その思い、永遠に



<オープニング>


「隣町の人形作りの名人のお婆さんが、作品が多くなってしまったので、今まで作った分を誰か大切にしてくれる人に譲りたいと言っておられまして」
 これです、と霊査士は袋から人形を取り出してみせる。
 精巧な、作りのしっかりした人形と、かわいいぬいぐるみと。
 趣味だからこそ時間をかけて作られたそれは、一つ一つに生き生きとした表情が浮んでいる。
「子供のいろんな注文に答えてるうちに、王道っぽいのから変なものまで色んな人形を作られたらしく、きっとみなさんの欲しいものも見つかると思うし……」
 そう言って、最後に取り出したのは人形の基礎となる体のパーツと、人間用には小さ過ぎる型紙。
「こうやって型紙とかもあるし、簡単なものだったら作り方も教えてくれるらしいので……一度、自分で作るってのもいいのではないですか?」
「へぇ……ボクも何か作ってみようかな……」
 そういって、風翠・クィンスは、紙にぐりぐりと作るぬいぐるみの設計図(?)を書き始めた。

 皆さんも、1針1針に思いを込めて、小さな友達を作ってみませんか?

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参加者
NPC:風翠・クィンス(a90196)



<リプレイ>

 そこは、一人で住むには大きな家だった。
 家族も既にないお婆さん、だけどその家には思いが溢れていた。
 1針1針に思いを込めて作られた、お婆さんの子供達。
 お婆さんと話しながらきょろきょろと作品を見ていたファオはリスのぬいぐるみに目が止まる。
「秋はススキや紅葉を飾った花瓶の隣に、秋が過ぎたらまた来年木々が赤く色付く様子を眺めていられるように窓の近くに置いて、大切にしたいと思います……持ち帰らせて頂いて宜しいでしょうか?」
「えぇ、もちろんよ」
 嬉しそうに答えるお婆さん。
 同じく動物の人形が並ぶ部屋でベルナーナは人形を撫でていた手を止め、その中から小さな兎のぬいぐるみを取り上げる。
 カノンはまるで全てを許し、癒してくれる優しい大きな瞳の真っ白なふわもこな兎のぬいぐるみを一目で気にいったようで。
「ええと……何だか思い出すような……この子頂いてよろしいでしょうか?」
「このうさちゃん大切にするから……どうかカノンに譲って下さいなの……」
 微笑と共に「えぇ、お二人ともその子達をよろしくお願いしますね」と答えるお婆さんに、にっこりと微笑み返す。
「ありがとうございます、大事にしますわね」
 ぬぐるみを抱きながら人形達と心の交流を図っていたスイゲツは辺りをキョロキョロと見回す。
「……視線が痛いよ。気のせい?」
 気のせいではありません。きっと。
「ぬいぐるみさんいっぱいで凄いですぅ」
 リンカは大きな狼のぬいぐるみを持ち、振り返る。
 そこにあったお婆さんの頷く姿を見て、嬉しそうにぎゅぅっと抱きしめた。
 レンファが見つけたのは九本の尻尾が付いた狐のぬいぐるみ。
「ん〜! 可愛い!」
 抱きしめ頬擦りをして……恥ずかしくなり顔が真っ赤になってしまった。

「(見付けた……! 僕のたった1人のお姫様!)」
 こちらは人型の人形の部屋。
 ルシェルが見つけたのは可憐な人形。
「大切にするので、この子を僕に預けて貰えないでしょうか? ずっと一緒に、この子を側で見守ってあげたいです!」
「おぉ! これこそ、昔のわしにそっくりぢゃ!」
 狂戦士のそれをみつけノンが嬉しそうに叫んだ。
「本当にたくさんいますのね、抱かせてもらってもよろしくて?」
 イングリドは子供の頃に持っていた人形に似た一体を選び抱き上げた。
「ありがとう、大切に致しますわ」
 エルは人形の表情を覗き込んでいた。
「この優しい表情はシェードさんに似てる……これにしようっと!」
 そしてお婆さんに向き直り服や眼鏡を作らせて貰えるようにと頼んいると、青い髪の騎士の人形を抱いたアリエノールも、私もと頭を下げる。
「おばあさんのところに、人形造りの研修に通えたらいいのですけれど……」
「いつでもいらっしゃいな」
 老婦人は優しく微笑む。
 ふんふふ〜んふ〜ん♪ と暢気に家の中を歩いていたチアキは、ふと視線を感じて振り返った。
 人形のはずなのに、何故か冷たい視線。
 すぐさまお婆さんに譲ってくれと詰め寄ると、同じモノを指差しているクッキーがいた。
「くぅ、これ好きなのね! これ大事にするから欲しいのね!!」
「まぁまぁ。同じのはまだありますから喧嘩しないで、ね?」
 そう言って、お婆さんはそれぞれの手に金髪のエルフの人形を渡したのだった。

 人形を展示していたのとは別の部屋に、針に布に型紙に、色々な人形作りのための道具が並べられていた。
 部屋を埋め尽くすように思い思いの場所に座る冒険者たちの姿にお婆さんは顔を綻ばせた。
「まぁまぁ、こんなに沢山の方に来ていただけるなんて」
「今日はご指導をよろしくお願いします」
「おばーちゃん、よろしく教えてください」
 老婦人の姿が見えたところでフォルトとシルルに続き皆が頭を下げ、教室が開かれた。
 フォルトが作っているのは恋人に似せたエンジェルの人形、そしてコッソリ作っているのはお礼のためのお婆さんに似せた人形だった。
「あ……このお人形さん、すごい美人さんだー」
 参考に、と飽きっぽさを気分転換で紛らわせながらシルルは黒猫のぬいぐるみを作っている。
「お人形さんかぁ、そういうのには縁がなかったな」
 ターバンの上から髪をガシガシと掻きながらミネルヴァは呟く。
「そういえば、縫い物はそう得意じゃないんだ……」

「良し! これしかないね♪ オレの作りたい人形は……最愛の恋人ニノンちゃんの人形だ!」
「ん、本人が目の前にいると素敵なのが出来そうなぁ〜ん」
 お互いに向き合いながら人形を作っているのはニノンのキュオン。
「目の前にイメージがいるんだから、好都合だよね♪」
「……っと、見惚れてる場合じゃないなぁ〜ん」
「……可愛い」
 慌てるニノンの姿に微笑みが自然に零れる。
「お人形っ……作るのならぁ〜かわあいいっ〜クィンスくんをモデルにするですよぉ〜」
 設計図を前にう〜んと唸りながら頭を捻るクィンスに眼鏡をきらりと光らせて見つめながらアカリは歌を歌いながら針を進める。
「ふふっ〜できましたよぉ♪ おばあさまぁ〜どうでしょうかぁ」
「ふむ。こんなもんかな?」
 コーガはお婆さんに作り方を聞きながら友人の恋人の人形を作っていく。
 友人へのプレゼント、らしい。
「何故みんな微妙な顔をしてるでショウ……? 上手く出来タ思いまスのに」
 よくわからない謎の物体を作り上げたイーオーは、周りの視線を不信がりながらも苦戦している友人の方を見にく。
「何作るタでスか〜?」
「何作ってるんだ?」
 同じく覗き込むカノンの声も聞こえていないようにダイは叫ぶ!
「待っていろヒヨコよ! 今、オレが完成させるッ!」
 そして針にディヴァインチャージをかけようとして!
 アホかぁぁぁ! すぱーんと景気イイ音と共に後頭部をハリ扇のようなモノで叩かれる。
「まーだ? まだ出来ないのかよぉ……」
 キョロキョロと周りを見回すダイに駄々を捏ねるようなカノンの手にはエンジェルの人形があった。

 一生懸命にぬいぐるみを作っているのはシィナ。
 兎のぬいぐるみを作る彼女の指は何度も針を指したのかバンソウコウがいっぱいだった。
「イテッ! んあー! チキショー、指に針ささったっ!!」
 こちらも、不得意な裁縫に奮闘している。
「なーなー、ばーちゃん、ここはどーすりゃいいんだ?」
 それでもお婆さんに習いながらシーグルはオリジナル人形を作っていく。
「あいたぁっ!」
 大好きな人の誕生日プレゼントにと、頑張るルゥル。
「一体何回、針で指をつついたかなぁ〜ん……? この不器用さ、どうにかならないかなぁ〜ん」

「おばーちゃん、ありがとー。大事にするね」
 銀のテディベアを抱いたヤタは友達たちの進み具合を覗き込んでいく。
「指刺した! いったーい!」
 叫びながらハルトはジョナサンに教えてもらいながら作っていく。
「うう、痛いなぁー。でも頑張って作るもん……」
 そのジョナサンといえば、マイ裁縫セットを持ち込み、人形にお守りを入れようとして悩んでいた。
「え、兎の足は流石に……ですか?」
 友人達に止められ四葉のクローバーを縫いこむその姿に、リラも真似をして木の実を入れようとしているみたい。
「好きな物尽くしって、幸せな気分になれるよねっ」
 好物を入れたぬいぐるみを振って音が聞こえると、自然と鼻歌と独り言も出てきてしまいます。
「冒険中にお腹が減ったら、これ見て頑張ろうっと♪」
「……できたーー! わーい! 綺麗に出来た! ねえねえ、皆出来たよーー!」
「おめでとう、モモさん♪」
 出来上がった人形をぎゅっと抱きしめるハルトに友達たちからおめでとうのコトバが送られる。

「うん……ちょっと形がおかしいけど……、可愛くできたかな?」
 初めての裁縫に四苦八苦しながら、それでもなんとかタダシは人形を完成させた。
「皆はどんな人形作ったんだろう? ……あ、見っけた〜」
 みつけた友人達に駆け寄ると、ちょうどシトリが器用に人形を作っている所だった。
 いつか可愛いお嫁さんになれますようにと願いを込めた花嫁人形。
 持ってきていたドレスと合わせて……できた!
 そして、キョロキョロと部屋を見回す。
「恋人に送りたいんだ。……頼む」
 迷った末に選んだ一つを持ってアキトが来た。小さく質素だが何処か暖かい感じのする白い鳥の人形。
 お婆さんは暖かく微笑みながら、快く頷く。
「貴方が選んだものだもの。その恋人さんもきっと喜んでくれるわね」
 そんなアキトに声が掛る。
「アキト見てみて、ボクの自信作だよ!」
 振り向いた先には、仲間達。
 あぁ、と歩み寄ってくる仲間に顔を向けて……ピタリと止まる。
「……あれ……タダシ?」
 顔が赤くなり、鼓動が早くなる。
 落とした人形を拾うフリをしながら、顔を俯けて照れを隠していた。

「ま、まぁ、一回目から上手く作れるとはおもってないさ」
 少しいびつになってしまった人形を見つめて、レオンはうんうんと頷く。
「コレは……しまいこんでおこう」
 でもやっぱり恥ずかしいのか、袋の奥に押し込める。最初の決心は何処へいってしまったのだろう。
「皆さん上手くできてるのかしら」
 ミスティアは自分に似せた人形を作り上げて、みんなの作品の出来が気になるのか周りを見回す。
「贈る時は丁度いい貰い物があったって事にしよう」
 誕生日に¥の感謝を込めた贈り物。君を守ると、誓いと願いを花言葉に寄せて。
 ソーアはお守りを縫いこんだパペットを持ち上げて呟く。
「マヴェルに作ってあげたいんだ。教えてくれる?」
 自分で描いた絵を見せながら、アイリが尋ねる。
「ボク、そんなに器用じゃないんだけど、作れるかなぁ?」
「えぇ。きっと上手くいくわ」
 にっこり微笑むお婆さんに教えてもらいながら縫っていく。
「マヴェル……喜んでくれるかな……」

「できたぁ〜♪」
 完成したクジラの人形を胸元でギュッと抱きしめるミヤクサ。
 お婆さんのお手伝いに、と彼女は使い終わった道具の片づけを始めた。
「む〜。可愛い。ここにいる子たち、みんなつれて帰りたい……」
 完成した自分の猫のぬいぐるみと、展示されているものを見て、ルリィはぬいぐるみに埋もれる自分を想像した……自然と笑みが零れる。
「どう? 上手くできまして?」
「はは……すいません、不器用なもので」
 設計図と見比べながら、苦笑するエリシャの手には、少し不細工な熊のぬいぐるみ。
「見た目は悪いですが、喜んでくれると嬉しいのですが……」
「きっと大丈夫、思いは伝わるわ」
 傷だらけの手に、優しい瞳を向けて老婦人は微笑む。

 フィエルは頭の中に昔持っていた小さなぬいぐるみを思い浮かべながら黙々と針を進めていく。
「……あ」
 尻尾の位置が少しずれてしまった。
「手作りで作ろうかな。せっかくだし、あり物の宝石なんかも胸元につけて……」
 エリスは作る人形の形を考えていた。浮んだのは故郷に居たあの動物。
「私はルエアさまという方に……♪ 前々から黒いノソリンのぬいぐるみを欲しがっていらしていたので、拙い私の手製では御座いますが……差し上げようかと……」
 ヨシノはお世話になったお友達への贈り物にしようと、黒いノソリンのぬいぐるみを作っていた。
「今度は兎の人形にも挑戦してみましょう♪」
 出来上りを見て、抱き上げて。次に何を作るかまで思いは伸びる。
 サナは丁寧にひと針ひと針進めていく。
「幸せそうな微笑を浮かべた……これは貴女の姿の人形ね?」
「普段一緒にいられないあの人の傍に、私の代わりに置いて欲しいので……」

 サリアの作る人形の手には、四葉のクローバーの押し花と【愛しい人】と書かれた紙。
 自分と愛しい人の幸せを篭めながら一生懸命に作っていく。
「(この熊がいつか想いを伝えるように願いをこめて……。きっと幸せになれるわよね? 大切な人と……)」
「ポプリを詰めたいと思うのですけれど……」
 お婆さんに話し掛けたのは、ヒナ。彼女は型紙をもって灰色の猫を作ろうとしていた。
「えぇ。では、崩れないようにしなくてはいけないわね」
 優しく手ほどきをしながら、ポプリの葉を詰めていく。ぎゅっと抱きしめると潰れてしまうから、そっと、大切に。
 指をささないように集中しながら針を進めていく。
 忙しく各所であがる、指をさした痛みの声に、治療をしてまわるミント。
 彼女の座っていたイスには可愛い猫のぬいぐるみがちょこんと座っていた。
「お人形さん……上手く出来ると良いな……」
 微笑みながら、グラーツィアが作るのは二つで一つのペア人形。
 喜んでくれるでしょうか……と愛しい人を思いながら作っていく。

「裁縫なんてのはあまりやったことも無いんだが……」
 悪戦苦闘しながらも、ウィルダントはがんばる。
「世話になってるヤツがいるからな。精一杯頑張らせてもらうよ」
 作りは少しぐらい荒くなっても、しっかりと思いの篭められた人形を。
「クィンス、俺も一緒に設計図書いていいかな?」
 設計図を描き始めたのはレイ。
「……ったぁ! また指に刺したー」
 大好きな人へのプレゼントにと、不器用ながらもがんばって。
 何度も失敗をしながら。最初の不安も忘れがんばって。
「か……完成したっ! わーい!!」
「できたー!」
 そういってクィンスが掲げたのは苺と肉のぬいぐるみだった。

「ばーちゃんはどんなこと思いながら人形をつくってるんだ?」
 ディグヴァイスが大きな黒犬の人形を作りながら尋ねる。
「あぁ、それは私もお伺いしたいですね」
 レオンハルトもちくちくと小さな人形を縫いながらその話に乗る。
 この老婦人も寂しいのではないか? 家族と離れて暮らす寂しさを紛らわす為に参加した自分と同じで……
「そうねぇ……最初に作ったのは自分の子供達のためだったかしら。喜んでくれたら嬉しい、と」
 思い出すように語るお婆さんの瞳は、遠くを見つめているようで、でもすぐに部屋で針を進める皆に向けられる。
「でも、今ではこの作品が子供たち。この子たちが居ることで、誰かが笑ってくれるのは嬉しいことよ」
 そう言って、一体の人形を抱きげ、子に向けるような優しい笑みで。
「だから、子供に向ける愛情、それが私の込める思いね」
 にっこりと微笑む。
「ゴメンなさいね。お婆ちゃん話じゃ面白くなかったわね?」
「じーちゃんとかばーちゃんとかは大好き。なんだか暖かくて、心が温かくなるから」
 彼の頭をそっと撫で、今度はレオンハルトに。
「そこはもう少し、遊びを持たせた方がいいわね」
 そっと教えるのは、彼の作っているのがきっと、愛に溢れた子供の人形だったからだろう。


「皆さん、今日は本当にありがとう。沢山の方がきてくれて、本当に楽しかったわ」
 すっかり赤く夕日に染まった村の中で、お婆さんは嬉しそうに微笑んだ。
  思いを込めた人形やぬいぐるみ、そしてそれを抱くみんなに優しい瞳を向けながら。
「自分で作ったのも私の子達も、大切にしてあげて頂戴ね」

  【おしまい】


マスター:仁科ゆう 紹介ページ
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