≪恋愛探求旅団 『赤い糸』≫海に吹く夏風



<オープニング>


「と言うわけでピクニックに行くなぁ〜ん♪」
 くるくる回りながら壁に耳あり障子に・メアリー(a14045)が言う。笑顔が絶えない団長の横で、深雪の優艶・フラジィル(a90222)も一緒にくるくる回った。
「と言うわけでジルはとある砂浜をチョイスして来ました!」
「なぁ〜ん?」
 ピクニックと言えばお花畑でお弁当、と言うイメージが強い。何故砂浜なのか。確かに季節で言えばピクニックは春にすべきものと言う印象はある。
「えっとですね」
 フラジィルはえへんと無い胸を張る。
「ピクニックは『見学や運動のための日帰り旅行』を指すみたいなのですね?」
「なぁ〜ん♪」
 察し良く団長は頷いた。確かに砂浜で海水浴も季節感たっぷり。そして海と言えば恋の生まれる場所。我らが「恋愛探求旅団 『赤い糸』」が向かうには最適と言えるかもしれない。此処は勝負水着で挑むべきだろう。多分。
 更にフラジィルの言うところによれば、何やら其の砂浜、サンセットビーチとも言われる場所で海に沈んでいく太陽が其れは其れは美しいことで有名らしい。橙に輝く海、見上げれば煌き出した満天の星。昼は遊んで、ロマンチックな日没を見て一日を終える。そんなピクニックプランがメアリーの頭の中に組みあがった。

マスター:愛染りんご 紹介ページ
 愛染りんごで御座います。
 白い砂の美しい浜辺で一日を楽しく過ごしましょう。
 近くには屋台もありますし、白いサマーベッド、パラソルも完備です。観光地として成り立っているところですので、飲み物も注文出来ます。他の御客様もゼロではありませんので、喧嘩を売ったり買ったりしないようにしましょう。女性はナンパされたりもするかもしれませんので、注意。
 特に女性はどのような水着を持って行くのか、少し細かめに書いて頂けると色々色々描写が深くなるかもしれません。ちなみに水着は発行出来ますので、希望者はやはり詳細に御願い致します(笑)
 夕焼けの時間帯は非常にロマンチックなひと時となっています。愛を確かめ合ったり告白をしたりはこの時間帯にどうぞ。愛染りんごでした。

参加者
射手・ヴィン(a01305)
青想う朱狼・ヴァル(a01783)
堕落論・スバル(a03108)
暁に誓う・アルム(a12387)
壁に耳あり障子に・メアリー(a14045)
朱想う青猫・コーシュカ(a14473)
華散里・コノハ(a17298)
黄紗の片翼・アイシャ(a18420)
紅華の四葉・ショコラーデ(a18742)
影刃影迅・アギリ(a27358)
NPC:深雪の優艶・フラジィル(a90222)



<リプレイ>

●夏
「泳ぐ前にはちゃんと準備運動。出たゴミはお持ち帰り。メアリーとの、や・く・そ・く・なぁん!」
 団長の壁に耳あり障子に・メアリー(a14045)が団員たちを見回して言う。はーい、と主に女性陣から元気良く返事が返ってくると、メアリーは満足げに微笑んだ。そしていそいそと服を脱ぎ始める。
「ちゃんと水着着てくださいよぅ……?」
 蒼穹の守護者・スバル(a03108)は溜息混じりに彼女の頬を抓ったりする。愛情表現と言うものだ。なぁん、と答えながらやっぱり其の場で服を脱ごうとする彼女を、手馴れた様子で着替え室に放り込む。水着を着るつもりがあるだけ、恙無いのかもしれない。
 仲睦まじいふたりの様子に、悲しみ絶ち切る刃となる・アルム(a12387)は共には来れなかった恋人のことを思い浮かべる。後ろ髪引かれる想いを、今日は旅団員と楽しむのだと振り切って大き目のパラソルを立て始めた。紺色のトランクスを極自然に履いて、爽やかな白いパーカーを羽織っている。
 ストライダーの忍び・アギリ(a27358)と樹上の射手・ヴィン(a01305)もアルムを手伝う。今のうちに始末しておくべきか、と牽制しながら茣蓙を敷くアギリ。彼が装備しているのは海の男を主張するバミューダパンツだ。そんな彼に「嫌だなあ、僕はアニキの味方だよ」などと朗らかな笑みで答えるヴィンの手には、何故か弓が握られていたりする。男たちが何かと準備を続けている様子を何処か遠い目で見遣り、アルムはぽつりと呟いた。
「……皆……なんでそんなに……背が高いの?」

 青い水着の上に薄手のシャツを着て、青想う朱狼・ヴァル(a01783)はとある少女を探しながら砂浜を歩く。程無く目的の人物を見付けるも、思わず二度瞬きをした。朱に染まりし蒼猫・コーシュカ(a14473)は何故か、ローブを羽織って砂浜に座っていたのだった。
「……暑くないかい?」
 男心としては、彼女の水着姿と言うのが楽しみで無かったと言えば嘘になる。しかし下心が在るわけで無く、だらだらと汗を流しているコーシュカの様子を見れば、心配せざるを得ないと言うもの。
 彼女は「いえ、あの」と曖昧に言葉を濁すのだが、何やら目の焦点が合っていない。彼女がそんな格好をしているのはやはり女心と言うもので、胸がぺたんで腹がぽこんでオマケに寸胴と言う三拍子揃ったお子様体型を気にしてのことだった。女性らしい体型はやはり十二歳の少女には遠いもの。自然育つものだから気にする必要も無いのだろうが、其処は其れ、乙女心と言うものだった。
(「それにしても……暑いですわね……暑いです……暑い……暑……」)
 朦朧とする意識の中で、コーシュカは自分を呼ぶ愛しい恋人の声を聞いた気がした。

●海
 何故か踊り始めた少女がノソリンに変身したりなど、観光客が沸く砂浜で団員たちはひと時のバカンスを楽しんでいた。深雪の優艶・フラジィル(a90222)は赤に白の羽根卵模様が入ったワンピースの水着を着込んでいる。胸の辺りにフリルが飾られている為、胸がゼロなのかゼロでは無いのかも判別し難い。ただ、案外細身で在ることは確かなようだ。
 先程までは散る為に咲く華・コノハ(a17298)らと一緒にトロピカルなジュースを飲んでいたのだが、おふたりのラブラブを御邪魔してはいけないとこっそり離れて来たのだった。大真面目に準備体操を終えたコノハは、可愛らしいピンクの花柄ワンピースな水着を着ている。楽しそうに満面の笑みを見せて海へと入るも、深い場所に行けば怖くなったのか太陽の恋歌・ショコラーデ(a18742)にしがみ付く。
 しがみ付かれれば普通溺れるものである。
 危険な状態に陥ったりもしたようだが、背の高いショコラーデはまだ足がついたらしい。二人は無事なようだ。肌を露出させることを好まない彼は、黒の上下の水着を着ていた。先程から声を掛けてくる男たちを威嚇しているが、彼自身も女性と間違われていることには未だ気付いて居ないらしい。コノハと二人、ランドアースの者にとっては当然珍しいヒトノソリン。視線を集めるのも已む無いことであろう。やっぱり気付いて居ない二人だったが、ショコラーデは恋人を護ろうと必死になっていた。恐らくもう直ぐ、彼はキレる。
 フラジィルがパラソルの下に戻ってくると、其処には先客が居た。目を回しているコーシュカと、寄り添いながら冷やしたタオルを顔に当てて遣っているヴァル。ぱちくり、と瞬きしてからフラジィルは隣の――真剣な顔をしたヴィンが弓を構えている――パラソルの下に入った。彼は「誰なのかなぁ……」などと呟きながら人を狙っている。危ない。
「(アニキの秘めた恋心の相手は……アルムか、アイシャちゃんか、ジルちゃんか……あ、僕?)」
 でも僕自身を狙うのは無理だしなぁ、と弓を構えたまま首を傾げるヴィン。選択肢に既に問題が在るように思えなくも無い。結局アギリと、運悪く其の辺を歩いていた男性に矢が命中したのだが、流石に恋が芽生えることは無かった。

●遊
 土塊の下僕を駆使して、周囲の観光客が思わず感嘆に声を洩らすほど本格的な砂のお城が作られている。主に指揮を執っているのはアルムだったが、アギリも肉体労働担当で御手伝い中だ。しかし半ば建築も終わったところなので、人間観察と称して人々の様子を眺めることに精を出していた。
「ほう……中々……」
 クリーム色をしたビキニ風の水着を来た女性の姿を眺めてアギリが呟く。背には紐を結ばずに布を当て、代わりに首の後ろで括ると言うホルターネックタイプの水着だ。抜群のスタイルと言うわけでは無いが、白い肌が美しい。そこで漸く、アギリは観察対象の背に羽根が生えているのに気付いた。
 思わず硬直する彼に、「どうしたですかアギリさん、アイシャさんを見詰めちゃったりして」「え、なになに? アニキが誰を見てたって?」「……女性の水着姿をじっくり眺めるのは……ちょっと……」「アギリちゃんも普通の王子様なぁ〜ん。仕方ないなぁ〜ん?」と怒涛の如く声が掛けられる。しかし、追憶の紋章天使・アイシャ(a18420)本人は騒動には全く気付かないで居た。自分の胸を見下ろして、ほんの少し表情を曇らせたりなどしている。はあ、と溜息を吐いた表紙に、足を滑らせて岩場から海に落下した。
「はわわ、助けてくださいぃ……!」
 驚きで溺れかかり、慌てて声を上げるアイシャ。やはり慌てて駆け出すアギリだったが、其の前にアイシャは全く関係の無い他の男性客に助けられた。其の場に崩れ落ちるアギリを、皆は良く判らないながら優しく慰める。しかし彼の不運は其れのみでは終わらず、スイカ割りの際にもヴィンが振り下ろした棒が直撃するのであった。

 全員で砂浜に隠されたコインを探して――つまり「宝探し」をしている最中、スバルがふと見るとメアリーの姿が無くなっていた。先程、「やっぱり海は泳いでこそ」と主張する彼の横で「服が水に濡れて気持ち悪い」などと呟いて居た筈なのだが、気付けば彼女は傍に居ないのだ。
 しかし彼女のピンク色をしたノソリン尻尾は目立つもの。周囲をぐるりと見回せば、シンプルなデザインながら露出多めの大胆なビキニに身を包んだヒトノソリンを見付けることが出来る。が、スバルの表情が音を立てて軋んだ。手に持っていた海栗をぶちりと握り潰して其方へ向かう。
「ほほぅ。何やってるんですかな、其処の野郎ども」
 メアリーの周りに居たのは明らかにナンパ目的の男たちだった。メアリーはと言えば普段通りの無邪気な笑顔で彼らに連れて行かれそうになっている。
「人様の彼女に手出そうたぁいい度胸です。軽くシメル」
 危険な発言をすると共に、有限実行。軽くシメてみるスバル。
 シメられた男たちが砂浜に横たわる中、メアリーは掌を重ねて可愛らしく小首を傾げる。
「め、め、メアリーちゃん、全然浮気とかひと夏の思い出とかそんなの考えて無いなぁ〜んよ?」
 だらだらと汗を流しているのが実に素直だ。深く溜息を吐くスバルに、彼女は「スバルちゃん一筋なぁ〜ん!」と叫びながら抱きついた。そんな微笑ましい情景を、アルムはウレタン製フワリンに掴まりぷかぷかと海を漂ながらに見遣っていた。彼の手には先程拾った純白の巻貝がある。共に来れなかった代わりに、海を届けてあげようと思ったのだ。美しい螺旋を描く貝に耳に当てると、波音と共に、涼やかな潮騒が聞こえて来た。

●夕
「ショコが世界で一番大好きなぁ〜〜〜ん!」
 大声で海に向かって叫ぶコノハの頭を、ショコラーデは優しく撫でてやる。一日はあっと言う間に過ぎてしまって、今や夕暮れ。けれど海に沈む太陽は、今が盛りとばかりに美しくあり続けていた。皆と一緒に遊べた一日は酷く楽しくて、けれど愛しい人が居たからこそ本当に楽しかったのだ、とコノハは微笑む。
 そんな様子に、ショコラーデは少し真面目な顔をして見せた。
「太陽の下に……キミに誓う……」
 想いを言葉にすると言うことは、とても大切なことだから、彼女の瞳を覗き込んで言う。
「永久にキミを……愛すると……」
 淡く笑んで、彼女の額にキスをした。

 コーシュカが目覚めた頃には、昼間の暑さは静まり、涼やかな夏風が砂浜に吹き込んでいる。ヴァルは冷たい飲み物を彼女の為に渡してくれ、渋々と言った風では在ったが彼女もローブは脱いでいた。恥ずかしさは当然在るが、彼が幻滅したような素振りは全く見せず、似合うよ、と一言言ってくれたのが何より嬉しかったのだ。
「大丈夫かい……?」
 だから、良ければ岩場にのぼらないかと言う彼の誘いに、一も二も無く頷いたのだ。岩場にふたり並んで座り、沈み行く太陽を眺め、そして打ち寄せる波の音を聞く。
「夕日は大好きです。ヴァル様の髪の色と一緒ですもの……優しくて、温かくて」
 コーシュカの言葉にヴァルは目を細めて囁いた。美しい夕陽を見れたこと、それが、
「……君と一緒で、良かった」

 アギリを追い掛けていたのだが、彼は余程必死だったのだろう。なんとヴィンが見失うほどに巧妙な逃げ足を披露した。諦めて海を見遣ると、夕陽の輝きが噂通りに目映い。徐々に沈み隠れていくのが惜しくもある。可愛らしい貝殻が転がっているのを見つけ、ヴィンは何か思い立つと其れを拾い始めた。
 其の頃アギリは呼吸を乱しながらも、ひとりの姿を探して砂浜を歩いていた。切羽詰った様子の彼に、あの、と遠慮がちに声が掛けられる。恋人同士が夕陽を眺める砂浜で、心がささくれ立っていたアギリが鋭い眼差しで振り返ると、其処には探していた彼女が居た。
「イベント、お疲れ様でした。楽しかったです」
 照れているのか、アイシャは僅かに視線を逸らして一気に言い切る。用意していた台詞を取られた格好のアギリは息に詰まりながらも、言葉を吐いた。
「悪夢……落ち着いてよかったな」
 言いながら、珊瑚を繋ぎ合わせたブレスレットを彼女に差し出す。
「アイシャ嬢……俺でよかったら頼っていいからな。辛いときとか、独りで抱え込むなよ?」
 其処まで言うとしまったと言う風に口を押さえ、「いきなり変なこと言ってごめん。迷惑だよな」と一歩後退る。おやすみ、と駆け出そうとする彼の腕をアイシャの指先が軽く抑えた。
「……夕日が綺麗なので一緒に散歩に行きませんか?」

「スバルちゃん、何か一緒にしたいことあるのなぁ〜ん?」
 夜の砂浜、人気の無い岩場。呼び出された側のメアリーが、呼び出した彼に問い掛ける。プレゼントを渡したくて、と持っていたものを見せようとする彼に擦り寄って、メアリーはほんのりと頬を染めた。
「メアリーだったらAからCと言わず、DでもZでも色々OKなぁ〜んよv」
 既に話は聞いて居ないらしい。
 乙女はいつでも直球勝負。またの名を実力行使なんて言うかもしれない。
「いえ、あの、えーと。メアリーさん。こんなところで何を」
「大丈夫なぁ〜ん。誰も来ないなぁ〜ん。万一来ても、メアリー、スバルちゃんとなら……v」
「そういう問題でも無いですから、メアリーさん!? あ、ちょっ」

 その後のことは当事者のみぞ知るところ。ともあれ、海へのピクニックは皆に楽しい思い出を残してくれたのだった。


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作成日:2005/07/27
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