<リプレイ>
●茶会のホスト 「『ホスト』って言ったらスーツでしょ?」 ティーナが言うも、毀れる紅涙・ティアレス(a90167)は無言の眼差しを向けるのみ。しょんぼりと肩を落として「ティアレスさんなら着こなしてくれると思ったんだけどなぁ」等と言葉を重ねると、彼は浅く溜息を吐いた。 「茶会にこの姿と言うのも不釣合いであろうしな」 羽織っている暑そうなマントを器用に外す。瞳を輝かせ、じゃあ帽子も、と彼女が指し示すのを見てティアレスは再び沈黙した。机の上に載っている帽子は何と言うか身長が150cmはありそうなエイルに良く似た帽子だった。寧ろ贔屓目に見ても帽子には見えない。 「うなうなぁ〜」 黙して視線を受けていた自称帽子は、誤魔化すかのように鳴いた。 「要らんわ、こんな帽子」 ぺし。 「みゅ〜!」
白い洋館には溢れんばかりの砂糖菓子の薔薇が咲き誇っていた。甘い色をした花弁の上に、振り掛けられた粉砂糖がきらきらと輝いている。白いテーブルクロスをかけられた丸テーブルと座り心地の良い椅子。紅い絨毯の敷かれた広間には砂糖菓子の香りが満ち、螺旋階段をのぼれば二階のテラスに出ることも出来、一階のテラスは其の侭庭と繋がっている。 客人の数は少なく無く、茶会は賑わっている様子だった。招いた側であるティアレスは、ホストと言う言葉の意味を正確に理解してくれる人間の少なさに辟易しながらも広間に向かう。薄い唇に甘ったるい笑みを浮かべ、漆黒のスーツに飾り気の無い白いシャツ、黒革の靴を鳴らして金の髪を指で透かしながらに客人の前へと姿を現した。 「ししょーのホスト姿! 目から鱗デス!!」 何か違う意味のような言葉を言いながら、マンジュが興奮して拳を握る。周囲の薔薇が美しく食べるのは勿体無いと思えてしまうも、其れ以上にティアレスの普段とは違う様子に驚いていた。 「ティアレス様、雑務はわたしに御任せ下さ……はうっ」 久し振りに間近で憧れの人の顔を見たせいか、気絶しそうになっているライザを支え、近くの椅子を引いて座らせてやる。給仕を遣らせるわけには、と主張する彼女に招待側が動かぬのも決まりが悪かろうと宥めつつ、 「おまえにも今日と言う日は楽しんで欲しい。休めて行け」 と、相変わらずの何処か酷薄な笑みで返した。
●一杯の紅茶 「おぉ〜ステキなぁホスト姿ですねィ〜♪ えひひ、惚れちゃいそ〜」 ナオは御菓子をぱくぱくと平らげながら、無駄の無い動きで紅茶を注いでまわるティアレスに声を掛けた。御満足頂けているようなら何よりです御嬢様、などと彼はからかうように言葉を返す。其の様子を見ていたナーサティルグは、微笑んで彼に薔薇を求めた。与えられれば、うふふ、と笑みを零す。 「きっと、此処に来ている冒険者の方々にも、貴方から薔薇を欲しがる方は多いと思いますよ」 言ってくれるな、と彼は肩を竦めて見せた。 綺麗な御花は大好き、甘い御菓子も大好き。両方合わさってるなんて、と非常に御機嫌な様子のルルノー。紅茶を注ぎに遣って来たティアレスに持参した御菓子を差し出し、代わりに彼が銀盆の上に乗せていた砂糖菓子を取り上げる。彼は珍しく笑んだまま、彼女の頭を軽く撫でて去っていった。 その隣で手製のチェリーパイを切り分けながら、シュゼットは親しい人に思いを馳せる。笑顔で居て欲しいと願う彼女が、まさか先程帽子として捨てられたなど想像もつかないことだった。 アンジェリカも持参した野菜と卵をたっぷり入れたサンドウィッチを皿に並べる。以前と変わらぬ甘い香りと精巧な細工の施された薔薇菓子にうっとりとしながら、ホスト役の彼には本物も砂糖菓子も薔薇が似合うと考えた。 「えと、ティアレスさん? 大丈夫ですかっ?」 緩やかな歩調ながらあちらこちらを歩き回っている様子の彼に、レンが声を掛ける。御茶を飲んで一息入れて欲しいと言うも、其の気持ちだけで十分と態とらしく甘い笑顔でかわされる。差し出したアップルパイは、後で頂こうと受け取ってくれた。 (「ティアレスさんって、ある意味罪な男ですよね……」) 心の中で呟いていると、何処からとも無く悲鳴が聞こえた。 「いやぁぁああ!! 俺の紅茶、紅茶ーーー! アネキの悪魔、鬼ー! すいませんへぶらぁっ!!」 「わたくしにデュラシアが逆らうなんて許さなくてよ!」 「……紅茶の御代わりは未だあるぞ」 痛々しい悲鳴に白いポットを差し出すティアレス。デュラシアが鼻血を出して倒れているのは高級な紅茶に興奮した為か、何らかの不幸な事故にあったためか判別がつかない。彼の横ではその姉アカリナが上品な笑みを浮かべていた。紅茶を注ぐホスト役の彼に声を掛ける。 「存分に堪能させて頂くことにするわ」 向けられた笑顔に、彼もまた笑顔で返した。 「仰せの侭に。御嬢様」
●砂糖菓子の薔薇 霊査士は誘われはしたがテラスには顔を見せなかったらしい。少し肩を落として見えるレイファの横では、フラジィルがオレンジジュースを啜っていた。二人はテーブルの下で冷えた紅茶を舐めている彼女の愛猫の話や、旅団の話で盛り上がっている。皆さん御元気なら何よりですよぅ、とエンジェルの少女は微笑んだ。 「やっぱ高嶺の花は簡単に手が届くもんじゃねぇな」 砂糖菓子の薔薇を見て一言ジョジョは呟くも、笑いながら菓子を口に運ぶ。彼のの足元では、躾の行き届いた犬が静かに寝転んでいた。 天気の良い午後の日差しの中、ネミンは凄まじいほどの勢いで菓子を食べ続けていた。本日は連れの奢りだと彼女は信じ切っている為、遠慮もせずに食べ続けている。スイトは苦笑して、そんな彼女の頭を撫でてやり、口周りについた菓子をハンカチで拭い取ってやる。 通り掛ったティアレスは、何やら黒字になりそうな帳簿の様子に安堵したとか何とか。
「ティアレス様、御機嫌ようー! 今日はめいっぱいオシャレをしてきましたの♪」 胸元にピンクの薔薇をあしらったふわふわのドレスに、同じくピンクの薔薇のヘアコサージュ。おかしくないですか、と照れたように首を竦めるのに「女性は美しくあろうとする様が最も美しいのだ」と彼は笑った。 彼女に貰った生薔薇を胸に飾り、ルーツァはキャメロットの隣へと戻った。キャメロットはと言えば何処ぞの新作うさまんを抱き締めつつ、鳥篭亭の女将に撫子のコサージュをつけて遣っている。ティアレスと視線がかち合うも、キャメロットは直ぐに視線を逸らし、妹のように思っている少女と歓談を続けた。 ハルは慣れた仕草で焼きたてのスコーンやクロテッドクリームなどを運びながら、面々と笑顔で言葉を交わしている。纏う服装は正装に近いながら、ラフに胸元のタイを解き、ホスト側に回らないかと親しい人に話しかけていた。 「ホストだから、仕方ないんでしょうけど――」 女性と笑顔で言葉を交わす何処かの誰かに視線を向けて、複雑そうな表情で溜息を吐く。そんなミミルに気付くと、ハルは軽く肩に触れてやり、彼女が持ち込んだローズヒップのシフォンケーキを切り分けた頃、彼が遣って来る。 「紅茶を入れて下さいな」 差し出した白いティーカップに、ホスト役の彼は紅い茶を注ぐ。意識したわけで無く頬へのぼらせた、何処か大人びた微笑に彼は口の端を吊り上げて笑う。彼女には判るようにと言葉を選んだ。 「砂糖をふたつは入れた方が良い。甘くは無かろうからな」
●休息のひととき 「貴女を見ていると飽きはしないのですが……違う意味で、目が離せなくなる」 彼女は紅茶を口に運び、小首を傾げては時折薔薇の花弁の砂糖漬けを口に運ぶ。最中かけられた言葉にイドゥナを暫し見詰め返し、瞳の色を探られれば逃すように視線を落とした。其れ以上の言葉を交わすでも無く、彼は彼女の蒼い髪を軽く手繰り、緩く短い口付けを落とした。 薔薇を静かに見遣っていたイヲリは、ティアレスが茶を注ぎに来た折、ぽつりと呟くように問い掛ける。 「薔薇も豪華で素敵だが……私は、もっと清楚で清らかな花が、素敵だと思う……」 貴方もそう思わないか、と彼女が向けて来た微笑に、彼は嗚呼と声を洩らして笑った見せた。 「イヲリには桜のような柔らかな花が似合うやもしれんな」 しかし我には似合うまい。棘が在るくらいが丁度良いのだ、と変わらぬ笑みを刻んで次のテーブルへと渡って行く。そんなティアレスに近寄ったのは同じくホスト側として給仕に勤しむゼイムだった。 「どうだ、良い娘は居たかい?」 慣れた調子で客人と会話し場を和ませていた彼は、にやりと笑ってティアレスに問う。女性は皆美しく目の保養になる、等とふざけた調子で返しながら、二人は再び給仕に戻った。 ゼイムが居たテーブルは酷く賑やかな調子で、ロックは彼の話を聞くと「僕もいつかそういう冒険をしたいなぁ」と感嘆と尊敬の入り混じった息を吐く。可愛らしい砂糖菓子の薔薇の花を見て、一本しか持ち帰れないなんて残念だ、とも溜息を吐いた。楓華風の着物を纏ったリョオウは女性と見紛うばかりの風情。砂糖菓子の細工に興味津々の様子で、会話を楽しんでいる。サシャオはそんな皆に「苺たこ焼き」なるものを差し出したりもする。ソースをかけると異様なものに変わるようだが、ソースをかけねば安全ではあるようだ。
「あの……コレ、クーラに食べて欲しくて……」 スイが差し出したのは可愛らしいクッキーだった。沢山の失敗作の中から、運良く焦げ目の優しいものを選んで来たのだ。 「え……このクッキー、スイが?」 クーラは驚いたように目を丸くした。自分の為に頑張ってくれたのだと言う事実に、思わずぽろぽろと泣き出してしまう。慌てた彼女の頬に小さくキスを送って、「大切に食べる」と微笑んだ。そして彼女は、悪戯心で激辛クッキーを一枚混ぜたことを言えなくなってしまったのだった。 一方、シャリィラの切り分けたフルーツタルトをアルマは美味しそうに食べている。弟のように思っている彼のそんな素振りに、彼女は嬉しそうに淡く微笑を浮かべた。戦いが常に控えている以上、このように心を休めることの出来る日が多くあれば良い、と小さく思う。 「……余り急いで食べて、喉に詰まらせないでくださいね」 心配になって言葉を掛けるも、彼は口いっぱいに頬張ってにっこりと笑うばかり。 「大好きなシャリィラお姉ちゃんと一緒に御菓子を食べれるのが一番嬉しいのー♪」 甘い香りに包まれて、和やかに流れていく一日。 時折は翼を休め、微笑むことを忘れずに過ごせるように。客人たちは砂糖菓子の薔薇を、褪せぬ思い出として持ち帰った。

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参加者:33人
作成日:2005/07/18
得票数:恋愛2
ほのぼの35
コメディ2
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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