おじいさんのオルゴール



<オープニング>


「うーん、やっぱりここの果汁ジュースは最高♪」
 エルフの霊査士・アルペジオは、冒険者の集う酒場のカウンターでいつものようにジュースを飲んでいた。
 からんからん。
 来客を知らせるベルの音が鳴り響く。カウンターの奥にいたマスターがお客に声をかけていた。
 入ってきた客は、年老いた婦人。優しげな茶色の瞳が印象的だ。
「あなた、霊査士さん……ですわね?」
 婦人はカウンターに座るアルペジオに声をかけた。
「はい、そうです。……何かありましたか?」
 飲み終わったコップをカウンターに置き、アルペジオは婦人を見た。
「実は、一つ、お願いがあるんですの」
 そう言って婦人は持っていた鞄から、片手に乗るくらいの小さな包みを取り出したのであった。

 数時間後。
「皆さんにお願いしたいことがあるんです」
 そう言ってアルペジオは集まった冒険者達の前で話し始めた。
「この町から数日かかる場所、ペリス村に配達をお願いしたいんです」
 そのアルペジオの言葉に一人の冒険者が声をかける。
「配達? 俺達に頼むってことは、訳ありか?」
 冒険者の言葉にアルペジオはうなづいた。
「はい。つい最近、ペリス村への道の途中で大きな狼が現れ、人を襲ったのです。その最初の犠牲者は、オルゴール技師のドウルさんでした」
 ドウルが村へ向かったのは、ペリス村に嫁いだ娘のマリーヌへのプレゼントを届けるためであった。
 しかし、その途中、狼と遭遇する。
 ドウルは年老いていたため、狼の攻撃を避けきれず、まともに受けてしまったらしい。何とか命を取り留めたが、数週間は安静にしないといけないと医師から言われたそうだ。
「そのドウルさんの妻であるマーガレットさんから、これを受け取りました」
 アルペジオがそういって取り出したのは、あの小さな包み。
「これは、ドウルさんの作ったオルゴールです。これをペリス村にいるドウルさんの娘さんであるマリーヌさんに届けるのが、今回の依頼です」
 そして、アルペジオは皆を見回す。
「でも、気をつけて。このドウルさんのオルゴールを霊視したところ、狼は人よりもはるかに大きく、鋭い爪と牙を持っています。しかもとても素早く、人を見つけたらすぐに襲い掛かってくるようです。オルゴールを壊されないように気をつけてくださいね」
 そういってアルペジオは皆にオルゴールを託すのであった。

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参加者
煌きのエトワール・ディオイカ(a00035)
六風の・ソルトムーン(a00180)
碧天を翔る雲兎・クルハ(a00805)
遊風の愛し児・ヒカト(a02168)
桜花粋人・ジン(a04108)
鉄芯・リジュ(a04411)
混沌なる闇喰らう黒雷・デュレス(a04543)
宵に眩む銀・クスク(a04680)


<リプレイ>

●のどかな道
 アルペジオの依頼を引き受けた冒険者の一行は列を作り、慎重にペリス村へと向かっていた。
「ま、まだ出て来ないようだな、狼……」
 きょろきょろと落ち着きなく辺りを見るのは、列の後方にいる碧天を翔る雲兎・クルハ(a00805)だった。
「そ、そうですね……」
 同じく落ち着きないのは、クルハの側に居る、ストライダーの忍び・クスク(a04680)。
「そんなに気張らなくてもいいんじゃないかい?」
 2人の様子に思わず、ヒトの狂戦士・リジュ(a04411)は声をかけた。
「で、でも、初めての依頼ですし、きちんとオルゴールを守らないと!」
 そういうクスクに思わず、リジュは苦笑を浮かべた。その側でクルハもクスクの言葉にうなづいて見せている。
「まあ、私も今回が初めての仕事だから、緊張する気持ちはわからないでもないけどね」
 リジュは元気付けるかのように2人の肩をぽんと叩いた後、持ち場であった前列へと戻っていった。

「あ、あの……ソルトムーン、さん」
 躊躇いがちに訊ねるのは、前列にいる遊風の愛し児・ヒカト(a02168)。
「ん、何かあったか?」
 六風の・ソルトムーン(a00180)は、ヒカトに訊ねられ、辺りを警戒する。
「いえ……そうではなくて、その……ソルトムーンさんの、持ってらっしゃるものは……なんですか?」
 どうやら、ソルトムーンが持っていた物が気になっていたようだ。ソルトムーンが持っているもの、それは麻縄を、拳よりも大きめな石に括りつけたもので二つあった。
「これのことか? これは……」
「敵に……投げつける、武器……。昔、……戦場で見かけた事がある」
 ソルトムーンの代わりに答えたのは、ヒトの狂戦士・デュレス(a04543)であった。
「ああ、そうだ。腕で振り回して投げるんだ。上手くいけば、遠心力で相手を絡めることができ、狼の動きを制限する手段にもなるんだ」
「あ、なるほど……」
 ヒカトはふむふむと、ソルトムーンの用意した手製の武器を眺めていた。

「仕方ないとは言え……この格好、マジダセェな……」
 げんなりした表情で桜花粋人・ジン(a04108)は、列の後方でそう零す。
 ジンの体には沢山の布を巻き、ロープに固定されたオルゴールが付けられていた。
 少々、不恰好のように思える。
「でも、そのお陰で、ちょっとやそっとの力では、壊されないですよ」
 のほほんと光のエトワール・ディオイカ(a00035)がジンの側で微笑んだ。
 ディオイカの言う通り、オルゴールは沢山巻かれた布がクッションとなり、少し強い衝撃を与えてもビクともしないようにされていた。
「まあ、そうなんだけどな……」
 苦笑しながら、そうジンが頭を掻く。
「そういえば、少し前に出会った動物に獣達の歌で聞いたんだが、この先にある橋を越えた場所が狼のテリトリーらしいぜ」
 ジンのいう橋は、目の前に近づいてきていた。
「そうか、この先にいるんだな」
 ソルトムーンの言葉に、皆はもう一度、手に持つ武器を構えなおしたのであった。

●遭遇、バトル!
 一行が橋を渡り、数メートルほど歩いたときのこと。
「待ってください、何か……聞こえます。……足音?」
 ヒカトが耳をすませる。
 しゃりしゃりと爪が擦れるような音とともに現れたもの、それは。
「狼だっ!!」
 クルハの言葉通り、現れたのは人の大きさほどもある大きな狼であった。
「はっ!!」
「復讐者の血痕!!」
 ソルトムーンは用意した麻縄と石の武器を狼に投げつけた。同時にディオイカの体に血の色をした刺青も浮かび上がった。
 狼はソルトムーンの投げた武器をひらりとかわし、冒険者の列を通過しようとした。
「うわん!」
「キャイン!」
 ジンの前で壁になっていたディオイカを攻撃し、復讐者の血痕で跳ね返ってきた痛みに、狼はひるんだ。
「俺の歌で眠ってイッちまいなっ!!」
 ジンの、子守唄とは程遠い激しい歌は、しっかりと狼に届き、眠らせることに成功した。
 あっけなく狼は倒れこみ、眠ってしまう。
 そこをソルトムーンが持っている持ち替えた蛮刀で、止めを……。
「アオオオオオオンンンン!!!」
 別の方向から、眠った狼と同じ大きさの狼がもう一匹、現れたのだ!
「くそっ!!」
 ソルトムーンは新たに現れた狼の牙を蛮刀で受け止め、何とか持ちこたえた。新たな狼の出現によって、眠っていた狼も起きてしまった。
「ホーミングアロー!!」
 動く狼を確実に捕らえ、ダメージを与えることにしたクルハは、影縫いの矢ではなく、ホーミングアローを放った。矢は上手く、起きたばかりの狼を射抜いた。
 その僅かな隙をリジュは逃さなかった。
「アンタに恨みはないんだけどさ……悪いね」
 リジュはにやりと口元に笑みを浮かべた。矢とリジュの行動に戸惑った狼は、リジュの腕に捕まってしまったのだ。狼は激しく抵抗するも、リジュの手は離れることはない。
「さあ、今のうちにやっちまいなっ!!」
 そのリジュの声に応えるかのように。
「飛燕刃!!」
 クスクの技がリジュの腕に居る狼を傷つける。
 そして。
「うおおおっ!!」
 デュレスのジャイアントソードが、リジュに捕まった狼に最後の一撃を与えたのであった。

 一方、もう一匹の狼も。
「幻惑の剣舞っ!」
 ヒカトの放った技が狼を貫く。ダメージを与えることはないが、狼の動きを止めることが出来た。
「ブラックフレイムっ!!」
 ディオイカの放つ黒い蛇のような炎が狼に炸裂する。
 ドオオオオオン!!
 太鼓のようなファンファーレと共に、ソルトムーンは狼に最後の一撃を与えたのだ。
「なかなか手こずらせてくれる……」
 刀を鞘に収めると、倒れた二体の狼を見比べ、ソルトムーンは笑みを浮かべる。
「ふむ、この毛皮は高く売れそうだな」

 こうして、二体の狼は冒険者の手により、無事、倒されたのであった。

●オルゴールの音
 落ち着いた優しい旋律が部屋中に響く。
 ここは、ペリス村のマリーヌの家。そこで、皆はドウルのオルゴールの音を楽しんでいた。マリーヌがお礼にと一行にオルゴールを聞かせてくれたのだ。
「これがおじいさんが届けたかった音色なんだね」
 うっとりとディオイカが呟いた。
「お父さんのオルゴール……ちょっと羨ましいです。ヒカトには、お父さんの思い出ないですから……」
 ヒカトは笑みを浮かべた。少し寂しげな笑みを。
「旋盤に込める思いは、音色を奏でて……か」
 ソルトムーンはそう呟き、オルゴールが鳴り止むまで、その音色に耳を傾けていたのであった。

 そして、町に戻ってきた一行は、ドウルの家を訪れる。仕事が無事、終わったことを報告するためだ。
「怪我が治ったら、すぐにでも娘さんに会いに行くがいいさ。もう怪我する様な狼はいねぇんだからよ!」
「皆さん、本当にありがとうございました……」
 そのジンの言葉にドウルは涙を浮かべて、喜ぶ。
 そう遠くない未来、ドウルとマリーヌが会える日が訪れることだろう。
 皆はその日が早く来るのを祈りながら、ドウルの家を後にしたのだった。


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参加者:8人
作成日:2003/12/18
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宵に眩む銀・クスク(a04680)  2009年12月11日 22時  通報
懐かしいなぁ…。この時は右も左もわからないまま飛び込んでいったんだよねぇ。
話し合いなんかも上手くできたか覚えてないけど…物凄く緊張してたなぁ(苦笑
プレイングも「初めての依頼です。よろしくお願いします!」だけだったし…