<リプレイ>
●WAR WAR 街道にどよめく、獣に似た声。 「ん〜絶景かな♪ 絶景かな♪」 と、群れを眺めつつ軽口を叩いてみるものの。 「……流石にコレだけの数を見るのは初めてだな……」 波打つ絨毯のような大群を前にして、侍魂・トト(a09356)は思わず苦笑い。 群れがざわめいた。 「来ます」 胡桃の森の双子・ディアナ(a00022)の身体に、黒い炎が沸きあがり、纏わりつく。 様子を覗う事すらもしないのか。最も近い位置にいた数匹が、真っ向走る。それを皮切りに、気付いたグドンが次から次へ、雄叫びを上げて突進を始めた。 「左へ」 不定形に崩れる群れの動きを読み、不吉の月・ラト(a14693)が言葉を投げる。 互いの距離を確かめ合い、一斉に移動を開始しながら、向かい来る集団へ、針の雨が降り注いだ。 「そら、退いた退いた!」 心持ち、進行方向に意識を集中して放った、昊天の疾風・ワスプ(a08884)ニードルスピアが、駆け込んできた軍団の先頭を射ち据える。 四方八方と秩序なく広がった脇、或いは倒れ、怯んだ先頭集団の隙間を抜けようと動くそこに、赤く輝く矢が風を切る。 後続の中に落ちた、怠惰と惰眠の守人・ニオス(a04450)の一矢。 無言に見据えたそこで弾けた矢は、爆炎と悲鳴を巻き上げて、突進に沿わない流れを作る。 躓き、どっと倒れるグドン達。 それでも、それを意に介さぬ数が、群れを踏み越えて周囲に殺到、我先にと獲物を目掛け、手薄な進路を選ぶが故に、群れは徐々に扇形に広がり、そのまま囲い込むように押し迫る。 だが、それを許す訳には行かない。 流れるように閃くトトの刀。 一気に薙ぎ斬られ、ようやっと辿り着いたばかりの数匹はあっけなく足元に転がった。 それをも尚、踏み越えようとする集団を、脳髄を揺るがす叫びが襲った。 「なぁ〜ん!」 それは、ヒトノソリンの狂戦士・ルクティ(a14133)の紅蓮の咆哮。 突き抜けていく空気の振動と共に立ちすくむグドン。その数は指折り数えられる程度ではあったが、唐突に立ち止まった仲間にぶつかり、転がり、あっと言う間に崩れる包囲網。 咆哮に耐え、混雑を抜けた集団を、運命の担い手・ロック(a11077)が間髪入れずにニードルスピアで一掃する。 「狙いを付けなくても撃てば当たりますね」 後から後から沸くようにやってくるグドン。こう、同じようなものばかり見ていると、段々気分が悪くなってくる。 より手薄な場所へ。 走る脇から掴み掛かるようにして殴りかかるグドンを流水撃で薙ぎ斬り、紅き断罪の双剣士・ラスク(a19350)がぐるりと群れを見回す。 「七時方向へ!」 周り込み始めた群れの空白を抜けるべく、ラスクの言葉どおりに疾走する一行。 将棋倒しから持ち直し、ほどけようとするグドンの塊に、風詠甘緋・ズュースカイト(a19010)の描き上げた中空の紋章から、幾重もの光の筋が降り注いだ。 「……どのくらい減ってるんだか」 倒したはずのグドンも、新たに襲い掛かるグドンの波の中に消えていく。 討ち漏れて、やって来た一匹の首を巨大剣で跳ね飛ばし、草津・ザスバ(a19785)が雄叫びのような野太い声を張り上げる。 「判るようになるまで潰しゃぁいいのよ!」 千切れ飛ぶ肉片と血飛沫を浴びて凄むその姿を間近で見た一匹がたじろぐような素振りを見せたのを、ザスバは見逃さなかった。 波状攻撃に抜かりは無い。 ただどうしても、グドンが全方位に達した時に、攻撃範囲を逃れた一定方向からの猛攻が定期的にやってくる。 力任せの連打。一発一発は大した威力でもないはずなのに、蓄積するダメージはあっと言う間に疲労の限界へと迫る。 身体を包むマントと手にした杖を硬く握り、ディアナがヒーリングウェーブを発動する。 「波が激しいですね……」 一気に減り、一気に治る、その繰り返し。 後衛への進路を塞ぎ、ワスプが進行方向にニードルスピアを打ち放つ。 「抜けるぜ!」 「先に」 崩れた穴へ、ニオスがナパームアローを打ち込み、更に切り崩す。 巻き上がった炎と呻き声の合い間を、前衛に護られながら後衛が抜けていく。 「なぁ〜ん!」 崩れた両脇に新たに押し寄せようとする集団を、ルクティの紅蓮の咆哮が押し留める。肉の壁と化したそこが崩れるよりも早く、トトとラスクが駆け抜け様の流水撃で、軒並みに薙ぎ払い、斬り飛ばしていった。 それでもなお追い縋ろうとする者には、ラトのニードルスピアが振舞われ、針の雨の中に葬り去る。 倒れた壁を越え、変わらず殺到しようとするグドン達へ、今度はザスバの怒号のような咆哮。 「効かぬわァー!」 今まさにそこまで迫っていた群れの一部が停滞する。 また崩された流れ。絡まり合い、混み合うそこに向かい、波のように降る針の雨。 「さて、ここからが見せ所ですよ?」 雨を抜けはみ出てきたグドンの攻撃を双剣で受けては流すロック。その脇すらも抜けようとする一団は、ラスクが流れるような動きで斬り裂いていく。 「皆、居るか!」 「居るぜー!」 声を掛け合ってはいるが、どうしても煩雑な動きになってしまう。 「全員入る?」 「トトさんだけ届きません!」 「ルクティが遠い」 「了解。他は任せるよ」 ディアナとラトの返答を聞き、ズュースカイトはその二人が自分の範囲に入るよう位置取りを変え、自分に向けられる攻撃には構わずに、ヒーリングウェーブで辺りを包む。 反撃が無いのをいいことに、続けて殴りかかろうとするグドンに、鋭く突き立つ矢。 倒れたグドンの向こう側には、次の矢の為に弓を引き絞るニオス。その周辺を、今度はディアナのヒーリングウェーブが包み込んでいく。 「ははん、段々スカスカになってきたな!」 人一人の周囲へ集まることができる数というのは、そうそう変わらない。故に、目に見える数というのはさして変化がないように見えるが、トトは受ける痛みも我慢して、あえて余裕の表情で、そんな風に大見得を切りながら流れるようにグドン達を斬り捌いていく。 次に迫ろうとする集団をニードルスピアで滅多打ちにしながら、ワスプもそれに倣う。 「もっと減らしてやるぜ!」 実際はまだ半分にも達していないだろう。 それでも、これほどの猛攻に耐え、なおも勢い衰えない十人程の集団を前に、群れの一部に微かながらに動揺が走るのを、動きを常に観察し続けていたラトは見逃さなかった。 そして確信する。この集団が頼りにしているのは、本当に『数』だけなのだと。 「ゲァハハッハァ! そうともよ! 潰せ潰せェ!」 響く雄叫び。 足を止めた者に躓き、群れが何度目かの崩壊を引き起こす。 崩れた塊に打ち込まれる炎の矢。 爆炎と共に上がる……これも、何度目かの悲鳴。 「っと、邪魔ですよ?」 血飛沫を浴びながら、ロックが飄々と後ろに回り込もうとする群れの一帯に針の雨を降らせる。 「なぁ〜ん!」 めきめきと盛り上がった筋肉。流れるように動くルクティの一対の斧が、脇を抜けて迫るグドン達の身体を、容赦なく分断していった。 囲い込まれる度、連続して辺りを包む、癒しの光。 「残り、幾つくらいですか?」 前衛に護られながら、背を合わせるような形で構えるズュースカイトとラトに耳打つディアナ。 「三分の一」 「こっちは四分の一かな」 「厳しいですね」 敵にはまだ、自分達を二重三重に囲むだけの数が残っている。このペースでは、殲滅までに回復が尽きるだろう……とはいえ、群れの闘争心が徐々に薄れているような気配も、僅かだが感じられる。 決断の時と、群れの撤退と。 果たしてどちらが先か……ディアナは、迷いあぐねていた。
●BURN 囲いの一部が、ニオスの矢と共に弾け、トトの斬撃によって崩れ去る。 ただ、その寸前。 「っくそ、すまねっ」 追撃に沸いたグドンの攻撃を捌き切れずに、ワスプが倒れてしまった。その身体をザスバが素早く肩に担ぎ上げ、追い縋る者を殴り飛ばして、穿たれた群れの穴を抜け出す。 「やっと一人か! 雑魚共がァ!」 半分は虚勢でもあった。回復の底が尽きそうなのは知っている。 それでも、その堂々とした態度は、群れに大きな衝撃をもたらすに十分だった。 「なぁ〜ん!」 刹那、動揺にざわめく群れの中を突き抜けていくルクティの雄叫び。立ち止まった肉の壁へ降り注ぐロックのニードルスピアが集団を崩し、その最前線を血飛沫散らしてラスクが薙ぎ斬っていく。 視線の先に映るのは、今まで通りすぎた戦場に散らばる無数の骸。 「あと半分!」 その頭上を越えて、ズュースカイトの描いた紋章から幾筋もの光線が、心持ち動きの鈍った集団を撃ち据える。 「次、もし囲まれたら、抜けながら撤退だね」 あと数回。残ったヒーリングウェーブを行使するディアナは、深く頷く。 「そうですね」 「いや」 しかし、それにラトが短く否定を返した。 転がった屍を超えて迫る集団をニードルスピアで蹴散らす、その視線の先に。 「……なっ?」 何処からともなく上がった悲鳴。 来るかと構えたラスクの前から、徐々に密度が減っていく。 悲鳴は瞬く間に、群れ全体の様子を塗り替える。 何が起こったのか。逆にこっちが困惑するくらいの恐慌状態で、グドン達は文字通り蜘蛛の子を散らすように、目の前から逃げていく。 追い討ちをかけるようにニオスがナパームアローを打ち込むと、群れは最早必死の形相で、振り返りもせずに一目散で街道を離脱していった。 「二度と来るんじゃねぇ〜!」 担ぎ上げられた肩から少し悔しそうに、ワスプが声を張り上げた。
静けさを取り戻した街道。 事切れた無数の骸の中を吹き抜ける風が、むせる様な血の臭いを運ぶ。 「ゲァハハッハハアッ!」 高揚収まらぬザスバの雄叫びが、街道に木霊する。ロックは返り血で汚れた衣服をまじまじ。 「帰って怒られなきゃ良いですけど」 ズュースカイトは遺体を順に巡りながら、突出した骨をまじまじと眺めて回っている。 そんな惨状を無言で見回すニオス。ざっと数えても二百超。敵よりも早く半数を減らされたのでは、数が頼りのグドンが不安に苛まれるのも無理はない。 「ぎりぎり、か」 ラトが残ったヒーリングウェーブで、辺りを包む。ラスクは長剣から血飛沫を振り払い、鞘に収める。 「そのぎりぎりまで我慢した甲斐はあったな」 「そうだなへぁ〜ん……なはぁ〜ん」 叫びすぎたのか、ルクティはすっかり掠れ声。 トトもようやっと、疲労に見合った表情を覗かせて、深く息を吐く。 「出来れば埋葬してやりたいが……」 見据えた先には、グドンの死骸の山。 「……火葬とか出来ないかなぁ」 「そうですね」 このままにしておく訳にも行かないと、ディアナが頷く。 暫くの後、街道に煙が立ち昇った。

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参加者:10人
作成日:2005/08/12
得票数:戦闘29
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冒険結果:成功!
重傷者:魔戒の疾風・ワスプ(a08884)
死亡者:なし
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