手繰る秋の金盞花



<オープニング>


 荊棘の霊査士・ロザリー(a90151)は、小さな花園の中にある小さな図書館の話をした。
 自分が時折通う場所なのだ、と言うことを言外に滲ませた。涼やかな風が秋に咲く金盞花の香りを運んで来る。秋色の金盞花は目と心を癒してくれるに違いない。そんな庭に木製の椅子を置いて、手製のクッションに埋まるようにして本を開く。
 空が朱色に染まるまで、時を忘れて本を読み耽る。
 そんな秋の楽しみ方が在っても良いのでは無いか。
「……図書館は冬を前に閉館するの。管理してらっしゃる方が、かなり御年配の方で……本も、処分なさるって、仰っていたわ……」
 僅かに小首を傾げて、瞳の中に移ろいを映した。
「……本を、引き取ってくれる方も探しているらしくて。ほら、古い図書館だから……きっと面白い本も、あると思うの……」
 呟いてから、瞳の焦点を僅かに合わせて、
「一緒に、行ってみる……?」
 ともう一度小首を傾げた。
 深まる秋の空の下、古びた本のページを追う――休日の過ごし方としては、最上級に贅沢だろう。

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参加者
NPC:荊棘の霊査士・ロザリー(a90151)



<リプレイ>

●金盞花の園
 暖かな黄色が咲き乱れる花園の中心にある、古びた灰色の図書館。全ての蔵書を読みつくしてしまいたかった、とアリギエルの胸に感傷が生まれる。訪れた閉館日を残念に思いつつ、ルミリアも庭に足を踏み入れる。エルファシアは、吹いた風に秋を感じ目を細めていた。
 読書を楽しみに遣って来たガルは、想像以上の人の波に硬直する。物悲しい秋空の下、想いの外賑わっている状況にガルスタは淡く微笑を洩らした。ラグナスは大きな樹の根元に腰を下ろし、本を開く。読書日和で何よりだ。感情移入しているのか、セイルフィンは先程から百面相をしていた。
 アリエノールも目当ての本を見つけたのか、満足げに図書館を出て来た。真剣に本を読むリツの横顔を見て、アクセルは穏やかに目を細める。静かで幸福な時間がとても愛しい。
 リュフィリクトは必死で本を隠していた。不思議がりタイトルを盗み見ればイツキにも理由は理解出来たが、彼を赤面させることになってしまった。
 本が見つかったらしいテマリは、ルシェルに誘われてベンチに座りに行く。マヴェルは読んでいる本が如何に面白いのかを語り、そんな彼の表情をアイリは酷く愛しく思った。
 地下書庫から引っ張り出してきたらしい本を、クーヤとアヤは頬を染めて覗き込んでいる。仲睦まじげに肩を寄せ合っていた。ミヤクサはひとりベンチに座り、真剣な表情でページをめくる。アスもまた、柔らかい空気の中で読書の秋を満喫していた。
 今頃の季節と言うものは、自分のことを素直に感じられる季節だとセントは思っている。だからこそ直感で本を選び、開いた。ふ、と唇が薄く笑む。ゆったりと読書を続けていたマモルも、此れはなかなか贅沢なことかもしれない、と機嫌良さげに花園を見渡した。
「秋だから……考えるものなのだろうか」
 伊達眼鏡を押し上げながら、ぽつり、とアイズが呟く。本から視線を剥がし、揺れる金盞花を見る。関係が無い事柄と思いつつも、想い人のことを考えた。
 フラジィルと顔を合わせ、フィリスは笑顔で声を掛けた。軽く挨拶を済ませると、彼女はヴィンと共に本を探して図書館の中へと入って行く。庭だけでなく、図書館の中にも人は溢れていた。

●石造りの図書館
「どの本も綺麗……」
 セリアは思わず感嘆に息を吐いた。恐らく本当に大切にされて読まれて来た本たちなのだろう。薄暗い図書館の中を歩むうち、ウカは故郷の家を思い出す。哲学書を片手に、紙とインクの独特の香りにオズリックは何処か落ち着きも感じていた。本の匂いがする、とディグヴァイスが目元を緩める。
「俺と旅路を共にしてくれる一冊があるかもしれないな……」
 此れだけ沢山の本があるのだから、とテンユウは呟いた。
 一冊だけ並び違っている本を見つけて、ウォルルオゥンはそれを手に取る。何故か惹かれ、紐解いた。適当に引き抜いた本に惹かれたのはアスゥも同じ。アイツに贈るか、と微かに唸った。
 目当ての本に手が届かないで一生懸命飛び跳ねていたプリマを、ベルウォートが助けてやった。同様にリヴァにも本を取ってやると、彼女は行き成り「友達になって」と言って来た。図書館には出会いもあるらしい。
 独特の雰囲気を好ましく思いながら、本棚の間をティーナが行く。興味を惹かれるたびに足を止め、本を取った。キニーネも装丁が美しい本を見つけると、ついページを手繰ってしまう。色褪せた本の表紙を優しく撫でて、ファオは慈しむように目を細める。閉館がとても残念だった。
 閉架の奥の書物が被った埃を払う。グレイは念入りに本を探し続けた。ティアもまた此処が古い図書館だからこそあるのでは、と願いをかけて本を探す。
「正義のススメは一体何処に………」
 ぶつぶつと呟きながらジークも本棚の間を行き来する。アティも昔、感銘を受けた本を探して真剣な顔をした。久し振りの本を読む機会に、愛読書を探そうとリセも必死になっている。アルフィルもまた、目当ての本があった。
「これなんて素敵だわ! 儚い恋と人生の物語……!」
 手にした本を軽く読み流し、ルーツァは思わず呟いた。図書館の中であるから、無論小声でである。
 将来世界中を歩きたいと言うフェルルの為に、フレイは適当な見聞録を一緒に探して遣っていた。分厚い絵画集を抱えたイーオーを見つけると、サレストは「気に入った本が見つかったんだな」と穏やかに笑む。
 ルミエールは一冊一冊丁寧に確かめながら、目当ての本を探していた。当初は真面目に紋章術の本を探していたはずのルリィの手の中には、何故か恋愛小説が納まっている。
 エイヤとロゼルティーンは、肩を寄せ合って本を覗き合ってはほくそ笑んでいた。極々普通に怪しい。けれど、読書を楽しんでいることには全く変わりが無いのであった。

●秋のひだまり
 アクアローズは旅団から持ち込んだお茶とお菓子を用意している。ギーは管理の老婦人に手土産として茶菓子を手渡した。あらまあ良い男ね、と言われ狼狽もする。シリウスが本の寄贈を提案すると、彼女は小さな目を瞬いてから、
「本の宛はもう決まっているのよ。ごめんなさいね」
 と柔らかに微笑んだ。リアンシェは先程から彼女の昔語りを楽しそうに聞いている。流れる平穏な時間の重要さを噛み締めながら、カナードは老婦人を労わっていた。グレイスも、興味を惹く本に出会えた礼を彼女に告げる。大切に管理された本たちは、きっと幸せだっただろう、と。
 図書館と庭の綺麗さは、やはり管理者の優しさによるものか、とユメジは納得した。ふと、彼女も閉館に関しては思い入れが強いのだろうな、と視線を移す。
 荊棘の霊査士・ロザリー(a90151)は穏やかな様子でラズリから茶を受け取っていた。俺は茶菓子は出せない、と肩を竦める彼の様子に目を細めている。喉が渇いていたのか一息に飲んでしまう彼女を笑って、アールグレイドがおかわりを注いでやった。
 御疲れ様でした、と茶菓子を差し出しながらシャラザードが言う。料理の本を手にして、美味しく出来たら御馳走しますね、と微笑んだ。
 その様子を見ていたジェネシスだが、誰かの肩でも当たったか、本の山がぐらりと揺らぐのを見た。慌てて抑えると、霊査士の冷たい手が微かに触れて思わず硬直したりする。本は無事抑えられ、彼は僅かに赤面しつつも、紅茶のカップへ視線を落とした。
 ミアの手にした詩集に視線を遣ると、彼女は困ったように微笑んで自分では余り読まないんです、と応えた。ちょっとした妬きもちです、と秘め事のように囁いて、
「ロザリーさんは、そんな風に人を好きになった事ありますか?」
 と問い掛けた。霊査士は二度瞬いて沈黙する。困らせたかと謝罪して、彼女もまた空を見上げた。青い空は、秋の色をしていたと思う。
 霊査士の手の中に無言で本を放った。本を開いてから顔を上げる霊査士を見て、「機会があれば、訊いて見たいものだ」と呟くように言う。彼女は聞き取り損ねでもしたのか、緩く小首を傾げた。イドゥナは瞳を細めるだけで微笑み囁く。
「貴女は、言葉を口するより瞳で語った方が良い」
 蒼い瞳を見開いてから、彼女は顔を伏せた。頬の色は白いまま、本を手繰り始める。
 咲き誇る金盞花の中、ティアレスは無言で立っていた。ナオが横に座って本を読み始めても――彼女も何も言わなかったが――無言のままだった。ユエルダが暖かい紅茶を勧めてやると、僅かに頬を動かし受け取った。
「金盞花を見たら、思い出すんだろうね」
 彼の呟きに、ティアレスは黙したままに目を細める。

●本の想い出
「あのお店も、整理整頓したら綺麗になるのでしょうかしら……」
 整然と並べられた本に、ルレイアは思わず苦笑した。古い本は余り読まないため、良い機会だとセルデューヴは思いながら本を探す。目当ての本は結局見つからなかったまでも、ガンバートルは良い本を見つけたようだ。
 忍びのフィーは一生懸命に父親が読んでくれた絵本を探し続ける。エリシャが偶然見つけた本は、詩集では無いものの素敵な童謡の本。図書は持つべき人の手へと動きつつあった。
 愛情に浸されてきたのだろう手入れが行き届いた本を見て、感嘆の溜息を吐くハーウェル。読めぬ本を手繰るうち、何故か涙が頬を伝った。
 紋章術士のフィーは「奇遇だね」と知人に声を掛けた。びくりと肩を震わすマオーガーの手の中にあった本に気付くと、二人の間には沈黙が落ちた。アイナも見知った頭を見つけ歩み寄ると、アストは驚いたように動きを止める。
 高いところの本を取ろうとして、一生懸命に背伸びをしているリンカとセナトを見、
「届かねェ? ほら、持ち上げてやッから早く取れよ」
 とゼンが手を貸してやる。ちなみにその高い棚の上では、何故か寝転がったティキが読書中だった。ジンも図書館の片隅で只管に本を読み漁っている。本棚の影で幸せを感じているマサキも、既に此れと思う本を見出していた。
 素晴らしい小説なぁ〜ん、と溜息を洩らすリィルアリア。彼女の横ではガイヤが無言で本を読んでいた。小説の主人公に同情してしまう。同情では無く、共感なのだろうか。
「……奴が帰ったら、一皿くらい料理作ってやるか」
 ぼそり、と呟いてグリムは一冊の本を引き抜いた。

 九十を越す来客が図書館を出始めた頃、ギバは気合を入れてモップを握った。素敵な図書館には最後まで綺麗でいて欲しかった。老婦人に重労働は辛いだろう、とユルカもまた作業に手を貸す。
 人が歩くと如何しても埃は立つもの。エポシャーナも非常に遣り甲斐を感じでいた。ふと本の山から覗いている腕を見つけ、トロンボーンが発掘する。本を取る際に棚が崩れたのか、図書の下からはジェンの姿が出て来たのだった。

 過ぎ去ろうとしている秋は、何れ白い雪を呼ぶ。
 永い年月を経た図書館は、その役目を終えようとしていた。


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