≪冥暗天騎士団≫レイクdeバカンス



<オープニング>


 最果て山脈近くに位置する、ロスロリエン村。辺境守護騎士団を自認する『冥暗天騎士団』の本部にて、今日は団長、闇夜の鴉・タカテル(a03876)が、一風変わった提案を述べていた。

「湖?」
「グドン退治?」
「で、バカンス?」
 上から順に、特攻野朗・フジキ(a07843)、光祈麗嬢・ミューズ(a29133)、 雲穿銀華・チハヤ(a19827)の発言である。
 タカテルは一つ頷くと説明を続けた。
「はい。実はロスロリエン村近くに、別荘地を管理する小さな村があるんですが、そこの村長さんから相談を受けているのです」
 小さな湖の畔に位置するその村は、湖での漁と、別荘地の管理で成り立っているのだそうだが、何でもそこに十匹ばかりの猿グドンが住み着いてしまったらしい。
「困っている人々を助けるのは、我々『冥暗天騎士団』の本懐です。断る理由はありません」
 依頼料代わりに、村が保有する大きなログハウスを、二、三日自由に使っていいという。
「ほう、いいんじゃないか」
 団長の言葉にフジキは納得したように首を縦に振った。
「勿論、私も賛成ですわ」
「ええ、OKよ」
 ミューズと、チハヤも同意を示す。
 元々、辺境守護の為『黒の日輪と獅子』の紋章に集った者達だ。否があるはずはない。とはいえ、所詮はグドンの十匹程度。今回のメインが、後のバカンスであることも間違いない。
 タカテルは楽しそうに、笑う。
「まあ、手早くグドンを退治して、夏のバカンスを満喫しましょう!」

マスター:赤津詩乃 紹介ページ
 マスターの赤津です。この度は、初の旅団シナリオとなります。精一杯頑張らせていただきます。
 
 本文中にもかいたとおり、内容は猿グドン退治と湖側の別荘地でのバカンスです。
 猿グドンは問題ないでしょう。特別なことは何もありません。村人達のためにも退治してやって下さい。
 
 湖では、釣り、水泳、水浴びなどが。湖岸ではバーベキューや、昼寝など楽しみは盛りだくさんです。
 本文中にも書いた通り、湖の水温はかなり低いので、飲み物を樽や瓶ごと付けておけば、夜には丁度いい感じになっていることでしょう。
 勿論、食事は村の人たちが用意してくれますが、せっかくですから昼間に釣った釣った魚や、散策で集めた山菜などを自分で料理するのも面白いかもしれません。

 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしています。

参加者
闇夜の鴉・タカテル(a03876)
漆黒の彼岸花・トモコ(a04311)
白翼・アルヴァ(a05665)
漆黒の凶剣・レギオン(a05859)
特攻野朗・フジキ(a07843)
彷徨猟兵・ザルフィン(a12274)
雲穿銀華・チハヤ(a19827)
桜と飲み比べる森の守護娘・シンブ(a28386)
特別天然記念物級理想主義者・メイ(a28387)
天声の歌姫・ユウヒ(a28441)
光祈麗嬢・ミューズ(a29133)



<リプレイ>

●とっとと済まそう、グドン退治
 闇夜の鴉・タカテル(a03876)を中心とした、先行偵察部隊は、まばらな林の中を進んでいた。
 いまいち分かりづらいが、複数の足跡が残されている。
「……」
 雲穿銀華・チハヤ(a19827)は、後ろを歩く向日葵畑で微笑む神森の守護娘・シンブ(a28386)に、無言で注意を促した。ここから先は、細心の注意が必要だ。
 3人は、静かに歩みを進める。注意深く踏み出し、それ以上にゆっくりと引き上げる。急に足をあげると、踏みつけられた草の立ち上がる音が鳴り響く。
 やがて3人の耳に、聞き慣れた声が響いてきた。
 先頭を歩くタカテルが素早くその場に身を伏せる。後ろの二人は近くの立木の影に身を潜めた。
「いましたね……9いえ、10匹ですか」
 タカテルは突っ伏したまま、呟いた。
 これだけ警戒したのが馬鹿らしくなるくらい、猿グドン達は無頓着に騒いでいた。こちらに気づく気配は全くない。
「……連絡お願いします」
 タカテルは、視線はグドンから外さずに、シンブにそう囁いた。
「はい」
 シンブは、素早くその場から後退した。そして、林の外で待っている仲間に向けて、「声の矢文」を放つ。
 矢の光や、弓の音にグドンが気づくのではないかと思ったが、どうやら杞憂だったようだ。ホッと一息ついたシンブは、静かな足取りで、所定の位置へと戻っていった。

「遅せえ……」
 漆黒の凶剣・レギオン(a05859)のイライラは最高潮に達していた。グドン殲滅を楽しみに来たのに、団長達からの連絡はまだ来ない。
「もうすぐですよ。もうちょっと待ちましょう」
 彼岸ノ愛華・トモコ(a04311)がそう言った時だった。
 林の中から、光る矢が飛来する。
 矢はシンブの声で、グドン発見の報を告げた。
 今にも突っ走り出しそうなレギオンを白翼・アルヴァ(a05665)、が何とか止める。出来れば、包囲殲滅し、禍根を断ちたい。
 この辺の地形については、全方位猟兵・ザルフィン(a12274)が予め、村人に聞き、調べを付けている。
 一同は、問題の林を包囲していった。

「ウオゥラァ!」
 真っ先に突っ込んだのはやはり、レギオンであった。グドンの群の中に突っ込むと、「レイジングサイクロン」を炸裂させる。
「ギャッ!?」
 予想外の奇襲に、グドン達は数匹まとめてなぎ倒された。残りのグドン達は必死に逃げ出そうとする。
「フン!」
 そこに一瞬遅れて突撃した特攻野朗・フジキ(a07843)の「居合い斬り」が炸裂した。
 元々、グドンの数より、冒険者のほうが多いのである。それが包囲、奇襲をかけたのだから勝負になるわけがない。
 逃げまどうグドン達に、足止めのアビリティが乱れ飛ぶ。
「銀狼よ!」
 アルヴァの「気高き銀狼」が、
「動くな!」
 ザルフィンの「紅蓮の咆哮」が、
「眠れ〜眠れ〜♪」
 天使のソプラノ・ユウヒ(a28441)の「眠りの歌」が、グドン達を無力化する。
「癒しの光を」
 その間に、特別天然記念物級博愛主義者・メイ(a28387)傷を負ってるレギオンを中心に、「ヒーリングウェーブ」をかけた。
 後は実に簡単な話であった。
「グドンさん、悪さしないで下さいよ」
 トモコがグドン達を「エンブレムシャワー」
で攻撃する。
「ギャワッ」
「逃がしませんわ」
 運良く眠りから醒めたグドンの逃亡先には、光祈麗嬢・ミューズ(a29133)の召還した「土塊の下僕」が立ちふさがっていた。
「ヒギィ!」
「紫電の礫よ!」
「弱い者虐めは好きではないが……これも辺境の平和のため……滅びろ!」
 足の止まったグドンの背中に、待ち伏せていたチハヤの「ライトニングアロー」が突き刺さり、側面からタカテルが『黒月槍』を突き立てる。アッというまに十匹にグドンは退治された。
 
●水辺だ、木陰だ、バカンスだ
「たまには、ゆっくり昼寝というのも悪くないですね」
 持参してきたハンモックに揺られながら、タカテルはのんびりと呟いた。
「うおおおっ!」
 湖では、レギオンが雄叫びを上げながら泳いでいた。生傷に冷水がしみるようだ。やがて、その痛みにも慣れてきたレギオンは湖の中に潜っていく。
「ふうっ!」
 上がってきたレギオンの両手には、大きなザリガニと二枚貝が握られていた。
「確か……向こうで、団長が寝てたよな」
 ザリガニと貝を手に、レギオンは一寸邪悪な笑みを浮かべた。

 素潜りをしていたチハヤとシンブは、二人で岸に上がってくると、息を整えながら、日光浴で身体を暖めた。
 二人はお揃いの白いワンピース水着を着ている。胸元が結構深くVの字に開いた、大胆なデザインだ。
 違いといえば、シンブが足下と首周りに黒のハイヒールと革の首輪をしている点だ。
 二人は、悪戯っぽく笑うと、ハンモックで寝ようとしているタカテルに近づいた。
「お揃いの水着なんです、似合ってますか?」
 寝入りかけていたタカテルは二人の大胆な水着姿に目をパチパチと瞬かせた。
「ええ、まあ……似合ってます、よ」
 
 一方フジキは、泳ぎを楽しむみんなとは対岸の岸で、釣り糸を垂らしていた。
「!!」
 強烈な引きと共に、見事な鯉をつり上げる。
「この水質なら、鯉もうまいだろう」
 つり上げた鯉の口から針を外し、草地に放り投げる。
 これと同じくらいの鯉を、夕飯までに人数分釣りたいものだ。
「むっ? ……むう」
 再び、引きを感じたフジキが竿を引き上げると、そこにかかったのは小さなフナ。流石にこれが当たった人は気の毒だ。
「……」
 フジキは、黙ってフナをリリースすると、再び、釣り糸を湖に垂らした。大丈夫だ。夕飯まで時間はまだ十分にある。

「地酒、ですか?」
「ああ」
 ザルフィンは、村人にこの村の酒について訊ねていた。一応、自前の酒は盛ってきているが、地酒があるのなら是非、味わいたいものだ。
「うーん、パスカー爺さんが地ビールを作ってるけど、それでいいかい?」
 否があるわけがない。ザルフィンは、地ビールをもらってきた。
 完全に密閉されているという村人に言葉を信じ、ザルフィンは樽をそのまま、湖に放り込んだ。それで、夕食頃にはよく冷えているはずだ。
「そんじゃま、身体のメンテを兼ねて泳ぐとしますか」
 ザルフィンは向こう岸目掛け、泳ぎだした。

「いい気持ち……」
 メイは服を着たまま、浅瀬に足を浸していた。水着は着てきているのだが、男性の視線が気になり、思い切りがつかない。
「うりゃうりゃ、くらえぇ〜♪」
「きゃっ!?」
 そんなメイに、はしゃいだユウヒが水をかける。そのまま、ユウヒは浅瀬を走り去る。
「もう、まちなさーい!」
 追いかけるメイ。見渡すとこの辺りは影になっており、男性陣の視線は遮られている。服はずぶぬれだ。メイは一寸躊躇った後、水着になった。緑のワンピースタイプだ。水着姿になったメイは、笑いながらユウヒを追いかけ回した。

「良い風ですわね」
 ミューズは心地よい風に、目を細めた。水辺を白いレースのパラソルを差して散歩。
「そうですわ」
 ふと思いついたミューズは足を、林の方に延ばした。目に付いた山菜をいくつか摘んでいく。。
 ふと、視線を上げると、そこには同じように散歩を楽しむアルヴァの姿があった。
「いい気持ちだなぁ……最近気を張るような事が多いから、こうやってくつろげるのはありがたいですね」
「あら、アルヴァさん」
「ああ、ミューズさんも散歩ですか。気持ちいいですよね」
「ええ、本当に」
 のんびりとした会話を交わす。
「どうです、一緒に歩きませんか?」
「ええ、よろしいですわ」
 二人はしばし、辺りの散策を楽しんだ。

「あっ? もうこんな時間」
 白地に赤い彼岸花をあしらった水着姿のトモコは、ふと日が陰りだしていることに気がついた。
「タカテルさーん。そろそろバーベキューしましょう♪」
 寝ている顔に、ザリガニを乗っけてくれたいたずら者を追いかけ回しているタカテルに、大声で声を変えた。
「……む、もうそんな時間ですか」
 声を聞いたタカテルも、太陽を確認する。
「分かりました、今来ます!」
 タカテルは、大きな声でトモコにそう応え返した。

●バーベキュー、パーティパーティ
「うぅ〜、このタマネギめっちゃしみるわ〜」
 タカテルを手伝い、タマネギを刻んでいたユウヒが、手に包丁を持ったまま、腕で涙を拭う。
 隣ではメイも一寸拙い手つきで手伝っている。
「バーベキュー、そろそろできますよー♪」
 歌うような声でそう良いながらトモコは手は休めない。
 それからしばらくして、団長の声が響きわたった。
「さあ、皆さん夕飯の準備ができましたよ。ちゃんと手を洗ってからいらっしゃい」

 篝火の焚かれる中、バーベキューパーティが始まる。
「もういいだろ」
「まだ焼けてません!」
 生焼けのままの串に手を出して、団長にしかられているのはレギオンだ。
「こっちはもう焼けたぞ」
 フジキが、昼間に取った鯉を塩焼きにして一人に一匹ずつ配る。あちこちから、歓声が起こる。なかなかに好評のようだ。
 ミューズやメイが取ってきた山菜は、他の野菜や肉と一緒に、バーベキューの串に刺さっている。
「よし、よく冷えてる。どうだ、みんな」
 と、ザルフィンが昼間から冷やしておいた地ビールの樽を持ってきた。
「いただきます」
 アルヴァがグラスを差し出す横で、メイも
「少しだけなら」とつき合い程度に、コップを出す。
「この辺よく焼けてますよ。ほら、飲んでばっかりだと、体に悪いですから」
 世話焼き体質なのか、メイはそんなことを言いながらみんなに気を配っている。
 宴もたけなわとなったところで、ユウヒが竪琴を片手に進み出た。
「なんか、リクエストあるか〜弾けるモンなら応えるで〜♪」
 待ってましたとばかりに、皆からリクエストが集まる。
 飲んで、騒いで、食べて、歌う。
 赤い炎が、十一人の笑顔を紅く映し出す。
「今日は、参加して、とても楽しかったです」
 トモコの囁くような声が、満天の星空に消えていった。


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作成日:2005/08/27
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