ピルグリムグドン前哨戦:グドン村殲滅戦



<オープニング>


●ピルグリムグドン前哨戦
 およそ10ヶ月前に行われたピルグリム戦争。
 この戦いにより、冒険者達はピルグリムマザーを撃破し、ホワイトガーデンのエンジェル達を救出する事に成功する。
 だが、この戦いの中、数体のギガンティックピルグリムと呼ばれる巨大なピルグリムを取り逃がしてしまった……。

 そして現在。
 数百万匹のグドンが生息するとも言われているグドン地域に、ピルグリムグドンと称される『強力な力を持つグドン』の存在が確認されたのだ。

 ピルグリムとグドンとを合わせたような怪異な姿と、ピルグリムに勝るとも劣らない戦闘力を持つ新種族……。
 更に、チキンレッグ王国の護衛士団による調査によって、このピルグリムグドンが、普通のグドンと交配してピルグリムグドンの子供を作る事が判明し、事態の重大さが浮き彫りになった。

 恐るべき繁殖力を持つグドンとピルグリムの融合……。
 ピルグリムグドンは、ランドアース大陸に重大な災厄を招く恐ろしい敵となるかもしれなかった。

※※※※

「一難去って、また一難って所ね」
 ヒトの霊査士・リゼルは、疲れたような笑みを浮かべて集った冒険者達に、今回の依頼の内容を説明した。
「今回は、旧モンスター地域の安全の確保……。とりわけチキンレッグ街道の安全確保が最重要課題となるわね。街道の巡回警護、グドンが住み着いてしまった集落の奪還、グドン地域から侵入しようとするグドンの阻止……なんかが、みんなの仕事になると思うわ」
 リゼルの言葉に、冒険者達は大きく頷く。
 モンスターザンギャバスの脅威が除かれた今、ピルグリムグドンが同盟諸国の最大の脅威の一つである事は疑いなかったから。

「今のところ、ピルグリムグドンの数はそれ程多くは無いわ。100匹のグドンの群れの中に、ピルグリムグドンは数匹いるかいないかって所ね。それでも、グドンの群れをモンスターが率いているような物だから……油断は禁物よ」

 リゼルはそう注意すると、集った冒険者たちを見渡して、最後にこう付け加えた。

「チキンレッグ街道の復旧は、多くの人々の希望になるわ。皆の力を見せて頂戴ね」

●グドン村殲滅戦
「村一個ほど叩き潰してくる奴、おらん?」
 レィズの言葉に何人かの冒険者達が目を丸くしたのは言うまでもない。
 その言葉そのままだとしたら、何と物騒な事を言い出すのだコイツは、と思ってもおかしくない。
「あー、村言うてもな。住んどった村人が猫一匹残さず避難したがら空きの村にグドンが住み着いてしもうて。雨風凌げるし、蓄えの食料もそのまんまやったし。奴等に取っちゃパラダイスや」
 つまり。旧モンスター地域に侵入してきたグドンが住民避難後の村に住み着いた訳で。
 労せず手に入れた安全な住処。そこでグドン達は定住でもしようかと言うくらいに落ち着いてしまったと言う訳だ。
「勝手知ったる人の家とでも言ったカンジで悠々と健やか家族計画開始した所や。……グドンに家族計画もヘタレもあらへんけどな。食う、寝る、生むの三拍子しかあらへんし」
「――待って。それって――」
「何件かの家の中に腹のデカイ雌が視えたわ」
 グドン繁殖の恐ろしい早さは周知の事実。そんなのが住み着いてのうのうとお子様生産されては堪らない。
「黒犬グドン、軽く見積もって100から120そこそこ。もう生まれたヨチヨチもおるけど、第一次ベビーブームが近づいてきとるのは間違いあらへん」
「で、いるのか……?」
 静かに話聞いてたキィルスが問う。真剣な表情で視線を交わし、レィズは大きく頷いた。
「2匹おる。リゼルも言うとったピルグリムグドンや。片方は鋭くデカイ突撃槍の様な右腕の雄、もう片方はスカートの様に腰から6本伸びた触手持った雌や」
 生憎、村にある30戸弱の家々の中の、どの家にいるかは解らない。
 が、戦えばそのうち遭遇出来る事は確かだろう。
 何故なら。
「さっき言うた通り。今回の依頼は殲滅戦や。ワンコロ一匹残さず潰して来や」
 特にピルグリムグドンと、それを身ごもっていると思しき雌グドンは取り逃がさぬ様、そうレィズは付け足した。
「今後、そんなのが増えたらエライ事になるだろうな……。メスだろうが、ガキだろうが始末しないと、さね……」
「……そや。害虫に余計な情なんかイラン。ちょいと骨折れるかもやけど、気張って行って来」
 今後の脅威となる芽を、僅かでも、僅かでも今のうちに摘み取れる様に……。
 キィルスは剣を取り、レィズは他に行く者を問う様に冒険者達を見回したのだった。

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参加者
天捷星・シンキ(a03641)
香水茅・シトラ(a07329)
饗宴の思索者・アレクサンドラ(a08403)
妙音媛・アールタラ(a10556)
真昼の月・シュリ(a16737)
在天願作比翼鳥・キオウ(a25378)
角担ぎ・ギバ(a27654)
ねむねむ人形ひめ・マサキ(a28599)
疾風の忍鶏・テナー(a31534)

NPC:紅き柘榴の翼剣・キィルス(a90077)



<リプレイ>

「んじゃ、頼むな」
「のわっ!?」
 天捷星・シンキ(a03641)は飼猫を押しつけ、それを抱き受けたレィズは悲鳴を上げた。
「……何やこのデブ猫。あの可愛ぇシルゥがこんな……」
「いや、前に運動して一旦は痩せたのだけど、リバウンドきちゃって……」
「リバウンドしすぎや」
「やはりまんもー肉食い放題だから……」
「それアカンやろ」
 漫才の様に言葉交わし合うも、レィズの皆を見送る目はやはり真剣だった。
 そして、妙音媛・アールタラ(a10556)にはそれがいつもより少し恐く感じられた。それだけ敵の実態が未知故に、心配していると言う事なのだろう。
「レィズ……アル、頑張ってくるから!」
 そう彼女は告げた。心配させない様に、はっきりと言葉紡いで。レィズはやっと微笑むと、彼女の頭をそっと撫でて見送った。


「白と黒、母、そして仔、か……」
 ピルグリムがグドンの有り様そのものをねじ曲げた。
 そして生まれ出でた生命は生きる権利を求める。
「さて、問うてよいかね、我らとどう違うのかね、彼らは?」
 饗宴の思索者・アレクサンドラ(a08403)は思い巡らせ、そんな言葉を仲間に投げかけた。
「生きる権利とその為に他の命を絶つ権利。それは奴等にも俺等にも言える事かも知れないな」
 そう、キィルスは答えた。
 グドン達は生きる為に食らい襲い、人間の命を絶つ。
 そして彼等は……。
「……ふ、余計な思考が滑りすぎた。我らの平穏を乱すならば、人々の営みの仇となるならば、絶たねばなるまい。それだけの事……なのだな」
 何も違わない。自分達もまた、生きる為にグドン達の命を絶つ。ただ、それだけの事。
「グドンから見ればまさに『悪者がやってくる!』だね」
 真昼の月・シュリ(a16737)はそうアレクに声をかけ。
「……必要なことだし躊躇はしない。今、優しさは要らないからね」
「情けをかけたら後でしっぺ返しを食らうのは目に見えてるので、容赦なく殲滅させていただきますッ」
 角担ぎ・ギバ(a27654)も言う。情けに対し恩を返す知性と義理を持った相手でない事は分かり切った事。
「さて、随分村の周りも荒らされてるけど」
 遠眼鏡で村の様子を確認したシンキは皆にどうする?と問いかける。
「テナーが戻ってくるの、待とう」
「……あれ? もう帰ってきましたね」
 幻燈料理人・キオウ(a25378)が指差した先、偵察に行ってたチキンレッグの忍び・テナー(a31534)が急いで戻ってくるのが見えた。
「どうでした?」
「うむ、何ともかんともグドンだらけでござる」
「……後は?」
「……以上」
 冒険者としては駆け出しのテナー。危険を回避しつつ偵察に臨んだのだった。
『拙者我が種族の誇りに掛けて街道を守らねばならんでござる』
 行く前のこの台詞の時点で逃げ腰。種族特性『臆病者の勘』と賭博好きの『勝負師の勘』をフル活用して村の情報収集に励む筈だったのだが。
「ふむ、こっちは拙者の幸運の羽が行くなと言っておるでござる」
 頭の白いメッシュ羽が湿る感覚。それが、全方向に働いたら後は後ろに逃げるしかない。
「つまりアレさね。敵の強弱に関係なく危険を察知した訳か」
 キィルスがそう告げる。グドンが群れて居れば充分に敵。強かろうが弱かろうが危険は危険と感じれば。後は逃げるしか無いだろう。
「うう、面目ない」
「テナーさんが無事なだけで充分です。落ち込まないで」
 幻燈料理人・キオウ(a25378)は肩を落とすテナーを元気づけて、皆に呼び掛ける。
「それでは、最初の打ち合わせ通り3つに分かれましょう」
「何か久し振りに大暴れ出来そうな依頼だよねー」
 香水茅・シトラ(a07329)は指を鳴らしながら気合い入れるも、刺さる視線に目を逸らす。
「……解ってるよぉ。医術士の仕事ちゃんとするから」
 それじゃ、と3方向から村に突入し追い込む為に三班に分かれる冒険者達。
「これ以上グドンたちを野放しにしてはおけないもんね。村の人たちの家を取り戻さなきゃ」
 小悪魔的天使・マサキ(a28599)が呟き、シュリも軽く頭を振って気持ち切り替える。
「さって、害虫駆除に行こっか」
 離れて行く皆の背を見送りつつ、アルは落ち着かない表情を浮かべていた。それに気付いた蒼の閃剣・シュウ。アルは彼にそっと呟いた。
「ねぇ、キィルスやシュウは戦うの恐いって思った事無いのかな?」
 ギュッとしがみついて、アルは本音を、そして決意を吐き出した。
「ピルグドンって得体が知れなくてちょっと恐いし気味が悪い。でも、アルは冒険者だから元気に頑張らなきゃ。頑張らなきゃ……」
 気負わなくて良いよ。そうシュウは告げて。彼等は戦いに赴く。


「アォーン!?」
「行くぞ!」
 村の入り口に立っていた黒犬グドン数匹が此方に気付き声を上げたと同時に。
 前衛のキィルスがそれを斬り伏せ、後ろに続くアレクとギバが応援を呼びに逃げんとしたグドン達をエンブレムシャワーとニードルスピアで撃ちのめす!
「ピルグドンはこの辺には居ないね……強いのかなぁ……」
 ギバも全てが未知なピルグドンに脅威を感じている。はぐれてはいけない。一団となって彼等はグドンの群に挑む。
 その後ろでやや下がった位置に付くシトラ。支援に専念と心に決めるも何故かつまらなそう。何せ雑魚相手だと攻撃を食らう暇も無い故に彼女の出番が無さ過ぎるのだ。
「ね、私も攻撃で前に……」
「シトラ殿は万が一に備えて温存して――後ろ!」
 不意に家屋の影から現れたグドン。アレクが気が付きシトラに叫ぶ!
 咄嗟に槍をかわしたシトラはそのままグドンの腕を取って剛鬼投げで華麗に地に投げ降ろす!
「な、なかなかやるのだな、シトラ殿」
「ね♪ だから前に……」
「放っておくと突っ込んで行くから、ダメ」
 キィルスが釘を差した。性格読まれている。頬を膨らませ、彼女は範囲攻撃の仕留め損ないへのトドメに専念する事とした。


「まあ、さすがに百単位もいたら限界あるし騒ぎ起こさないにしても限界あるな……」
 ならば、とニードルスピアを派手にグドンの群に撃ち込むシンキ。全く見付からず戦うのはまず不可能、なら見敵必殺に限る。
 ニードルスピアを放った直後の隙狙って槍持ち吶喊してくるグドンは、シュウがレイジングサイクロン放って殲滅させ、反動の麻痺はアールタラが即座に回復させる。
「此方の家にはピルグドンはおらぬ様でござる!」
 家々を周りながらグドンを都度倒していく。慎重に扉開き、飛び出てくる雑魚を蹴散らし。後方で周辺警戒しながらテナーがその家の様子を覗きこみ、随時報告する。
 身重のグドンが戦う雄の間を擦り抜けて逃げようとする。
「シュウ!」
 アルの合図でシュウが紅蓮の咆吼を使うと、ただでさえ動きの鈍い雌は立ち竦んだ。
 その間に黒き炎が唸り、消える代わりに現れるは比較的屈強な体格のグドンのクローン!
「さぁ、家の中の腹のデカイ雌をぶっ刺してこい。逃げる子供に近づいて首を刈れ」
 シンキが命ずる。めぼしいグドンを見つけてはデモニックフレイムで手駒を作り、家の中で余り動けない妊娠した雌や赤ん坊グドンを始末させていく。
「シンキ、そっちは?」
「片づいた。次の家、行くぞ」
 4人は目配せし、次の家を見る。既にその前には武器を手にしたグドン達が襲撃者達から身を守らんと構えている姿が見えた。


「やれやれ、本当にグドン村だな……こりゃ」
 キオウはそうぼやきながら敵の位置を目視確認し、マサキに目配せする。放たれるエンブレムシャワー。けして熟練とは言えぬ彼女であったが、所詮グドンはグドン。光線をまともに受けたモノから倒れ、討ち漏らしをキオウが流水撃用いて薙ぎ払い、次々と追い立てて行く。
 家を囲むグドンを除け、扉を警戒しながら開くと中から待ち伏せていたグドン数匹が飛び出る。
 錆びた剣の攻撃に負った掠り傷もシュリがヒーリングウェーブを放ち、即回復させる。
「一匹だって逃がさないっ!」
 シュリが叫ぶ。キオウとマサキの連携で出てきたグドンを素早く殲滅させ、シュリが中を確認すると裏窓を破って逃れようとする雌グドン達の姿。ニードルスピアでそれらが外に脱出する前に次々と倒す。
「……この家の中はこれだけかな?」
「ピルグリムグドンは居ない様ですね。次の家を……この間に逃がしてはならない」
 家の中をチェックしたマサキに、キオウが頷いて次を促す。
 そこに。
 甲高い笛の音が聞こえた。
「ピルグドンに出くわしたか!」
 キオウが音を聞き叫ぶ。間もなく、二つ目の違う音色の笛。手助けを呼ぶ合図だ。
「キオウさん、マサキさん、急ごう!」
 シュリが叫ぶ。途中擦れ違い様にグドンを仕留めながら、音の聞こえた方に走る。
 何よりも、仲間の命が優先。そうシュリは思っていた。


 慎重にアレクの眠りの歌で中のグドンを眠らせてからその家屋に侵入した筈だった。
 だが、開けた扉の向こうでゆらりと立つ影が見えた。既に眠りの歌程度の術を受け付けぬ規格外は、突撃槍と化した腕を持ち上げるとそのまま入り口目掛けて突進してきたのだった!
「!!」
 咄嗟にシトラとキィルスが扉を閉めた。衝撃音が木戸に突き刺さり、二人の間に貫通した穂先が見えた。
 急いでアレクが笛で合図する。その間にも中の突撃槍は扉に猛攻を仕掛ける。破られるのも時間の問題。
 ダンッ! バキッ! メキャッ!
「押さえ……切れない!」
 扉越しの攻撃に耐えきれず、シトラとキィルスが扉から離れる。蝶番が弾け飛び、木戸が宙を舞った。同時に飛び出て来た突撃槍の腕を持つ雄!
「屋外に出てしまった、か……!」
 大振りの武器は広い場所こそ威力を発揮出来る。出来るなら外に出したくなかったが、とアレクは唇を噛みながら両手杖を構え、紋章の力を込める。二度目の笛は既に鳴らしてある。
「あ〜あ、扉壊しちゃいましたね……出来れば建物とか壊したくなかったんですけど」
 流石にそんな事言ってられないナァ。そうぼやきながらギバはスキュラフレイムをピルグリムグドンにぶつける! 爆発と共に仰け反り、生じた隙にアレクとキィルスが迫る!
「……滅せよ……!」
「……堕ちろ……!」
 エンブレムブロウとミラージュアタックの連撃!
 が、蹌踉めきながらも敵はそれを槍の右腕で受け止め、零距離吶喊! アレクとキィルスは巻き込まれる様に槍に穿たれる!
「いけない!」
 シトラがヒーリングをかける。光が二人の傷を癒す。そこに駆け抜ける影!
「やれるだけの事はやるさ! くらえ!!」
 救援に来たキオウのワイルドラッシュが炸裂! 更にそこにマサキのエンブレムシャワーが追い打ちをかける!
「1対7……余裕ですね!」
「アレクさん、キィルスさん、行けますか!」
 ギバが戦況の有利を確信し、シュリがディバインチャージをアレクにかける!
 神々しき形状に変えたアレクの『希望の標』が再び紋章を纏う! キィルスの牽制で生じた隙に、エンブレムブロウを力の限り叩き込む!
 砕け散る音! 飛び散る外骨格の欠片!
 突撃槍の右腕を砕き、杖はその軌道の先にあった頭をも砕いた。
「倒した、か……?」
 肩で息をしながらアレクが額を拭う。ギバが軽くつつくも、反応は無い。息絶えた様だ。
「怪我は?」
「シトラのお陰で何とか」
 心配そうにシュリが問い、キィルスは静かに笑って答え、アレクも同じく頷いた。
「この一匹は雄……雌のピルグルムグドンがもう一匹いる筈――」
 そうキオウが呟いた時。笛の音が一つ、二つと響いたのが聞こえた。
「シンキさん達の班ですね!」
「急ごう!」
 シュリが叫び、マサキが促す。
 今のピルグリムグドンと同等の強さを相手取るなら。少しでも人手があった方が良いだろうから。
 シュリ達3人でもう1班の手助けに向かい、残った4人はこの周囲のグドンの殲滅に力を注ぐ事とした。


「まあ……卵植えつけられるのも嫌だしな」
 アルに笛を吹いて貰い、シンキは破られた扉から距離を置いてそう呟いた。
 拳大の穴が幾つも穿たれた扉だった板が地面に転がっている。家の中を確認しようと扉に近づいた際、6本の触手がこの板越しに攻撃して来たのだった。
 現れた触手グドン。腰から6本の触手がウネウネと動いて攻撃の隙を伺っている。が、シンキが気にしている、本家ピルグリムの産卵管の如き器官は見当たらない。
「アル、テナー、俺の後ろに付いててね?」
 シュウがアルやテナーの盾となってピルグリムグドンの前に立ってくれる。
 ダッ! 6本の触手をバネの様に地面に付いて跳ぶ! 器用にシンキやアル達に伸ばされる触手はまるで針や刃の如く鋭く。
 シンキは地面に手を付いて咄嗟にかわし、アル達はシュウが剣で薙ぎ払う横から華麗なる衝撃や飛燕刃を飛ばす!
「負けない――!」
「拙者も無能のものではござらん」
 が、痛くも痒くも無い様な表情見せる触手グドン。むしろ、うざいとでも言いたげな顔。
「キシャアァァッ!!」
 アル達を狙い、触手を広げて再び跳ぶグドン。
 シュウが盾になってくれてるけど、やはり恐い。アルは手にした翡翠のペンダントを手に握る。守って、と願う様。
「――グギャアァッ!?」
 グドンの触手が彼等に到達する前に、光の筋が横から直撃した。マサキのエンブレムシャワーだ!
「シンキさん、援護します!」
 シュリがシンキの手にする魔道書にディバインチャージをかける!
 神々しき光放つ書を手に、シンキはデモニックフレイムを放つ!
「死んでも少し役に立って貰うとするよ……!」
 燃えさかる異形の炎に抱かれ、グドンは触手を必死に振り回しながらも炎に抵抗するも、やがてその身が焼かれ焦がれ、黒炭とクローンが同時にそこに出来上がる!
「……生ゴミ片付けるのに感想持ったりしないもので……遠慮なくいかせてもらうか」
 シンキは命ずる。触手持ったグドンのクローンに、雑魚グドン達を呼び集め殺せ、と。
 囮の如く残りのグドンの群に進んでいったクローンは実に都合が良かった。その鳴き声で強い味方が傍に来たと思わせて、6本の触手で一網打尽に出来たのだったから。


「向こうは?」
「大体片づきました」
 クローンが時間経過と共に消滅した後も、強敵を倒して雑魚のみになってからはラクだった。
 3方向から攻めたお陰で多くを取り逃がす事なくグドン達を仕留める事が出来たと言えよう。
「それでも、最後まで気を引き締めないとな……」
 キオウはそう呟きながら家の一軒一軒を覗きこみ、隠れている雌グドンなどがいないかを確認して回る。
 幸い、見目から妊娠していると解る様な雌は身重の言葉通り、動きがやや鈍く、急いで逃げる事も難しい状態であった。
「役目、果たせたね」
「また住民が住める様になれば良いね」
 戦いで壊れた建物を軽く修繕して一息ついた彼等。

 また、この村で。今度はグドンでは無く、人間が。
 幸せな家庭を築く事が出来る日を祈って。


マスター:天宮朱那 紹介ページ
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参加者:9人
作成日:2005/08/20
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