≪硝子の社≫湯けむりは秋の香り 〜黄金栗の庵〜



   


<オープニング>


●湯けむりは秋の香り
 秋の風に錦が舞う。
 夏の滴るような鮮緑をそぎ落とした木の葉は黄金や紅にその身を染め、どこか物憂げな風に誘われて高く澄んだ空に踊る。その様はまさに絢爛。
 紅葉の美しさを堪能するには今しばし時が必要であろう。通常であればもう少し秋が深まるのを待たねばならない。しかし――。

「……温泉に行きたいですわ……」
 薫り高い茶で一服して茶室の窓から竹林を見遣り、混沌の哀天使・セーラ(a20667)が小さな溜息と共に呟いた。
「温泉ですか!?」
 すぐ傍で落雁を齧っていたボギーがぴくりと尾を揺らし、がさごそと自分のバッグを漁り始めた。
「うーんと……あ、ありました。こないだ温泉のチラシをもらったですが、この『黄金栗の庵』って言う温泉でかけ流しの露天風呂と秋の味覚ご賞味ってのがあるですよ〜」
「それは……素敵ですわね」
「あ、あとこの『黄金栗の庵』の露天風呂ではもう紅葉が見られるらしいのですよ〜。夏が終わったばかりなのに紅葉狩りできるなんて粋ですね!」
「……まぁ……」
 温泉と紅葉。
 このキーワードで、セーラの心が決まった。

●黄金栗の庵
 ある山の中腹に裕福なご隠居が己の楽しみのために庵を結んだ。風雅な佇まいの庵と紅葉が美しい露天風呂は、ご隠居が人を楽しませることを好んでいることもあり一般客にも開放されている。
 硝子の社ご一行様も最初は一般客に混じって温泉を楽しむつもりだったのだが、ボギーが持ち込んだ新情報により状況が一変した。
 その山の頂上に庵の名の由来ともなった『黄金栗』という樹があるのだが、そこから『黄金栗』を取ってくるという条件を満たせば庵と温泉を貸切で使うことができる上、秋の味覚スペシャルコースが食べ放題になるというのだ。
「この『黄金栗』って一粒が拳大のでっかい栗で、皮もイガも金色なんだそうですよー。何でも樹から落ちて来ないので、登って採らなきゃならないから結構面倒らしいのです」
 だが山に登って栗を採ってくるだけで貸切露天風呂とスペシャルコース食べ放題だ。折角の機会を逃す者がいるだろうか。いや、いない。
 早速志願した先発隊が『黄金栗』のある山頂へと出発したが、丘と呼んでもいいほど小さな山であるのに夕方になっても先発隊は戻ってこなかった。
 流石に心配になって山頂へと向かった一行が見た物は――!

 頭から血を流して気絶している先発隊と、凶器と思しき黄金のイガ栗(血糊つき)。
 そして――『黄金栗』の樹上でイガ栗を抱えて騒ぐ数頭の猿であった。

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参加者
紅蓮鳳蝶・シャノ(a10846)
黒翼に抱かれる魂・コクセイ(a16410)
混沌の哀天使・セーラ(a20667)
漆黒の竜巻・グレイン(a22658)
麗艶なる紫風・サカエ(a22774)
狂刃鉄・ジズ(a24565)
天照月華・ルフィリア(a25334)
九十九道・ハビット(a25682)
聖剣の王・アラストール(a26295)
前進する想い・キュオン(a26505)
蒼天を旅する花雲・ニノン(a27120)
相思華・キヒメ(a29102)
突撃おばさん牙狩人・ケイト(a30037)
宵闇を歩く者・ギィ(a30700)
若草のプリンス・オージ(a31491)

NPC:ハニーハンター・ボギー(a90182)



<リプレイ>

●黄金栗連続殺人(?)事件
 遥か高く澄んだ空はまさに秋晴れ、絶好の行楽日和。
 目指すは少しばかり早い紅装束を纏った秋の山。その山頂には黄金に輝く栗があるという。
 そして黄金栗を採ってくれば、山の中腹にある風雅な庵と露天風呂貸切、なおかつ秋の味覚スペシャルコース食べ放題――。
 偶々そんな情報を入手した硝子の社の面々は、勿論黙っちゃいなかった。
「栗を採って来るくらい楽勝だろ。秋の味覚は頂きだなっ♪」
「そうそう、小さな山だし簡単だよ♪」
 早速宵闇を歩く者・ギィ(a30700)や流し目のプリンス・オージ(a31491)ら数人が山頂へ向かう。だが夕刻になっても彼らは戻ってこなかった。
「……何かあったんじゃないだろうね」
 麗艶なる紫風・サカエ(a22774)の何気ない言葉に、残っていたメンバー達も不安を覚え急ぎ全員で山頂へ向かう。殆ど駆けるようにして登った山頂で彼らが見たものは……。
 黄金のイガ栗を髪飾りの如く脳天に突き刺したまま伏臥した九十九道・ハビット(a25682)に、その栗に手を伸ばすような姿勢で地に伏すその生涯呪われし騎士・アラストール(a26295)。そしてオージと彼を庇うように覆いかぶさった突撃おばさん牙狩人・ケイト(a30037)が倒れていて、傍には何故かひらひらした薄絹を纏い、薔薇を咥えて横たわるギィ。
 彼らは皆頭から血を流し、辺りには凶器と思しき血染めのイガ栗が転がっていた。
 その光景にはまさしく――
「……死屍累々……」
 淡々と呟かれた天照月華・ルフィリア(a25334)の言葉が似つかわしかった。
 狂翼の破皇・コクセイ(a16410)もやけに落ち着いた風情で空を見上げ、大きく伸びをする。
「高い空、心地の良い風。そして血付きの栗……は、違うね。うん」
「そんなこと言ってる場合じゃないなぁ〜ん! 血まみれ連続殺人事件なぁ〜ん!」
 蒼天をあおぎ旅する花雲・ニノン(a27120)が慌てて被害者(?)達に駆け寄った。そして癒しの技を試みようとして、ふとオージの傍に頁が開かれたままの詩集が落ちていることに気づく。
「まさか……ダイイングメッセージ?」
 ニノンの隣に屈みこんだ前進する想い・キュオン(a26505)が詩集を拾い、眉を顰めつつその頁の詩を読み上げた。
「『猿……おぉ、貴方はなぜ猿なのですか?』……何これ猿の詩って珍しいね……そうかわかった! オージ達をやった犯人は……!」
 キュオンの声に釣られるように全員が顔を上げる。するとそこには、黄金の栗を実らせた樹とその樹上でイガ栗を持って騒ぐ猿達が。
「さてはあの猿が黄金栗を投げて来るのですね……ここは何としても栗を手に入れなければ!」
 彼岸花の誘い唄・キヒメ(a29102)が掌から粘性のある糸をふわりと生み出し、猿の投げる栗を受け止めようと糸を網の如く広げて樹へ向ける。
『ウキー!!』
 夕陽に煌く糸は酷く目立つのか、猿達はまるで挑発されたように怒り狂って次々とイガ栗を投げ始めた。その内ひとつが見当違いの方向へ飛んでいく。
「……あっ……」
 自分を目がけ飛んで来た栗に混沌の哀天使・セーラ(a20667)は一瞬立ち竦んだが、すかさず漆黒の竜巻・グレイン(a22658)が彼女を背に庇い盾で栗を弾き落とす。
「グレイン様……」
「黄金栗とは少しばかり情緒にかけるが……まあ、セーラの為だ。仕方あるまい」
 グレインは僅かに瞳を緩めてセーラに微笑みかけ、足元に落ちた栗を拾い上げた。
「くっ……おのれ猿め!」
 静かな怒りが狂刃鉄・ジズ(a24565)の全身から揺らめくように立ちのぼり、何故かマッスルチャージが発動する。細身の体に筋肉を盛り上げて、ジズは地面に横たわるギィの頭を膝に抱え上げた。
(「温かい……そうかきっと優しい女の子が俺を膝枕してくれて……」)
 ほんのり伝わってきた人肌の温もりに意識を取り戻したギィが、淡い期待を込めてうっすらと瞳を開ける。だがそこにあったのは、やけに筋肉を発達させたジズの姿。
「ち、畜生ケツ撫でてやる〜!!」
「のわっ!? ……と、何じゃおぬし生きとったのか」
 いきなり尻を鷲掴みにされたジズは反射的に立ち上がってしまい、鈍い音と共に頭を地にぶつけたギィは尻を撫でまわそうとする姿勢のまま再び気を失ってしまう。倒れ伏したギィの向こうには、妖しい輝きを瞳に宿した朱の誓い・シャノ(a10846)が佇んでいた。
「フフフフ……」
「シャ、シャノ?」
 恐る恐るコクセイが声をかけるがそれも届かぬ様子で、何かに取り憑かれたかの如くシャノの瞳がぎらりと光る。そして全身に黒炎覚醒と見紛うばかりの邪悪なオーラを滾らせ……樹に向かって一気に駆け出した。
「露天風呂……紅葉……フフフッ……待ってて……」
『ウ、ウキッ!?』
 下から猛然と登ってくる不気味な気配に樹上の猿達がびくりと身を強ばらせた。にも関わらず、何かに覚醒したっぽいシャノがあり得ない程のスピードで猿達に迫る!
「フフフフッ……露天風呂……邪魔させない……絶対……」
 シャノが猿達を見上げ、唇を歪ませにたりと笑う。
 その理性ある者とは思えぬ笑顔は、猿達の本能的な恐怖を呼び覚ますに充分すぎる物だった。
『ウキーーーーッッ!!』
 完全な恐慌状態に陥った猿達はまるで岸壁から身を投げるような勢いで次々と樹から飛び降り、まっすぐに山の斜面を下って行く。その背中を呆然と見送って、サカエがゆっくりと振り返った。
「えーと、これで万事解決……だね?」
 多分、と全員が頷いた。

●紅葉の湯
 黄金栗を手に入れた硝子の社一行は無事貸切と食べ放題の権利を得、怪我が癒えた被害者達と共にまず露天風呂へと向かう。
 茅葺き屋根に木と珪藻土で作られた風雅な庵。
 庵の庭という趣でしつらえられた露天風呂に足を踏み入れ、セーラは息を呑んだ。
 鮮やかな紅葉が溢れんばかりに辺りを彩り、黒御影石に雲母を散らした風呂の上にひときわ美しく色づいた枝が差しかかる。緋色と呼ぶに相応しい見事な葉が黒御影に湛えられた透明な湯に映りこみ、滾々と湧き出す泉に揺れた。
 足元には真白な石が敷き詰められ、奥には柔らかな緑の苔を纏った置石が風に舞散る紅葉を受け止めて。
「……まぁ……素敵な景色ですこと……」
 ほぅと息をつき、しばしその景色に見惚れてしまいそうになったセーラであったが、ふと人の気配を感じそちらに目をやって、またもや息を呑んだ。
「身体を隠すと言う者は疚しい事があるのだと思います! 私には疚しい事は無い、故に隠す理由はありません!」
「別に……タオルは必要ないかな」
 全裸で仁王立ちになったアラストールが気勢を上げ、その隣にやはり一糸纏わぬコクセイが佇んでいたのである。セーラは殿方達がまだで良かったと思いつつ、慌てて二人にタオルを巻きつけた。
 その間に『1−B組 シャノ』と書かれた布を縫い付けた水着姿のシャノが温泉に一番乗りを果たし、紅葉の髪飾りで髪を結い上げ綺麗なうなじを見せたキヒメが温泉の縁でうっとりと紅葉鑑賞を始める。そこに他の面子と一緒にオージがやってきて、二人の姿にぐっと拳を握りしめた。
(「ビバ温泉! ビバ混浴! この日のために毎日風呂で鍛えてきたんだ、僕はちょっとやそっとじゃ逆上せないよ!?」)
 オージはこの素晴らしき混浴パラダイスを堪能すべく辺りを見渡し、上品な黒の水着を纏ったセーラに目を止めた。彼女のぬけるような白い肌に思わずぽろりと本音が漏れる。
「一度でいいからセーラさんの真珠のような白いお背中を流してみたい……」
 その途端、背後で竜巻の如く渦巻く冷たい殺気!
 恐々と振り返ってみれば、何故か長槍の如き棒とロープを持ったグレインが薄い笑みを浮かべて立っていた。一気に血の気の引いたオージは、口をぱくぱくとさせながら必死に言い訳を試みる。
「い、いやあのっ、僕がセーラさんのお背中なんて、その、恐れ多いよね! 僕はボギー君で我慢しとくよ!」
 オージは通りかかったハニーハンター・ボギー(a90182)の腕を引っつかみ、慌ててグレインから逃げ出した。そのまま隅でぷるぷると震えていたオージを、朗らかな笑顔でケイトが手招いた。
「オージちゃん背中流してあげるなぁ〜ん」
「ケ、ケイトママぁ!」
 泣きながら駆け寄ってきた義理の息子を優しく抱きとめて、ケイトは彼の髪を優しく撫でてやった。
「どうしたなぁ〜ん? 何か怖いことでもあったかなぁ〜ん」
「ん、もう大丈夫だよケイトママ! そうだ、一緒にボギー君の背中を流してあげよう!」
 涙を拭いて明るく笑うオージに、ケイトも満面の笑みで頷く。
「オージちゃんは優しい子なぁ〜ん」
 ふ、二人がかりですかっ! と怯えるボギーをがっちり捕まえ、二人は仲良く彼の背中をぴかぴかにしてやるのだった。
「皆楽しそうだな……ふふ、ボクも玖月がいれば楽しいけどね」
 背中流しに勤しむケイト達を見遣り、コクセイはそっとペットの顎を撫でてやる。温泉を一緒に楽しむのは難しそうだけれど、こうして一緒に絢爛たる秋の風景を楽しむことができる。そう思えば何だかとても嬉しくなった。
 儚げな肢体を淡いブルーの水着に包み、ルフィリアは湯の中に漂うように体を伸ばす。
(「楽しそうな皆を見ていると……私まで楽しく思えてしまうのは何故なのでしょうか……?」)
 露天風呂をぐるりと見渡して、皆の楽しげな様子にふふ、と忍び笑いをもらす。大切な仲間達の楽しげな声や表情はどこかくすぐったくて、とても幸せなものだった。
 白い湯けむりの間に鮮やかな紅葉が揺れる。その葉は深紅で薔薇色で、橙で山吹で。僅かずつ異なる色彩が重なり深まって、豊かに鮮やかに世界を染め上げていた。
「見事じゃのう……」
 のんびりと湯に体を浸し、ジズは酒杯を傾けながら頭上の紅葉を見上げて目を細めた。すぐ傍ではサカエが関節を曲げたり伸ばしたりしてゆっくりと体をほぐしている。
「風流だよね……ずっと景色を見てて逆上せないようにしないと」
 サカエが深い吐息と共に言うと、ジズは笑って杯を掲げた。
「たまには逆上せるのも良いかもしれんのう……」
 だが彼らの丁度向かいには、湯でも紅葉でもない原因で逆上せあがっている者がいた。
 ニノンと寄り添うようにして湯に浸かっているキュオンである。
(「皆何を話してるんだろ。オレにはちっとも聞こえないよ……だって! 隣にタオル一枚のニノンちゃんがいるんだよ!」)
 胸の鼓動は怖いくらいにどんどん加速していって、露天風呂中に聞こえそうなほどバクバクと鳴っている。
「温泉とっても楽しいなぁ〜ん♪」
 ニノンがぴっとり身を寄せてくれば、もうそれは失神しそうなほどで。だって彼女の白い肌はほんのり桜色に上気していて、それが自分に触れていると思っただけで理性が彼方に吹き飛びそうになる。
 だが本気で意識が弾けそうになった瞬間、キュオンはまるで自分達を観察しているかのような誰かの視線に気がついた。
 顔を上げ目線で問いかけると、視線の主ハビットは至極真面目な表情で空を指差した。
「そろそろ日が暮れるが……二人は闇の中にこっそり消えたりしないのか? いや心配するな、私がエルフの夜目で闇の中の二人を見守ってやろう」
 その言葉に、傍らで盆と酒杯を湯に浮かべていたギィがぷっと吹き出した。
「そりゃいいや、エルフは夜覗きができて便利だな」
「覗きっ!? オレはそんな覗かれるようなことは……っ!?」
 動揺したキュオンは顔を真っ赤にして立ち上がり、そしてくらりと倒れこんでしまう。
「キュオンさんしっかりなぁ〜ん!」
 ニノンの叫びが藍色の空に吸い込まれていった。

●秋の味覚
 庵の縁側で横になったキュオンが回復してきた頃、ようやくお待ちかねの『秋の味覚スペシャルコース』が運ばれてきた。秋の料理の数々に、セーラお手製の黄金栗と山菜の混ぜご飯である。早速ルフィリアが混ぜご飯をつついて顔を綻ばせた。
「……美味しいです……でも、意外と山菜が少ないですね……」
 するとセーラは困ったように微笑んで、黄金のイガ栗を頭に刺したハビット(気に入ったらしい)は何気に視線を逸らせた。どうやら天麩羅を愛するハビットか天麩羅作りのため山菜をくすねてしまったらしい。だがすぐに卓に並ぶ料理に気をとられ、誰もそれは問題にしなかった。
 透明な艶を放つぼたん海老の造りに、鶏そぼろと里芋饅頭の茸餡かけ。薄い餅を挟んでじっくりと蒸し焼きにされた猪の肉には深い香りの黒酢のたれが添えられて、炭火で炙られた秋刀魚とむかごの素揚げの器の端には細かな岩塩が煌いて。飴色に煮られたサツマイモは金の輝きを放ち、上品な色の味噌と焼かれた秋茄子の田楽は焦げ目がとても美しく、皮を剥いて透明な器に盛られた柿と葡萄は何やら宝石のようだった。
「これを食べ放題……?」
 アラストールは料理の前で陶然と瞳を潤ませる。いやいや節度も大事と幾度か頭を振るが、食への欲求にはどうしても抗いがたく。
 サカエは頼んで用意してもらった黄金栗入りの茶碗蒸しにご満悦で、ギィは酒杯を片手に肴になりそうな料理を摘まみ幸せそうな笑みを浮かべている。
 シャノは縁側に腰掛け、篝火に照らされる紅葉を見上げつつ箸でそっと里芋饅頭を割り、その隣には自分で揚げた紅葉の天麩羅を月と篝火に透かしてみるジズがいて。縁側の端ではコクセイがゆっくりと柿を味わっていた。
 グレインは背筋を伸ばして卓の前に正座し、綺麗な仕草でセーラの混ぜご飯を口に運ぶ。隣にいたセーラとふと目が合えば穏やかに微笑んで。
 その向かいにはひたすら黙々と料理を食べ続けるキヒメがいた。脇に押しやられた空の器を見るに相当の量を平らげているようだがキヒメのペースは全く変わらない。よくよく観察してみれば、時折彼女の箸が閃光の如き素早い動きで嫌いな物をつまみ、隣席の人物の皿に投げ入れていることに気づいただろう。しかし隣席の人物は全くそれに気づいていなかった。
 何故なら隣席の人物キュオンは浴衣姿のニノンに見惚れ、他が全く見えていなかったからである。
「お酌してあげるなぁ〜ん♪」
 ニノンが酌をしてくれるたびに彼は至福を噛みしめて、自分の皿の料理が凄いことになっているのに最後まで気づかなかった。
 そして恋人達の向こうでは卓を寄せて作られた舞台に程よく酔ったケイトがあがり、オージとボギーに持たせた風呂敷の影で全裸となって踊り、ノソリン変身を披露する。たまには吟遊詩人らしくとオージが横笛を奏でれば、ノソリンのケイトが「なぁ〜ん、なぁ〜ん♪」と歌い、皆の楽しい笑いを誘った。

 空にはすっかり漆黒の帳が下りて、紅葉はただ月と篝火に照り映えるのみ。
 けれどやっぱり紅葉は綺麗で、ちらりと見るたび見上げるたびに皆の心を幸福で満たす。
 今日ここでこの人達とこの幸せをわかちあえたこと。
 世界の全てにそれを感謝したくなる程に、楽しく幸せな時を皆が過ごしたのだった。


マスター:藍鳶カナン 紹介ページ
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作成日:2005/10/02
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