【恋せよ青年!】ブルームーン



<オープニング>


 色鮮やかな花と言うのは、例え一輪でも、心を寄せるものがある。贈り物にも、最適だ。
 そう、リゼは愛しいエイミィへのプレゼントとして、花を選択したのだ。
 何でも、とても珍しい薔薇の花なのだ、そうだが……
「あんなの僕一人じゃ無理ですよ〜」
 涙を流し、机に突っ伏するリゼ。それをいさめつつ、霊査士フィルは、話を続けさせた。
「何がどう無理なんだ。話さねば先に進むまい。何のために、ここにきたんだ…」
「あぁ…はい、えぇと……実は、今度エイミィの誕生日で、何かプレゼントあげたいなぁ、何て思ってるんですよ…で、噂で聞いた、『蒼い薔薇』をあげたいなって…」
 いいながら照れたように真っ赤になるリゼだったが、その先を思い起こしたようで、しゅんとなる。
「でも、その薔薇が咲いてるの、山の中なんです。それも、グドンの群れが一杯で…一人じゃ、とても進めなくて…」
 彼の手には、一度向かった時に持ち帰ったという、小さな石が握られている。
「それでも欲しいのだな? その、蒼い薔薇が」
 その石をひょい、と取り上げると、フィルはリゼへ視線を配った。
「あ…はい。エイミィに、喜んで欲しいんです」
「そうか…聞いてのとおりだ。この男を連れて、その蒼い薔薇をとりにいってはもらえないだろうか」
 その言葉に幾人かの冒険者が興味ありげに耳を傾けるのを確認し、フィルは続ける。
「噂で聞いた話ではあるが、その薔薇は12枚の花びらを集めることで生まれる、不思議な花なのだそうだ。一度、見てみたいものだな…と…これは余談だな。ともかく、山登りとグドン退治とバラ探査。色々苦労しそうだ。心して向かってほしい。グドンの規模など注意点は、霊査してから追って伝える」
「あ、えっと…宜しく、お願いします……」
 石を霊査するフィルを見、慌てたようにぺこりと頭を下げるリゼであった。

マスターからのコメントを見る

参加者
舞月の戦華・アリア(a00742)
緋の剣士・アルフリード(a00819)
ザ・バック(a01803)
暁の皇狼・ヒューガ(a02195)
鮮血に濡れる華・リリス(a02302)
狩人兼庭師な赤猫・トリーティア(a02479)
エルフの忍び・ディック(a02766)
黄雀風の黒虎・ヴィードル(a02966)


<リプレイ>

「好いた相手のためならどんな苦労厭わないか…大したものだな」
「でも相変わらず他力本願? 全く。心意気が肝心なんだよ?」
「まぁまぁ…にしても羨ましい限りだな畜生」
 苦笑しながらも少し羨ましい様子の月華の舞姫・アリア(a00742)に、かなり呆れ気味の黄雀風の黒虎・ヴィードル(a02966)。そして爽やかに悔しがるエルフの忍び・ディック(a02766)に囲まれ、リゼは相変わらず頼りなげに笑んでいた。
 今回の目的は幻と言われた蒼い薔薇を摘み取ってくること。そのために、グドンはびこる山へ向かおうと言うのだ。
 と、その前に。紅緋鳶・バック(a01803)の提案により、ふもとの村にてちょっとした情報収集。
 道行く人に聞いてみた。蒼い薔薇とはどんな物かと。
「知ってる〜。何でも願い事かが叶う花でしょ?」
「えー違うよ! 何でも、じゃ無くて、恋が叶うんだよ!」
「良く知らないけど、花の精が残してく魔法の花なんだってねぇ」
 流石に夢見る乙女達の言葉はロマンに溢れている。だが、誰も実物は見ていないという。

「結局、どんなものか判らなかったわね」
 山を上りながら苦笑する死神に抱擁されし刃・リリス(a02302)。彼女の言う通り、どの話もおとぎ話レベルにしか聞こえないため、確たる情報にはなりえなかったのだ。
「あ、でも、花びら集めたら、あのお婆さんの所には行ってみようと思います」
 列の真ん中を歩きつつそう言ったリゼだが、あのお婆さんとは。
 それは、たまたま聞き込みに立ち寄った家にてであった、不思議な老婆のことだ。
「『花びらを集めたら私のところに来るといい』っていっていたか? 胡散臭いと言えば、そうかもな…」
 最前列から振り返り、暁の皇狼・ヒューガ(a02195)もまた、苦笑した。
「どちらにせよ、花びらを持って帰らないとね」
 溜息交じりに言ったのは、緋の剣士・アルフリード(a00819)だ。薔薇を探すだけならともかく、グドン退治が付きまとうのでは、そりゃ溜息も出るというもので。
「きれーなお花なんでしょうね〜。楽しみです〜♪」
 そんな中では、うきうき歩く猫尾の狩人兼庭師・トリーティア(a02479)の影響大きく。一行は意気揚々と、山を登っていった。

 道中、リゼは途中までエイミィのことを語りまくっていたが、流石に疲れたのか。登るに連れて、口数は減った。それと同じころだろうか。彼らの周りに、不穏な気配を幾つも感じ始めたのは。
「そろそろ来るころか?」
「そうね。警戒した方がいいわ」
 前を歩くヒューガとリリスは、こそりと言葉を交わして、辺りを警戒しだした。
 他の者も、先ほどよりも少し固まりながら進んだ。
 後列にて、ヴィードルは少しずつ近づいてくる気配に緊張をよぎらせながら、目の前をとろとろ歩くリゼの背をばっしと叩いた。
「ほらほらリゼさん、しゃきっと歩く!」
「は、はい……」
 叩かれた勢いで二、三歩小走りに前へ進んだ直後か。山の上から、グドンの群れが襲い掛かってきたのは。
「下がっていろ、リゼ」
 流石に一般人がグドンと対峙するのは無謀だ。岩陰から飛び出してくる猿グドンを旋空脚で薙ぎ払いつつ、アリアはリゼを庇った。
 ヒューガは単身群れに突っ込むと、同時に、地面を大きく削る。辺りを覆う勢いで発生した砂礫が、グドンどもを吹き飛ばした。
「うぉらあああ!!」
 掛け声と共に大きな拳を振るうのは、バックだ。己が肉体こそ武器と言わんばかりの勢いで、グドンを殴り飛ばしていた。
「豪快っつーか、もう爽快だな…」
 そんなバックを横目で見つつ、ディックも影に潜み、死角からグドンを仕留めていった。
「力の差がわかれば、きっと引いてくれますよ〜」
 トリーティアはなるべくグドンたちを傷つけぬよう、影縫いの矢を駆使している。そんな彼女の言葉は、楽観視と言うよりは、まるで願っているような物言いだった。
「全く…急いでるのよ。邪魔しないでくれる?」
 打って変わって、リリスは幾百本もの張りを撃ち出し、一気にグドンの戦力を削いでいった。
「これで、あらかた仕留められたかな?」
 華麗に剣を払うと、アルフリードは肩の力を抜くように、息を吐いた。ニードルスピアを使えば、楽に仕留められたかもしれない。だが彼の意識は、剣士の端くれとしてはあくまで剣で、と言うものだった。
「帰り、楽になるといいんだけどね」
 数匹逃げた者もいるようだが、あらかたのグドンは、退治できた様だった。
 肩をすくめて苦笑すると、ヴィードルは香りもきつい香草をまきながら、先へ進んだ。
「……皆さん、凄いですね………」
 そんな冒険者達の迫力に気圧されてか。リゼはこっそりと岩陰によりながら、乾いた笑いを浮かべていたそうな。

 山登りは続く。その間も、グドンの襲撃が一回二回に収まるわけもなく。
 いい加減鬱陶しいなと思いだしてもきたころ、先行くヒューガは、一面咲き乱れた薔薇の花畑を見つけた。
「やっと、だな…」
 大きく溜息はついたが、咲き誇る薔薇は美しい。皆、ひと時なれどほっとしたように息をついていた。
 さて、一息ついたところで薔薇探し。
 ある者は一掃しきれなかったグドンの警戒にあたり、またある者は薔薇探しに協力したり、リゼ本人はバックから皮の手袋を借りたと言うのに、薔薇のトゲに悩まされていたそうだったり。
 そんなこんなで、11輪までを見つけることが出来た。
「後1輪だね。向こうの方も探してみようか」
「あ、じゃぁ僕向こうの方で探してきます」
 森の奥を示し向かうと、リゼは一心不乱に薔薇を探した。
(エイミィのために、頑張るんだ!)
 思いよぎらせ目を皿にして探していたリゼが、ふと視線を上げれば。そこに蒼色の花弁を一枚だけ持った薔薇が、咲いていた。
「あ…これ……」
 手を伸ばしかけたりゼ。だがその目の前に出来る、影。
 顔を上げれば、猿のグドンとご対面。
「う…わぁああ!?」
 叫び逃げようとしたが、グドンの足元に、あの薔薇が。
 目視した瞬間、体はそれを覆い、守っていた。
「ダメだ! これは、エイミィへのプレゼントなんだからっ!!」
「よく言った!!」
 踏み込みと同時に放たれたバックの拳が、グドンを殴り飛ばした。
 ぽかんとした様子のリゼを覗き込んで、トリーティアはにこぉっと笑う。
「リゼさん、なかなかかっこよかったですよ〜♪」
「ホント。少しだけ、見直したかな」
 ぽん、と背を叩き、ヴィードルも微笑んでくれた。
「あ…ありがとうございます……」
 ほぅ、と微笑むと、リゼは大事に大事に、最後の1輪を摘み取った。
「……それにしても、これ、どうしましょう…」
「集めたらぱ〜っと変わるんじゃあないですね〜」
「魔法的要素があるわけではないようだしな……」
「とりあえず、村に持っていってみたらどうかしら?」
「そうだね。あのお婆さん、何か知ってるみたいだしね」
 女性陣プラスリゼが、やいのやいのと騒いでいる後ろで、男性陣は取り残されたように花を見ていた。そしておもむろにしゃがみこみ、花を弄りだす。
「お前ら何してんだ?」
「いや…ホラ、フィルも見たがってたし、もう1輪分ないかなぁと…」
「俺も、まぁ、誰にとは言わんが、花を持って帰ろうかと…」
「これだけあるんだし、どうせ持ってくなら大輪の薔薇抱えていけば?」
 彼らもまた、何だかんだ言って、やいのやいのと騒いでいるのであった。

 帰りの道。行きと同じくグドンを警戒したが、ヴィードルがまいた香草が良かったのか、バックが殴り飛ばしたグドンが実はボスザルだったのか。
 真偽の程は定かではないが、一匹二匹がこそっと出てくる以外、目立って戦闘になることは無かった。
 そうして村へ戻り、老婆の元へと向かったのだった。
「お婆さん、蒼い花びら…採ってきたんですけど……」
「おぉそうかい…貸してごらん。すぐに作ってあげよう…」
 リゼが老婆に花びらを渡すと、老婆は戸棚の奥から針と、花と同じ色の糸を取り出した。
 それで、花弁を一つ一つ縫い合わせていったのだ。
「昔はたくさん作っていた物だけれど…今じゃもう、私しか作らなくなったんでねぇ…寂しいもんだよ…」
 薔薇を縫っていく老婆は、何だか嬉しそうだ。
 まじまじと見やっていれば、あっという間に1輪の薔薇が出来上がった。
「ありがとう坊や。久々に見ることが出来て、嬉しいよ」
 にっこりと笑ってた渡された薔薇の花を手に、リゼもまた満面の笑みでお礼を言っていた。
「良かったな、リゼ。大事に持って帰るんだな」
 ヒューガの言葉に彼を振り返ると、リゼはまた大きく頷いて、笑った。
「そうだ…後ろの子らも、これをもっていきなさい。随分昔だけれど、恋が叶うお守りとしてたくさん売られていたもんだよ…」
 そう言って戸棚を漁ると、老婆は一人一人に何かを渡していった。
「うわぁ〜綺麗ですね〜」
「こんな可愛らしいもん、似合わねぇなぁ…」
 トリーティアが歓喜し、バックが冗談ぽく苦笑したそれは、蒼い花弁の押し花だった。長い時が経っているはずなのに、色あせた様子も無い。
 感嘆したように、アリアもまじまじとそれを眺めた。
「見事な物だな…」
「何か、ロマンチックだねだね。ありがとうお婆さん」
 アルフリードに習い、みな老婆に礼を言うと。手を振り別れ、村を後にしたのだった。

 結局、蒼い薔薇の不思議物語は、噂が一人歩きしただけのものであったようだ。
 だがその蒼の美しさは紛れも無く。それゆえに、あのような噂を生んだのだとも、言える。
「でも、ちょっと残念よね」
 押し花を眺めながら、呟くリリス。ディックも、ちょっとがっかりしているようだった。
「そうだなぁ…フィル、がっかりするかな?」
「かもね…すごくあっさりしてたもんね」
 同じように何となく呟くヴィードルだったが、そんな彼らの思い他所に。その少女がちゃっかり人づてに薔薇の真相を知っていたのだと知るのは、後のことである。


マスター:聖京 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:8人
作成日:2003/12/02
得票数:ほのぼの8 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。