シャナンの誕生日〜ワインの香りと祝福を〜



<オープニング>


 8月15日はセイレーン第六王女シャナン・アクアーネの誕生日。
 ヒトの霊査士・ブレントがシャナンから聞きだしたのだが、当の本人は誕生日なんぞどーでも良いらしい。あまり気にしている様子も無い。それより、とシャナンは言った。
「ワインが欲しいのよね。セイレーン産のワイン。美味しいのよ」
「で、何でまた唐突に欲しいんだ?」
 尋ねたブレントにシャナンは笑みを浮かべる。
「味見よ、味見。まだ飲んだ事無いんだけど、今度の祭で使えるかもと思ったのよ」
「なるほどな。流石はセイレーンの王女様。ちゃんと考えてらっしゃる」
 ブレントの畏まった言い方にシャナンは顔を顰めるが、取り立てて何も言わずただ、そういう訳だから任せたわよと言い置きどこかへ出かけていった。

「まぁ、そーゆー訳でシャナン姫から頼まれ事をされた訳だ。ワインはユトゥルナ商業組合に掛け合えばいくらか分けてもらえるだろう……」
 言葉を切り、顎を撫でたブレントは心持ち声を抑えて冒険者達に言った。
「実はシャナンの誕生日は微妙に過ぎちまってるんだよな。まぁ、本人は全然気にしてないみたいだが、やっぱ何かあればそれはそれで嬉しいだろう。なんで、ワインの味見ついでにシャナンの誕生パーティーでもやっちまおうと思う訳だ。協力、してくれるよねぇ?」
 にやりと笑みを浮かべてブレントは冒険者達の顔を見渡した。

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参加者
NPC:昼行灯の霊査士・ブレント(a90086)



<リプレイ>

●酒確保&パーティー準備
「すみませーん」
「あいよー」
 呼びかけに倉庫から顔を出したユトゥルナ商業組合の組合員は居並ぶ冒険者達の面々を訝しげに見た。
「商業組合さんの方でセイレーン産のワインを仕入れているとお聞きしました。是非、譲って頂けませんか?」
「シャナン姫の誕生日パーティーでワインが必要なんだ」
 星舞い落ちる夜・マイヤ(a28554)と渡り鳥・ヨアフ(a17868)が事情を話すと組合員は表情を和らげ倉庫の中を示した。
「あぁ、確かにセイレーン領から仕入れたワインがいくつかあるよ。何が欲しいんだい?」
 倉庫の中は木箱や麻袋などが山のように詰まれ、中にはワイン樽も置かれている。冒険者たちはそれぞれお目当てのワインを探す為、倉庫内を物色し始める。
「これ、でしょうかね? シャナンが言っていたワインは」
 牙商人・イワン(a07102)は早速シャナンが味見したいと言っていたワインを見つけ、組合員を呼びいろいろ交渉を始める。
「シャナンさんの生まれた年に醸造されたワインが欲しいのですけど……」
 そう呟き小さく溜息をついた楽風の・ニューラ(a00126)に銀鷹の翼・キルシュ(a01318)は微苦笑を浮かべた。
「仕方ないよ。だって、本人が忘れたって言ってるんだし」
 本当に忘れたのかは判らないけど、とぼそりと言いキルシュはニューラと一緒にシャナンに話を聞きに言った時の事を思い出していた。ニューラはシャナンの生まれ年を知りたかったのだが、キルシュはシャナンの好みのワインのタイプを聞く為であり、彼のその目的は無事果たす事が出来ていた。
「ま、仕方が無いからシャナン好みのワインを持っていこう」
 ニューラは気分を入れ替えるとキルシュに一つ頷いた。
「あのーすみません。葡萄ジュースも欲しいんですけどぉ〜ありますか?」
 未成年者用にとデタラメフォーチュンテラー・ネミン(a22040)は葡萄ジュースが無いかと尋ねると、二つ返事で有るとの答えが帰ってきた。その答えに手を叩いて喜んだネミンは勿論すぐに下さいナ♪ と言ったネミンに組合員は笑みを浮かべた。
 暫く倉庫内を見て回っていた仲間達の動きから、そろそろ品物が決まったなと判断した怒涛癒波・キアーロ(a12908)は隣で大人しく待つノソリンを見た。キアーロの視線に気付いたノソリン化している萌土乃盾・アルグ(a18522)は一声鳴く。
「さて、そろそろ持ってくワインは決まったかい?」
 倉庫内にキアーロが声をかけると、それぞれ木箱やら樽を持って冒険者達が倉庫の入り口に戻ってきた。
「なんだか種類が多いねぇ、サファイ」
「あぁ。他の産地で人気のあるワインも集めてみた。余興も兼ねてテイスティングしようかと思ってな」
 にっとキアーロに笑んだ神殺騎士・サファイ(a00625)は木箱の蓋を軽く叩いた。
 それらをアルグに繋いだ台車に乗せる。
「で、ソレの代金なんだが……」
 お代の話をしようとした組合員を制し、暴風・オーソン(a00242)はニヤリと悪い笑みを浮かべた。
「とりあえず、ユトゥルナの団長にツケといてくれや。んじゃ、そーゆー事で」
 と言い捨て、ワインをゲットした一行はそそくさとその場を後にした。

 一方、こちらは誕生日パーティーの会場。
「お料理はこれくらいで足りるわよね?」
「大丈夫だと思います。もし、足りなくなったらまた作ればいいですし♪」
 厨房でワインのおつまみになるような料理を作っていた碧き海駆けし紫水晶・リュウカ(a06843)と北辰の愛娘・セッカ(a05213)は目の前のテーブルに並ぶ出来上がった物を見て満足そうに頷いた。
「そうよね。足りなければ作れば良いんだし。シュエさんはもう出来た?」
「あぁ、上手く焼きあがったのじゃ」
「うわ〜良い匂い」
 焼きあがったばかりのフルーツケーキを掲げて見せ、氷雪の淑女・シュエ(a03114)はにっこり微笑んだ。
「ふむ……ちょっと地味か?」
 会場に花を飾っていた朽澄楔・ティキ(a02763)の呟きに雷牙・テルル(a24625)は小さく首を傾ける。
「そうっすか? とっても綺麗っすよ。きっと喜ぶと思うな、シャナン」
 そう言うテルルはがさごそとロール状に巻かれた垂れ幕をセッティング。
「よしっ! 次は料理をセッティングっと」
 元気に動き回るテルルを微笑みながら見ていた武道家・シェード(a10012)はテーブルにマンモー肉の燻製を盛った皿を並べる。
「……おいしそうだな」
 騎士の名を捨てて・シリウス(a05192)はロリエンから持参した果物やケーキなどを並べていたが、マンモー肉の燻製の香りに目を細めた。
「ワイルドファイア産ですからね、美味しいですよ」
 にっこりとシェードはシリウスに言った。
 2種類の酒とジャスミン茶を用意している縁・イツキ(a00311)は見知った顔が持つ知っている酒にあら、と声を出した。
「そのお酒、持ってきたの?」
 問われて卓袱台聖人・マージュ(a04820)はニンマリと笑みを浮かべた。
「やっぱり何か差し入れしないとね。キシュディムから持ってきたんだ」
「でも、確かアルコール度数高くなかった?」
「高いよ」
「呑みすぎ二日酔いでも俺が居るから大丈夫っすよ。ホラ、アオジル各種用意してきたっす〜♪」
 満面のこの上なく素敵な笑顔で言う緑の記憶・リョク(a21145)にイツキとマージュは引きつった笑みを浮かべた。
「お。ワインの仕入れ組みも戻ってきたみたいだぞ〜」
 窓際で準備を眺めていたブレントが商業組合へ行っていた仲間たちの姿を見つけ、言った。後は主役を呼ぶだけである。

●パーティーは呑み会?
「ねぇ、なんでタダのワインの試飲で待たされなきゃならないワケ?」
「ただのワインの試飲でもつまみがあった方がいいだろう?」
 テーブルに頬杖付き、その口から零れる不満も聞く者を心地よく酔わせるセイレーンの第6王女に風纏う水銀の剣・エッジ(a21596)は苦笑を浮かべて誤魔化す。
 目を細めるシャナンに薄っすら冷や汗を流しながら心の中で仲間達を急かすエッジは、遠くに見えた合図にほっと安堵の息を吐きシャナンにすっと手を差し出した。
「どうやら準備が出来たようだ。さぁ、こちらへ」
「なーんか怪しいわね」
 と訝しがりながらもエッジのエスコートを受けるシャナンは歩き出した。
 エッジのエスコートでシャナンに内緒の誕生会会場へ移動し、扉を開けた。
 部屋の中は綺麗な花で飾り付けられ、皿がいくつか並ぶテーブルに目を見開くシャナン。彼女の前にすっとツインテールと伊達眼鏡・シェイ(a08492)と狼牙の守護神・アールグレイド(a15955)は一歩進み微笑みを浮かべた。
「お待ちしておりました、シャナン姫。こちらへどうぞ」
「足元にお気をつけ下さいませ。お手を」
 格好も仕草も執事モードのシェイとアールグレイドに両脇から差し出された手にシャナンは目を瞬かせる。
「一体、何な訳?」
「まぁまぁ。入り口で突っ立ってないで部屋の中へ」
 エッジに背中を優しく押され、ゆっくりシャナンは部屋の中央に用意されたテーブルの前の椅子に腰掛けた。
 座ったシャナン右手からシェイがワイングラスを置き、左手からアールグレイドが静かにワインを注ぐ。
「ご希望のセイレーン産ワインでございます」
「っとーその前に! シャナンってお酒飲める年、なんすよね?」
 ワイングラスを手に取ったシャナンに恐る恐るテルルは尋ねた。
「当たり前でしょ。でなきゃワインなんて頼まないでしょうが」
「そーっすよね。ははっ、失礼しましたーさ、どうぞ!」
 乾いた笑い声をあげたテルルに小さく肩を竦めたシャナンはワインのテイスティングを行う。
「……ふぅん。聞いていた通りの味ね」
「別のワインも飲んでみないか?」
 がちゃり、と木箱にたくさん入ったボトルを掲げ見せにやりとサファイは笑む。
「ワインだけじゃなくてお酒もあるのよ。あたしはキシュのイツキよ、宜しくね♪」
「俺も、同盟で評判のワインを持ってきた。呑み比べてみないか?」
「キシュディムのお酒、度数が高いけど美味しいらしいよ。飲んだ事ないけどさ」
 ティキとマージュも持参したボトルを持ち上げて見せる。
「俺は苺で作ったワインっす。甘めで軽い感じで飲めるっす♪」
 リョクも笑顔でワインボトルをテーブルに置いた。
「俺はこのワイン。白のスパークリングワインなんだが、名前が第六王女っていうんだ。面白いだろう? ま、ワインの飲み比べの前に……」
 ヨアフが一歩テーブルから下がる。そこへシュエがフルーツケーキを持って来た。デコレーションされたケーキはどこから見ても誕生日ケーキ。
「ところで、シャナン殿。蝋燭は何本必要かえ?」
「え?」
「同盟では誕生日祝いの際には歳の分だけ蝋燭を立てねばならぬのじゃよ」
 にこりと笑み、そう言ったシュエにシャナンの目が大きく見開かれた。
『シャナン、誕生日おめでとう!』
 全員が声を揃えそう言うのに合わせ、テルルが巻いていた垂れ幕を広げた。垂れ幕には『シャナン誕生日おめでとう!』の文字。
「さっ。ロウソクは何本ですか?」
「20本よ。まったく……別に誕生会を開いてくれなんていった覚えは無いんだけど……」
 そう言い、一人ですでにチビチビ呑み始めている霊査士を横目で睨んだシャナンだが、小さく息を吐くと苦笑ともとれる笑みを浮かべた。
「言っとくけど、そんだけワイン用意したなら最後まで付き合う覚悟は出来てるんでしょうね? 私より先に潰れたら承知しないわよ」
「さ、おつまみ足りなければ言ってね。じゃんじゃん作るから♪」
「未成年の方はジュースもありますからね」
 リュウカにセッカ、ネミンはどんどん料理とジュースを運びテーブルの上に並べていく。
「……特に気にしていないが以前初襲来時、彼女がロリエンをドリアッドの引きこもり先だのと言ってくれたのでついでに名誉挽回だ」
 と小さく呟きいそいそとロリエン特産品を持って行くシリウス。シェードもシャナンに挨拶をしに行く。
 たくさんの人に囲まれているシャナンを見て、皆の後方でオタオタしていた流剣・ロック(a20544)だが、意を決してシャナンに近づいた。
「こんにちは……あ、先に初めましてって言わないといけなかったかな。えと……シャナン姫様と一度お話したくて」
 わたわたと一生懸命話すロックにシャナンは笑んだ。
 たくさんの酒にたくさんの料理、そしてたくさんの仲間。
 シャナンは立ち上がると高くグラスを持つ手を突き上げた。
「今日はとことん飲むわよ!!」
 たくさんの笑い声とちょっぴりの悲鳴。楽しい楽器の音色はいつまでも夜が更け、朝が来ても続いたのだった。


マスター:桧垣友 紹介ページ
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作成日:2005/08/30
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暴風の・オーソン(a00242)  2009年11月28日 19時  通報
面白そうなことしてんなーと思ったんで便乗
『女遊びも程ほどにしときなさいよ。刺されない程度にね』
まあ、死んだ理由は女じゃぁなかったな(笑)

雷獣・テルル(a24625)  2009年09月12日 13時  通報
今だから言えるー、今だから言えるー、シャナン女王からのメッセージ〜
『男なんだから胸張って堂々と!頑張んなさい』
ぐはぁッ!?