<リプレイ>
●試練とスタンプカード 「スタンプカードをいっぱいにするともらえる、伝説のナース服……。いったい、どんな伝説なんでしょう。とても楽しみですわ♪」 笑みを浮かべて、時にウラの顔を覗かせる歌姫・アリシア(a10270)は呟いた。彼女は試練を受ける冒険者たちのサポートに徹する予定らしい。 「これがスタンプカード……? ふむ? 普通のカードみたいですね」 武道家・シェード(a10012)は試練を受けると表明した面々が受け取ったスタンプカードに目をやった。ただ、各スタンプ部分にはそれぞれ記号が書いてあり、どうやらその記号が司る部分の村人評価をスタンプで表すようだ。スタンプを押せる部分は全部で6箇所。1つは総合評価らしい。確かになんの変哲もないスタンプカードである。だが、このカードにスタンプをもらえねば、伝説のナース服を受け取る事が出来ないのだ。 「ウールナちゃんと一緒に、ナースのお仕事の勉強ですなぁん♪」 にこにこと笑顔で、向日葵の少女・メルフィ(a13979)が言う。メルフィはこれまでに学んだ事を実践する為に、がんばろうと考えているようだ。だが、ウールナは相変わらず今1つ診療所やナースの仕事を理解していないようで、気合を入れている面々の様子に軽く首を傾げている。やはり、診療所の仕事には、基本的に食べ物が絡んでいないせいかもしれない。 「ボクも1人前のナースの仲間入りを出来るようにがんばります!」 握り拳を作り、鋼鉄の乙女・ジル(a09337)は言い切った。 「診療所の名をかけて、試練を乗り越えて伝説のナース服を絶対手に入れるですー!!」 瞳に炎を浮かべながら、紅茶王子の花嫁・アヤ(a10024)が気合いを入れて言う。どうやらやる気満々らしい。 「そんじゃ、伝説目指していっちょがんばりますかぁ!」 天下無敵の爆裂拳士・パティ(a20549)も、アヤの気合いへあわせるようにしてふふんと笑う。 「うっし、ついてきなさいアヤっ!」 その後で胸を張り、アヤに向かってそう声をかける。すっかり伝説のナース服を手に入れた気分で、パティは試練目指して気分よく歩いて行く。いきなり出発をすると思っていなかったらしいアヤは、慌ててパティを追い始めた。 「待ってくださいーパティさまー!!」 あわわと慌てふためくアヤ。慌て過ぎて、危うく転びそうになったのは言うまでもない。
「薬草を見分ける目は必要でしょうから」 緋色の女郎蜘蛛・ユーロ(a22022)はそう言いながら、それほど高くはない崖の上で、はえている草の分布を確認していた。薬草に香草、効能を持たない草。それぞれを見分ける事も、それなりの試練として受け入れてもらえるかを村人へは確認済みだ。程よく色々はえている事を確認し、ユーロは試練の場所を村人へ推薦する。村人がその場を確認し、その崖は今回の試練の場所として受け入れられたようだ。 シェードはその間、村の人々の間を歩き、不調を訴える村人を確認していた様子。その他にも、スタンプカードへのスタンプ押印条件らしき物を聞き出せないかと、色々話しを聞き回る。その上で、軽く診察を行ない、薬草を集めて診療の準備をしていた様子。準備をしっかりすませると、彼はこれまで村人から聞いた話しや村人の健康状態などと共に、薬草は準備してあるので薬の調合はお願いしますとアヤへ声をかけた。
●崖の上には薬草が 「ふむ、崖のぼりねぇ……」 目を細めながら、パティは呟く。ちなみに彼女の後ろにいる、アヤはと言えば、すでに腰が引けている様子。 「ま、ちょー天才のあたしにゃ楽勝ね♪」 ふふんと鼻高々にパティは言う。 「さすがですパティさまー!」 アヤはパティに向かってぱちぱちと拍手をしながら、笑顔を見せた。ちなみにパティ、拍手に対して胸を張り、当然と言わんばかりの態度である。この態度が嫌味とならないのは恐らく、パティの開けっ広げな性格のおかげと言えるだろう。 体力に自信のあるジルはその間に、素早く崖の上へと登り切る。登るのが苦手な面々の為に、ロープをたらそうと準備をしているようだ。 粘り蜘蛛糸を出したパティは両手に粘り蜘蛛糸をつける。糸の粘着を利用し、崖をすいすいと登って行くパティ。 「おおっ! ちょー登り易いかも?」 感心したように呟きながら、パティはしっかり崖の上へ到着した。 「山登りは結構得意ですなぁんよ〜」 そう言いながら、メルフィもやはり崖を登る。山登りとはちょっと勝手が違いはするが、登れずに困ると言う事もないようだ。 「高い所は苦手ですー」 額に汗を浮かべつつも、崖登りにチャレンジをするアヤ。ジルの手助けもあり、一応は崖の上へとあがる。 「ふぇぇん、た、高いですー! 怖いですー!!」 思わず下を見てしまったらしいアヤ。目に涙を浮かべて、泣き声をあげていた。 「そこから右手に見えてるのが、薬草ですよ〜」 崖の上で、補佐を担当しているアリシアがパティに向かって声をかける。だがパティは薬草かの判別はつけず、はえている草を全てぷちぷちと抜き取り、まとめている様子。 「あ、これと、これは薬草ですね」 そう言いながら、アヤはパティの集めた草の中から、薬効のある物を抜き出し、わかりやすいようにまとめて行く。どうやら高い所にいる事実は、とりあえず頭の中から放り出す事にしたようだ。崖から下を見なければ、とりあえず地面もあるし、空も見えるわけで。なんとか、自らをごまかす事に成功したアヤであった。 「うむ、アヤよ。ごくろーであった♪」 パティの集めた草をより分け終えたアヤの頭を、パティは笑顔でなでる。なでられたアヤもやはり、嬉しそうな笑顔になった様子。 ジルやメルフィは事前に聞いた事を参考に、薬草を集め、間違っていないかの確認をアヤやアリシアにしている。採り過ぎてしまわないようにように、メルフィが1箇所で集めるのはよしましょうなぁんと他の面々に声をかけた。翌年、薬草がなくなっては確かに困る。そういった配慮もどうやらスタンプカードのスタンプに関係してきそうだ。
さて。試練を受ける面々が、崖にて薬草を集めているわけだが。サポートを引き受けた冒険者の内、数名の姿が見えない。具体的に姿が見えない冒険者の名前を言えば、シェードとユーロの2人だ。その2人、一体どこでなにをしているのか。 「はいはい、すいませんねー。ちょっと皆さん出かけておりまして」 困ったような笑顔を見せて、診療所へ顔を出した人々へ挨拶をするシェード。ユーロも受け付けで症状などを尋ねたりと、留守の間もきちんと対応すべく活動しているようである。診療所へ話を聞いて欲しくてやって来る人々にも、笑顔で対応する2人であった。 もちろん、話を聞くだけでも充分であると判断出来る人々については、お茶を出し、ゆっくりと話を聞いたりもしていた様子。 彼らが診療所で活動している様子を、伝説のナース服に関わる村の村人が数人、隠れてこっそりと普段の対応はどんな状態なのかをしっかり見ていた。
●出張診療所!? 「健康には、気を使ってますか?」 伝説のナース服を作るほど技術が卓越しているならば、それ相応の鍛錬が必要だったはずと考えたジルは、村人たちに普段気をつけている事などを尋ねて回る。医療の面では他にずっと優れた者がいるが、体を動かす事とあわせた健康面なら、的外れな事もせずに説明が出来ると言う事らしい。 メルフィはにこにこと笑顔で挨拶をし、目の前に座った患者である村人へ、名前を尋ねる。パティは簡易診療所状態のこの場所に、次々集まってくる村人を見て、視線を泳がせた。 「えっと、ケガはほっときゃ治るわよ……うん。病気は……えっと、気合いでなんとか」 なんと言うか、看護や看病は専門外と言う事らしい。笑ってごまかそうとするパティへ、一部の村人がジーっと視線を送った後で、こそこそとなにやら相談をしている様子。 「パティさま、それはさすがに無理ですー」 困ったような顔でアヤが言うと、しばらく考えた後でパティは他の面々がするのを見ながら、見よう見真似で対応を始めた。 「ぁ、そこの包帯の巻き方……。そのままですと、すぐに緩んでしまいますよ?」 心配そうに様子を見ていたアリシアが、パティへそっと声をかける。パティはこっそり礼を言った後で、すぐさま包帯を巻き直し始めたが、今度は少々きつく巻いてしまった様子。布の包帯を巻くのは、意外に難しい事のようだ。 具合の悪い村人から、名前を聞き出したメルフィは、続けて痛みがあったり調子が悪い場所はどこかと尋ねかけた。効能別に煎じた薬草や丸薬を取り出し、症状に一番あっていると思われる物を用意する。苦味などはどうにもならないとは言え、少しでも苦さを感じないようにと、小さな子へ薬を出す際には蜂蜜を使うなど、色々と気遣っていた様子。診察を終えた後、用意して来たお菓子を少しだけ子供たちに分け与えたりもしていたらしい。痛みを我慢したり、苦いのを我慢したご褒美と言う事のようだ。珍しく我慢はしていたようだが、ウールナが物欲しそうに見ていたのは言うまでもない。 「コレは飲むと毒だけど傷口に塗るといいんですよねー」 にこにこと笑顔で傷口を消毒し、適切な処置をするアヤ。こちらはさすがに手馴れた物で、すぐに治療がすむ。そんな様子をメルフィとウールナは観察していた模様。メルフィは治療についてのメモも取っていた。 こうして、一通り村人の診察を終えた冒険者たちの前に、数人の村人が歩み出る。用意されたスタンプカードへのスタンプを押印してくれるようだ。 「治療の評価は上の中かね」 「薬草採取は採取時の評価は中の中だろう」 「薬草選別は上の上だね」 「協力は上の中か上の上か……悩むねぇ……」 そんな風に相談をして、スタンプを押す村人たち。最終的に、全てのスタンプが無事に押印された。ちなみに、評価が下の判定になるとスタンプの押印がないらしい。 「やりましたですよ! スタンプ全部埋まったですよ〜♪ これで、伝説のナース服ゲットですぅ!」 嬉しそうに、アリシアが言う。村人たちは、冒険者たちの望むデザインとサイズを確認すると、さっそく作成準備に取りかかった模様。 「私のではなくても……よろしいでしょうか?」 そう言いながら、シェードは恋人の為のナース服を村人へ頼んだ。その後で、ウールナへもせっかくだからナース服を作ってもらっては? と勧めた模様。 「これがあたしの物になる『伝説のナース服』ねー」 すっかり上機嫌でパティはウフフ♪ と笑っていたりする。 「ナース服も欲しいですけれど、やっぱり患者さんの命が1番大事です」 そう言って、診療所でしっかりと診察を終らせたユーロは、のんびりとした笑顔を見せた。もちろん彼女の分のナース服も、ちゃんと用意されたのは言うまでもない。 「そもそも伝説って、なんだったのだろう……?」 そう言えばと、全て終った後でジルは首を傾げる。 「お前さんたちもいずれは伝説になるだろう」 村人の一人がそう言って笑う。技術や能力を確認し、それなりの能力がある者へしか渡らないこの村のナース服と白衣。知る人ぞ知ると言ったところであろうが、それでも手に入れる者が限定されている為に、そう言った名前がついたのだそうだ。 こうして、ナース服を手に入れた天使の診療所の冒険者たちは、再びいつも通りの診療所業務に戻るのだった。

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参加者:7人
作成日:2005/08/23
得票数:ほのぼの12
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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