ(a29508)は握りこぶしを固めた。 と、見張りが中に戻っていく。入口が無人になった。 「交代やな? 今がチャンスや!」 カレンが土塊の下僕をふたつ作り出すと、入口に配置させた。 間もなく再び扉が開き、さっきと別の男がふたり出てきた。 「ん? な――」 新たな見張りたちは悲鳴を上げる暇もなかった。ふと見下ろした先に妙なモノがいたかと思うと、いきなり顎に蹴りを食らわされた。ふたりはあえなく倒れる。 「何だ今の音は!」 今の音で異変と気付いた盗賊たちが5人現れた。 それを機に、冒険者たちは一気に躍り出た! 戦闘開始の合図など皆無、突撃班は問答無用で捕縛にかかった。 「やれやれ、下手なナンパをする連中でしたね」 「脳みそピンクな馬鹿者共は、神妙にお縄になれー!」 タカテルとキュオンが粘り蜘蛛糸を放ち、一瞬にしてふたりの身動きを完全に封じた。 「お前ら、なんちゅう羨ま……もとい! 人として外れたことを!」 憤るシャルが拳で語るを食らわす。反省しろというメッセージを叩き込んだ。盗賊はうるさいちくしょうと毒づいて気絶した。 「この調子じゃ、どいつもこいつも反省の色はなしやろか……」 残りふたり。ユミは一番大柄な盗賊と相対していた。盗賊は剣を大きく振りかぶった。だが攻撃は届かない。ユミの眠りの歌が響き、盗賊はだらしない格好で地面に崩れた。 「貴様等如きに我らが倒せると思ってか。笑わせるでないわ!」 「そうか、女たちを助けに来た冒険者ってわけか?」 ようやく思い当たった最後のひとりが喚き、ノリソンに突進した。 「女子をさらうなど何を考えているでござる!」 ノリソンは負けじと叫んだ。振り下ろされた剣を盾で受け止める。 「何故ノソリンではないのでござるか! ノソリンの美しさが解らぬとは……ぶつぶつ」 などと呟きながら峰打ちを見舞って返り討ちにした。 「よし、さっさと縛ろ」 こうして計7人の盗賊は、カレンのロープで縛られることになった。
● 外で戦いが勃発している間に、残りのメンバーはバンと扉を開け放ち、内部へと侵入していた。盗賊は残り3人、一様に焦燥していた。 「さぁて、冒険者が救助に来たぜレディたち!」 リヴンが高らかに言った。隅の水着の女性たちは目を瞬かせている。一緒にいた囮班が微笑んで応えた。 盗賊の一人目が殴りかかった。が。 「落鳳、墜龍、砕けるは心――」 リヴンが幻惑の剣舞であっさり意気消沈させる。 「はい、おとなしくお休みしていて」 継いでルーセスが眠りの歌で眠らせた。 「あ、あの……今、行きますからね」 セラが女性たちに駆け寄ろうとする。そこへ盗賊の二人目が立ちはだかる。 そしてそのまま硬直した。リールの紅蓮の咆哮だ。 「……女性に手をあげる不届者は絶対許さない」 麻痺した盗賊は冷や汗を垂らした。セラが軽く背中を押して、盗賊を顔面から床に突っ込ませた。 「待て! 動いたらこのスクール水着娘を一気に切り裂くぞ」 最後のひとり――頭領がアズミを抱えてナイフを突きつけていた。すでに水着は胸まで裂かれている。 しかしそんなものは無駄に終わる。ヘルミオーネとユリーシャが混声で眠りの歌を響かせた。この連れて来た女たち、囮の冒険者だったのか? と思った時にはもう遅い。 「……残念」 アズミは腕から離れると、ライクアフェザーで頭領の目を惑わせた。頭領は目を回しながら豪快に倒れ、眠った。
● 女性たちにはセラ、リヴン、ルーセスら救助班のヒーリングウェーブが施された。完全に回復した彼女たちは涙を流して喜び礼を述べた。 「よかったのう。全員キツイ灸を据えたし、もうあのようなことはすまい」 ユミが縛られて固められた盗賊団を見て言った。 「アジトも壊したし」 と、リール。アジトはリール、セフィリア、ユリーシャの爆砕拳で完膚なきまでに破壊されたのだった。 「さあて邪魔者は消えたし、これで大手を振って海水浴できるな! 浜辺へゴーや!」 カレンが笑った。目の保養が最高の報酬だな、とシャルやキュオンは思った。

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参加者:14人
作成日:2005/07/12
得票数:冒険活劇1
ほのぼの8
コメディ1
えっち4
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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