【グドンの森】殲滅



<オープニング>


●大麦村で
 猿グドンの襲撃ですっかり活気を失った大麦村では大人たちによる会議が行われていた。
 参加者はいずれも包帯を巻いていたり、痛みを堪えているため歩き方がおかしかったりする。
 村人たちは誰も彼もが満身創痍だった。
 そんな身で、葬式や村の柵の改修補強を行っていたため、この定例会議はありえないほど大幅に遅れた。
「あんな怖い思いはごめんだ」
「とちの木のじいさんみたいな葬式、二度とごめんだよ」
 村人たちは目を潤ませた。
「んだんだ。はやいとこグドンの村を潰してくんろよ、村長。このままじゃあいつらは絶対うちとこ村さ、やってくるべ」
 村人たちの不安を受けて村長は頷いた。
「わかった。酒場に依頼として出そう。早めにあの村を」
 会議は全員一致。
 グドン村を滅ぼしてもらうように依頼することになった。
 そして、比較的怪我の浅い若者が村長の手紙を手に、冒険者の酒場に向かうことになった。

●依頼
「大麦村からの依頼です。豚グドンの村を退治して欲しいそうです。個体数調査をしてから、なんだかんだと日にちが経っております。数が増えているかもしれませんが、禍根を残さないようにすべてきっちりと殲滅してください。頭数は少なく見積もっても四十。多ければ六十五頭はいるでしょうか。草で編まれた小屋に住んでいます。豚グドンは悪臭以外にはこれといった特徴はありません」
 猿グドンほど素早くもなく、樹にのぼるわけでもなく、猪グドンほど無謀に突進をしてくるわけでもない。
「ちょっと前に、グドンによって村人が殺されています。これ以上の不安や犠牲がないように、彼らを安心させてあげてください」

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参加者
六風の・ソルトムーン(a00180)
闇深き森の復讐者・ジエン(a08368)
狂風の・ジョジョ(a12711)
蒼燈夜行・ザイダー(a13371)
傾奇者・ボサツ(a15733)
ヒトノソリンの吟遊詩人・シモーネ(a15965)
恐怖を乗り越えた・ライアット(a16001)
武神装攻・ライミリア(a31615)


<リプレイ>

● 奇襲前
 豚グドン特有の、すえたような酷い悪臭がこもっている村だ。真夏ということが、闇が視覚以外の感覚を鋭くしてしまっていることが、そのたまらなさに拍車をかけていた。
 夜明けはまだ遠い。夜中である。
 総勢、八人。
 グドン村を朝駆けするという方針でいくため、夜に出向いた彼らはその村の近くを流れる川で簡単に最後の打ち合わせを行い、分かれた。
 ひっそりと。
 ランタンは光量を調整され、次第に引き絞られていく。もしくは薄布をかぶせられ、足下がわかる程度の明かりのみになる。
 グドン村の総人口は四十匹以上六十五匹以下だろうと言われている。
 討ち漏らし、禍根を残さぬための作戦。その要は奇襲だった。
 そして討ち漏らさぬために、事前に用意しておくことがあった。
 木々の合間に、ロープが巻かれていく。
 これは逃走を阻むためのものだ。
 それがすむと、彼らはおのおのポジションに向かっていった。
「さて…やるかね……」と、掃討班のドリアッドの若者が言った。種族的な特徴を故意に隠そうとしている。先端に生えた桜は、巧妙に襟の中へとしまわれていた。森の奥、つまり村から見て川と反対の方向に三名。
 夜明けとともに村の中に駆け込むつもりで、村のそのそばに控えている者三名。
 川に二名。逃亡防止用の伏兵だ。
 川から吹いてきた風が悪臭をすこしだけ、和らげた。
 白い靄が生じている。
 夜明けが近い。

●攪乱
 夜明けと同時に、グドンの村へと駆け込む三つの影。先頭は、
「しっかりついて来るんだぜぇ」
 そういって、悪人のように笑う狂風の・ジョジョ(a12711)。ついてこいとは言うものの、他の二人を待つ気はないのか、差が開く。
 村の入り口にぼうっと立っていた二匹のグドンのうち一匹をジョジョはあっさりと、身の丈をこえる長剣で斬り殺した。この二匹は夜間の見張りだったようだ。夜が明けて、気がゆるんだところだったらしい。生き残ったグドンが警戒の咆哮をほとばしらせる。
 同時に周囲から大木が倒れる地響きがした。
 殲滅戦開始である。
ジョジョの長すぎる剣の範囲に入らないように距離をとって走ってきた蒼夜行路・ザイダー(a13371)が光の玉を放ち、もう一匹の見張りを永遠に沈黙させた。少年は顔を布で覆い、悪臭の対策をおこなっていた。
(「別生命同士、屠り、屠られ…。喰い、喰われ…。大麦村も、この村も…同じ事なんでしょうね…」)
 と思うが、特別な感情がわくでもない。淡々と行動する。
 異変を察知したグドン達が草で編んだ家から飛び出してきた。いずれもがたいがいい、成熟した雄グドンだ。四匹、六匹……、あっという間に十五匹ほどが集まってきた。
「恨みは無い……だが貴様達を一匹たりとて逃すわけにはいかぬ」
 武神装攻・ライミリア(a31615)は参式斬魔刀真打で、一息に薙ぐ。
 見えない衝撃刃がグドン達を襲う。前方の三匹がもんどりうって倒れる。
 目の前で仲間が殺され、グドンは怒り狂う。
 その群れに突っ込んでいくのはジョジョ。
 ザイダーは身の安全の距離を取りながらエンブレムシャワーを浴びせかけた。
「ぎゃあぎゃあ」
 と、叫ぶグドングドンは直接シャワーにさらされなかったグドンだ。それに当たったグドンは悲鳴を上げることもできずに絶命する。
 ライミリアは家に押し入り、この騒ぎのなかでも起きなかったグドンや寝ぼけているグドンを着実に屠った。
「武人としては気持ちの良いものではないな……」
 状況を理解していない子グドンを始末したあと、ライミリアはわずかなやるせなさをにじませて呟く。
「おらおらおらおら、まちやがれ、てめえら!」
 逃げようとするグドンを足止めするために、ジョジョの紅蓮の咆哮。
 グドンは押され気味だ。
 伏兵班として今は川辺に潜伏しているはずの六風の・ソルトムーン(a00180)は言っていた。
『朝駆けを駆ける事でグドン共をパニック状態に陥らせる。パニックに陥った集団は原因を忌避しようと行動する。つまり暴れている冒険者から遠ざかろうとする。次に大人数で集まろうとする。群集心理というやつだ。皆が居ると安心を感じる訳だ。これは理(ことわり)ではなく動物の本能というやつでグドンと言えど例外ではない』と。
 元々グドンというのは仲間意識がずば抜けて高い種族である。逃げるとなると、なるたけみんなで固まって一斉に逃げだそうとする。その一団をジョジョは麻痺させたのだ。
 張った弦が奏でるビンッという音が聞こえるやいなや、ジョジョの右頬を矢が掠めていく。皮膚とわずかな肉を削っていったものの、軽傷だ。血がだらだら流れるのは、痛みより不快感を先立たせた。
 だが、次にはにやりと笑っていた。力強く、再びグドン達の群れに剣を構えて走り寄った。
 グドン達の早朝のパニックはそろそろおさまりつつあった。
 三人で十七匹を始末した頃、グドン達はこれは勝ち目なしと見て、牽制に次々と矢を射かけてきたあと、逃げ隠れを始めた。
 不意打ちでなければ、グドンの放つ矢に当たることはない。当たってもザイダーのヒーリングウェーブがあれば癒せる程度の浅手だ。
 ザイダーはライミリアとジョジョの位置を確認しつつ、二人のやや後方からついていくことにした。囲まれぬように背後に気を配り、逃げ始めたグドンを伏兵のいる場所へ誘導するように、攻撃する。

●掃討
 太陽の熱に暖められた白い靄が消えていこうとしている。
 恐怖を乗り越えた・ライアット(a16001)は大地斬で予定していた最後の木を切り倒した。周囲を確認するとライアットは村へと歩き始めた。気配に気を配りながらの早足。
 三人で倒したいくつもの大木は逃げ道を塞いでいる。唯一、あのグドン村から離れる方法は川への道筋だけだ。
 阿鼻叫喚が響く中、わずかばかりのグドンがこちらに逃れてきた。村には五・六十匹のグドンがいるはずだが、さすがに木々を切り倒した地響きが響いている方角に大勢で逃れようとはしないようだ。
 それでも七・八匹がこちらで右往左往し、ロープで足を引っかけ横転した。
 彼方を眺めるは・ジエン(a08368)は大剣を抜いた。森林などでは使いにくい、四メートル近い長さの剣だ。実は棍棒で切れ味はない。怯えて逃げてきたグドンどもを川の方へと追いやるためにはそれを構えるだけで十分だった。無謀にも向かってきた一匹は、長剣の柄で殴り殺した。それでもやはり森の中では使いにくいので、名無しの大剣は背に戻し、広いところに行くまでは素手のままにした。
 川には伏兵が待っている。とはいえ、そちらには二名しかいない。
「さて……失敗は出来ないねぇ……」
 と、傾奇者・ボサツ(a15733)は深追いしない程度にグドンを追い、素早い蹴りをグドンの脳天にたたき込んで始末をつけた。
 そして逃げ回っていたグドン達は村に向かっていたライアットとかちあい、
「生き物を殺すのは本当は好きじゃないんだけれど」
 痩せた身の青年は呟いて、その懐に飛び込むと流水撃を食らわせた。一匹はあわてふためきながら川の方へと逃げていく。
「あとはあの二人に任せるか」
 ライアットは再び村へと歩み始めた。

●伏兵
 ソルトムーンとヒトノソリンの吟遊詩人・シモーネ(a15965)は、地響きを感じるとおもむろに、伏兵らしく森の木々と草の中に身を潜めた。
 ソルトムーンは武具の魂を発動させ、自分とシモーネの武器の攻撃力を上げた。ソルトムーンのハルバートは斧の部位が鋭さを増した。シモーネの頑丈オカリナは……、堅さを増したようだ。あまり外見からはわからないが。魔楽器の衝撃波の威力が高まっているはずだった。
 しばらくして森の奥がざわついてくる。
 グドン達が逃げてきたのだ。
「まだだ」
 シモーネが歌おうとするのを制する。グドンが歌の圏内に多数入ってくるまで。
 ばらばらと、見通しの利く河原に逃げてきたグドン達が五匹、六匹と増え、八匹を越えると、ソルトムーンは飛び出した。
「我が前に現われたるが汝らの不運よ」
 一気に踏み込み、長尺の斧槍を使った流水撃で大多数をなぎ倒す。
 シモーネも飛びだして歌った。眠りの歌だ。後からやってきたグドン達も、歌の効果の範囲に入り、何匹かが眠りに落ちる。
 眠りに落ちず、逃げようとするグドンに対して、ソルトムーンは投擲型捕獲具『ボーラ』を使った。紐に石の錘のついたもので、足に絡まる。三匹に絡んだ。
 シモーネは再び歌を歌いながら『ボーラ』に近づいた。足から紐をとろうともがいていたグドン達は眠りにおちていく。
 別方向に逃げていくグドンに、ソルトムーンは今度は投網を投げつけた。足を絡まて転倒するグドンと、中に完全に入って身動きが取れなくなったグドン。
「アビリティばかりに依存するなかれ、手持ちの道具だけに依存するなかれ」
 手ごろな石を拾いあげる。河原には石はごろごろ置いてあって、不自由しない。
「グドン程度であればこれでも十分飛び道具の役割は果たすのだよ」
 とグドン目掛けて投擲する。
 逃げようとしていたグドンの後頭部に直撃した。
 シモーネは捕まっているグドンを屠っていった。
 逃げてくるグドンがこなくなると、二人は死体を確認した。
 ちゃんと死んでいるかどうか。何体こちらにきたのか。
 数は十六匹だった。
「終わったなぁ〜ん?」
 シモーネが問うと、ソルトムーンは村の方角を見据えたまま、首を振った。
「まだ逃げてくるかもしれんから、しばらく待機する」
 ハルバートについた血をぬぐい、ソルトムーンは石に腰を下ろした。視線と意識はグドン村に絶えず向け、投網と『ボーラ』をすぐに使える形にまとめる作業を始めた。
 手持ちぶさたのシモーネは、投網を片づけるのを手伝うことにした。

●後始末
 掃討班の三人、ジエン、ボサツ、ライアットはしばらく村の周り三方を見張っていた。川に向かう方には誰もつけなかった。
 四匹ほど逃げてきたが、退治。その後、待ってみたがもうこなさそうだったので、グドン村に踏み込んだ。
 まだ死臭や血なまぐささより、豚グドン特有の体臭の方が強く、不快感を与えてくる。
 ジエンは粗末なグドンの家の中を軽く中を見回し、地面を踏んで確認した。地下通路などもないようだ。
 まだ残っているグドンが逃げ回っている。が、冒険者が六人もそろっているのだ。時間の問題だ。
 見えているグドンの始末はいいが、隠れている方が気になる。
 やがて喧噪が止んだ。
 屠ったらしい。
 ジエンが外に出て確かめると、ライミリアが残った最後のグドン二匹を追撃しにいった。村の外に出てしまった模様だ。しばらくすると、戻ってきた。
「しとめた」
 大木を乗り越えようと手間取ったところを追いついて、始末したと彼女は報告した。
 みんなで家を一つ一つ検めて、ゴザのようなものを上からかぶって震えている無力な老グドンや、子グドンも始末をつける。
 グドンの知能程度では複雑な隠れ家など用意できそうにもないが、注意深く調べる。
 ライアットは家と家の隙間に、土の色の違うところを発見した。
「何名か、ちょっと来てくれませんか」
 そばにいたボサツとザイダーが駆け寄ってきた。
 皆でその土を払うと、厚手の板が出てくる。
 板は古井戸のようなものを隠していた。
 その暗い穴には、何かがいる気配がした。
 七・八匹。グドンが息を殺しているようだ。
 おそらくこれで最後だろう。ここにいるのは遠くまで逃げることが出来ない、子供グドンや老人グドン、妊婦グドンであろうことは容易に想像がついた。
 敢えて確認して殺すのも気が引けた。
 三人はグドンが何匹かいる、ということだけを頭に刻んで、エンブレムシャワーを真上から浴びせ、爆砕拳と大地斬で入り口を完全に埋めたのだった。
 ザイダーは土塊の下僕を三体作り出すと、グドンの骸を葬るように指示を出した。穴を掘って埋める、程度だったが、
「野に晒すは不憫せめて土の下で眠りなさい」
 と、ライミリアも埋めるのを手伝った。
 そうこうしているうちに、川で逃走してきたグドンを始末していたシモーネとソルトムーンがやってきた。
 ジョジョは最終確認で、村の周囲に足を伸ばし、逃げたグドンがいないかを確かめた。逃げた痕跡はなかった。ライミリアは罠を回収してきた。張り巡らされた縄だ。
 全員がそろって落ち着くと数を確認した。
 すべて合わせると、五十六匹〜五十七匹を屠ったことになる。
 一仕事を終えたあと、どっと疲れがきた。眠気をごまかすためにボサツはキセルを咥えて、ゆっくりと煙を肺にしみこませた。
「終わったねぇ」
 キセルの先から立ち上るのは白い煙は風に巻かれて消えていく。
 その足でグドンの恐怖に怯える大麦村に報告に行き、依頼は完遂された。
「ありがとうございました」
 憔悴した村長が頭を下げた。
 村は柵の強化を図っている。
 ただの柵ではなく、返しをつけたり、トゲをつけたりとなかなか凝っていた。ただその分、作り終わるのには時間がかかりそうだ。
「俺は一足先に酒場に帰ってるぜ」
 と、ジョジョは皆に声をかけ、手に杯を持って、くいと傾ける仕草をしてソルトムーンを誘った。
「一緒にどーだ?」
 ソルトムーンは頷いた。この二人、親友同士である。
「今日は良く暴れたんで酒が美味いだろうな」
 剣の血糊を払いながらジョジョは豪快に笑った。


マスター:無夜 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2005/08/28
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