<リプレイ>
●突入 「まったく……面倒なものが出てきたものだな……」 水晶のモンスターが出たという鉱山。大きな石の上に腰掛けていた不殺の天魔・エルス(a01321)は空を見上げ呟いた。 「確かに奇妙な相手だ。加えて得意な攻撃は遠距離、接近戦を仕掛けるのは難しいがさて……」 同じく空を見上げていた血に濡れし孤高なる漆黒の影・ハルト(a21320)は、小さく頷き、次いで思案気な表情で顔を伏せた。 「鉱山にも注意を払わないといけませんしね。とはいえ、討伐に失敗しては意味が無い……全力で叩きに行きませんと」 「そうね、完全に破壊しないと」 同じく思案気な果てる事なき道を往く・ラエル(a14530)。その彼の隣で瑠璃色の涼風・ミン(a04357)は頷いて見せ、自身の得物、細身剣に手を添えた。 「完全になぁ〜ん? 水晶、退治のついでに貰っていこうかと思ってたなぁ〜ん」 セリカ特戦隊員専医・ジョニー(a27337)が残念そうに言い、何とか水晶を手に入れる方法は無いかと三人目の思案気な人になった時、 「おっまたせ〜♪」 大きく手を振りながら、リンゴ姫・アップル(a07891)が歩いてきた。手に握られているのは丸められた紙。 「全く、案内位してくれても良いのにねぇ。迷子になったらどうしてくれるのよ。地図くれたからよしとするけど……さって、行きましょ」 一人ぶつぶつと文句をいいながら、アップルは坑道の中へと入っていく。 「(みんなを守る重騎士はボクだけだなぁ〜ん。責任重大なぁ〜ん……!)」 四人目の思案気な人だあった無垢なる守護者・テフテフ(a28538)は、いつの間にか坑道に入っていった仲間を慌てて追うのだった。
「一応照明はあるのね」 坑内に据付けられたランプを見ながら黒統べし魔龍公・サフィニア(a00785)。幾つか消えているものもあるが、一応の視界は確保できる。 「燭台持ってきたんだけど、大丈夫みたいね」 地図を持って先頭を行くアップルが肩を竦めて見せた。 坑内に入って数十分。突如アップルが足を止める。 「この先ね」 地図を皆に向けて広げる。地図に書かれた×印、確かにその位置はこの先のようだ。 そっと岩陰から坑道の先を覗けば、そこは開けた空間。どうやら人工的な物ではなく天然の物のようだ。 件の水晶体も、一体を僅かに確認する事が出来る。もう一体は……ここからは見えない。 「鏡の様な四面体か……何を考えて死んだらこうなるのか知らんが、哀れよな」 その姿を垣間見た鴉羽舞う銀なる十字架・クリスティナ(a00280)は岩陰に身を隠し、呟いた。 「水晶、すいしょう、う〜む……」 水晶体を見てギャグを考えているジョニーはとりあえず置いておいて。 今、クリスティナの前ではテフテフが仲間一人ずつに聖鎧降臨を施している。 「ひとりでも倒れちゃったらそこから崩れてしまうかもしれないからなぁ〜ん」 先ず最前線で戦う者、打たれ弱い後衛、次に遠距離攻撃を行う前衛を……と、坑道内に閃光が煌き、次の瞬間『ガンッ』という音が背後で聞こえた。 「気付かれた!?」 ミンが慌てて立ち上がる。自分たちが隠れる岩が攻撃された……!? 「ミンさんはまだなぁ〜ん! 先にかけた人達で少しだけ支えて欲しいなぁ〜ん」 掛かっていないのはミン、ハルト、テフテフの三人。その間だけなら……! 「鉱山に被害を出すわけにはいかない、……早期決着のつもりで臨まないとな……」 エルスが立ち上がり、ストリームフィールドを展開する。 「頑張りましょう、ね♪」 彼岸ノ愛華・トモコ(a04311)の言葉に頷き、七人の冒険者は岩陰から飛び出す!
●死面鏡体 冒険者たちはすぐさま散開し、敵の居場所を確認する。 ぼんやりと輝く二体の正四面水晶体。空間の中央に一体、その奥にもう一体! アップルは弧を描くように走り水晶体へと接近する。 「重症上等! ゴリゴリ行くよ!!」 「先ずは手前の奴を仕留めるぞ!」 黒炎を纏ったクリスティナの指示の元、サフィニアのデモニックフレイム、トモコのエンブレムシャワー、ラエルのエンブレムノヴァ、そしてクリスティナのニードルスピアが発動。 黒き異形の顔、数多の光条、巨大な火球、無数の針が水晶体目掛けて殺到する! 着弾し、巻き起こる土煙。その煙を押し分け、太い光線が放たれる。 「グッ!」 正面に居たトモコはガーネットのあしらわれた盾をかざし、その光線を受ける。 熱い、耐えかねて腕が震える、それでも何とか防ぎ切った。 腕に火傷を負ったが、ジョニーのヒーリングウェーブが即座にそれを癒す。 「動けなくなったらだきゅってやるな〜ん。抱き付かれたくなかったら、倒れんなよなぁ〜ん」 礼を言おうと視線を向けた先で腕をかぽ〜んかぽ〜んと振るうジョニー……。トモコは礼を言うのを止めた。 その間に間合いを詰めたアップル、エルス。 アップルは反撃を恐れず真正面から、エルスはリングスラッシャーを召喚しけしかける! 無謀と言える突進から、アップルは突然失速。そこから無造作に一歩を踏み出し、二本の蛮刀を滑らせる! 切れ味鋭く鏡面に切傷を残し、それに沿っては居る細かいひび。 同時に、砕けた硝子の欠片が飛散し、アップルの肌を切り裂く。熱さを伴う痛みを感じ、しかしアップルは退かない。 「この位! 痛みにビビッてひくなんて思わないでよ!!」 エルスのリングはフラリとかわす水晶体、光が若干弱くなっているのは消沈しているのだろうか? どちらであろうと、攻撃の手を緩める気の無いアップルは再度、達人の一撃を振るおうとするアップルの横手から太い光線が激突する! そう、水晶体はもう一体居るのだ。聖鎧降臨の加護か、存外に傷は浅いが無視は出来ない。 忌々しく思うアップルの目の前で、突如として水晶体に無数の蜘蛛糸が絡まる。 「こっちは止める」 聖鎧降臨を受けたハルトが、遅ればせながら参戦したのだ。 「あははは、アリガト♪」 礼を言い、アップルはもう一体に向き直る。傷を受けていない面をアップルに向ける水晶体。 「あなたの相手はこっちよ!」 その水晶体に目掛け放たれた言葉と、衝撃波。それは同じく遅れて参戦したミンの攻撃! 目標をミンに変え、光線を発射する水晶体。ミンは舞うような体捌きでそれをかわす。 攻撃を空振りした水晶体に対し再度注がれる、黒き異形、光条、火球、針の嵐。 エルスが駆け、すれ違いざまに双頭剣を叩きつける。 ジョニーの回復を受けたアップルも、傷みを恐れず剣を振る。 ビシッ、という音と共に大きな亀裂が入った。水晶体の光が、強くなる!
●砕け散る、死招く水晶 「後衛さんは射程ギリギリまでさがってなぁーん!」 最後に自身に聖鎧降臨をかけたテフテフが後衛達の脇を抜けて前に出る。途端、水晶体がチカチカと光をちらつかせ、エンブレムシャワーのような無数の光線を放った。違う点は目標を定めて居ない事。乱射された光線は、冒険者のみならず、坑道の所々に激突し穴を穿つ! 坑道の各所に土煙が起こり、視界が悪くなる。その土煙を掻き乱し、巻き起こったのは木葉の嵐! 「喰らいなさい!」 トモコが召喚した木葉が、水晶体に殺到する。 「周りに被害出さないために、早く、早く、早く決めてしまうなぁ〜ん」 「分かってるよ!」 ヒーリングウェーブを発動しながらのジョニーの警告に答え、傷が癒えたエルスはリングを従え水晶体に斬りかかる。 「なぁーん!」 エルス、クリスティナに対して君を守ると誓うを掛けていたテフテフは、他のメンバーに比べ傷は深い。が、そこは体力自慢の重騎士。 テフテフの水晶の斧が振り下ろされ、水晶体の体深くに抉りこむ。ピシィ、と言う軽い音を立て、水晶体は真っ二つに割れ、地面に落ちると粉々に砕けた。 「やった!?」 ミンが歓声を上げる。が、まだ終ってはいない!
「グゥッ!」 一人、水晶体の動きを止めていたハルト。拘束の解ける度に蜘蛛の糸を放ち動きを封じていたが、如何に聖鎧降臨の加護を受けていようと、水晶体の光線を数撃受ければただでは済まない! なお追撃を掛けようとする水晶体。その横手から、紅い影が笑い声と共に駆け寄る。 「あははははははははは☆」 目は笑っていないアップル。無造作に振られた蛮刀が水晶体に傷を刻む。硝子片が舞い、アップルの頬を切るがそんなもの気にしている状態じゃない。 「いけっ!」 距離を詰めた術士も攻撃を開始する。サフィニアのデモニックフレイムが、大きな牙を剥き水晶体を屠り燃え上がる! 「そろそろ眠れ」 クリスティナも、奥の手と取っておいたデモニックフレイムを攻撃の主に切り替える。 「これで!」 残る力を振り絞るように、ラエルは巨大な火球を生み出し、水晶体に向け投射する。 派手な音と共に炸裂する火球。全面にひびが入る水晶体。 その水晶体が点滅し、再び光線の乱射が行われる! 巻き起こる土煙、エルスは召喚したリングが次々と打ち落とされる中、それでも水晶体へ接近し一撃を入れる。 「あと、少しの筈だ!」 先の水晶体もひび割れてからは早かった。ならばこちらも! 光線を交わしきったミンが、ソニックウェーブを叩き込む。体中に怪我を負いながらも立ち上がったハルト、彼もまたとどめを刺すべく飛燕連撃を放ち仲間をサポートする。 テフテフの斧が水晶体に打ち込まれ、走る一際大きな亀裂。そこに放たれたトモコのエンブレムシャワーが、水晶体を叩き、空中でぐらついたそのひびだらけの水晶を、 「あははははははははは☆」 アップルの二本の蛮刀が、上下から、鋏の用に、真っ二つに断つ! 澄んだ音を立てて、水晶は粉々に砕け、キラキラと舞い散った。
●水晶体の秘密? 「本当にだきゅらなくていいなぁ〜ん?」 「……ヒーリングウェーブで頼む」 つまらなそうに腕を左右に振るジョニーに、ハルトはうんざりした顔で答えた。 実際、今は重症一歩手前と言った所。命の抱擁は必要ないだろう。 最後、強行に攻撃した為、前衛に居た者たちの怪我は酷いが、聖鎧降臨の加護もあり、重症まで至った者は一人もいなかった。 「とにかく皆無事で良かった」 「無事とは言いがたいですけどなぁ〜ん。でも、皆こうして生きてるなぁ〜ん」 お互い痛む体に耐えながら、エルスとテフテフは笑い合った。
「一応……大丈夫でしょうか……」 祈るように坑道を見回るトモコ。戦場となった空間は、あちらこちらに焦げ跡や穴が出来てしまっていたが、坑道全体を見れば被害は無いようだ。 一体一体に攻撃を集中させ、短期決戦を挑んだ結果だろう。 「これなら、大丈夫だよね?」 ミンも、少し不安そうに言葉を洩らす。 「そうですね、何とか怒られずに済みそうです……ん?」 笑って答えるラエル。と、先ほど戦場となった空間の方角から突如大声が響いてきた。
「いきなりどうしたんだ?」 クリスティナが迷惑そうな視線をジョニーに向ける。 「そうか、あれか、あの敵が強かった理由は! なぁ〜ん」 「理由? なんです?」 サフィニアは少し興味がありそうな視線を向ける。 「そう、恐らく奴の力の源は、ピラミッドプァワー!! なぁ〜ん」 「……」 まさに大発見とはしゃぐジョニーに注がれるのは冷めた視線。 大声に驚き駆けつけたトモコ達も、呆れて笑顔を引きつらせるのだった。

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参加者:10人
作成日:2005/08/31
得票数:冒険活劇1
戦闘1
コメディ7
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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