<リプレイ>
●煌きの坑道 天使の石と呼ばれる鉱石で埋め尽くされた、美しい坑道へと足を踏み入れる。この天使の石であれば最愛の人へのプロポーズにも相応しい筈、とレオニードはこの場所を訪れたのだ。指輪を用意した時の彼女の顔を楽しみにしていたのに、彼の腕は最愛のフユカその人が取っている。 「……」 しかし結局、いちゃいちゃしながら坑道を歩いた。 まるでオーロラの中を歩いているみたい、とメディスが顔を綻ばせる。おなかを抑えながらも、無邪気にはしゃぐ彼女の身体をセリオスが優しく支えてやった。 「ほら、はぐれないように確り繋いでおこうぜ」 赤い頬を誤魔化すように前を向いたまま、ラティクスが言う。いきなりの誘いを受けてくれたことも嬉しくて、 「……ラティ、ありがと」 とフレイは手を繋ぐと共に彼の頬に軽くキスした。 やはり恋人同士で訪れたものは多く、鉱山内部には柔らかな空気が漂っている。アレグロはそんな冒険者たちを優しい眼差しで見守っていた。亡くした妻を、煌く石の奥にと探す。 周囲の美しさに感嘆の息を漏らしたミュリムの手を、転ばないように、とリュートが握った。手を繋げればと思っていた彼女は、頬を赤らめながら幸せを実感する。そんな友人カップルの様子を見つつ、フェザーは恋人の手を強く握り、悲恋の伝説を思う。 「あったかいなぁ……」 ギンボシは微かに呟くと、見惚れているようであり悩むような彼の横顔を見た。いつまでも共に居れることを、胸のうちで願う。 続いて、明らかに人員整理ミスとしか思えない人数が団体で入場した。 嬉しそうに深雪の優艶・フラジィル(a90222)が先陣を切る。 「ジル、転ぶなよ?」 まるで彼女の保護者のように瞳を細め、ヒジリが背後から声を掛ける。ナハティガルが顔をいっぱいの笑顔にして、キレイなモノを見ると僕もキレイになれる気がする、と声をあげた。ルツキも恐る恐る煌き続ける坑道の壁に手を触れる。コスズは一歩足を踏み入れた瞬間、美しさに圧倒されたように口を閉ざした。 僕にはまだ早いですね、と小さく呟きながらアウグストゥスが続いた。フラジィルが接待役と言うので顔を出したのだが、気付けば見学に巻き込まれている。ジンは彼の恋人についての話などを軽くフラジィルに伝えてやりながら、この一行について歩いていた。 以前にこの坑道を護った際の話を聞きながら、キィは強張った表情を徐々にと解し始めた。フラジィルと手を繋いで、楽しそうに歩いている。フラジィルの反対側の手を取って、ヴィンが彼女の指先を彩る指輪を見遣る。 「これってジルちゃんを想って選んだ石だから、ジルちゃんの色をしてるんだね」 小さな掌をぎゅっと握って、僕の気持ちも入れておくねと微笑んだ。
●稀有な存在 宝石と言うものは原石を磨いてこそ美しく輝く。天使の石も加工の際には丁寧に磨かれ、結果として当然大きな原石も小さな欠片になってしまう。坑道に有り余るかに見えた天使の石も、望むもの全員に分け与えることが出来るほどには猶予が無いのだ。女職人は渋い顔をしながら、希望者たちの話を聞いていた。彼女とて、可能ならば全員に渡したい。しかし小さな村の為にも、気持ちだけでは譲れないのだ。 「俺はこの天使の石を、生涯愛しぬくと決めたヤツに渡してやりたいんだ。頼む!」 バーンが深く頭を下げた。アリアも同様に言葉を重ねる。いざとなれば誘惑してでも、と思っていたのだが職人が女性では意味が無い。エセルも大切な人に渡したいのだと交渉を重ねる。根負けしたように職人は息を吐いた。 「欠片だけなら譲ってあげるよ。だけど指輪に加工するのは無理だ」 色を定着させる処理だけはしてあげるから、また今度機会があればその石を持っておいで。そのときには指輪に加工してあげるから、と女職人は譲歩してくれた。想いの強さも大切だが、財力と言うのは正に超えられぬ壁であるのだ。是非とも主君と敬う人物に渡したく思っていたシトリは、思わず肩を落としてしまう。 「今は無理でも、いつか……ね」 サクヤは一度頷いた。指輪への道程は近く思えなかったが、其れでも確かに指先を掠めたのだから。サルサも随分粘ったのだが、思いの丈は兎も角として指輪を作るのに必要な金銀の負担が出来ない以上、指輪の形で譲り受けることは諦めざるを得なかったのだった。 幸運にも加工を頼むことが出来た面々は、安堵の息を吐くと共にその作業を見詰めている。シェードが手に取った石は、職人の手によって煌き始めていた。ソエルが選んだ石もまた、蒼とも碧ともつかぬ煌きを宿し始めている。 「今年のフォーナの次の日に……僕が18になるから……その時に……渡す指輪を……作って欲しい……です」 顔を真っ赤にしながらアルムが頼んだ。無駄遣いしなくて本当に良かった、と胸を撫で下す。外洋航海に出た愛しい人のことを想い、ほんの一瞬不安げな表情を浮かべるも、直ぐに振り払う。 財産的な面では本当にぎりぎりだったのだが、クロウディアは機転を利かせることで何とか天使の石を手に入れることが出来ていた。支え合って来た女性に、この石を渡すことが出来るのかと思うと胸がほわりと暖かくなった。 レイリスも指輪を作って欲しい旨を申し出たのだが、職人は額に皺を寄せて考え込む。暫くして、贈りたい人が二人じゃなく唯一になったらまた来るんだね、と溜息混じりに言葉を吐いた。今のあんたには天使の石が必要ないってことだよ、それも幸せだと思うけどね、とも。
●人々の想い 「なかなか気持ちの通じない方にプレゼントして、この天使の石の伝承に託したいのですわ」 ケラソスの言葉に、職人は困ったように唸り声を上げる。 「この『天使の石』の伝承は『悲恋』なんだよ? だからこそ離れないようにって意味で婚約指輪や何かに使われるけど、気持ちが通じない相手に渡すようなもんじゃないんだ」 時期尚早って奴じゃないかいと眉を寄せた職人に、クローディアが決意を秘めた瞳で言う。 「想いを……伝えたい相手が居るんです。叶わなくてもいい、ただ……切欠がほしいのです」 彼女が用意出来た報酬も、十分とは言えないものだった。しかし職人は、彼女の言葉に頬を緩める。元々幸せなばかりとは言えない伝承のある石だが、其れが齎すもののあるように願い、職人は勤め続けているのだ。 「この天使の石ってのは、本当に俺の心に想う人の色に変わるのかい?」 「人の、とは限らないけどね。想う色に変わるのさ」 じゃあ俺もひとつ作って貰いたいね、などとジョジョが職人と話している間に、キルレインは綺麗に輝く天使の石のブレスレットを手に入れていた。掛け替えの無い何よりも愛しい女性の為に、真っ先に職人へと依頼したのだ。 セイルフィンもまた、伝承をすべて理解した上で、親友と離れたくないと言う願いの為に天使の石を求めていた。石の貴重さも判っているから、だからこそ欲しいのだと言う彼女の言葉に、職人は面白そうに笑って見せる。 こつこつと貯めて来た財産を握り締めつつも、何だか強い想いの主張の合間に紛れてしまい、レジィは何も言い出せなかった。しかしとうとう、堰を切ったように、 「――オレにも心に決めた娘がいるんですっ!!」 と叫ぶように主張した。一瞬後に凄いことを口走った自分に気付く。 心の決まっていたミスティアは酷く穏やかに交渉を進め、天使の石を譲り受けることに成功する。紆余曲折があったものの、アルトも何とか職人の了承を得た。 「送りたい相手と暫く会えなくなりそうなんで……」 もごもごと言葉に詰まりながら交渉するサイオンの横で、シファレーンが「誰より幸せになる花嫁の為に」と真っ直ぐ職人の瞳を見て願いをかける。其の深い想いには、職人も真剣な瞳を返して来る。 キリーは赤い天使の石を手に入れた。其れは愛しい人の誕生日を祝うため、そして二人の将来を誓う証として願われたもの。譲り受けた喜びに、其の場でクラリスの身体を抱き締める。目に涙を浮かべた彼女は顔を真っ赤に染めており、緊張でかちこちに固まっていた。
●揺らめきに惑う 「……マジかよ」 手を離れた恋の記憶を転がしながら、掌の中、定着した輝きを放つ天使の石を見詰めた。其の輝きの意味を知り、ナナトは思わず天を仰いだ。何とも意地が悪い煌きは、彼自身の迷いを映しているのだろうか。 観念するのは少し早いのか、それとも――?
坑道の入り口では、何故だかティアレスが女性陣をはべらせながら人員整理をしている。既に彼自身は余り働いておらず、リアを中心とした気の利く数名が確りと指示を続けていた。ちなみに彼女は既に天使の石を予約済みである。彼の横には、ティキがぐったりとした様子で座り込んでいる。 「カップル多過ぎ……」 人込みで疲れるのとはまた違った疲労が肩に圧し掛かってくる。 「貴方が号令をかければ、何名かの女性が直ぐについていくでしょうに……」 中へは決して入ろうとしないティアレスを見て、ナーサティルグが笑みを洩らす。其の言葉にティアレスは苦笑して、「我は何も遣れんが、おまえへの感謝の気持ちだ」、などと彼女の手の甲へ口付けた。 困ったような表情で其れを見ていたトモコは、誘いかねたように彼の手伝いに回る。「指輪を作れたら、いつかティアレスさんが誰かに贈る用にプレゼントしたい」などと言葉を交わすと、彼は紅い目を緩く細めた。指先で額に、軽く触れる。 「……指輪は少々、縛り過ぎる。オレから渡せるものでも無いな」 そう言って、金の髪の下、笑って見せた。 直後駆けて来たナオが、朗らかな笑顔でティアレスに指輪を渡したりする。これからも宜しく御願いします、などと言う彼女に「つまり嫁に貰えということか」と返したりなどする。 「あや……そ、そんな意味じゃなかったんですが……あ、でも私の大切な人だし、あや、あややや」 直後、照れて真っ赤になった彼女は、ボンッと頭から蒸気を噴き出し倒れたりした。
「……」 其の頃サガは、何故か遣ってこない相方を待って頬を膨らませていた。後で彼の財布を奪ってから、オルゴールの御礼ついでとして、職人の元へ交渉に行こうと内心で決めた。
職人との交渉を終えたルチアとシルルが、腕を組んで楽しげに坑道の中を歩いている。ホーリーライトで照らし出された天使の石たちは、きらきらと鮮やかに輝いていた。 煌きが一瞬赤く見え、コラルフィンは足を止めた。逝ってしまった人と、戦地に居る人の瞳の色を思い出す。 「どうか、どうか、あの人まで連れて行ってしまわないでね……」 唇から零れた祈りは聞き届けられるのだろうか。 ふと坑道の壁に触れたルーツァの指先に、鋭い鉱石の欠片が血を滲ませた。痛、と顔を顰めるも、青く輝く其れを見て怒りの言葉は飲み込んだ。鋭く冷たく、なのに澄んで穢れなく、綺麗。誰かの瞳に、其れを重ねた。 何処となくぎくしゃくとした雰囲気で歩む二人が居た。互いに手を繋ぎたく思いながら、中々行動に移せない。理由は二人の微妙な間柄にある。今までは単なる友達だった。けれど、今は少しだけ違う。 「また迷子にでもなられると困るから、手、繋いどくか?」 そっぽを向いてアーシュが言う。内心嬉しいながらも、ネミンは照れが先に立った。手を繋いで暫く歩んで、彼はぽつりと囁いた。 「……好きだ」 互いに互いの顔を見ないように、慌てて反対側を見る。頬はこれ以上なく熱く、赤く染まっていたのだから。 「わぁ〜綺麗ですね〜」 何処となく暢気な声をあげるセレスを、カレンは穏やかな瞳で見詰めていた。ふと過去が揺らいで溜息が零れる。怪訝そうな視線に、「セレスさんの羽根が光を浴びて綺麗だったから」と微笑んで誤魔化した。二人は手を繋いで、時を惜しむように坑道を歩く。
薄ぼんやりと幸福な輝きが照らし出す坑内で、蒼い瞳を静かに見詰める。 「……何故か、思い出します」 ジェネシスは彼女の向こうにもう一人、影を探すような視線を向けた。天使の石の伝承が、彼の記憶を思い出させるのかもしれない。一度は地獄となった彼の故郷の、解放されはすれども息絶えた人。 「未だ、引き摺っていますね、私は」 彼が溜息を吐くと、ロザリーは僅かに小首を傾げた。つまらない話でした、と謝罪の言葉を紡ぐ彼の腕に軽く触れ、 「……大切なものは、刻んでおいて良いと思うわ」 微かな声で囁いた。彼は短く沈黙した後、戻りましょう、と彼女の手を取る。
天使の石は、柔らかな光の中で煌き続けていた。

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参加者:61人
作成日:2005/08/30
得票数:戦闘2
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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