【ヴィルジニーの天賦の才をさがして】とんがり帽子のパン



<オープニング>


 村の真ん中に立てられた木の倉庫を、人々はいつも目にしながら、日々の暮らしにいそしむのだという。中身は大切な麦である。野良仕事にでるにも、子供の世話をするにも、川へ洗濯に行くにしても、かならずそのとんがり帽子みたいな黒い屋根が目に入る。その姿に、大事がないことを知って、安心するというわけだ。
 
 褐色の細い腕を胸の前で組み、天水の清かなる伴侶・ヴィルジニーは小首を傾げる。
「では、どこかの悪党が穴を掘って倉庫の真下にまで繋げたら、その通路をグドンが奪ってしまった……そう言うの?」
 薄明の霊査士・ベベウは静かに首肯く。ありえそうもないことだが、限にグドンは地下の通路を使って倉庫に侵入し、干した肉などの食料を奪っているのだ。粉にひかれた小麦には、まだ手はつけられていないようなのだが、急がねば時間の問題だろう。
「数は?」
 ヴィルジニーの問いに、すぐにベベウは応えた。
「五十から、さらに加えて十五といったところでしょうか。種別は、犬グドンのようです」
 しばしの思案の後、ヴィルジニーは対応すべき事柄について確認した。
「倉庫の中に入って、グドンを追い払う必要があるな。穴と通ってくるんなら数は少ないだろうけど、村に被害が出ちゃいけない。それから、穴の先にいる群も退治しないといけないな。いつ悪さをするかわからない。それに、穴を掘った人間たちも捕まえたいな。大方、グドンに追われてでもいるんだろう?」
 微笑みを湛えて同意を示すと、ベベウは言葉を紡いだ。
「それでは、お願いできますか?……ありがとうヴィルジニー。そうだ、あなたには嬉しいことも待っているはずですよ。倉庫の帽子――屋根には秘密があるのです」
「秘密?」
「ええ、尖った屋根は、建物の外壁と一体化した石窯の煙突になっていて、パンを焼くために使われているそうです」
「使わせてもらえると思う?」
「お願いしてみてはいかがですか」
「うん、そうだな」
 白い器に残されていたぬるい茶を飲み干すと、水色の花を散らす布地の裾をひらめかせて、エンジェルの少女は酒場から去っていった。

マスター:水原曜 紹介ページ
 水原曜でーございます。
 
 シリーズの第一作となります。NPCヴィルジニーが参加し、毎回、家事にまつわる内容を予定しています。
 
 今回は、グドンの退治とパン作りを愉しんでいただこうといった趣向のオープニングとなっています。倉庫や村人たちに被害が及ばないように注意しましょう。
 
 成功の条件です。
・穴から出てくるグドンの退治
・穴の向こうにいるグドンの退治
・穴の向こうでグドンに追われている悪党たちの捕縛
・美味しいパンを作る
 
 それでは、皆さんの参加をお待ちしております。

参加者
新婚三年目・アテムト(a00130)
白碧の微睡・ルフィーティア(a04088)
ねこまっしぐら・ユギ(a04644)
まつろわぬ神の休命の狛・トリコリス(a09482)
月無き夜の白光・スルク(a11408)
魔女の息子死神と踊る黒猫・サティヴァス(a12808)
緋色の炎・ローズウッド(a13735)
打砕く焔・エルド(a13954)
微笑う重騎士・イツェル(a15770)
永遠の飛鳥・ポム(a19507)
ヒトの武道家・トモゾー(a27863)
優しき剣・ウェイヴ(a28558)
NPC:天水の清かなる伴侶・ヴィルジニー(a90186)



<リプレイ>

●尖った陰
 その村で人々は肩を寄せ合って暮らしてきた。彼らは大地をこねる作業から手を離して、しばし見上げるのだとしたら、村の中央に顔を向けた。
 白い煙を浮べる黒い三角屋根は、近づくと石窯から立ち昇る香気で鼻孔をくすぐってくれる、だから、人たちにとって『黒いとんがり帽子』は幸せそのものだった。
 
 知己の白い翼と、青みがかった銀色の髪を見つけるなり、ねこうさの霊査士・ユギ(a04644)は飛び跳ねるようにしてその背から抱きついたのだった。
「わーいヴィルジニーさんだー」
「わあ」
 天水の清かなる伴侶・ヴィルジニーは驚いていたが、相手がユギと知れると、すぐに波打つ唇を固く閉じ、たしなめるような色を瞳に浮べる。
 ユギはヴィルジニーの尖った肩から両腕を外し、「おんぶさせてー」と背中を見せた。
 振り返ったユギの瞳を、ヴィルジニーの双眸がじいと見つめている。――いいの? と問うようだった。
 ウサギの尾が跳ねまわり、白い羽根が風に揺らめく。
「若いのぅ」
 駆けずり回る彼女たちを、打砕く焔・エルド(a13954)は達観の眼差しで見つめていた。天賦の才、若いうちは兎に角なんでもやってみればいい。
 緋色の炎・ローズウッド(a13735)は頬を伝う癖毛を耳の裏にかきあげ言った
「なんかヴィルジニーちゃん楽しそうだね」
 黒い屋根の倉庫から地に投げかけられた、尖った帽子のような影を見遣り、月無き夜の白光・スルク(a11408)は地の裏側に思いを馳せ、白い布地に隠す口元をもごもごと蠢かせた。
「わざわざ、トンネル掘っている暇があるなら、働けばいいものを」
 その通り、とでも言わんばかりに唇の端をあげると、魔女の息子死神と踊る黒猫・サティヴァス(a12808)はサーベルの柄で土を叩きながら言った。
「地下の通路を使い倉庫に侵入、干肉等食料を奪っている。グドンが一度にやってくるわけではないようだな」
 黒い年輪が浮き上がる白木の扉が開かれ、少年の声がふたりを呼んだ。一閃の太刀・ウェイヴ(a28558)は陽の眩しさに瞳を瞬かせながら言う。
「そろそろだよ」
 黒ずんだ毛並みの群れが、とんがり帽子の影に近づく頃合いに、時は近づいていた。
 
●冷たい部屋
 羽目板が跳ね上がり、灰色の爪が伸びる指先が床に食い込む。赤い血走った目をした獣めいた頭部が、ぎょろりとあたりを睥睨した。濡れた土が床に足跡を残す。
 数匹が姿を表した時点で、ウェイヴは銀の刀身を一閃させた。
「さぁ、お仕事ですね、きっちりやりましょう」
 重剣を垂直に立て、微笑う重騎士・イツェル(a15770)は仲間の肩に触れた。誓いの言葉が紡がれる。まつろわぬ神の休命の狛・トリコリス(a09482)の少女のように尖った肩に、仲間の厚い手の平から暖かさ伝う。小さく首肯いて、彼はオーリブの木を薄暗い天井へと掲げた。光が黄金に輝く紋章を浮かびあげ、闇に刻まれた線条から伸びたいくつもの指先が、次々とグドンの身体を弾いていく。
「もう――おやすみなさいな」
 降り注ぐ光の雨に照らされ、白碧の微睡・ルフィーティア(a04088)の純白の手袋が仄かな輝きを帯びる。少女は胸の前で指を絡め、その花の蕾のような唇から、ささやくように歌った。群れが、ゆったりとした眠りへ淵へと堕ちていく。
 手足が短い割りに樽のように頑健なグドンの銅へ両腕を伸ばし、ヒトの武道家・トモゾー(a27863)は全身に力を宿らせた。足で支え、腰で回し、胸で捉え、腕で放り上げる。倉庫から転げ出たものに、遠巻きに戦いを見つめる村人たちから悲鳴と歓声があがった。
 絡み合わせた白い指先を、大きく肌のさらされた胸元に這わせ、周囲を見遣る。迷子の癒やし鳥・ポム(a19507)は聖杯をかざした。銀の輝きが充ち満ちて、宙を伝い、あるいは、流れ落ちるように伸びていく。光はウェイヴの剣、その切先へと到り、銀の刀身を神々しい瞬きで包み込んだ。
 緑の旋風が狭い室内で渦巻いた。押さえ込んだグドンへ、トリコリスは爪先を向ける。自由を奪った敵の口から、情報を聞きだすつもりだった。重厚な刃が彼の視界を横切る――灰褐色の毛並みを裂いて血肉を断った刀剣へ、はためいた臙脂色のマントが覆いかぶさった。
 足元に転がる亡骸に眉宇を歪めると、トリコリスは重剣を布地で拭う彼の横顔を見つめた。イツェルは何事もなかったように涼しい顔をしていた。犬グドンは吼えていた。冒険者たちが理解できる言葉は、一度も紡がれない。凶暴な猛りだけが、赤く裂けた口元から響いてくる。
「村の大切な食料を勝手に取るものじゃないですよ!」
 青い光を帯びた剣が斜に振り抜かれる。手元から拡散していた閃光が止むと、ウェイヴは肩から力を抜いた。
 
「穴の向こうへ行く皆さん、地上を進む皆さんも、気をつけて行ってらっしゃいね」
 倉庫の護衛にあたるトリコリスが言う。
「わたしも倉庫と穴の見張りをしておきますぅ〜」
 指先を搦めあったまま、ポムは空を見上げた。白い煙はまだ、とんがり帽子の屋根から立ち昇ってはいない。
 
●追撃
 衣の裾が土で塗れるのもお構いなしに、ルフィーティアは地下の隘路を這う。酷く狭いうえに光が届かず、鼻を突く黒土の匂いで満ちた場所だった。彼女は暗闇を見遣った。前方を進む仲間の姿は見えない。
 恋愛獲得者・アテムト(a00130)はその身を影とし、暗闇に溶け込むようにして自らの存在を隠匿していた。瞳に頼ることはできない。篭った音、手の平から伝う地の揺らぎ、肌が感ずる空気の流れから、対峙する相手との距離を測る。
 土を掴んでいたアテムトの指先に、掌中から伸びた気の刃が這う。頬を掠め、立てられた指が、前方へ向けて鋭く振り抜かれた。暗闇から、犬の雄叫びが響く。
「出てきましたね」
 イツェルは全身を包み込む分厚い外套を、薄い布地の衣服へと変えた。パルチザンの柄で犬グドンの牙を受けとめるアテムトの傍らへ身を押し込み、彼は隊列の最も先頭に位置する。
 土の壁が削られ、アテムトは右腕の下を見た。突き出され、グドンの脇腹を砕いた足が、するすると背の方へ戻っていく。
「先、急ぎましょか」
 そう言ったのは、トモゾーであった。
 
 朽ちて根元だけが残された大樹から召喚された輪が飛来した。続いて、不穏な羽音のような騒めきをまとう、黒い靄のような何かが渦巻きながら、木漏れ日の差し込むあたりへと漏れでてくる――。
「来たようじゃな」
 指先から煌めく糸を扇のように広げ、複数のグドンを絡めとるスルクは黒い穴を横目で見た。イツェルの横顔が瞳に映り、彼はすぐに視線をグドンの群れへと差し向かわせる。数は五十に迫る。
 サンドリヨンの鋭利な切先が天へと捧げられている。唇は閉ざしたまま、乱れぬ呼吸のまま、サティヴァスは灰銀色のしなる刃を大地に叩きつけた。巻き上がった砂礫が烈風となり、搦め捕られたまま吼え猛るグドンを波濤のごとく覆い尽くす。
 指先に這わせた飛燕を、スルクは宙を飛び交いながら放った。視界を過った灰の髪が木立の陰に消え、こちらへと向かってきた瞬く何か――それが、あるグドンの視た最後の光景であった。
「悪党の捕縛へ行くとするかのう」
「いいよっ」
 瞳を交わしたエルドとユギに続き、ローズウッドが言う。
「自分たちがほった穴をのっとられるなんて何ていうかアホだけど……グドンに追われてるならどうにかしてやらないといけないか」
 ユギたちは群れとの戦いから離れ、斑の影が地を覆い葉擦れがささやく林の中を駆け抜けた。ほどなくして、間抜けな悲鳴が耳に飛び込んできて――。
「更生して社会の役に立つかも知れんしな。ま……盗みのひとつもまともにやれないようでは先が思いやられるがのう」
 エルドは岩の頂点に片足を預け、白銀の刀身を頭上に掲げた。前方では、顔面に青黒い痣を浮べた男たちが、犬グドンの群れに囲まれている。熾烈な光が四方へと散った――短い首を振り向かせたまま、グドンらは身を凍りつかせる。
 グドンが振り上げたままの鉈を指先で突くと、ユギは微笑むおもてを悪党へと向け、人差し指を双眸の合間に突きつけながら言った。
「穴を掘った事情をじーーーっくり聞かせてもらうね? そもそもそれが発端なんだからっ!」
「ちょっとその辺に隠れてて。危ないからいいって言うまで出てこないでね」ローズウッドは手の平に光の線条を浮べながら言葉を続ける。「逃げちゃ駄目だよ」
 光の槍はわずかな傾きも見せず、地との水平な関係を保ち、なめらかに空を裂いた。直撃を受けたグドンは、胸から白い光を噴き上げるようにして鳴きわめいている。ユギや片膝をついたまま、白い指先を宙に彷徨わせた。広げられた指から伸びた銀に輝く糸は、宙を煌めきながらたゆたい、逃亡を試みるグドンの身体を搦め捕った。
 颶風が虚空を薙ぐ――肉の塊が地を打つ音が続いた。エルドは波打つ軌跡を宙に刻み終えると、刀身を振り抜いて切先から滴るものを払い、来た道を振り返った。
「あちらも、終わった頃かのう」
 
●黒い帽子、白い煙
 グドンのひそむ林から、無事に連れ出された男たちは、皮のロープで一括りにされ、だらだらと長い隊列を伸ばしていた。彼らは隣の大きな町へと引き立てられる真最中であった。あまりの生気のなさに、たまらずユギは口を開いた。
「村のみんなに迷惑かけたんだからね? きりきり歩かないと……くすぐっちゃうぞ」
 うごめく指先に追い立てられて、男たちは村から去っていった。
 
 ぱちぱちと爆ぜる薪の音、視界を揺らめかせる熱気が頬を撫でる。ウェイヴは手にする薪をとりあえずの最後の一本と決めた。焔へとくべ、黒い鉄の棒でほどよい位置にまで移動させる。――背に何かが触れた。甘酸っぱい香が漂ってくる。
「う、あ、あああああ」
 ウェイヴは怯えていたが、彼が苦手とする女性――ポムは気づいていない。「そろそろ焼きはじめてもよさそうですねぇ〜」などと言っている。火を正面から見るために彼女が身体を寄せると、ウェイヴは竃の前にも関わらず、身を凍りつかせてしまうのだった。
 
 村人からグドン撃退の礼にと贈られた、麦の粉がつまった麻の袋を、ヴィルジニーが倉庫の石床に引きずっていると、現れたイツェルが代わりに外へと運び出してくれた。肩から袋を地面に置いた彼は、周囲を見渡している。
「どうしたの?」
 ヴィルジニーの問いに、イツェルはこう答えた。
「……ん? そういえばあれの季節だと思いまして」
「何?」
「獣たちに、少しだけわけてもらってきます。待っててくださいね」
 
 トモゾーは見慣れぬ器具の中から、木の棍棒を選んで手にした。もっとも、それは棍棒なのではないのだが……。
「料理とかはあまり得意じゃないんだ」
 そう言って首を傾げる彼に、青い髪の少年は少し慌てた様子で言った。
「かっ家事はこう見えても好きなんですよ」
 トリコリスは白い袋を逆さにして、ぱらぱらと小さな欠片たちを机の上に転がした。数粒を手にして、トモゾーに進める。口に含みながら、トモゾーが言う。
「乾燥させた果物か」
「ええ。パンに入れると美味しそうでしょう?」トリコリスはそう言って微笑むと、視線を頭上へと傾かせた。「それにしても、とんがり帽子の石釜なんて可愛いですよね」
 黒い屋根の上から立ち昇る白い煙を、アテムトは瞳で追っていたのだが、目の前に現れた水色の双眸によって、その作業は分断されてしまった。ヴィルジニーは頬を少しだけ膨らませているようだ。アテムトは両手に力を込め、白い塊へ手の平を押し当てた。
「えっ、何? 力の入れすぎ?」
 頬に粉を付けたまま、アテムトはヴィルジニーに訊いた。エンジェルの少女は、弱ったように足元を指差して、こう言ったのだった。
「机が壊れちゃう」
 
「さあ、遠慮はするな」
 皆が練り上げた生地を天高く掲げ、それを一気に叩きつける。岩の上に敷かれた板を目がけ、サティヴァスたちが行っている作業は、空気抜きの作業である。出来上がりで均一に膨らむよう、生地に含まれた空気の粒を抜いておくのだ。
 サティヴァスがひしゃげさせた生地はしばらく寝かされた後、木のヘラを手にするウェイヴによって等分された。柔らかな感触が楽しく、思わず声が漏れる。
「うーん、やっぱりパン作りは楽しいなぁ〜」
 瞬くような赤い光を浮べた瞳で、銀の髪をした少年は机の上に寝そべる白い生地を睨みつけている。
「パンを作るのは久しぶりかな。どんなパンを作ろうか……」ローズウッドは悩んでいたが、思いだしたことがあった。「……そういえば食パンもうなくなっちゃうなぁ……」
 喜々として、ポムは白い生地をこねまわしている。
「これが楽しみだったのですぅ〜」
 やがて小さな円に過ぎなかったものから、首が生え手足が伸びる。甲羅がついたものは亀、長い耳があるのはウサギのようだ。
 ルフィーティアはパンの生地に、黄色がかった別の生地を重ねている。その作業が済むと、彼女は木のヘラを使って、編み目の文様を描いた。
「夏……メロンパンの代わりに表を縞にしてスイカパン……捻りがないな」
 スルクはルフィーティアの作り上げたものから視線を外した。さらに考え込む。――犬グドンを倒した後に、犬型を作るのも些かシュール。
「将来に役立てるために必死になって作り方を覚えたいなぁって」
 そう言ったユギへ、ヴィルジニーが尋ねる。
「え……もしかして、結婚?」
「花嫁修業?……いやいや冒険者を引退した、さらに先の老後の楽しみだよ、うん」
 そう入った彼女の頬は赤い。ヴィルジニーに見つめられ、さらに深く染まる。ユギは肩を少女の小麦色の肩に押し付けた。笑い声がふたりの唇から漏れている。 
 揺れる少女の羽を見つめ、スルクは「む」と双眸に力をこめた。二対の羽の形をしたパン――これなら。
「まあ、こんなところじゃろうか」
 成形された羽を見つめるスルク、その手元に影が伸び、背後から声がした。
「あ、おまえも羽の形にしたの」
 エルドが手にする盆の上にも、白い果実の砕けたものによって縁取りのなされた、白い羽が伸びやかに寝そべっていた。
「むむむ……」
 ちょっとばかり悔しいスルクと、彼の羽を褒めるエルドであった。
 
 頬を粉だらけにしたトモゾーが、イツェルが差し出したつくりたてのヤマモモのジャムをたっぷりとのせた、焼き立てのパンを睨みつける。
 彼は大きく開いた口に、それを放り込んだ。
 暖かさと甘味が、舌の上でさけたパンから広がる……。
「僕は才能がどうかは分かりませんが、このパンがおいしいということは分かりますよ」イツェルはロールパンを頬張りながら言った。「まだあります? 」
 戸惑ったようにして――褒められることに不慣れなのだ――小さく何度か首肯くと、ヴィルジニーは白い煙を立ち昇らせるとんがり帽子の方へ駆けていった。
 尖った屋根は白い煙を吐き出し続けている。


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参加者:12人
作成日:2005/07/29
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