夏の祭典 〜宵の舞姫〜



<オープニング>


 突然、というか至急の依頼だった。
「舞姫を、護って欲しいんだ」
 依頼人の名は、エラン・ウォルナット――寧ろ趣味の仮面作りの方が評判がいい、先月23歳になったばかりのバリバリ独身の人形師。
 彼が工房を開く旧同盟領のエルメンシャの人間は、老若男女問わず踊りが好きだという。一般の目も肥えていれば当然一流の舞手も育ちやすい訳で、『彼女』もエルメンシャが誇る踊り子の1人だ。
「名前は、ティリ。小麦色の肌と、褐色の髪とアーモンドアイが印象的な……綺麗な娘だよ。まあ、踊る時はいつも仮面で顔を隠しているんだけど」
 その仮面を作っているのはエランだが、理由まではっきり知らないらしい。一応、願掛けと聞いた事はあるようだ。
「近々、エルメンシャで祭りがある。夏の祭典といってね。黎明、陽光、黄昏、宵の舞姫が選ばれて、躍動する夏の歓びを舞に託して祝うんだ」
 4人の舞姫に選ばれるというのはとても名誉な事で、謂わば若い踊り子達にとっての登竜門だという。
「ティリは『宵の舞姫』に選ばれた。彼女は……ベリーダンサーなんだ」
 ――脅迫があったのは、舞姫に選ばれて間もなくの事。内容自体は単純だ。『舞姫を辞退しろ。さもなければ、舞台に2度と立てなくなるだろう』。
 それから、専属の楽士の失踪をはじめとして、ステージを興行主からドタキャンされたり、仮面が壊されたり、衣装の糸が切られていたり……陰湿な嫌がらせが続いている。
「犯人はまあ、見当がついたんよ……はっきりした証拠はないんやけど」
 ティリは『宵の舞姫』の座を、ルラという同じくベリーダンサーと最後まで争っていた。
「そのルラって子、またそれなりに力を持つパトロンがおるみたいでな」
 脅迫の実行犯自体、霊視によれば実は最初に失踪した楽士――リョスカというダルブッカ(ゴブレット型の片面太鼓)叩きというのだから、洒落になってない。
「まあ、リョスカも単に金の為という訳でもなさそうやなぁ……彼もいい腕をしとる楽士やそうやけど、引き抜きとかもずっと断ってティリの専属しとったし」
 ティリも中々気丈な娘なので、今まで頑張って来れたのだが……夏の祭典まで後3日。押し迫れば嫌がらせのエスカレートも考えられる。祭りまでに脅迫を何とかするのが、今回の依頼。
 せやな? と明朗鑑定の霊査士・ララン(a90125)が隣に確認すれば……エランは何かホワンと幸せそーな表情で。
「……何?」
「お仕事してるラランちゃん、やっぱりカッコいいなと思って♪」
「…………」
 スパァァンッ!!
 反射的に何かいい音が響き渡る。(ぉぃ
 エルメンシャだと件のパトロンを憚って誰も冒険者に依頼しないから、わざわざエランが出向いて来たのではなかったのか。
(「何で、そのティリって子が相談してきた思ってるんよ……この鈍感兄貴」)
 ラランもさして敏感な方ではないのだが、精霊の気紛れか、時に霊視は見えなくてもいい事まで見えてくる――屈託ない、というか……何処か能天気な末兄を横目に、ラランはハァッと溜息を吐いた。

マスターからのコメントを見る

参加者
想いの歌い手・ラジスラヴァ(a00451)
白き雷光の虎・ライホウ(a01741)
幻月陽炎・クローディア(a01878)
女神に授けられし夜想曲・リフィス(a18780)
新鮮あったか羽毛布団・ティート(a21134)
歩揺の桜・リラ(a27466)
月影に映える紫電の戦乙女・フレンディア(a27526)
失火・クォルツィス(a29925)


<リプレイ>

 3日後に祭典を控え、浮き立つ街並は賑々しかった。
「踊りの好きな人達の街ですか……面白い街もあるんですね」
 暑い真夏の昼間から、あちこちで踊りに興じる人々――そんな光景が、女教皇の奏でる前奏曲・リフィス(a18780)には珍しい。
「エルメンシャでは、踊る事と生きる事は同じなんだよ。踊りは全てを語る、だってさ」
 エランは肩を竦めた。
「だから、夏の祭典と秋のマスカレイドは、エルメンシャでは大事なお祭りなんだ」
「4人だけ選ばれる舞姫、ですよね。とても素敵な踊りでしょうね。想像するだけで、うっとりします」
「うん、ティリには頑張って欲しいよ」
 お得意様だしね――その言葉に含む所はない。いっそ呑気な依頼人に、今回の事情を察する冒険者達は思わず溜息。
(「ラランはんも色々大変そうやなぁ」)
 嘴をカリカリとかきながら、新鮮あったか羽毛布団・ティート(a21134)は呆れ顔だ。
「兎に角、お祭りを皆で楽しめるように、ティリさんの問題はしっかり解決しましょ」
「ああ、最後は心置きなく騒ぎたいもんだ」
「そうね。わたしもお祭りに参加したいな」
 想いの歌い手・ラジスラヴァ(a00451)に、白き雷光の虎・ライホウ(a01741)の威勢のいい返事。月影に映える紫電の戦乙女・フレンディア(a27526)も頷いている。
「それにしても……優れる者を妬み、貶めんとするか。左様な劣悪な考えを理解する必要性は認められない。咎せし者は疾苦し贖うが道理だろう」
「はい……どんなに素晴らしい地位でも、他人を貶めてまで得ようとするのは間違っています。勝手過ぎます、許せません……」
 失火・クォルツィス(a29925)の堅苦しい呟きに同意するリフィス。
 そう、陽気な街に潜む悪意を思えば――冒険者達は改めて表情を引き締めた。

「エラン! 来てくれてありがとう!」
 冒険者を連れて来たエランに、ティリは薄手のワンピースも構わず抱き付いた。
「何というか……情熱的です」
 あけっぴろげな愛情表現に、初陽の娘・リラ(a27466)は思わず頬を染める。
(「これで判らないんだったら、本当に鈍いよね」)
 フレンディアの感想はさて置いて。
「冒険者?」
「うん、当日までの護衛をお願いしたんだ」
「ふーん」
 じろじろと冒険者達を眺めるティリ。特にリフィスとリラの緑の髪が珍しいようだ。
「後3日、無事に過ぎて舞える様に……全力を尽くしますね」
 穏やかなリラの微笑に、ティリはさばけた仕草で首を傾げる。
「男もいるようだけど、ずっとべったりな訳?」
「問題ない。俺は舞台に張り込む……未だ被害の無い場所だが、当日が迫れば如何かと思う」
「私は舞台と楽屋の間の連絡係ね。まあ、歌えるし傍にいても不自然じゃないでしょ?」
 淡々としたクォルツィスの言葉とフレンディアの明るい口調に、ティリはだったら良いわと肩を竦める。
「私は出来るだけ傍に居たいと思います。吟遊詩人ですから、代理の楽士で通ると思いますし。もしもの時は、この身を挺して助けますから」
「私もリュートがありますから、同じく楽士を装いますね」
「楽士は2人も要らないけどね。それに、あんた達の髪じゃ、あたしより目立って仕方ないわよ」
 リフィスとリラの意気込みには苦笑を浮かべる。旧同盟領のエルメンシャでは、確かにドリアッドも珍しい。
「2人ともリュートねぇ……ベリーダンスは曲も音も、独特なんだけど」
「ティリ」
「判ってるわよ、エラン……ごめん。ベリーダンスの『音』に拘ってた奴がいたんだ。それで……」
 ホント、何処に行ったのやら――彼女の最後の呟きは、リラの耳にだけ届く。
(「好きな方を守る為に……お辛いでしょうね、リョスカさんも」)
 リラは消えた楽士を思って小さく溜息を吐いた。

 脅迫状の犯人は、彼の失踪した楽士という。霊視に間違いはないが、その動機は予測の域を越えない。
 穏便に身を引かせる為脅迫状を送ったのでは――リラの推測はかなり好意的だろうか。対して、ラジスラヴァの推測はシビアだ。
「多分、リョスカさんはティリさんが好きで、ずっと彼女の為に頑張ってきたのね。だけど……」
 ティリが好きなのは――自分に振り向かないと知って、脅迫を手伝うようになったのではないか。
「まあ、同じ男として格好良いとは思えないぜ」
 ガシャガシャと金属音が響く。肌も露な舞踏服を纏うラジスラヴァと、フルプレートに重槍を担ぐライホウの組み合わせはかなり目立つ。
 行き先はリョスカの家。エランの言う通り、裏通りの長屋にあった。
「いない、か」
 脅迫の犯人とばれてないなら住処まで変えない筈と考えたライホウだが、リョスカの家は鍵が掛かったまま。周辺に聞き込んでも、帰った気配はないという。尤も『失踪』と言われていて、家にいるのもおかしな話だ。
「酒場で情報を集めてみるわ」
「ああ、俺も行くぜ」
 男のあからさまな視線に眉を顰めながら、ラジスラヴァは人のたまり場を探し始めた。

「私も、いつか舞姫になれる可能性あるかしら?」
「舞の腕前さえ認められればね。誰にでもチャンスはあるよ」
 お祭り気分の観光客を装う幻月の陽炎・クローディア(a01878)の足取りは軽やか。
「ステージ衣装の店も多いわね。素敵♪」
冒険者と気取られて妨害がより陰湿に、更には鳴りを潜められても困るからだ。
「あら、舞姫って特別じゃないの?」
「特別よぉ。女のあたいから見ても、ティリの踊りは……こう、華があるんだ」
 踊り子達の出入りする店で聞き込む。エランの連れという肩書きも手伝ってか、踊り子達はクローディア相手に気安く噂に花を咲かせる。
「からっとした子だからあたいも好きだよ。鈍いけどねぇ。リョスカの事、気が付いてないのあの子だけだね、きっと」
 ティリとも顔見知りというその踊り子は、三角関係も察しているらしい。向こうのテーブルで暇そうなエランを見遣ってクスクス笑う。
「リョスカも悩んだろうさ。ずーっと思い詰めた顔だったし。この頃見掛けないけど……傷心旅行だったりしてね」
 件の楽士が姿を見られてないのは確からしかった。

「舞台のアクセが盗まれそうになったぁ?」
「フレンディアさんが取り押さえたみたい。スラムの子供にやらせたようよ。やり方が汚いわ」
「時間的に直接の妨害になるやろな、これからも」
 チキンレッグのティートはかなり目立つ。それで、旅の商人を装い単独で情報を集めていた。
 祭りの話から舞姫の話題に、更に落選した人の話を振れば、果たして『パトロンが付く程のダンサー』まで行き着く寸法。
「意外にもな、評判はええんよ。そのルラって子」
 今はラジスラヴァと情報交換。
「人当たりはいい人みたいね。寧ろ気性の激しいティリさんの方が、評判にムラがあるもの」
 尤も、ティリの踊りについては誰もが絶賛した。孤児という生い立ちから後ろ盾もなく才能と努力で舞姫の座を勝ち得た経緯は、踊り子達に何度も聞かされたものだ。
「逆に、パトロンの方の評判がなぁ」
 エルメンシャでも有数の豪商だが、手段を選ばない強引さで敵も多いという。
「質の悪い連中とも繋がっているようね」
 ティートと違い、派手に嗅ぎ回ってそんな『質の悪い連中』を誘き寄せようとしたラジスラヴァだが、一緒のライホウの武装を見て絡む馬鹿もいないだろう。このまま、息を潜められても困るのだが……。
「まあ、黒幕自身はこれからも誰か人を使う筈や。そっちを押さえて追い詰めれば襤褸を出すやろ。城落とすにはまず堀を埋めろ、やな」

 翌日――クローディアは、街外れで張り込んでいた。
 郊外の立派な稽古場は、件のパトロンがルラの為に建てたという。ステージで日銭を稼ぐ下町暮らしのティリとは雲泥の差の環境だ。
「あ……」
 門が開き、ルラ本人が出てきた。木の陰に隠れるクローディア。黒髪の巻き毛を揺らし、ルラは真っ直ぐに――。
「……えっと」
「執事さんからぁ、あなたがずぅっといるって聞きましたぁ。ルラの家にぃ、何か御用ですかぁ?」
 舌足らずの物言いだが、年頃はクローディアと同じか。豊満なスタイルはさぞ舞台栄えするだろう。
「別に用なんて……」
 とぼけようとして考え直す。今回の火元はルラ自身だから。
「貴女がルラね? ティリと舞姫の座を最後まで争っていた」
「そぉですけどぉ?」
「貴女は……何の為に舞うの? 舞は競うものじゃないと思うけれど、今回はティリより自分の舞を伝えきれなかっただけじゃないの」
 踊り手の心を訴えても無駄とは思いたくなかった。
「こんなカタチで自分の限界を認めたら、貴女の舞はどこまでいけるの?」
「?」
 キョトンと首を傾げるルラ。すぐにノンビリと頷く。
「限界とかぁ、そんな事考えてませんよぉ。今年はティリちゃんに負けちゃったけどぉ、来年また頑張るつもりですぅ」
 クローディアの言葉を励ましと取ったのだろう。笑顔さえ浮かべている。
「そ、そうなの……」
 予想外の反応に面食らうクローディアに、ルラはゆっくり言葉を続ける。
「祭典までぇ、ルラは外出禁止なんですぅ。パパがもっとお稽古しなさいって。だからぁ、街のお話聞かせてもらえませんかぁ?」
 どうやらその為にわざわざ出て来たらしい――これが演技なら、ルラは寧ろ芝居の天才だろう。

「私の故郷の歌なんですけど……聴いて下さいますか?」
 伴奏はリフィスのリュート。リラの歌声が楽屋に響く。アカリスのチィも尻尾を振って賑やかし。
 昨日の妨害が食い詰めた子供だったのがショックだったのか、1日塞ぎ込んでいたティリだが、2人の気遣いに表情もほぐれたようだ。
 一方、クォルツィスは舞台袖に潜んでいた。人気なく、真っ暗の中でじっと監視を続ける。
「……ん」
 キィと開いた舞台裏の扉はすぐ閉じられ、ランタンの灯が賊の足下を照らす。
 ハイドインシャドウで隠れるクォルティス。陰に潜んだまま死角に回るべくじわじわと動く。
(「男、か……」)
 浮かんだ輪郭で性別は知れた。片手にバケツをぶら下げている。
 男は舞台まで歩み出ると、静かに周囲を照らした。何をぶちまける気かバケツを――。
 ――――!!
 荒々しい咆哮が轟いた。硬直した男の手からバケツが滑り落ち、べチャリと中身が飛び散る。
「大丈夫ですか!? って、お出ましのようですね」
 パッと一条の光が射す。飛び込んできたフレンディアの手には、装甲に彩られた両手剣。薄く笑みを浮かべて剣を構える。
「問題ない」
 クォルティスは淡々と頷いた。紅蓮の咆哮で上手く拘束出来たが、効果時間は数分。改めて、革のロープを取り出す。
 バケツの中身は油だった。もし、ティリが塗られた油で足を滑らせれば……祭典の舞台に立てなかったかもしれない。
「無様だな。他者の才を妬み貶めんとした結果、斯様な醜態を晒し自らを貶めるとは……」
「さぁ、あなたの雇い主は誰? 言わないと……」
 笑顔のまま、男のフードを剥ぎ取るフレンディア。敢えて低い声で脅し、剣をちらつかせるが……観念したのか大人しく縛られるままの男は、目を伏せ何も答えない。
「何の騒ぎ? どうかしたの?」
「ティリさん、ここは私達の任せて……」
 どうやらクォルティスの咆哮が耳に届いたらしい。リフィスの制止も聞かず、舞台に駆け込むティリ。
 舞台に飛び散る油、縛られた男に顰めた顔が、ハッと息を呑む。
「リョスカ……どうして」
「そんな……」
 呆然としたティリと並んで、リラも思わず目を見張った。

 ――ずっと、好きだった。たとえ振り向かなくても、ずっと傍で見詰めていられるなら、それで良かったんだ……。
「好きな方を守る為、ですよね? 脅迫状は、ティリさんの身を案じて送ったんですよね?」
 リラの必死な声に、リョスカは苦笑したようだった。報せを聞いて集まった冒険者を見上げ、唇を歪める。
「ひのふの……8人、か。エランの野郎、えらく張り込んだな」
 ティリとも目が合ったが、すぐ目を逸らした。
「……そうさ。俺1人でやった訳じゃねぇが、妨害したのは確かだ」
 祭典の舞姫を務め上げた踊り子は、一夜にして一流の仲間入りだ。今より手の届かない、雲上の存在になってしまう。
 口では喜ぶ裏側で、焦燥するリョスカに悪魔が囁く――ならば引きずり落とせば良い。そうすれば何時までも傍にいられる、と。
 自らがまず姿をくらませたのは、己の『楽士』の価値は自覚していたからだ。
「愚かな……他を貶めんとする努力は、自らも貶める。努めるべきは錬磨の筈」
「その通り、俺は阿呆なのさ」
 否応なしにティリの前で本心が暴かれる――クォルティスへの投げやりな返答に、やりきれなさが滲む。
「伝えなかった事で伝わらなかった事は……無かったと同じよ。こんな事する前に――」
「玉砕して吹っ切れるんなら、悩みやしねぇよ!」
(「フクザツな事情があるみたい、ですねぇ……私には難しいです」)
 だが、人を想う気持ちは、今のリフィスには判る気がした。クローディアの言葉は確かに正論だろう。だが、全てがシンプルで済むとは限らないのだ。
「リョスカはんの事、殆どラジスはんの言う通りやったなぁ」
「当たって、気持ちのいい事じゃないけどね」
(「恋は3人の問題。ちょっとした手助けだけで、後は当人任せと思ってたけど」)
 フレンディアは内心で溜息を吐いた。
 どんな事情があるにせよ、リョスカのやった事は我儘に変わりない。これで1番傷付くのは……。
「お前の気持ちも判らない訳じゃないぜ? でも、男なら彼女に気持ちをぶつけてみろよ。それで駄目なら、暖かく見守ってやれ。助けてやれよ」
「何がわかるっていうんだ……冒険者のあんたに」
 ライホウの言葉に、リョスカの双眸がぎらつく。
「力がある奴に、何が判るってんだ!」
「もう、いい!」
 悲鳴にも似た叫びだった。
「あたしの前から消えて……あんたなんか見たくもない!」
 信じてたのに――背を向けたティリの表情は酷く沈痛なものだった。

 実行犯の証言で黒幕を追い詰められると冒険者達は踏んでいた。
 だが、リョスカを唆したのはルラは勿論、件のパトロンでもなく、ティートが探りを入れたパトロンの屋敷の執事でさえなかった。
 この2日で調べ上げた事は表立った状況に過ぎず、これだけでは黒幕を追い詰めるには至らない。
 リョスカも所詮トカゲの尻尾切り。ラジスラヴァの誘き寄せが上手くいったなら、また違う展開になっただろうが……実行犯と黒幕を繋ぐ糸は、切れてしまったといえる。
 幸か不幸か、リョスカを捕まえた事で妨害は収まり、滞りなく夏の祭典当日となった。
 尤も、元凶を残したままティリを1人にする事は出来ず、結局個人で祭りを楽しめなかったのは致し方ないだろう。
「綺麗です……ね、チィ?」
「でも……」
 夜闇に舞うティリのステップは万雷の拍手に迎えられた。夏の祭典のトリを飾るに相応しい官能的なベリーダンス。だが、冒険者には仮面の内に秘めた舞姫の嘆きが聞こえてくるような気がした。


マスター:柊透胡 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:8人
作成日:2005/08/04
得票数:ミステリ5  恋愛1  ほのぼの1 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。