イャトの誕生日?〜尻尾のクラゲ釣り〜



<オープニング>


 今年も、やって来たその日。

「イャト兄ー。忘れてた訳じゃないのよ、でも、でもねっ! ……って、あら?」
 夏のある日、烈斗酔脚・ヤン(a90106)は、彼に報告したい事があって酒場の扉を開いた。
 依頼と冒険者が集まるいつもの酒場に――黯き虎魄の霊査士・イャトはいなかった。
「……おう。イャトなら、何日か前から来てねェってよ」
 代わりにその席にいたのは犬尻尾を生やした赤毛の武人で、ヤンとは互いによく見知った顔である。巨躯を屈める様にして軽い食事を摂りながら、彼は何かを思い出す様に視線を宙に投げ、イャトの所在を口にした。
「そーいやちょっと前会った時に、泳ぎに行くとか言ってたな」
「そうなの? んー……じゃあ、今年は何もナシでいっかー……」
「あ? 帰るのか? 用事があったんじゃねェのかよ」
 あっさり踵を返そうとしたヤンに、訝しげな声が問う。行き先が解っているなら追いかけるなり、そうでないなら帰って来るのを待てば良い。だがヤンは、そこまでする程の用事じゃないからと苦笑い。
「兄ィの方が忘れてるわね、きっと。……それに、あの人が本気で泳ぎに行ったなら私じゃそこに辿り着けないわ」

 そのまま立ち去る彼女を、十拍戯剣・グラツィエル(a90144)は呼び止めなかった。
「――だとさ」
 と、肩を竦める。
「本人が良いって言ってるんだから強要はできないでしょ。ヤンさん、泳ぎは苦手だって話だし。それにしたって、イャトさんも何も誕生日に雲隠れすることないのに……照れてるのかしらね」
「照れる? イャトが?」
 想像したくないのだが。
 有り得ねェ、とグラツィエルがあからさまに顔をしかめると、相席のリゼルは素敵眼鏡を光らせる笑みを浮かべた。他意はないのだろうが。
「ちょっと過ぎちゃってはいるけど、お祝いに駆けつけてあげたら? 喜ぶわよー、きっと」
 ……他意はないのだろうが、やはり、想像したくはない。
「冗談を抜きにするとね、実はその海に大量発生しちゃってるのよね。クラゲが。……ただ『うぞっ』と居るだけだからそのままにしておいても実害はないと思うんだけど、いかんせん、霊査士でしょ? いくら泳ぎが得意な人だと言っても、もし何かあって、溺れないとも限らないし――念の為に行ってあげてくれないかしら」
 リゼルは『何か』に意味を込めたのか、そこだけ妙に引っかかる言い方をした。
「行く行かねーは別として……クラゲってのは美味いよなー」
「た、食べるの……? そ、その、まあ止めませんけどね……」
 グラツィエルの言葉に僅かにたじろぎながら、リゼルは少々不安げな眼を周囲に向ける。
 そして、気を取り直す様に咳払いをして、こう付け足したのだった。
「尻尾には、くれぐれも気をつけてね」

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参加者
NPC:黯き虎魄の霊査士・イャト(a90119)



<リプレイ>

「行かないのか。イャトのふんどし見物」
「絶対ェ、行かねェ」
 お約束の台詞に、真顔で返すグラツィエル。彼は、「絶」を目一杯強調し、次いで「暑苦しいだけじゃん」と言い放った。確かに。としか言えない。
 ――その後、出くわしたヤンにも同じ言葉をぶつけてみたのだが……彼女はその瞳に疑いの色をよぎらせて後ずさり、頭を振って笑顔を作ると、
「わ、私はいいのよ。ゆっくり楽しんで来てね!」
 一目散に逃げて行く。今度は何か、大いなる誤解が生じた様な……
 弁解しようにも彼女の姿は既になく、立て続けに二度フラれたティキは呆然と立ち尽くしたまま己に言い聞かせる。
(「……涼みに行くんだ、俺は」)

 切り札としての出番を逃したバスケットを抱え(尤も、その中身が無駄になる事は無いが)、シュシュは肩を竦めた。

 閑話休題。
 波間に漂っていた男が、小さなくしゃみを連発した。
 二度目をきっかけに目を開き、焦点を定めない視界に太陽光を受けながら――
 さすがに身体を冷やし過ぎたかな、と薄らぼんやり考えていた。

●輝く太陽、白い砂浜、蠢く海
 入り江の海岸線は緩やかな曲線を描き、岩場で砕けた波の飛沫が潮の薫りを空気に溶かす。晴天の下に何処までも横たわる海は煌めくエメラルドグリーン。ビーチに打ち上げられた大量の『ソレ』さえ見えなければ、其処は美しい場所だった。――いるわいるわ、波打ち際に、それはもうビッシリと『アレ』が。

 いや、案外、慣れればクラゲの海も綺麗なもので――?
 フワリンの背に揺られて空中散歩を楽しみながらメロディは、眼下にゆっくり流れるクラゲの群を観察していた。よくよく見ると、大きさも色も形も多彩で、つい目移りしてしまう。
「イャト様、喜んでくれるといいなぁん♪」
 てっきり、イャトはクラゲ好きなんだ、と思い込んでいるらしいメロディ。
 楽しげに肩を揺らしながら、プレゼント選びに余念が無い。

 海沿いで、ニューラが膝まで海水に浸かり、長い棒にクラゲを引っかけては岸へと次々放り投げている。
 負けられない。仲間の姿が確認できる場所に陣取り、ジーニアスはフィーリングで釣場を決定した。
「さぁ、釣るぞぅ!」
 釣糸の先にぶら下がる素敵なふさふさは、勿論クラゲを釣る為の餌だ。釣りに適した尻尾を持たないジーニアスのナイス着想。疑似餌釣竿、その名も『万能もけもけくん』である。
「これで入れ食い間違いなし♪」
「たくさん釣れると良いですなぁ〜ん♪」
 エルムドアは、美味しいクラゲを皆に食べて貰いたい一心。のんびり釣りをしようとジーニアスについて、海に面した岩場にやって来たものの、大量のクラゲはやっぱり怖いので海に背を向けて座っている。水面に触れそうな尻尾は、機嫌よろしく右へ左へ海水を撫でているのだが……本人、気付いているのか否か。
 ヒトノソリンのすべすべ尻尾にも、クラゲが寄って来ている事に。
 固唾を呑んで見守るジーニアスに、エルムドアはきょとんと首を傾げた。
「……ガンバロウネ!」
「? なぁ〜ん♪」
 釣らねばなるまい。そこにクラゲがいるならば!

 シュシュが浴衣でやって来たのは、『海には入りませんよッ』という意思表示にも等しい。日傘を差して、のんびりと浜辺を散策しながら――川が近くになかったので、代わりに浅瀬の岩礁の合間に出来た潮溜まりで西瓜を冷やす事にした。紅茶を淹れてきた水筒も一緒に沈めておく。
「……色々準備もあるのですよー」
 誰にとも無く言い訳しながら、シュシュは一人で頷いた。到着早々「テーブルに飾る草花を採りに行く」と雲隠れしたティキも、似た様なオーラを発していた様な気がする。『同類』さんの勘である。とりあえず、海から聞こえるはしゃぎ声は、今の彼女にはもののふの声に聞こえた。
「あっ。クラゲさん!」
 ぱん、と手を合わせる音と共に聞こえたファオの声。大群が押し寄せて来たかと焦ったシュシュは、潮溜まりの1つを楽しそうに覗き込んでいるファオを見て、何とか動悸を鎮めた。
 ファオがわくわくしながらクラゲの表面を指先で突つく。と、クラゲは逃げる様に沈んで、またすぐに上がって来た。浅い水場、岩に囲まれて逃げ場もないから、その場でぷかぷか、浮き沈み。これくらいなら、可愛げもあるというものだが……

●クラゲと霊査士
「なぁ〜ん!」
 頭から落ちたのは少年が身を乗り出していたせいだろう。メロディが悲鳴を上げて海に落ちる瞬間を、マイトはばっちり目撃してしまった。フワリンの消滅に緊張を走らせたが、近くでドンパチ始まった気配もないので、ほっと一息吐き、進行方向に近付く離れ小島に向けて泳ぎを再開。と、滑る様に静かにメロディに近づいて行く人影を見つけた。――『彼』だ。

 水面を叩きながら何とか自らの浮輪にしがみついたメロディの背に、褐色の手が触れる。
 ――大丈夫か? と、彼は言わない。掌から背中を通して直接響いて来るような低音が、静かに確認。
「……これも、お前のか?」
 振り返るメロディの目の前に押し出されたのはウレタンボート。浮輪と一緒にフワリンに載せて来て、落下の拍子に同時に宙に放り出してしまった物だ。立ち泳ぎしている声の主――小気味良い水音を起ててイャトが水中に下ろした右手は、直前に少し後頭部をさすった様にも見えた。
「は、はいですなぁん。ゴメンナサイなぁ〜ん」
「何故謝るのかね?」
「え、え…ぇと、その、なぁん」
 口ごもり、メロディは笑顔で誤魔化した。とりあえず、安堵して良いらしい。
 元気そうなイャトの姿をルシエラは見つめている。いつもと違う雰囲気は、やはり彼が身体の厚みの解る黒基調の水着なぞ身に着けているからだろうか(ワンピースハーフスパッツという奴だ)。胸元が隠れて、腕が露わというのも新鮮だ。
「何でまた、クラゲの海? でも、イャトの特別な場所なら綺麗にしたいって思ってさ」

「………」
 クラゲ獲り網を片手に追いついたジェイの素朴な疑問に、返事は無い。が、気にせず彼は「泳ぐのにも邪魔だしな」と、朗らかに続けた。
「………お前達」
 呻く声音は先程よりも一層低く。
「溺れたら大変なぁん。僕のペンギン浮輪を使ってなぁん。ウレタン船もあるなぁん」

「――俺は、平気だ」
 浮輪にしがみついたまま言うメロディを横目に、ぽつりと零れ落ちる言葉。

 ジェイが海中に引きずって泳ぐ網の中に、にっくきクラゲ共が為す術なくごっそりと絡め獲られて行く様は実に爽快。始めの内こそ警戒して気を張っていたユミも、今やすっかり余裕綽々で、件の霊査士殿と合流した仲間達を眺めていた。
「ふっ、所詮クラゲ如き、恐るるに足らぬわ!」
 勝ち誇った表情で、ふはは、と高笑い。背後から静かに忍び寄る恐怖に、ユミはまだ気付いていなかった。例に違わず己の尻尾に細心の注意を払って泳いでいたはずのレネでさえ、太腿を撫でられるまで気付かなかった。脚の間を通り抜けられる感触にぎょっとして、身体を反転させながら警告の声を発する。泳ぐ速度を落とせば今にも追いつく距離にまで、半透明の影の群は迫っていたのである。
「ユミ、後ろ……!」
 ふははは、は……?
 高笑う声が疑問符を経て悲鳴に変わった。水の流れに抵抗し、大量の潮水を飲んでしまいながらも、纏わりつく感触を蹴り飛ばそうと手足を振り回す。
「がぼっ!? 尻尾に触れるな! 絡むな! 刺すなぁぁっ!?」
「うわ、マズい!」
「イャト様!」
 支えを失った様に傾ぎ、沈みかけたイャトの身体を慌てて掴まえたメロディ、近くに居たルシエラとジェイ、三人がかりで護りを固めた。ウレタン船に盾にして身を寄せる。
「嫌ぁぁっ! 誰か助けてぇぇぇっ!?」
「とにかく、まずは落ち着いて下…っ!」
 ごふっ! 取り乱したユミを抑えようと背後から組み付いたマイトは、憐れ、彼女が振り回していた肘を鳩尾に喰らってしまった。水のクッションが衝撃を和らげたとはいえ、一瞬動きを止めた彼を、レネは心配と同情の入り混じった眼差しで見たとか見なかったとか。
 尻尾と脚にずっしり絡みつき、腰の辺りで蠢くおぞましい感触に、ユミは水中に手をかざす。彼女の視界一帯に紋章の雨が、無数に降り注ぐ。

「むっ!」
 ジーニアスがその騒ぎに気付いたのは、とうとう『もけ尻尾』をクラゲに持って行かれた時である。
 足元一面、もけ尻尾とエルムドアのノソリン尻尾で釣り上げたクラゲの海だが、こんなもの、今は単なる背景だ。只の棒切れと化した釣竿を投げ捨て、すかさずドーナツ型のウレタン板「うれたんくん」を海に投げ入れる。
 ぐにゅっと、踏みつけたクラゲで滑って転びそうになりながら叫んだ。
「イャトぴょん! これに掴まるんだー!!」
 ――しかし。
「…と、届いてませんなぁ〜ん…?」
 クラゲにまみれて放心状態だったエルムドアが、久方ぶりに発した声は消え入りそうな擦れ声。
 力一杯投げたウレタンは――そう遠くない所に浮かんでいた。
 泳いで行け? 「いやあ」と、頬を染め、舌を出す笑みを浮かべたジーニアス。実は、彼女も泳ぎはあまり得意でなかった。そこに、颯爽と水上を横切って現れた影――ロープを肩に引っかけたニューラが「リレーします!」と、ウレタンを回収。そのまま華麗なフォームで仲間の救援に向かう後ろ姿に、ジーニアス、「お願いしマス!」と、思わず敬礼。

 うれたんくんはその後、クラゲとの闘いに傷つき(最終的には足を攣って)たおれたユミの護送に一役買ったという。
 ――岸へと戻るウレタンの上でイャトが目覚めた時には、全ては終わり、そして全ての準備が整っていた。

●祝宴と、灯
 魚介類が香ばしく焼け上がる。メインは浜辺のバーベキュー。
「………」
 季節の草花が飾られたテーブルの上には、新鮮なクラゲを刻んで和えた付け合せや、デザート類、冷たい紅茶が用意されている。バスケットに詰めて持ち寄られたお祝いのケーキは、南方のフルーツを使ったゼリーとババロアに、桃の香りがするカップケーキ、蜂蜜漬けのレモンを載せたムース……ささやかだが、セルフィナ、シュシュ、ファオの心づくしが華を添える御馳走だ。

「イャトおにーちゃんも、誕生日おめでとうなのですなぁ〜ん♪」
 『も』? エルムドアの言葉に、ようやくイャトがぴくりと動いた。2人、実は1日違いの誕生日である。
「それは、おめでとう」
 転じてその意味する所は『しっかり祝って貰え』、である。が、倍加した喜びに彩られた微笑と祝杯はイャトを逃がさない。
「皆押しかけてでも御祝いしたくて来ましたから、どうぞ座ってくださいね」
 と、アリーシャが席を勧め。
「そうそ! ここまでキタのが俺の祝いのキモチってヤツ?」
 ジェイがうんうんと頷きながらイャトの手を掴み、「オマケっ」と握らせるのは、曰く『海で拾った溶けない物』。石か、貝殻? 手の中でその感触を弄び、想像に目を伏せる一瞬。
「こっち来て皆で食べませんかなぁ〜ん?」
 お祝いの只中から、エルムドアがはしゃいで手招いている。
 幾つか、既知の者達に混ざった初対面の顔を流し観るイャトの眼が(或いはこの期に及んで逃げ道を探そうとしたか)、ファオの視線とぶつかった。ぺこり、とお辞儀をしたファオは、そこでイャトが着けている霊視の腕輪に目を留めたらしい。
(「…霊査の鎖を着けながらも泳ぎにチャレンジ…すごいです」)
「……?」
 顔を上げたファオの眼差しがキラキラと輝いているのを見て、イャトは目を細めた。おそらくそれは誤解、なのだが、内なる声も聞こえなければ彼には訂正のしようがない。ふと、無意識に首輪を弄るイャトの指。シュシュが『ぢっ』と其処を見つめている事には気付いていない様だ。
「……何なんだ」
 妙に首元が落ち着かない。もし、ここにあの男が居合わせていたら首輪に噴いた潮を目ざとく見つけて、革を水に浸けるなと憤ったに違いないのだが(しかも今回は海水である)、イャトの知った事ではなかった。
「………」
 ――白い。白いハイビスカスの花がテーブルで一際、存在を主張している。アリーシャと微笑を交し合い、レネはテーブルからそれを一輪、髪を解いたルシエラの耳元に飾る。その背を軽く叩かれてただただ照れ笑いのルシエラ。それから、冒険者達の足元を忙しく行き来して皿を運ぶ土塊の下僕達の働き振りを見て、アリーシャは満足げな笑みで小さく頷いた。

 先を照らす灯りと、踏み出される足。
「これがあれば帰り道は、きっと明るいよ!」
 ありがとう、の気持ちを込めたルシエラのプレゼント。それから。あのね。
「もし一人で行けないでいる所があったら、一緒に行こうね」
 傍にいれば、護れるもん。そんな言葉が聞こえてきそうなルシエラの笑み。
「………」
 案じてくれたであろう事の大体は、その言葉でイャトには伝わった。ルシエラの頭を軽く撫でる、掌。
 指先で引っかけそうになった花を挿し直したイャトの瞳が一瞬翳り、――
「男は女に護られるより、護りたいと思う生物だが」
 相変わらず彼はにこりともしなかったが、その言葉はどこか笑みのニュアンスを含んでいる様でもあった。

「ただふらりと海へでもいいけれど。お祝いの逆は困るわよ?」
 海は彼の思い出の場所だと知っているから、失笑交じりに贈る。レネからは水難避けのお守り、ターコイズの勾玉。
「夏とはいえ、海は夜になると気温下がりますから体冷やさないようにしてくださいね」

 と、ニューラ。二人の言葉に痛い所を突かれた顔こそしなかったが、イャトは長い沈黙の後「気をつけよう」と答えた。

 演奏と歌を贈ろうとしたセルフィナは、そわそわとイャトの傍らに視線を注いで頬を染めていた。
 届くかどうかも解らない小声で。「その、良ければ……ご一緒に」と。
「………」
 イャトは己に寄り添う楽器に手を掛けた。表面に金属質な緑色の螺鈿細工が施された大振りのリュートは、ニューラから贈られたばかりの品。抱き寄せると首の部分に銘らしき刻印が見えた。覚えがあるような気もするその銘を脳内で呟き、弦を弾く。
 奏でられた曲は即興なのだろうが、セルフィナは嬉しくなって、歌を合わせた。
 音があるなら、舞も添わねば――弓を手にしたマイトの舞も祝いの席の華となる。

 ――余韻は潮風に溶けた。いつしかすっかり陽が墜ちて、浜辺は夜の景色。
 寄せては返す波間にはまだ、クラゲ達の姿がちらほらと見える。料理に使いきれずに残ったクラゲは、パーティーの最中、まだ西の空に陽がある内に、ジェイが防砂林の根元に埋めて来たようだ。ジーニアスは手土産に10匹ほど束ねて荷物にまとめている所が目撃されている。メロディが掴まえて、天日に干していたクラゲは結局、半生状態のままリボンをかけられ、イャトに贈られたとか何とか。
「面目ない……その、世話になったのう」
「いいえ。大事無くて良かったです」
 皆、元気で祝いの席を囲めたこと。イャトもユミも無事回復して、アリーシャはほっと胸を撫で下ろしている。ユミは、もう一度彼女に頭を下げた。また1つ、増えてしまったクラゲとのめくるめくメモリー。
「来年は! 来年こそは雪辱を晴らしてくれるー!!」
 海に向かって叫んだユミは、水平線にぼんやりと、ちらちら揺れる遠灯りを見つけた。遠くの村の灯りだろうか? にしては、距離や灯りの位置がおかしい気がする。首を捻っていると、いつもの服に着替えた霊査士が浜に下りて来て、言った。
「――帰る前にもう一度見る事が出来て良かった……」
 イャトにとっては数日間、他の者にとっては日帰りの海。
「毎晩見える景色ではない、地元の者が『竜灯』と呼ぶ自然現象だ。……海が燃えているのだと」
 眉唾ものだがね、と、ご丁寧にも言葉を添えた霊査士は、確かにいつもより機嫌が良いのかもしれない。

 日常、あまり感情を露わにする事の無い男が、珍しく言の葉に滲ませたのはきっと……


マスター:宇世真 紹介ページ
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星影・ルシエラ(a03407)  2009年12月19日 16時  通報
水着だけど鎖も、には吃驚。泳げるんだね。外せないんだっけ?霊査士さんってー。あ、首輪もだね。うん。

「もし一人で行けないでいる所があったら、一緒に行こうね」
って、
ルシが言ったのは、すごく広げては、どこでもー♪どこまでも、だけど。
(のちにルシ放浪しちゃってごめんなさい)
近いとこでは、この海〜だよね?ザズーさんも近いような気がして。
イャトさんがああな根っこは、海がらみの人達がらみっぽくて
贈り物は、灯り☆