夏の風物肝試し! 準備編 〜肝の小さな男達〜



<オープニング>


●立てこもる男達
 清涼な風の吹き抜ける竹林のちょうど真ん中。
 村人達が崇める祠の前で、羊皮紙を丸めた簡易拡声器を手にした村長が声を張り上げた。
「あーあー、聞こえとるかな? え〜、君達は包囲されている! 無駄な抵抗はやめて出てきたまえ!!」
 間髪いれずに祠の中から怒鳴り声が返ってきた。
「無駄じゃねぇよ! 現に俺達がここに籠もってる限りあんたらの好きなようにはできないんだからな!!」
 確かにそうだ。
 村長はむぅと唸りつつあごひげを捻り、作戦を変更した。
「あー、君達の言うとおりだ! 君達がそこにいる限り毎年恒例の肝試しの準備ができない! しかし肝試しは由緒正しい大事な祭りだ! 君達のお母さんも泣いているぞ!!」
 ふくよかな中年女性が村長の簡易拡声器をひったくった。
「このバカ息子! どんだけ母ちゃんを泣かせたら気が済むんだい!」
「何だよ母ちゃんなんて、去年の肝試しで俺が彼女に振られた時はもっと激しく泣いてたじゃないか! 俺は、俺達は肝試しを憎む! 絶対に肝試しの準備なんかさせないからな!!」
 うおおおおっ! と祠の男達が一斉に野太い声を上げる。
 いずれも去年の肝試しの際に恋人の前で醜態を晒し、それが原因で振られてしまった者ばかり。
 元々は単に暗い竹林の中を祠まで歩いて帰って来るだけだった村の肝試しが、去年からびっくりトラップだのグドンやアンデッドに扮した脅かし役満載の肝試しに変更されたのがマズかった。
 肝試しで彼らはみっともない悲鳴をあげて泣き喚き、恋人を置き去りにして逃げてしまったのだ。

 まぁ自分達が情けないのがいけないのだが、彼らは全て肝試しが悪いと信じ、憎悪の炎をたぎらせている。何もかも肝試しが悪いのだ、と断固として肝試しの準備を妨害する構えであった。
 肝試しのスタイルが変わったとは言え、竹林を通って祠に行き、祠に行った証拠の品を持って帰ってくるというコースは変わらない。このまま祠を占拠されていては肝試しを開催することができないのは確実だ。

 男達は「祠に近づくヤツはナタでぶった切る」だの「どうしても肝試しをするってんなら祠に火をつけて死んでやる!」などと物騒なことをわめき始め、とうとう村長は自分達で対処することを諦めた。

●依頼
 藍深き霊査士・テフィンはこめかみを押さえつつ、冷たい果汁を満たした杯を口に運ぶ。
「……と言う訳で皆様には、この情けな……こほん、可哀想な5人の殿方達を何とかして頂きたいんですの。説得するもよし、腕ずくで引きずり出すもよし。ただ……ヤケになると祠を傷つけたり火を放ったりしますから、それだけはご注意くださいまし」
 話を聞いていた冒険者達はしんと静まり返った。
 彼らの瞳に浮かぶのは男達への憐憫か、それとも共感か。
 水を打ったような静けさを意に介することなく、テフィンは言葉を続ける。
「それから……準備が遅れてますので、肝試しの仕掛けの設置を手伝って欲しいとのことですの。また、何かアイデアがあれば是非聞かせて欲しいとか……」
 要するに、竹林の祠に籠もる男達を引きずり出して、肝試しの準備も手伝って欲しい、ということだ。
「では……皆様の手腕と、アイデアに期待してますの」
 テフィンが笑うと、杯の中の氷がカラリと鳴った。

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参加者
明告の風・ヒース(a00692)
ニュー・ダグラス(a02103)
夜駆刀・シュバルツ(a05107)
元気でのんきな三毛狐・ミリュエール(a11212)
天下無敵の爆裂拳士・パティ(a20549)
混沌の哀天使・セーラ(a20667)
医術士・サハラ(a22503)
陰者・ジン(a25715)
幻の桃色ガイア・エンフェア(a26732)
森の祝福を受けし輝ける星・リダムエイル(a31297)


<リプレイ>

●竹林
 天へ向かってすらりと伸びた竹には、どことなく凛とした風情がある。
 ほっそりとした葉は遥か頭上高く緑の天蓋を織り成して、きりりとした佇まいの竹が幾つも幾つも奥へと連なっていく。動物の気配は殆どなく、ただ竹の清しい凛々しさのみが辺りを支配していた。
 だからだろうか。
 竹林へ足を踏み入れた瞬間から、何かこう……厳粛な気持ちになるのは。
 天を覆う葉の隙間から柔らかな光が射し込む昼間ですら、竹林はこれほどまでに粛然としている。夜の帳が辺りを支配し真の闇と静寂が辺りを包んだ時には、この竹林はどれほど森厳となることだろう。
 明告の風・ヒース(a00692)が瞳に微かな畏れを滲ませ、竹林の奥を見遣る。
「人間は……いつになっても自然を畏怖せずにはいられないのですね」
 身の引き締まる思いでヒースが吐息をもらした瞬間、死角から巨大な猫が飛びかかってきた。
「ウニャアアアアッ!」
「わああああああっ!!」
 周囲が魂消るような悲鳴をあげ、飛び上がって逃げ出そうとするヒース。そのヒースをニュー・ダグラス(a02103)が苦笑しながら捕まえた。
「畏怖だの何だのって単にビビってただけか。ヒースも大概肝が小せぇなぁ。ほら、よく見てみろ?」
 ヒースが恐る恐る振り返ると……猫着ぐるみの中から元気でのんきな三毛狐・ミリュエール(a11212)が顔を出してコロコロと笑った。
「なかなか怖がりさんどすなぁ」
 そんなやりとりをしている内に、件の祠が見えてきた。
「何が何でも肝試し開催を阻止するぞ!」
「うおおおおっ! 皆肝試しが悪いんだあっ!!」
 ぴんと張りつめたような静けさに包まれる竹林に熱い雄叫びが響き渡る。
 思わず額に手をやり盛大に溜息をつく夜駆刀・シュバルツ(a05107)。
「全く……不器用な者達だな」
「なんか……その……イっちゃてますね」
 高邁なる小豆色タコ・エンフェア(a26732)が、おずおずとしつつも言いにくいことをズバリと言ってのける。
 そう、彼らはきっと不器用なだけ。怖がりで不器用なあまりちょっぴり頭のネジが飛んでしまっただけなのだ。けれど、このまま放置しておくわけにはいかない。
「ともあれ、肝試しを開催できるようにするのが俺達の仕事だからな」
 やれやれと肩をすくめるシュバルツに、エンフェアが神妙な顔つきで頷いた。
「ひ、人の楽しみを邪魔するなんていけませんよね。……ところで肝試しって何ですか?」
「…………え?」
 二人の間に、奇妙な沈黙が訪れた。

●肝の小さな男達
「あのぉ〜、すみませんが話を聞いてくださぁ〜い」
 祠へ近づいて遠慮がちに声をかけたエンフェアに対し、男達は威嚇するようにナタを振り上げた。
「ち、近づくなぁっ! 肝試しの準備は絶対にさせないぞ!」
「お前は村長が雇った助っ人だな!? それ以上近づくとこのナタで背中の羽をぶった切ってやる! ……って、あれ? お前何だよその羽は」
 エンフェアは言われて初めて気づいたとでも言うように、首をひねって背中を見遣る。無論そこにあるのはエンジェル特有の純白の翼。普通に村で暮らしている身であれば当然だが、どうやら男達はこれまでエンジェルを見たことがなかったらしい。
「あ、これですか?」
 何気にふわりと翼を動かすと、男達がどよめいた。
「う、ううう動いたっ!」
「く……さては肝試しの脅かし役かっ!?」
「うおぉビビったぜ。村長め、考えたな!!」
 何やら勝手に盛り上がってしまう男達。
 話がおかしな方向に流れそうになっているのを察知した天下無敵の爆裂拳士・パティ(a20549)が慌てて割ってはいる。確かに男達を怖がらせて祠から追い出す作戦ではあるが、エンフェアを怖がって欲しいわけではない。
「いや羽はどーでもいいのよっ! それよりあんたらこんなトコで何やってんの! 早く出て行かないと殺されちゃうわよ!!」
 一瞬、竹林が水を打ったように静まり返った。
「……こ、殺され?」
 茫然と呟く男達に、ひょこりと顔を出した灰色医術士・サハラ(a22503)が言い添える。
「あぶないよー、『虚ろなるモノ』がここに近づいてるみたいだからねー」
 サハラが告げたその怪しげな名は、得体の知れない薄気味悪さを帯びて男達の耳に響く。
「『虚ろなるモノ』は熟練の冒険者でも手こずるほどの相手ですの。とても危険ですから村へ避難することをお勧めしますわ」
 ドリアッドの紋章術士・リダムエイル(a31297)も緊張した面持ちで『虚ろなるモノ』の恐ろしさを訴える。その真摯な表情に男達も顔をこわばらせた。祠を空けてくれれば自分達がなんとかすると呼びかけるヒースにも身を固くするばかり。
「お、俺達をビビらせようとしたって、ム、ムダだぞ! ななななな何だよその『虚ろなるモノ』って」
 早くも声が震え始めた。
 この時何者かが影にまぎれて祠の中へ滑り込んだが、震えが腰にまで来始めた男達にはそれに気づく余裕などあるはずもない。
「『虚ろなるモノ』は『虚ろなるモノ』ですヨ……」
 余韻を持たせ、意味ありげに言葉を切る宵闇隠者・ジン(a25715)。
「『虚ろなるモノ』はこういった祠を好み、火を見たり血の匂いを嗅いだりすると凶暴化する、とか……早めにここから出た方がいいと思いますヨ……?」
 ジンの言葉に男達はごくりと唾を飲み込んだ。
「凶暴……?」
「ま、まさか!」
「モモ、モンスター!!??」
 またもや勝手に盛り上がる男達の背後から、仄暗い闇が静かに忍び寄ってきた。地面を覆うぼんやりとした不可思議な闇がとろりと流れ、瞬く間に彼らの足元をからめ取る。
「お、おい……何だよこれ」
 ようやく怪しげな闇に気づいた男達は、冷たい手で背筋を撫でられたようにぞくりと身を震わせた。逃げだしたいのに足がすくんで動かない。形を持たないはずの闇が冷たい足枷に感じられた、その時。
 彼らの背後――祠の中から怪しげな声が響いてきた。
「フフフ……ウフフフフ……」
「ひっ!!」
 男達の鼓動が跳ね上がった。押し殺したような控えめな声だが、それが却って彼らの不安をあおる。しかし怖いもの見たさなのか、彼らはゆっくりと背後を振り返ってしまった。
 彼らが見たものは、炎に照らされ闇の中に浮かび上がる少女の――顔。
 少女は銀の髪を揺らし、赤い瞳を煌かせて口を開いた。

「……死・ん・で……」

「ひいいいいいいいっ!!!」
 実は首少女は単に顎の下からランタンで顔を照らした混沌の哀天使・セーラ(a20667)だったのだが、冒険者達にさんざん脅かされた男達にとってセーラは『凶暴なモンスター・虚ろなるモノ』以外の何者にも思えなかった。
「うわあああんっ! 来るな、来ないで、お願い来ないでください〜!!」
 涙と鼻水を派手に撒き散らしながらナタを振り回す男達。
 そこに影に潜んでいた巨大猫が襲いかかった。
「フーーーーーーッッッ!!」
「ぎゃああああああっ!!!」
 鎧進化で恐ろしい形相へと変化を遂げたミリュエールの着ぐるみが男達を更なる恐怖の渦へと叩き込む。
「今だ!」
「怖い事も辛い事も踊って忘れるのです〜!」
 シュバルツが機を逃さず蜘蛛糸を放ち、ヒースが誰もがつられずにはいられないダンスを披露する。ダグラスの紋章からは数多の木の葉が溢れ出し、とどめとばかりにエンフェアが咆哮を轟かせた。
 瞬く間に拘束されてしまう男達と……リダムエイル。
「あれー? なんでリダムエイルさんが捕まってるのー?」 
 リダムエイルを拘束する木の葉を興味深げにつつくサハラ。木の葉の主たるダグラスが頬を掻きつつ申し訳なさそうに口を開いた。
「いや、銀狼を撃とうとしてたんで咄嗟にな。こいつらに銀狼なんざヘタすりゃ死んじまうぜ」
 気高き銀狼は、対象に銀狼が『噛み付いた』後に組み伏せるアビリティ。ダグラスの機転がなければ惨事になるところであった。

 こうして冒険者達は、男達を無事『保護』することができたのである。

●肝試し準備
「全く……冷静になれば、意趣返しの方法は他にもあっただろうに」
 大きな人形に包帯をグルグル巻きつけながら、シュバルツは本日何度目かの溜息をついた。
「すっ、すんません!」
 シュバルツの傍らでは男達がおっかなびっくり人形に巻く包帯を手繰っている。肝試しの準備に加われば怖さも和らぎます、とヒースが言い出し、いつのまにやら男達も仕掛けの準備を手伝うことになったのである。
「どうー? ちゃんと手伝ってるー?」
 立ち並ぶ竹の合間を縫ってサハラを乗せたフワリンがふわふわと飛んでくる。まぁ真面目にやってるなと笑い、シュバルツは何やら赤いものが入った桶を受け取った。そして包帯を巻いた人形に赤いものを塗りたくっていく。
「ち、血ですかっ!?」
「いや、ただの塗料。今見ても何てことないだろうが、暗いところで見れば結構怖いからな」
 血まみれの包帯人形。
 暗い闇の中、ランタンで照らした先にこんなものがあれば……確かにかなり怖い。
「こういうのはねー、仕掛けがわかってたら、どーってことないんだよー。カッコいいとこ見せたら、女の子もイチコロー」
「なるほど!」
 サハラが楽しそうな声に男達が頷いた時、偶々通りかかったパティが軽くチョップを喰らわせた。
「あんたら甘えてんじゃないわよっ! それじゃあんたら結局何も変われないっつーの! もっとしっかりしなさいよね!!」
 パティの言う事ももっともだった。仕掛けのタネを事前に明かし怖さを克服しても、結局それはやらせでしかない。
 憤然とするパティをセーラが宥める。
「……これくらいはいいと思いますわ」
「でもセーラぁ」
「これとは別に、わたくし達がもっと怖い仕掛けをこっそり作ればいいだけのこと……ウフフフフ……」
 人形のようなセーラの笑顔に男達が硬直する。
 パティもにんまりと笑って男達にこう命じた。
「よし。あんたら今年もう一度恋人誘って肝試し出なさい! これはパティさん命令よっ!!」
 これで逃げずに……いやらせめて今度は恋人の手を握って逃げるくらいできれば、満点だ。
 パティはそう思った。

「あの、アンデッドの扮装はやめた方がよいのでは……?」
 ミュントス略奪部隊襲撃の際にアンデッドに襲われた事が記憶に新しい人も多いだろうから、とエンフェアは村長に進言した。しかし村長は今ひとつピンとこないようである。
「はぁ……そう言えばどこぞで妙な種族の襲撃があったとか聞いたような気もしますなぁ。なるほど、冒険者さんの貴重なご意見として伺っておきますね」
 村を遠く離れることが殆どない村人達にとって、旧モンスター地域の情勢は違う世界の話も同然のようだった。この地域一帯にはノスフェラトゥに関する噂はあまり伝わってきていないらしい。
「ところで村長サン、こういう扮装はどうですかネ?」
「ほほう、どんなのですか?」
 ジンの声に振り返った村長が見たものは、シーツのおばけだった。
「良かったらさしあげますヨ?」
 シーツおばけが友好的に揉み手をする。
 どうやら、穴を開けたシーツを被っておばけっぽく見せるものらしい。日中見るとちょっぴり間抜けだが、夜の竹林で出会うのは結構怖い感じかもしれなかった。
「ははぁこれはいいですねぇ。でも頂くのは気が引けますよ。ちょっと見せて頂ければ村の者達で同じ物を作ります」
「まぁ、可愛いおばけですの。わたくしも手伝いますわ」
 ハサミを手にしたリダムエイルがにこりと笑った。

「……この樽、なんどすの?」
 びっくりトラップを仕掛ける場所を探していたミリュエールは、道の端に妙な樽が置かれているのを見つけた。妙と言っても特に見た目がおかしいわけではない。何かこう……ヘンなオーラを放っているというか、ただの樽にしてはやたらに存在感があるのだ。
 ミリュエールが首を傾げていると、いきなり樽からにょきっと手足が生えた。
「樽おばけ……?」
 その樽おばけがミリュエールの手を取り囁きかける。
「イワシ、好き?」
 返事も待たずにピチピチした生イワシを押しつける樽おばけ。
「ノソぬいぐるみやワカメもあるよ?」
 ぬいくるみはともかく、イワシやワカメは迷惑極まりない。
 だがミリュエールは眉ひとつ動かさず、イワシを懐にしまいこんだ。
「実はうちも面白いもんを持ってるんどす。こんなのどうどすか?」
「ん〜?」
 ミリュエールが差し出した可愛らしい犬の人形を樽おばけが覗き込む。その刹那、突然犬の顔がガバァと裂けて飛んできた。
「わああああああっ!!」
 仰天した樽おばけは飛び上がって逃げ出した。
「ぬいぐるみをもらってからにすれば良かったどすなぁ……」
 ミリュエールはぽつりと呟き、樽おばけを見送った。

 竹林を疾走するうちに、樽おばけは次なる標的を発見した。道の真ん中で一心不乱に穴を掘っているダグラスだ。
(「穴の大きさはこんなもんか……? で、穴に転がって上に板をしいて……誰かが上を通ったら手を出してそいつの足をコンニャクでそっと撫でる……と」)
 結構えげつないことを考えている。
 樽おばけは、思索にふけるダグラスの背中をつついてみた。
(「コンニャクの仕掛けは村人に任せても大丈夫だな。いっそ……」)
「イワシ、好き?」
(「いっそ本番で俺が茂みに潜んで、通りかかる人を布を被せた土塊の下僕に追い抜かせるってのはどうだ……?」)
「ねぇ。イワシ、好き?」
「うるせぇ黙ってろ!!」
 ダグラスが軽く手を振ると、ごいんという手応えが。
「あああああ〜〜」
 振り返ったダグラスが見た物は、間の抜けた声と共に転がっていく樽だった。
「……何だったんだ、ありゃ?」

 冒険者達は様々な仕掛けを提案し作り上げ、肝試しの準備に大いに貢献した。
 サハラが道にバラまいた腐りかけの果物は踏んだ者をずるっと滑らせて一瞬ヒヤリとさせるだろうし、冷たい水草が足首に巻きつく仕掛けはとてもイヤだろう。セーラが提案した「闇の中からどこからともなく聞こえてくる歌声」も不安を掻きたてられてかなり怖そうだ。そこでパティが言うように穴からアンデッドに扮した脅かし役が這い出てくれば怖さ倍増かもしれない。
 恐怖に耐えて進み続けやっと出口が見えてくる頃、シュバルツ考案の「酒と黒蜜に漬した果物」を仕込んだ包帯人形が何体も吊るされた地点にさしかかる。包帯人形からは奇妙な臭いのする黒っぽい汁が滴り、相当気持ち悪い情景を作り出すはず。その汁に虫がたかっていたりすればイヤなことこの上ない。
 後で村人達が仕掛けを増やすというから、本番では更に多くの仕掛けが人々を楽しませることだろう。
 冒険者達は、本番の肝試しが成功することを祈りつつ村を後にした――が。

「……何か足りない気がしまセンカ?」
 首を傾げるジンを見て、ダグラスがぽんと手を打った。
「そうだ、何か忘れてると思ったらヒースがいねぇ!」


 樽に入ったまま目を回しているヒースが発見されたのは、しばらく経ってからのことだった。


マスター:藍鳶カナン 紹介ページ
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作成日:2005/08/21
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