【男達の哀歌】水かけ男



<オープニング>


 ダッダッダッダ、ドンドンドン! ガチャ。
「リーダー! 大変だ、チャーリーとディストールも……あれ?」
 慌てた様子で部屋に入ってきた覆面は、部屋に居るはずの人物が居ない事に気が付く。
「リーダー?」
 机の下や屑篭の中を探すがリーダーは居ないようだ。
 はて、困ったぞ? と覆面が首を捻った時、テーブルの上に一通の封筒があることに気が付いた。
「……何だこれは?」
 封筒をガサゴソと開けると、手紙が出てきた。
「なになに? 『恋人が出来ちゃった。えへ☆』 ……」
 覆面は膝を付き、ガックリと項垂れた。

 ――リーーーーダーーーーー!


「……あっついわね〜」
「暑いね〜……」
 リゼルと悠久の誘い・メルフィナ(a90240)が酒場のテーブルにくて〜とのびている。
「……そう言えば、ある町で通りすがりの女性に水を浴びせる覆面の男が出没しているらしいわ」
 やる気の無いポーズのままリゼルが言った。
「水浴び……良いわね、私も水浴びしたい。でも、何でそんな事をしているのかしら?」
 服の上からは嫌だけど、と続けるメルフィナに、リゼルは眼鏡をクイッと上げる。
「……カップルの目の前で女性に水を浴びせる」
「あ〜……なるほど、この時期皆薄着だから……」
「そう、彼氏が他の女性に目を奪われれば、彼女は好い気しないわよね〜」
「……迷惑ね」
「迷惑だから何とかしてね」
 リゼルはテーブルに突っ伏したまま手を振って冒険者達を見送った。

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参加者
氷輪の影・サンタナ(a03094)
銀の竪琴・アイシャ(a04915)
鉄鋼科学医科大全・アイシャ(a05965)
赤烏・ソルティーク(a10158)
天衣無縫なつむじ風・マイラ(a14685)
水底の誇り・ラーゴット(a21634)
燦爛たる朱き華・ユヤ(a23871)
旅団裏の昏倒者・アウラ(a24803)
NPC:悠久の誘い・メルフィナ(a90240)



<リプレイ>

●暑い夏
 ジリジリと肌を焼く真夏の昼間。
「まぁ……今回の犯人は可哀想な人…なのかな?、と。……だからと言って手加減も容赦もしないんですけど」
 黒い笑顔を浮かべ、緋燕・ソルティーク(a10158)は言った。
「今回はいくらなんでもマイラはばれてるし、おごりはなしなぁ〜んよね……残念なぁ〜ん……」
 天衣無縫なつむじ風・マイラ(a14685)は残念そうに白いノソリン耳と尻尾を項垂れる。
「基本的にヒトノソリンの人は冒険者だと看破される可能性があるんで、今回は囮デートは無理でしょうねぇ……残念です。前回前々回とそんな事を気にして無かった気もしますが」
 ソルティークはマイラの頭を撫でる。
 ソルティークが言うように、覆面達は冒険者だとか人ノソリンだとかを気にする輩では無い。そんな細かい事は気にしないのである。男前なのである! ……断じて馬鹿なのでは無いと彼等の名誉のために一言付け加えて置こう。
「……水をかけてカップルの男の方をドキッとさせる……」
 両手を頭の後ろで組み、琥珀色の偽乙女・ラーゴット(a21634)は考える。
「本人が水を浴びせたいだけ、の間違いじゃないのかしら?」
「悪いことはだめだよ〜!」
 燦爛たる朱き華・ユヤ(a23871)は真っ白な狐の尻尾を逆立てている。
「とうとう相手も一人になってしもうたのか、つまら……ではなく、哀れじゃのぅ」
 氷輪に仇成す・サンタナ(a03094)がしみじみと呟く。
「少々まかり間違った方向へ心血を注ぐ方……嗚呼、きっと……私達の愛情で、傷ついた背中を包んで差し上げなければなりません」
 サンタナに続いて、奏・アイシャ(a04915)(以下アイシャ(吟))は言った。覆面達を本当に哀れんでいるようだ。
「この際好みはさておき、ここは一肌脱いでみてはいかがかのぅ?」
 サンタナはフフと上品に笑うと一行を見渡す。
 たまたま視線が合ってしまったのは、悠久の誘い・メルフィナ(a90240)だ。
「あつがなついねー」
 サンタナの言葉を受けた、破戒天使・アイシャ(a05965)(以下アイシャ(医))が、行き成りメルフィナの服を脱がし始める。
「ちょっと、え? ぁ……何を!? た、助け……」
「ふふふー♪」
 楽しそうにメルフィナの服を掴むアイシャ(医)と、慌てふためき周りに助けを求めるメルフィナ。
「夏ですからね」
 彷徨者・アウラ(a24803)は遠い眼をしている。
「勇気 凛々 ですわ」
 アイシャ(吟)は意味深な事を言っている。

「にゃー!」
 メルフィナは脱げそうな服を押えて、泣きながら逃げ出した!

●犯人を探せ
 炎天下の空の下、一行は覆面男を探し始めた。
「ふぅ、暑いのぅ……」
 サンタナは、おもむろに覆面を被り、アイシャ(吟)に微笑みかける。
 アイシャ(吟)はサンタナの奇行に動じる事も無く微笑む。覆面の上からでは判らないが、サンタナが微笑みかけていると直感したのだ。夫婦の愛とは何とも深いものである。
「この暑いのに覆面してるなんて、小顔エステでもしてるなぁ〜んか?」
 サンタナの覆面を見たマイラが至極当然な質問をした。
「我も被って妻と歩いておれば、覆面でも彼女が出来ると希望を与えられるかと思うてのぅ」
 もごもごとサンタナは答える。
「そうなぁ〜んか!? それは驚愕の理論展開なぁ〜ん!」
 マイラは眼を輝かせた。
 アイシャ(吟)はそんなマイラとサンタナを優しく微笑み、見守っていた。

「……やっぱり囮ですかねぇ」
 サンタナ達を遠巻きに見ていたソルティークが言った。そして後ろを振り返り……渋面になった。
「どう? どうかしら♪」
 白い薄手のシャツを着たラーゴットが服を見せる。
「ママー、あの男の人、女の子の格好しているよー?」
「誰がオカマじゃ! ゴルァ!」
 そして、通りすがりの子供の的確な突っ込みにグドンも真っ青な顔で切れる……子供は泣きながら走り去っていった!
「……ちっ……全く見る目がないんだから」
「ハハハハ、子供ですからねぇ……」
 ねぇ? と同意を求められたアウラは渇いた笑いを浮かべる。
(「子供は正直ですから……」)
 とは口が裂けても言えない。

「なかなか見つからないね」
 ユヤは、辺りを見回し覆面が居ない事を確認する。否、実は一人居るが……それは自分たちの仲間である。
「覆面を被って、桶かなんかで水を運んでいる怪しい男……」
 アイシャ(医)もキョロキョロと辺りを見回す。
 ……暫し見回す。
 ……見回す。
「見つからないはずがあるかー!」
 ダーン! と何かを引っ繰り返す仕草をするアイシャ(医)
「まぁまぁ、そう簡単には見つからないわよ」
 苦笑いを浮かべてアイシャ(医)を諭そうとするメルフィナ。
「あ……」
 そんな中、ユヤが指差した先に……、
「「「いたー!」」」
 と言う訳で見つけた。
 
「うーん、無理の無い展開」
 ソルティークは言った。……それは言わないお約束である。

●哀・覆面
「ふぅ……暑いな……」
 水樽を担いだ覆面男が汗を拭う。覆面の上からなので拭えないが、気分の問題なのだろう。
「そんな下着だと透けると危ないわよ〜?」
「最近変な人が居るって話だし、気を付けないと駄目だよ」
 聞こえよがしにメルフィナとユヤが言った。
 覆面の耳がピクピクと動いている。
「そうかな〜? 確かに大胆だとは思うけどね♪」
 アイシャ(医)がフフンとポーズをとった所で、堪らなくなったのかアイシャ(医)に水をかけようと振り被る覆面男。
「何してるなぁ〜んか?」
 そんな覆面男の肩を叩いてニッコリと微笑みかけるマイラ。
 絶妙なタイミングである。
「うわ!?」
 驚いた覆面男の手元が狂い……アイシャ(医)、ユヤ、メルフィナと3人纏めて水浸しに。
「……あら?」
 アイシャ(吟)はそんな覆面とユヤ達に気付き、指を指す。
 そして、そんなアイシャ(吟)だけを見つめていたサンタナはアイシャ(吟)の視線を追って……、
「「あっ」」
 覆面同士見つめあう2人。
 お!? 同士か? でもあいつ女連れか、同じ覆面なのに……なんてこった! なんてこったー!
 覆面男はガックリと膝を付く……完敗である。
「…本当に簡単に釣れるあたり流石と言うべきでしょうか?」
 ソルティークが、何時の間にか大量に作っていた土塊の下僕で覆面男を捕らえた。

「おぉ……?!」
 アウラは、水浸しになった女性陣に思わず目を奪われる。特に白い薄着で、黒い下着を着けたアイシャ(医)に釘付けだ!
「何見てるのよ!」
「あばぁ!?」
 そんなアウラにラーゴットの右ストレートが炸裂した!
 ……とばっちりである。


●まぁ、飲め。
「おれ……俺だってこんな事、駄目だって解っているんだ!」
 何故か近くの酒場で覆面男の話を聞くことになった一行。覆面男は泣きながら、自分の行為を語る。
「でも……でもさ! 服が透けると嬉しいじゃん!?」
 サンタナが、そんな覆面の片頬をおもむろに引っ叩いた!
「もふももふもふもふもももふふもふ!」
 覆面を被ったままだったのでモフモフとしか聞こえないが、お主は一体何をしておるのじゃ! と言いたいのだろう。
 後ろではアイシャ(吟)が綺麗な歌声と踊りで、酒場の客達から拍手喝采を浴びている。
「な、何を!」
 抗議の声を上げる覆面男にチッチッチと指を振ると、水の入った桶をアイシャ(吟)に振って水の浴びせ方を実演。
『おお!』
 水浸しになったアイシャ(吟)を見た酒場の客達は盛上がる。
 水で服が透けて黒いビキニが見えていたものだからから……さぁ、大変だ。大盛り上がりである。
「おう、ねぇちゃん、これでも飲みねぇ!」
 壮年の男性が、アイシャ(吟)に琥珀色の液体を手渡す。
「ありがとう御座います」
 アイシャ(吟)は笑顔で受取り、一口飲む……。
 水の浴びせ方を実演して悦に浸っていたサンタナはハッと我に返ると恐る恐る、アイシャ(吟)を振り返り……、
「うふふふ、あなた。ちょっとよろしいかしら?」
 お酒が入り眼の据わったアイシャ(吟)に引き摺られるように奥に消えていった。

「そうなんですか…貴方も寂しかったんですね」
 ソルティークは唖然としていた覆面男の肩を叩き、如何にも同情していますよ風味な感じを醸し出す。
「そうなんだ! 解ってくれるか!? 透けは男の浪漫なのだよ!」
 話を聞いてくれそうなソルティークに覆面男は安心したかのように泣き始める。
「じゃーアンタが水を浴びてみろやボケェェー!」
 すかさずラーゴットの突っ込みが入る。
「ぶはっ! 何をする!?」
 覆面男は大量の水を浴びせ掛けられて渋面だ。
「愛って素晴らしいと思うんだ!」
 ユヤは覆面男の手を取り、愛について語る。
「哀は素晴らしいですよね」
 アウラもユヤに続く。
「愛が無ければ人は生きていけないよ! だから皆を愛する事って大事だと思うんだ!」
 きらきらと輝かんばかりに純真無垢な瞳で覆面男に詰め寄るユヤ。
「哀って大事ですよね」
 アウラも続く、何故か遠い眼をしている。
「そうか……愛は……愛は大事なのだな!」
 ヴワと涙を流し、ユヤの言葉に感化されたらしい覆面男。
 ……そこへ、
「でもまぁ、罪は罪ですから」
 ニッコリと微笑むソルティークだった。


「騙しやがったなー! この外道ー!」
 しっかりと連行されて行く覆面男。
「いやー、そんなに誉めないで下さい」
 覆面男の罵倒に照れたような笑顔で答えるソルティーク。
「それじゃ、美味しい物でも食べにいきましょうか?」
「美味しいものなぁ〜ん!? 行くなぁ〜ん♪」
 美味しいものと聞いてマイラはご機嫌だ。
「いやー、良い事した後って気持ち良いよね!」
 そして、ユヤは何かをやり遂げた笑顔で家路に付いた。


【おしまい】


マスター:八幡 紹介ページ
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作成日:2005/08/02
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