水姫



<オープニング>


 雨の続いたある日の夜。
 珍しく雨が上がり、男は帰りを急いでいた。
 空には細い三日月が浮かんでおり、儚げに男の行く道を照らしている。

 男はふと、人の気配を感じて、立ち止まった。
 恐る恐る振り返ると、先ほど自分が通ったときには居なかったはずなのに、女性の人影が1つ、佇んでいる。

 帰らなければ……家で、家族が待っているんだ……。

 そう、思うのに、体が動かない。
 むしろ、その女性に釣られるように、そちらに足を向けてしまった。

 その後、その男を見たものはいない――


「この村から少し北へ行ったところにある湖に向かって欲しいの」
 灰狐の霊査士・ヴァルナ(a90183)は、1枚の地図を広げると目の前に集まった冒険者たちに指差して見せた。
「この湖の近くでね、男性が2人、行方不明になっているの。どうやら、湖にモンスターが出るようでね。そのモンスターが男性たちを誘惑してるみたい……。行って、モンスターを退治するのと、もし付近に行方不明の男性が居たら、助けてあげて欲しい。お願いね?」
 ヴァルナは冒険者たちを見回し、そう告げた。

マスターからのコメントを見る

参加者
深緑の眠り・エフ(a05027)
燈導・ソエル(a16489)
疾風の語り部・スウル(a18669)
混沌の闇を切り裂く獣牙・ディズ(a22417)
蒼闇の戦姫・メイエン(a22736)
蒼天の光華・アルシェーラ(a24932)
何処にか咲く紫の菊・ミソギ(a24984)
銀蒼の癒し手・セリア(a28813)
剣神に仕えし戦巫女・エリス(a29460)
目指せ大富豪・フランシスカ(a29789)


<リプレイ>

●消えた男性の行方
「はあ〜」
「スウルさん、隠れてないで。必ず、行方不明になっている方を探し出して、家族の元に連れて帰りましょう」
 ため息をつきながら、木陰に隠れる風の語り部・スウル(a18669)を引っ張り出しながら、ストライダーの翔剣士・エリス(a29460)はそう告げた。
 スウルとエリスは、捜索班として他の2人と共に、この湖付近に来る途中で近隣の住民に地形を確認した上で、決めたルートを歩き始める。
(「これが、緊張って言うことなの……?」)
 初めて請ける依頼にそわつく体に、歩きながらエンジェルの重騎士・ミソギ(a24984)はそんなことを考えていた。
「戦闘なんて野蛮なコトは私の領分じゃないですからね。ふふり、楽な仕事で美味しい所はゲット! ですよ!」
 そんなことを呟きながら、ヒトの翔剣士・フランシスカ(a29789)は足元に注意しながら歩いていた。行方不明の男性の足跡や落し物などの手がかりがないか、注意して進む。

 どれくらい歩いただろうか。
 足元に注意していたフランシスカが最近ついたであろう足跡を発見した。4人はそれを辿って、行方不明者を探し歩くことにする。
 足跡はどんどん湖に近づいていき、ふとスウルが顔を上げた先、水辺ぎりぎりのところに男性が倒れていた。その傍には、佇む1人の女性。
 駆け寄ろうとしたスウルは、『フェロモン=苦手=退く』という考えが働き、男性に駆け寄るどころか、逆に離れた木陰へと隠れてしまった。
「その人を離すにゃー」
 代わりにエリスが鞘から抜いたレイピアを片手に、後先考えないまま、女性へと向かっていった。
 エリスの突撃に、女性は冒険者たちの方を振り向いた。そして、突撃していったエリスに対し、手にした宝珠らしき武器から衝撃波で迎え撃つ。
「エリス!」
 反撃を喰らって体勢を崩すエリスと女性――モンスターの間に、ミソギは割って入った。
 それを木陰から見ていたスウルは何かを決意したのか、太刀の鞘を握り隠れていた場所から出てきた。その姿はまるで先ほどの脅えていたスウルとは人格が変わったかのように堂々としている。
 モンスターと対峙し、スウルは太刀を鞘から抜いた。そして、間を置かず、その太刀に稲妻の闘気を込め、モンスターに斬りかかった。太刀の一撃は斬撃というより叩撃を与え、それと共にモンスターを麻痺させた。
 その間にも、エリスは用意して来ていた笛を吹き、モンスターを探している仲間たちにこのことを知らせる。笛の音が辺りに響いた。
「……大地斬っ!」
 ミソギは手にした長剣の重さを破壊力に上乗せした、重い一撃をモンスターに向けて放った。
「牽制しますからその間に逃げてください」
 フランシスカは、不思議な剣舞を舞った。その不思議な舞いを見入ってしまったモンスターは攻撃する気を失ってしまう。
 だが、モンスターはその効果も、そして麻痺をも振り切るとミソギへと衝撃波を放ってくる。その衝撃波を盾で防ぐが、防ぎきれなかったものがミソギに傷を与えた。
 後ろに退くミソギとモンスターの間にスウルが割り込むと下から斬り上げた。その一撃でモンスターは事切れ、その場に倒れこんだ。
「大丈夫ですか?」
 フランシスカは倒れている男性に駆け寄り、声を掛ける。
「う……」
 その声で、失っていた気を戻したその男性は瞳を開く。彼の瞳に映ったのは今声をかけたばかりのフランシスカと、更に駆け寄ってきたエリス。
「く、来るなっ!」
 2人を目にして、更なる敵だとでも思ったのか、男性は身を後ろに退いた。
「うーん、仕方ないですねー……。しかし私には人命救助という崇高な使命があるのです! こういう場合は……有事措置ッ!!」
 フランシスカは男性の腹部を殴って再び気絶させると、半ば無理やりではあるが連れて行くことにした。

●モンスターは何処に
「ここがモンスターが出るという湖ですよね〜?」
 蒼水晶の射手・アルシェーラ(a24932)は列の中央辺りを歩きながら、湖を見てそう呟いた。
 行方不明者の捜索班と分かれ、モンスターの退治班として6人は湖付近を歩いている。
 戯夜の翼・ソエル(a16489)は念のためにとフェイスマスクをつけていた。深緑の眠り・エフ(a05027)もマスクをつけている。捕まっているのが男性のみというだけで、女性にだってモンスターの誘惑の効果がないとは限らないと考えたからだ。

 混沌の闇を駆け抜ける野生児・ディズ(a22417)はというと、いつモンスターに遭遇してもいいように、闘気を高めたまま、歩いていた。
 けれど、闘気を高めただけではモンスターの誘惑に打ち勝つことは出来なかったらしく、ディズはふいに何かに釣られるように湖の方へと足を向け、歩き始めた。
「ディズさん、大丈夫ですか?」
 それに気づいた探求する銀蒼の癒し手・セリア(a28813)が慌てて、ディズの進行を防ぐように回り込み、彼の肩に手を置くと軽く揺すった。それでもディズはセリアを押しのけて、歩こうとする。
「これはモンスターが近くにいるということになると思います」
 呟いた蒼き破壊の翼・メイエン(a22736)はモンスターがいつ襲い掛かってきてもいいように、巨大剣をしっかりと握った。
「しっかりしてくださいっ!」
 まだ正気に戻りそうにないディズの頬を叩きながら、セリアは声を上げる。
 何度目だったか。パシッと音を立てて頬を叩いたとき、先ほどまでセリアを押しのけようとしていたディズの動きが止まり、ハッとしたように彼は周りを見回した。
「……俺は、何を……?」
「よかった……」
 どうやら正気に戻ったようだ。それを確認したセリアはホッとした。
「……もしかして、発見しちゃったかな〜?」
 アルシェーラはそう言うと1本の矢を湖の方へ向けて放った。そこには2体の女性の影。その影は真っ直ぐ冒険者たちへと向かってきた。
 ピィィィィ……、と。
 タイミングが良いのか悪いのか、まさに影が冒険者たちへと攻撃を行おうとしたとき、辺りに笛の音が響き渡った。
 どうやら捜索班もモンスターと接触したようだ。
 けれど、先にこちらの2体を倒してから向かうしかない。
 冒険者たちは互いに頷き合って、この2体へと攻撃を開始した。

●倒せ、モンスター!
「喰らえっ!」
 ソエルは片方のモンスターに近づくと、そのモンスターに蹴りを繰り出した。繰り出される蹴りの軌跡は眩い光の孤を描く。
 モンスターは両の腕でその蹴りを防ぐが、鉄をも切り裂くほど鋭く強靭なその蹴りを完全に防ぐことは出来ず、バランスを崩し、地へ倒れかける。
「火球よ、彼の者を焼き尽くせ!」
 術手袋を装着したその指で、紋章を描いたエフの頭上に、紋章の力を集めた火球が作り出された。そして、今バランスを崩したばかりのモンスターへとその火球が放たれる。火球はモンスターを包み込み、その火球が消える頃、息絶えたモンスターは地に伏した。
 片方のモンスターが倒れ、それに驚いたモンスターは手にした宝珠のような武器から衝撃波を飛ばした。
 その衝撃波はソエルへと向かってくる。
「くそっ……やるね」
 小型盾で防ぐものの、それでも微少ながらもダメージを負ってしまった。
「……くたばってしまえっ!」
 アルシェーラは1本の矢を作り出し、そして放った。放たれた矢は、光の軌跡を描いて、モンスターへと向かう。目の前から飛んで来るその矢をモンスターは横に避けて交わそうとするが、矢はそちらへと回りこんで、モンスターに突き刺さった。けれど、まだ平気そうな顔をして立っている。
 自らの筋肉を爆発的に増強させたメイエンは、巨大剣を構えると闘気を極限まで凝縮した一撃を叩き込んだ。巨大剣の刃はモンスターの肩口に辺り、そこで爆発を起こす。
 流石にその一撃を喰らって、平然としては居られなかったのか、モンスターは顔をしかめた。
 ディズが巨大剣に闘気を込めて振るうと、彼の周りに竜巻が起こった。その竜巻はモンスターを巻き込んでいく。
 巻き込まれたモンスターは、竜巻が消えると宙へと投げ出され、そして地に落ちてくると共に息絶えた。
「風よ、彼の者の麻痺を癒せ!」
 セリアは宝珠を握り、そう唱えた。辺りに心地良い風が吹き、先ほどの攻撃によって麻痺を負ってしまったディズは、その麻痺から回復した。
「……捜索班の方へ……」
 回復したディズのその声と共に、6人は笛の音のした方へと駆け出した。

●2人の行方不明者
 エフたち退治班が駆けつける頃には、捜索班の方のモンスターも倒されていた。そして、更に探し回った結果、行方不明であった男性2人ともを見つけ出していた。
「波よ、彼の者たちを癒せ!」
 セリアから発せられた淡く光る波が男性2人とエリスを包み込む。
 かすり傷などの小さな外傷を負っていた男性たちも、その傷が癒えるとともに、失っていた気を取り戻した。
「……あれ、ここは……?」
「よかった。もうモンスターはいないから安心して」
 ソエルに声を掛けられて、しばし考え込んでいた男性2人は今まで何があったのか思い出したのか、一行に頭を下げた。
「ありがとうございました!」
「歩けますか?」
 セリアの問いかけに男性たちは立ち上がってみる。少しふらつくものの何とか歩けるようではあった。
 けれど、念のためにと肩を貸して、近くの村まで送り届けることにした。

 一行の端の方で、スウルはため息をつきながらいじけているのであった。


終。


マスター:暁ゆか 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:10人
作成日:2005/07/18
得票数:戦闘15 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。