交易を妨害するアンデッド



<オープニング>


 ドリアッド領が同盟領に加わり、そろそろ交易なども開始されるようになった。
 だが、その交易ルートである道にアンデッドが出没して現在深刻な問題が発生している。
 本来は日の当たらない暗闇の中でないと行動が鈍るアンデッドたちであるが、ドリアッド領に存在する森の中には、日の光を遮り昼間でも夜のような暗さをもつ場所があるのだ。
 かつてのリザードマンの侵攻時に多くのドリアッドの人々が殺され、その放置された死体の一部がアンデッド化している。
 そのアンデッドたちが日の光から逃れるために、このような暗い場所に移動して徘徊しているのだ。
 この場所を迂回して他の村に移動することも可能だが、かなり遠回りする必要があり、土地勘のあるドリアッドでもないと迷いやすく、交易のために他の種族が用いるには使いにくい道である。
 そのため、このルートに住み着いているアンデッドを駆逐するよう交易商人から冒険者たちに依頼が出されるのだった。

「……暗闇が支配するとはいえ、まったく視界が利かない場所ではないようです……。……交易に用いられるくらいですからね、薄暗い程度です……」
 昼間なら照明が無くても問題なく移動できる場所なので、普通のアンデッドであれば駆逐するのは大変では無さそうに思われる。
 だが、ここにいるアンデッドたちの中には厄介な能力をもっているように感じられると霊査士のイスラフェルは付け加えるのだった。
「……アンデッドの数は数十体ほどなのですが、その中に物理的な攻撃に耐性をもっているような、言わば衝撃に強い肉体をもっているゾンビが数体いるようなのです……。……無理に肉弾戦を挑むだけではなく、その他の攻撃方法も想定しておくべきかもしれませんね……」

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参加者
朽葉の八咫狐・ルディ(a00300)
厄災の萌・カール(a00521)
後方姿艶・ラウラ(a01629)
草原に舞う梟・ウィニア(a02438)
炎刻烙印・ショウ(a02576)
ペンで戦う女流作家・アニタ(a02614)
大槌の紋章術士・メセル(a02777)
紅麗の烈拳姫・アナマリア(a03035)
想唄の日晴猫・ファミリア(a03208)
形無き幻想の剣・サリア(a03777)
安らぎを求めし森の守り人・リーゼ(a04066)
戦場を駆ける癒しの妖精・アンディ(a04272)
ランドアースの薔薇・アンジェラス(a04345)



<リプレイ>

●アンデッドの出現場所
 ドリアッド領の交易ルート付近に現れたアンデッドの話を聞いて、朱皓の烈拳姫・アナマリア(a03035)は眉を顰めた。
「アンデッドの亜種? また珍しいのが出たものねぇ。まあ、私は出来ることをやるだけだわ。これから冬に向かって大変な時なのに……、交易の為の道を阻害されてはたまらないものね」
「今回はまた、厄介なアンデッドが現れた物ですね……。物理攻撃が効きにくいというのは少々面倒かもしれません……」
 霊査士の情報によれば、その場所に現れるアンデッドは武器などによる物理攻撃に対して耐性をもっているのだという。
 数もそれなりに存在しているようであり、葱精霊の守護者・ショウ(a02576)としても容易にどうにかできる存在では無いことを感じていた。
 しかし、自分たち以外にそれを倒せる存在がいない以上、頑張るしかないとエルフの牙狩人・ラウラ(a01629)はアンデッドの開放につとめる。
「かつての友や恋人であれ、誰彼かまわず襲い掛かるのは彼らも望んでいないと思います。彼らをそんな呪われた生命から開放するためにも頑張らないといけませんね」
 また、彼らは先のリザードマン侵攻時に犠牲になった人々がアンデッド化したものでもあるのでそれに関わった自分たちも無関係ではないと薫風の穹・ファミリア(a03208)や青の剣士・サリア(a03777)も感じていた。
「戦争の関わった人として犠牲者をまた傷つけるのは心痛いし、傲慢かもしれないけど、せめて、安らかに眠らせたいね」
「戦争が生み出した死人、か……。これ以上被害を出す前に何とかしなくちゃね」
 特に問題の場所はドリアッド領内の森の中で、そのアンデッドの大半はドリアッドの村人であるということもあって、依頼に参加したドリアッドたちの思いはとりわけ強い。
「森にもそれなりの掟はあるものなのです。彼らを自然に帰す為にもアンデッドから解放して差し上げましょう」
 自然に発生するはずのないアンデッドという存在に成り果て、いまだに現世に縛られている同胞の事を思い、ランドアースの薔薇・アンジェラス(a04345)も何としてもその解放を望んでいる。
 そのためにも、アンデッドが発生している場所へと赴きそれらを全て破壊しなくてはならないため、一行は問題のドリアッド領内の森へと向かう事にした。
 その道中で、安らぎを求めし森の守り人・リーゼ(a04066)は霊査士などから仕入れた現地の情報を皆に伝える。
「……どうやら、そこの森は始終日が余り差し込まないほどこの葉で覆われた静かな森のようです。ただ、アンデッドが出現するようになってから、どこも安全で無くなったとか……」
 アンデッドは日中はその森の暗い中で、また夜になると行動範囲を広げて活動しているという。
 そして現場へと到着した冒険者たちは、アンデッドを待ち受けるために準備を整えておくことにした。
 ヒトの紋章術士・メセル(a02777)がロープを取り出し、辺りの木々にそれを巻きつけていく。
「さてと、ではアンデッドを逃がさないように準備を整えるわね。上手くアンデッドをおびき寄せて逃げられないにしないとね」
「それじゃあ、私はアンデッドを探してきますね」
 森の中でアンデッドがどこに存在するかまでは分からないために、仲間たちが待機している場所まで草原に舞う梟・ウィニア(a02438)はアンデッドをおびき寄せる役目を担っている。
 そして、冒険者がそれぞれの役目に基づいて行動を開始しようとした時、それは音も無く静かに近づいていた。
 薄暗い森の中に、不気味な人影が幾つも姿を現し冒険者の前に立ち塞がっていたのだ。

●闇よりいでしもの
 音も無くいつの間にか冒険者に近づいていた人影。
 鼻をつく腐臭と共に姿を現したそれに対し、ドリアッドの医術士・アンディ(a04272)は手にしたカンテラを掲げて姿を確認しようとした。
「……やっぱりアンデッドだったみたいだね。僕たちがここにいるのがどうして分かったのか分からないけど」
 灯りに照らし出されたのは、肉が腐りただれたゾンビや骨だけとなったスケルトンなどのアンデッドたち。
 窪んだ眼窩をこちらを向けるアンデッドたちに対して、冒険者たちは身構えた。
「アンデッドがどこに出現しやすいのかは聞いていましたけど、徘徊しているアンデッドにかぎつけられたのかもしれませんね」
 森の中の徘徊しているアンデッドたちは、基本的に生者を殺すためにのみ活動している。
 こちらに気がつかない間にそれらに見つかったのかもしれないと、リーゼは覚悟を決めて気高き銀狼を放つ。
 魔法の狼にくみしかれて一体のゾンビが地に倒され、それを皮切りにアンデッドたちは一斉に冒険者たちに向かってきた。
 後衛の術士を護るために、ライフアフェザーを用いて回避率を上げたサリアが前にでてアンデッドたちの注意を引付けることにした。
「まったく面倒連中ね……。私が囮になるから、その間に攻撃を集中させて頂戴!」
「俺も出るとしよう。このくらいの敵ならば問題なくさばけるはずだ」
 武具の魂によって武器を強化した厄災の萌・カール(a00521)も、アンデッドたちの足止めを行なうために前線に向かっていった。
 冒険者たちの姿を発見したのは、この森に存在するアンデッドの中でもごく少数のようで、それほどの数はいないようだ。
 これくらいの数であればどうにでも対処できるはずと、ウィニアも飛燕刃を飛ばして攻撃を仕掛けることにした。
「本当はこちらにひきつけたかったんですけどね。まぁ、こうなってしまった以上はさっさと倒した方が効率がいいでしょう」
「……やはり物理系の攻撃が効きにくい連中がまざっていますね。武器で切りつけたりしても、あまり打撃を受けてないようです」
 まるで本能的に生者に襲い掛かってくるアンデッドは、いきなり後衛の術士たちに攻撃することもあるので戦に舞う白い妖精・アニタ(a02614)はそれを引き離すために武器を振るっていたが、アンデッドの中に武器の攻撃が効きにくい敵が存在することに気付いた。
 武器で攻撃しても、腐った肉が弾力をもっていてその衝撃を吸収してしまうのだ。
 そういう手間取りそうな相手に対しては、ショウが影縫いの矢によって影に矢を撃ち込み、その動きを封じることにした。
「ひとまず倒しやすいアンデッドから始末することにしましょう。それまで面倒な連中の動きを封じておきます」
 ただでさえ、手足や頭が切り落とされても痛覚が存在しないためにまったく応えないアンデッドだというのに、物理攻撃まで効き難いとあっては面倒この上ない存在である。
 そんなものの相手は後でじっくりと行なった方が無難であるため、メセルも気高き銀狼を用いてその動きを拘束させた。
「これでしぶといアンデッドたちの動きは一応封じました。後は残りのアンデッドの相手だけです」
 まだ動き回って冒険者に襲い掛かってきているのは、大した能力も持ち合わしていないアンデッドたちだけだ。
 これらを先に一気に片付けてしまおうと、ファミリアは貫きの矢を撃ち込んで縦に並んだアンデッドの体を射抜いていく。
「一体ずつ相手をするなんて面倒だからね、まとめて攻撃しちゃったほうがいいでしょう。それにここ以外にもアンデッドはいるだろうし」
「早く倒さないと次がくるかもしれないね。こいつらを始末したらすぐに準備を整えないと……」
 ここはアンデッドたちが徘徊する危険な森なのである。
 すぐにでもそれを掃討し、アンデッドたちを片付けなければならないとアナマリアもホーミングアローを撃ち込んでアンデッドの始末を急ぐ事にした。
 そして、しぶといアンデッドだけが残ることとなったが、こちらに関しては今のところ呪縛の効果が続いているため、まだ動き出してはいない。
 その効果を更に持続させるためにアンジェラスは眠りの歌を用いてみたが、アンデッドたちに眠りの歌は効果を発揮しなかった。
「う〜ん、アンデッドはやっぱり眠らない存在なのですわね。まったく眠る気配すら見せませんわ」
 既に生態活動を終えたアンデッドにとって睡眠という行為はまったく必要なものではなく、眠りの歌を用いてもそれらを寝かせるほどの効果は得られないようだった。 
 やはりこれらのアンデッドは完全に破壊する道は無いと、ラウラは大声で自作の鎮魂歌を歌いながら弓を引いた。
「これで安らかに眠っていただけると良いのですが……。しかし、中々攻撃がききにくいですね」
 冒険者たちの攻撃が残ったアンデッドたちに集中するが、衝撃を吸収するアンデッドには物理攻撃が効きにくく中々止めをさすことができない。
 物理攻撃ではラチが空かないとみた久遠の黎明・ルディ(a00300)は、ここで思いがけない手段にでた。
「あなたたちは、何を伝えたくて彷徨ってるのですか? ごめんなさい、ボクにはその声を聞く事は出来ません。そして、あなたたちの仲間になる事も……。ボクに出来るのは、あなたたちの悪夢を終わらせる手伝いをする事。安らかに、さようなら」
 何と、アンデッドに対して火炎瓶を投げつけ炎上させようと試みたのだ。
 丁度、乾燥している時期でもあったために、炎はアンデッドの全身に燃え移った。
 しかし……。

●炎上する森
 アンデッドは体に火がついたからといって、すぐに活動をやめることはない。
 炎上したアンデッドはそのまま活動し、冒険者に攻撃をしかけてくる。
 当然、炎に包まれたアンデッドなどに近寄ればこちらも火傷してしまうため、とてもではないが接近戦を行なう事などできない。
 しかも炎上しているアンデッドの足元では、草などに火が燃え移って火事の様相すら示し始めている。
 アンディは火炎瓶を投げつけているルディを慌てて押し止めた。
「だめだよ! そんな乱暴なことをしたら森が焼けちゃうよ!!」
「それならブラックフレイムの攻撃に切り替えればいいですかね……」
 しかし、戦いの気配をかぎつけたのか森の奥からは更に多くのアンデッドたちが姿を現し、冒険者たちに迫っていた。
 先ほどを遥かに超える数を前にして、流石にラウラも鎮魂歌などを歌っている状況では無い事を自覚した。
「あらら、随分と多くの数のアンデッドが集まってきましたねぇ。これだけの数を相手にするとなると大変かも……」
 冒険者たちも自分たちと同じように死の国の住人とするために、アンデッドの群れは一斉に襲い掛かってきた。
 この大量の敵の出現によって、サリアは防戦一方に追い込まれ、攻撃をしている余裕すらなくなり敵の攻撃を回避することに専念する。
「まずいわ……。いきなり準備もなしにこれだけの敵に襲われたら、反撃のチャンスを得るのも難しい……」
「……おまけに攻撃してもほとんど応えない連中ですしね。動きを止めようとすれば多数を攻撃することができなくなりますし」
 自分につかみかかってくるアンデッドたちに対してニードルスピアによる針を飛ばすリーゼであったが、それで敵の足をとめることはできず距離をつめられている。
 しかも、先ほど炎上したアンデッドが動き回ったせいで周りの草木に火がついて煙が上がっていることにアンジェラスが気付いた。
「大変ですわ! このままだと森が火事になってしまいます!!」
 故郷の森が焼けてしまっては大変とドリアッドたちが慌てて消化活動にあたるが、そうなれば今度はアンデッドと戦う戦力が不足してくる。
 一人で数体のアンデッドを一手に引き受けて戦っていたカールも、もはや限界を感じて後退を始めた。
「ここまでだな……。もはや防ぎきれん」
「援護をしますから、後退してください。余力が残っている間に引き上げないと危険です!」
 後方から飛燕刃による気の刃を飛ばすウィニアの言うとおり、もはや冒険者たちはアンデッドに押され始めており、極めて危険な状態にあった。
 このままでは取り囲まれて退路を失う危険性もあったため、冒険者たちは急いで後退を始める。
 追いすがってくるアンデッドに気高き銀狼を食らわせながら、メセルは何とか明るい場所まで逃げるように仲間たちに声をかけた。
「アンデッドは日の光を嫌うはずだから、急いで日のあたるところに逃げて!」
 こうして冒険者たちは一目散に逃げ出し、何とか薄暗い森の外に抜け出すことに成功した。
 日の光を嫌ってそこから出てこないアンデッドを見て、ファミリアはやれやれと溜息をつく。
「何とかなったようね……。無事に切り抜けられて何よりだったけど……」
「とても今回はアンデッドを殲滅する余力は残ってないし、引き上げるしかなさそうね」
 アナマリアの言うとおり、冒険者たちはアンデッドとの戦いでかなり消耗しており、残念ながら今回は引き上げざるを得ないようだ。
 些か無念ではあったが、依頼を果たせずに町へと戻る冒険者たちの中で、ショウは今回のアンデッドたちの事を思い返して気付いたことがあった。
「今回のアンデッドは少々気になる存在でしたよね。どこから向かってきたのかを思いなおしてみたら、どうもあちらの方なんですよね」
 ショウが指し示したところ、そこはドラゴンズゲートである竜脈坑道がある方向である。
 そういえばと、アニタは依頼の前に霊査士が特殊なアンデッドが現れるようになった場所がドリアッド領と同盟領の一部地域に限られていると話していたことを思い出した。
「イスラフェルさんが言うには、この頃特殊なアンデッドが現れるようになったのは、ドリアッドの森とレグルスより西の地方だといっていましたね……。地図で表すとそこはどうやら竜脈坑道から一定距離にある場所がほとんどみたいですけど……」
 それが一体何を意味しているのか。
 その時の冒険者たちには窺い知ることのできない事であったが、その事がどこか心のうちに引っかかり釈然としない思いを残しながら、一行は町へと戻るのだった。


マスター:Chaos 紹介ページ
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作成日:2003/12/09
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戦場を駆ける癒しの妖精・アンディ(a04272)  2009年09月02日 00時  通報
 ドリアッドの先輩のリーゼさんにたくさんお世話になったシナリオです〜♪
 修練度やプレイングの書き方とか、とっても助かりました♪