星祭り・想いを結ぶ桃茶会



<オープニング>


●想結桃の樹
 東と西の村を結ぶ行路の途中にある丘には、一本の桃の樹がある。
 それは昔、東の村に住むとある男性が、恋い慕う西の村の女性の為に植えたものだという。
 2人の想いを結んだ果実として、その樹に生る桃は二つの村からとても愛されている。
 良縁と、告白のシンボルとして親しまれているのだとか。

 冒険者達が想結桃の丘をグドン達から取り戻してから一年余り。

「冒険者、かぁ……」
 誰も居ない部屋で独り、呟き。
 うん、と伸びをした拍子に卓から落ちそうになったペンを慌ててキャッチ。
 彼女が滞在している家の窓からは、噂の桃の樹がよく見えた。

●桃茶会への誘い
 メイビー・ミシー。古今東西、美味珍味を求めて流離う料理人である。
 趣味は食べ歩きと食材探し、料理の腕を磨く事。それから……
 今は、そろそろ食べ頃を迎える『想結桃』の噂を訪ねて辿り着いたとある郊外の一軒家に、それを使ったレシピを考える間だけ厄介になっているのだという。

「メイビー・ミシーからの手紙だ。招待状らしい」
「知り合い?」
「知らんな」

 ………………。
 黯き虎魄の霊査士・イャト(a90119)があまりにきっぱりと即答したので、烈斗酔脚・ヤン(a90106)は「本当に知らないんだ」と判断できた。目にも耳にも覚えがない相手からの手紙だが、彼がそれをぞんざいに扱わないのは職業柄、それが依頼である可能性が無きにしも非ずであるからだろう。
 もうそろそろひと月が経ち、近日中に発つ事になりそうだ、とメイビー嬢は書き出している。
 軽い自己紹介から始まるそれ。とりあえず――本題を要約すると以下の様な内容である。
 
 星が降る夜に乾杯。(挨拶?)
 『桃のお茶会』にぜひ、冒険者の皆さんを招待したい。
 お菓子を沢山用意して待ってるから遊びに来てね。桃の紅茶もあるよ。
 準備のお菓子作りに参加してくれる人がいたら大助かり。
 お菓子は勿論テイクアウトOK。

「………。ちょっと、フランクすぎない?」
「書いてあるままを読めと?」
 手紙を受け取ったヤンは、「うっ」と詰まり、口を押さえて肩を震わせ始めた。
 もしイャトがこの文面通りに読み上げたら、多分この場は失笑に包まれた後、しばらくまともに彼の顔を見る事が出来なくなるだろう。何かそんな感じ。とにもかくにも、空気を変える咳払いが1つ。
「行ってみるかね?」
「そうね。星の下でお茶会って、ちょっと良いじゃない♪」
 お菓子作りに、ティーパーティーにと盛り上がるのも良いだろう。
 星空の下、『想いを結ぶ』と云われる丘まで足を伸ばすのもアリだ。

 折しも頃は『星祭り』――
 星降らば、誰かに届けたい想いを、願いを……託してみるというのも――

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参加者
NPC:烈斗酔脚・ヤン(a90106)



<リプレイ>

●心を満たす――お茶とお菓子と、その瞬間の笑顔の為に
「あらあら、あらあらあら♪」
 ようこそいらっしゃいまし、想結桃の丘を護りし英傑の皆様!
 メイビー・ミシーはぱたぱたとよく手を動かす女性だった。白いコックスーツがよく似合う。
 歌い出しそうな表情で大仰に出迎えられて、ミュリム(a06501)は妙な気恥ずかしさを覚えた。
「そ、そんな大した者じゃあ……」
 メイビーはミュリムが件の依頼に参加していた一人と知るや、いっそう瞳を輝かせて、
「いいえ。貴女がたのお陰で今年もこうして『想結桃』に巡り逢えるのですわ! 感謝してますの。ささ、どうぞ。さささささ♪」
 くるくると動く腕で、今や遅しと冒険者達を誘う。賑わしい一日の始まりだ。

 調理台の上には基本の材料の他に、料理研究の副産物らしいドライフルーツや桃仁の粉、桃の皮を使ったジャムなども揃っていたが、ユダ(a27741)はそれらには特に用事がなかった。持参した材料を広げて、作業に取り掛かる。マグロの角煮を入れた彼特製の『猫饅頭』を作るのだ。
 さて。
「爆発したりしませんように……!」
「心配性ですのね。大丈夫、こういったものは『中身』で勝負と相場が決まってますわ」
 パイ皿をオーブンに押し込むなり難しい顔で天を仰いだミュリムに、アコ(a14384)は胸の前でハートを作るジェスチャーを飛ばした。二人が作ったのは想結桃のコンポートを詰めたピーチパイ。皆で食べる大きいホールをアコが手掛け、見様見真似でミュリムは小振りの物を仕上げた。心は込めたつもりだ、いや、込めた。少々ぎこちなさを感じる見映えも、努力の跡と思えば充分及第点と思いたい。
「そ、そうですよねっ。気持ちで!」
 ぐっと拳を握り、頬を赤くするミュリム。その腕にミィミー(a00562)が飛びついて来た。
「ミュリム、私のゼリーちょっと味見してもらえない?」
「あっ、はい」
 粗漉しした桃のゼリー液をミュリムが味見する様子を爛々と凝視するミィミー。ちらっと聞こえた所によれば、旦那様を労うゼリーなのだそうだ。先日ユダと恋人同士になったばかりのアコは少々耳年増になって聞き耳を立てながら、何気ない素振りで元の話題を続ける。
「問題は火加減ですわね。何せ初めて使うオーブンで……あら、そんな顔しなくても大、大丈夫ですわよ多分」
 窯の中で再加熱されたコンポートから、シナモンの香りが漂い始めていた。

「他に何か、出来る事があれば手伝いますわ」
 メイビーの作業を引き継ぐ形で手伝うお菓子の仕上げ。それぞれに奮闘している仲間達の姿を眺める瞳に笑みを浮かべてイングリド(a03908)が声をかけると、メイビーはドライピーチを一口大に刻む手を止めた。
「これにチョコレートをコーティングして仕上げますの。それからカスタードとメレンゲのクリームを桃のタルトと合わせた『シブスト』と――余った材料は、甘いサンドウイッチに。後は、お庭のテーブルセッティングですかしら」
 お手隙でしたら。と、一息に彼女は言った。承知して頷き、イングリドは腕まくり。
「盛り沢山ですわね」

 さしずめ、桃のコンポートは月。
 星型のムースを添えて、後は星の形のゼリーを鏤めたら完成だ。自分達が考えたお菓子が形になっていくのは何だかとても、楽しい。バーミリオン(a00184)とスージー(a04978)は仲良くゼリーの型抜きをしている。
「ありがとうです」
 何の事かと少年が顔を上げると、こちらを見ていた少女と目が合った。
「重いの全部、運んでくれたです」
「あれくらい、俺は全然平気!」
 後片付けも任せて、と誇らしげに胸を張る少年。
「「あっ」」
 彼がうっかり星の角を欠いてしまっても、スージーは慌てずにっこり。
「これくらいなら、だいじょぶですよ」
 崩れたゼリーの形が星型に整えられる様子にバーミリオンは見惚れていた。でも、とスージーが思いついたように言う。いっそ粗く削ってしまうのも良いかもしれない。

 ミントの葉と削ったチョコで飾り付ける、桃とバナナの一口タルトを慣れた手つきで仕上げながらエレアノーラ(a01907)はそのお菓子で元気づけたい人の顔を思い浮かべた。――とある人を亡くしてから元気がない姉。こんな時、決まって無力になる言葉の代わりに伝われば良いと思う。果物の隙間を埋める様に絞るサワークリームには桃の果汁を混ぜ込んだ。
(「後は、お茶会に出して皆さんの反応を……」)
 ふと作業の手を止めて顔を上げた視界に、ずざ、と退る気配を捉える。
「わ、わ……すみませんっ、ごめんなさいっ」
 タルトを取り落としそうになりながら、未遂ですー、と全身で叫ぶティトレット(a11702)にただ事ではない表情を浮かべて詰め寄るエレアノーラは、正面から彼女を捕まえ、
「どっ、どうですか? このタルト美味しいですか??」
「えっ、ま、まだ、食べてませんけど、っ……」
「あっ。そ――そうですよね」
 先走った自分に恥じ入る様に笑う。つられてティトレットも笑みを浮かべた。困惑気味に。

●桃の紅茶が薫り立つ――宵の星空の下で皆と
 薄桃色のテーブルクロスがかけられた白い円テーブルの上に、『手作り感溢れる』菓子が納まったケーキスタンドやボンボンディッシュがずらり。それらを淡く彩るランタンの灯り。砂糖の代わりに余ったコンポートのシロップを入れた甘い甘い桃紅茶を、お菓子と共に楽しむ空間。
 ラッピングしたゼリーを視界の端に置いて、満足げにカップを口に運ぶミィミーの首は微かに舟を漕いでいる。あの後、お酒を足して仕上げたゼリー。自分でも味見をしすぎただろうか。だが、おかげで自分で納得出来る味に仕上がった。夢見心地のまま、お菓子を抓む。

「いい出会いが訪れると良いですね!」
「はいはい拗ねないんですのー」
「……うーるせーぃ」
 良縁祈願の紅色タルト(淡い紅色は、赤味鮮やかな想結桃を皮ごと煮る事で自然に着いた色だ)に、桃プリン。お菓子と共にやって来るシュシュ(a09463)のキラキラした笑顔と、頭を撫で撫でするリリエラ(a09529)の手に呻きつつ、紅い犬尻尾が悔し紛れに揺れている。そもそも彼が何故ここにいるのかというと、やはりお菓子で釣られたらしいが。桃の紅茶を運んで来たティトレットが、ほっとした表情を見せる。
 やがてグラツィエルはその場から逃げる様に駆け出した。「てめぇらこんちくしょう」と歓喜の雄叫びを上げながら、だが、傍目には独り身の荒んだ心を叫んでいる様にしか見えなかったかもしれない。

「ごあー!!」
 およそ女性らしくない悲鳴を上げて、ヤンの脚が宙を薙ぐ。
 ごっ。
 もんどりうって吹っ飛ぶ弾みで、ゲイル(a01603)の手が彼女の尻尾から離れた。
「はっはっは。元気だなぁ、ヤンは」
「き・さ・ま・は! その手癖の悪さを直せ……!」
 地に臥したまま清々しく挨拶するゲイルの胸倉を掴んで引きずり起こしたヤンの眼が怒りに吊り上がっている。「あー」と、唐突にゲイルが棒読みで嘆いた。せっかくのタルトが美味そうなタルトがー。
「……見ろ。地面に食わせちまったじゃないか」
 どうしてくれる。ヤンの分もあったんだぞ!
「普通に持って来んか!」

 隣のテーブルの賑やかな尻尾2人を面白げに眺めていたシーザー(a28779)の視線が、素直な衝動に従って元の位置に戻った。一度は強く自制して猫饅頭に手を伸ばした彼だったが、口元でもふもふしながら相変わらず、視線は揺れるユダの猫尻尾を追っていたりする。ユダの隣を頑なに譲らないアコは、少々警戒気味。
「何処見てますのー」
「うん。でも、俺は蹴られたくないしな」
「何を言ってるんだ……?」
 怪訝な顔をするユダに、こっちの話と手を振った。
「皆さんも、お口慣らしにいかがですか?」
 と、ファオ(a05259)が生のまま『ウサギリンゴ』の要領でカットした皮付きの桃を皿に盛ってやって来た。お菓子に加工したのも良いが、せっかくの瑞々しい桃を味わわずに帰るというのも勿体無い。
「あら、可愛らしい」
「でも、桃のうさぎさんは耳がすぐ寝ちゃいますね」
 イングリドに頷いて返してからファオは、もう少し固めの桃を選べば良かったかと天然気味に小首を傾げたりもした。
 
「やあ、2人とも。タルトのおかわりはどう?」
 対極の気迫をぶつけ合う2人の仲裁に入ったクロエ(a07271)が笑いを堪えながら、手製の想結桃タルトを差し出した。
「あ、ありがとー……」
「美味美味。クロエはいい『嫁さん』になれそうだな。誰かさんと違って、……――っと。じゃあ俺は茶でも貰って来るか」
 言うだけ言って一時退避と決め込むゲイル。一度振り返って「三人分な」と、親指から始まる三本を立て、さっと立ち去る彼の背に案の定「誰かさんって誰の事よ」と噛み付くヤンを諌めながらクロエは、返答に困った様に苦笑した。ふとその表情が失せ、
「――ねぇ、ヤンさん……」
 何かを決意した神妙な声音をはらむクロエの問いが吐き出される。
 ………。
「何でもない人に、贈り物なんてしないわ」
 僅かな間を伴い、返されたのは意外にあっけらかんとした答えだった。
 口にするのが恥ずかしいという風な照れ笑いで、彼女は付け足した。
「……よく解らないけど、本当のお兄さんってこんな感じかしらって」
 ドキドキするのよね、と言ったきり、双方言葉も無いまま天を仰ぐ。
 ゲイルがティーセットを借り受けて戻って来るまで、2人はそうしていた。

「……驚かせてごめんね?」
 頭上から降る優しい声にマイン(a05488)はぶんぶんと頭を振る。久し振りの再会。派手に登場した彼に驚くよりも、安心感の方が遥かに大きくて、ゴウテン(a03491)の顔を見上げた時には満面の笑顔。
「星降る夜に乾杯! なんちゃって……、ゼリーでもいかがですか?」
「ひょっとして、マインちゃんのお手製かい?」
「メイビーさんに教わりながら、ですけど……」
 ゴウテンは「どれどれ」と値踏みする様に手を伸ばす。グラスの脚に結んだリボンが小さなスプーンを留めている。桃の果肉と気泡を閉じ込めた黄金色のシャンパンゼリー。
「ふむ、美味そうだ」
 鑑定結果にマインは表情を綻ばせた。
 チン、と鳴る二つのグラスの中で、それぞれの顔を映したゼリーが揺れる。
 密やかに。今夜の為に、闇色のワンピースと笑顔で鎧ったマインの心の奥底が、ゼリーと一緒に揺れている。
 想いを結ぶ夜に――願うのはただ、大切な人の永久の幸せ。
 ふと、浮かんだ良からぬ思いに彼女の瞳は伏せられた。
 視界に零れ落ちる髪を耳にかけるマインを、ゴウテンは見つめていた。生憎の季節で桃の華を用意する事はできなかったが……保護者の顔で、優しく彼女の頭を撫でながらそっとおでこに唇を寄せるキス。
「滅多に会えなくても、いつでも君だけを守ると誓う…さ」
 それでも心に募る不安を、彼女は決して口には出さない。
(「……わたしは、貴方の傍にいてもいいのでしょうか?」)
 ただ、彼を心配させまいと笑顔のままで。

●お茶会を抜け出して――想いを結ぶ丘で君と
 ――ぅぉぉぉぉ ……
 聞き覚えが有るような無いような犬の遠吠えが、風に紛れて消えた。
 人家の灯りから離れれば離れるほど、星々の煌光は夜闇に冴える。

「わー、きれーい。気持ちいい夜だねー、イャトさんっ♪」
 仄かに桃の香を纏う風を胸いっぱいに吸い込んだ、明るい声で振り返る。
 イャトはただ空を仰ぐだけでうんともすんとも言わないが、ルシエラ(a03407)は共に出歩く事を純粋に楽しんでいた。駆け戻って来てイャトの脇にぴたと張り付いたと思えば、ぱっと離れて後ろへ回る。暫く足取りを真似する様について歩き――そのうち影をぴょんと飛び越え、逆サイドから窺う様に顔を出した。
「………」
 さすがに足を止めるイャト。
「あまり、チョロチョロするな……危ない」
 ルシエラはきょとんとして、すぐに相好を崩し――にこにことまた横に並んで歩き出す。先程よりは幾分、落ち着いた足取りで。
 適当な場所に腰を下ろし、伸びをする様に大きく仰け反りながら星を眺め、桃の樹のシルエットを逆さまに捉えた所でルシエラは一気に身を起こし、隣で目を伏せて瞑想しているイャトを見た。眠っている様にも見えるが、故に声をかけるのも憚られる。
(「えーと、えと。イャトさん一体何しに来たんだろー」)
 誘った当人がそう思うのもなんだが。
 それでも、彼は誘いを拒否する事はしなかったのだから――
(「まぁ、いいか♪」)

 大切な人と共に在る事は幸せだ。そして願わくば、今以上に絆を深められればとも思う。
 そわそわ。そわそわそわ。
「……アイリ?」
「いえ、その――私は、ここに来るのは初めてだから、……その」
「そんなに心配しなくても、桃の樹までは一本道ですよ」
 アイリッシュ(a12290)が言わんとしている事に気付いたキョウマ(a06996)はやんわりと笑顔で告げた。
「――……そ、そうね。迷わずに済むなら、安心ね」
 きっかけを逃し、中空に彷徨いかけた掌を自分の頬に当てて笑顔で誤魔化すアイリ。
(「……私は、何だか期待してばかり、ね……」)
 彼女が肩を落とした時、キョウマは気がかりな友人達を案じて遠くの明かりを振り返っていた。
 目的の場所に辿り着くと、枝葉の合間から零れて見える星々に思い出を重ね、大樹に語って聞かせるキョウマ。
 アイリは祷りを込める様に、こつん、と額を大樹に預けて瞳を閉じている。
 一年前、出会いの種をその身から彼に分けてくれた大樹に小声で呟く、「ありがとう」。
 お礼参りを終え――
「アイリ、これからもよろしくお願いしますね」
 キョウマは言って、アイリに手を差し伸べたのだった。

「一目惚れって、――本当にあるんですのね」
 とにかく口に出す事で、心の中のもやが晴れて行くのが解る。色々と手違いで、手紙と一緒に渡す事が出来なかったケーキの箱も一緒に差し出した。気恥ずかしげな笑顔で、戸惑いがちに。だが、その瞳には覚悟の色があった。
「………」
 彼女が手紙を落としたまま気付かず行ってしまった時には、どうしたものかと思いもしたが。実の所、予感があったのも確かで。『貴方が好きです』とだけ書かれた自分宛の、至極シンプルな手紙の内容は、忘れようもない。
 ゼイム(a11790)はフッと笑みを湛えて、十五の歳の差を埋める様に歩み寄る。差し出された箱を彼女の手ごと自らの手の中に包み込み、その額に唇で触れた。ゼイムの一見軟派な瞳に優しい色がよぎる。
「ここで気障な台詞の1つも吐いてキメるつもりだったんだが……すっかりすっ飛んじまったよ。最高に特別な日にしてやりたくて、考えすぎたのかもしれないねぇ」
 ――でなけりゃ、その潤んだ瞳に丸ごと飲み込まれたんだろうよ。
 ゼイムは、後であの桃の樹の枝で簪でも作ってやるかと、半ば本気で考えていた。
(「保障くらいにゃ、なるだろ」)
 塞がっている両手の代わりに、彼女の顔を包む様に額を寄せる。
「ぜ、ゼイムさ……」
 リリエラは、いつの間にか周囲に満ちていたフォーチュンフィールドの淡い光に気付いた。
「俺にとびっきりの笑顔を見せてくれ、リリエラ」
「――!」
 ――受け入れられた想いに重ねる、お返しのキスを彼の頬へ。
 後はもう、彼女の口からは照れ隠しの軽口しか出てこなかった。
「ゼイムさん、お酒臭いですわ」
「ああ、夜を待つ間、結構飲んでたもんでね」
 あっさりと飲酒を認めて、彼が視線を落とした箱の中からも仄かに甘い洋酒の香り。


「あっ、流れ星」
 バーミリオンが空を指す。
 スージーと二人揃って丘に座り、今日一日の美味しかった事や楽しかった事を話していた。
「……バーミリオンさんは何をお願いしたですか?」
「ん? えーとね……多分、スージーさんと同じ事!」

『 ずっと一緒に居られます様に 』

 ――交わされる誓いと願いの数々を、天に降らせる桃茶会。
 夜はただ何時もと変わらず其処にあって、何時もと変わらず更けて行くのだろう。


マスター:宇世真 紹介ページ
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星影・ルシエラ(a03407)  2009年12月18日 19時  通報
桃、大好き♪ 花も、香りも、実も、桃って形も、味も。
ぴーって、指でむけちゃうと嬉しい〜かぶりつきー♪

そういえば…告白の丘だったけどー。
お散歩♪楽しかった。
あのねー、きっと今も、多分あの歩き方はしちゃう♪