ベルークス音楽祭



<オープニング>


 告知。
 ベルークス音楽祭開催近し!
 【街の広場に作られた特設ステージにてお披露目コンサートを開催します。ぜひこぞって皆様参加下さい】

「……ベルークス音楽祭? はじめて聞いたなぁ……ボク」
「そりゃあね、何しろまだ事務所自体が出来たばかりだから、今回はお披露目ってことらしいし」
「へぇ……」
 酒場の一角。
 ライムとチェリーがカウンターごしになにやら仲良くお話をしている。
「楽しそうだな〜、いいな〜、いいな〜。ボクも参加したいなぁ〜」
「残念だが、舞台の上にたてるのはこの事務所に所属してる人のみなんだ。観客席なら大丈夫だと思うけどね」
「ふ〜ん」
 そういうライムはちゃっかり舞台の上で3人バンドで歌うらしい。
 ちょっぴり羨ましいチェリーである。
「でも楽しそうなお祭りだね♪ 成功すること祈ってるよ」
「ありがとう。すばらしいメンバーばかりだからね、気合も入るさ」
 今回は変な占い師(霊査士のことらしい)もいないし。ぐ。ちっちゃく拳を作るライムであった。

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参加者
NPC:三日月王子・ライム(a90190)



<リプレイ>

●観客席
「朝から並んでいたのに……この大盛況、凄いです!」
 パンフレットをしっかり胸に抱き、自分の後ろに連なる長い長い人の列を振り返るのはテルミエール(a20171)だった。
 開場と共に猛ダッシュ。会場最前列中央の辺りを見事にゲットできたのは、本当に嬉しかった。これこそ乙女の心意気ってやつだ。
「うにゃ……すごい人にゃ」
 ハツネ(a00196)もなんとか最前列をこじつけて、安心のため息をつく。
「早くから並んでよかったなぁ〜んね」
 一緒に並んでたエフィリフィア(a21317)がにっこり笑う。二人とも輝く舞台に憧れる者達だ。
 次には舞台に立ちたいと思いながら、ハツネはそっと手を伸ばして舞台に幸運の贈り物をする。淡く光りはじめる舞台。みんなに幸運がもたらされますように。
「お兄ちゃん〜! フィーネちゃ〜ん、こっちこっち〜」
 ウィスタリア(a00498)がはしゃぐように手を振っている。いい席を見つけたのに違いない。ルィンフィーネ(a02277)とアスティル(a00990)は彼女の元へ急ぐ。
 久しぶりの3人デート。嬉しさでウィスタリアは昨夜よく眠れなかったらしい。それを少し心配しながら、彼女を真ん中に腰掛け、3人は開演を待つことにした。

●開催
 初めてのコンサート、流石に満員御礼とはいかない。けれど広い会場の半分以上を埋め尽くす人数がそこには既に溢れていた。
「本日はお集まり頂きありがとうございます」
 舞台の上では、ベルークス音楽祭主催旅団の旅団長ユリーシャ(a26814)が丁寧な挨拶を行っている最中だ。
 ライムが嫌がったので、チェリーと一緒に司会をすることにしたヒカリ(a00382)は、二人で舞台袖に待機し、一緒に台本に見入っている。
 挨拶が終わったら……いよいよ最初のバンドの登場だ。

●虹色デイドリーム
 舞い降りてくるスポットライト(篝火)。
 誘うような大きな拍手。
 その光の中に飛び込むように元気よく最初に駆け出したのはパティ(a09068)。
 正統派アイドルと言って間違いのない可愛らしいドレスの彼女。手には小さなシンバルを持っている。
「今日は来てくれてありがとにゃ☆ ボクはpatty! 他のメンバーも紹介するにゃ☆」
 歓声の中でぺこりとお辞儀をして、パティは舞台袖に向かって呼びかける。
「medith〜!!」
 フリルいっぱいの丈の短いマタニティドレス姿のメディス(a05219)が駆け込んでくる。
「eddy〜!!」
 エディ(a26030)はヴァイオリンを響かせながら、ゆっくりと登場。
 その音色にあわせて、メディスがやさしく歌いだす。

♪逢い逢いて
物思う頃の我が袖に
宿る月さえ濡れ顔で
その言の葉ただ信じ 人想う心
風間に散る木の葉のよう

 曲調に合わせ、パティがダンスを踊り出す。
 ボーカルはやがてメディスからエディへと移る。音色はメディスのリュートに主旋律を移し、アップテンポながらしっとりと響く。
 それは愛の歌。男女の会話のように交互に、積極的で熱烈な恋の歌。
 パティがまるで二人の恋の妖精のように、可愛らしく舞い、歌う。観客達は彼らの紡ぐ物語にすっかり心を奪われてしまったように見えた。
 最後まで飽かさず魅了する素晴らしい楽曲が終了すると、沢山の拍手がステージを包んだのだった。

●銀緑の新星 〜ギフテッド・ウィンド〜
「……素敵な演奏でしたね……さあ、次はどんなバンドでしょう」
「発表するよ! 銀緑の新星〜ギフテッド・ウィンド〜!!」
 応えるようにリズムを刻むドラムの音。ギターの音色がうねり、鋭く正確なベース音が混ざる。
(「……クレセント・M・ライト、作戦行動を開始します」)
 光がステージに下りてくる間にそっと耳栓を詰め、ベースを持つクレセント(a27149)は冷静に思う。
「はじめましてー!ボーカルのアヤ(a10024)ですー♪」
 元気よくマイク(っぽいもの)を握りアヤが叫ぶ。もうひとりのボーカル、パティ(a20549)もセクシーチャイナ風衣装で笑顔を会場へと送る。
 ひときわ高い歓声をあげた少女が花束をアヤへと贈った。早朝から頑張って席を確保したテルミエール嬢である。
 花束を受け取り、とても上機嫌のアヤ。とびきりの笑顔は眩しいくらい。けれど、それを見守るメンバー達の表情がどこか不安そうなのは気のせいだろうか。
 ドラムを叩きながらワスプ(a08884)は耳栓を深く沈める。脳に直接響いたりしないように。
 ギターを握るアヴルはあまりの不安に顔色を変えている。どうか死人が出ませんように……。
 クレセントも目をつむり耳を閉ざし、外界から閉ざされまくった空間で孤軍奮闘に戦っている。
 前奏はそろそろ終わる。
 マイク(っぽいもの)を握り、笑顔をやや硬直させながらパティは一度メンバー達を振り返る。
(「みんな! 最後まで立ってるのよ!」)
 そして。
 アヤがすーっと息を吸い込み、大音量で歌いだす。

(「!!!!」)

 色んな意味で「凄い」楽曲が繰り出されていた。
 残念ながらその演奏を最後まで聞き終えた客はとても僅かであったという。
「素敵です……アヤさん」
 崩れ落ちた観客の中にぽつり立ち、未だうっとりしているテルミエール。足元にはハツネやエフィリフィア達が折り重なっている。ファンってすごいね……。

●蒼月蝶々
「……なんか凄い事になってるな」
 なかなか名前を呼ばれない。気になって舞台袖から覗き込むと、ステージも会場も何か死屍累々って感じ。
 なんだろうこれは。
「どうしたの? ライムさん」
 タイトな黒のロングキャミソールドレスを纏ったリゼン(a01291)が、ライムの後ろから顔を覗かせる。
「さあ?」
 肩をすくめるライム。
「まだ時間があるならもう少し合わせていきましょうか?」
 楽器を持ちレイク(a05680)が目を細めた。ライムは「それもありか」とにっこり笑う。
 3人が楽屋に引き返そうとしたところでチェリーがフラフラと立ち上がって呟くのが聞こえた。
「……う、うーん。何があったんだろ、頭がぼんやりする……」
 頭を抑えながらプログラムを確認するチェリー。次の出番の蒼月蝶々メンバーは足を止めた。

「んー、客を起こせばいいんだな」
 ライムが苦笑しながら呟いて、レイクとリゼンを振り返った。
「リゼン君の優しいその甘ったるい声で起こしてやればいいんだ。レイク君、準備はいいよね」
「ええ、いつでも」
「それじゃ行こう」
「わかった、頑張るね」
「ええ」
 リゼンとレイクはライムに続く。……緊張。レイクは自分が緊張していることを動きながら思った。
 戦場でだってこんなに緊張するかな……。しかし、不安はそう大きくない。

 リゼンの声を聞き、ライムの音を聞き、そして音色の響くステージの情動を感じながら、無心に演奏をすればいい。
 音の中に埋没する自己。自分が音を創る新たな一つの楽器となって……。
 優しく響く、魅惑の声。リゼンのボーカルの音で目覚めた観客達はゆっくりと目覚め、立ち上がって、歌に聞きほれていく。
 やがて曲は終り、再び満場の拍手が会場を包んだのだった。

●Fool
「はぁ〜よかったよう〜」
「……何があったんでしょうか……」
「とりあえず元気に次に進もう! 次は【Fool】!!!」

「こんばんわー。今日は集まってくれてありがとうございますねー!」
 紺色の生地に赤い瞳の鴉が描かれた着物をやや着崩すように身につけたユウ(a18227)は、シュゼット(a02935)と共に舞台の中央に立って、声を張り上げた。同じ基調の着物にシュゼットは赤い蝶、サルサ(a09812)は青龍が描かれている。東方風の衣装をアレンジしたビジュアル系バンドといったところか。
 一瞬で目を奪われた観客(特に若い娘さん方)がきゃーきゃーと悲鳴のような声をあげた。
 負けずに、観客席では最前列に辿りついたクリスト(a17149)が白いふわふわのスカートにポニーテール姿という娘さん姿で、花束を持ちながら声を張り上げる。
「狐王子ーーー!! 可愛いーーーー!!」
「ぉぉ〜う、いっぱい集まってんなぁ? さんきゅうなぁ〜?」
 サルサがふさふさの尻尾を揺らして、ステージの上でウインクを決める。髪形も決まって本当に王子のようだ。
「それじゃメンバーを紹介するよ。私がFoolのリーダーの魔王様でーす」
 魔王様ってなんだろー。わかんないけどかっこいい! そんなノリで観客も沸きあがる。
 その中で一人「きゃー! 魔王様ーーー! 抱いてくださいーー!!」と突拍子もない叫び声があがる。その少女(?)から差し出される花束を受け取らない訳にはいくまい。
「ふっ……ボクのこのアイドルさがこんなにもたくさんのファンを呼んでしまうとは……」
 メインボーカルのシュゼがステージの上から呟くと、ますます興奮度は高まり、そんな熱気の中でFoolの演奏は始まった。

 かき鳴らされるユウとサルサのW三味線のリズム。馴染みのあまりない珍しい楽器の音色を不思議そうに見守る観客。
 少年のように見えたシュゼの喉から、響きのいい歌声が響き出す。娘さん達の視線が集中する。サブヴォーカルも兼ねたユウは渋く決めつつ、ふと曲間で美しくバク宙を決めてみたり。サルサとの掛け合いも決まり、すっかり心を奪われた人達は多かったという。

 余韻を残す音色。
 曲が終わる瞬間、闇に熔けたように3人の姿はステージ上から照明と共に消える。
 観客達が現実に戻るまでの一瞬の間をおいて、割れんばかりの歓声が会場には溢れたのだった。

●紫陽花シブかわ隊
「それでは次は……えーと。紫陽花シブかわ隊。ちょっと変わった名前だけど楽しみだね♪それではお願いしまーす!!」

 紹介の合図と共に、サガ(a09499)の鳴らすギター音が響く。
 『真面目に渋く可愛く』がモチーフのシブかわ隊。軽快で元気が出るメロディがギターから鳴り響く。
 それに合わせて元気にダンスを決めるのはレイナ(a19726)とクルティア(a07373)。
 本当はもうひとりメンバーがいるのだが、今日はおやすみ。その人の為まで全力を尽くそう。

 衣装は似合うかな。色々と不安はあるけれど、レイナは笑顔を忘れず声を張って歌う。クルティアもあわせてくれる。
 サガのギターは快く、そう、楽しく歌えばよいんだよね♪
 悩みは振り捨て、一生懸命歌った3人であった。
 その素直で力の入った演奏は勿論観客に届いたはずだ。
 沢山の笑顔と、そして終わったあとの拍手に包まれ、紫陽花シブかわ隊の演奏は終わったのだった。

●腹☆GURO
「さて次は……腹☆GURO。これもまた個性的な名前だね♪それではおねがいしま……あれ?ヒカリさんは?」
 パイプオルガンの重厚な音色がステージに広がる。
 鍵盤に手をかけているのはヒカリ。自分の演奏するメロディを少し驚いたような表情で聞いている。
 その音色に合わせて、ボーカルのイオ(a09181)がソプラノの美しい声で優しく歌う。
 赤基調のフリルのたっぷりついた服。彼女の可愛らしさをひきたてている。
 ゆっくりとした前奏曲。祈りの声のような柔らかな響き。
 そして。

「よっしゃ♪ それじゃーいくで♪」
「みんな! 今日は俺たちの歌を聴いていってくれよ!! アツくなろうぜ!!」
 フォル(a06223)のギター、エスト(a20503)のベースが元気よく弦をかき鳴らす。
 乱暴にも感じる激しい演奏、けれどそれは繊細な響きを含めてもいる。ボーカルのイオが歌いやすいように、けして目立ち過ぎないように配慮は忘れていない。
 ヒカリのパイプオルガンも重なり、重厚感たっぷりの音楽と共に、イオの歌は段々スピードを増していく。
 歌いながら高くマイク(っぽいもの)を投げ、ポーズを決めてキャッチをしたり、可愛らしくウインクを決め、明るく楽しく笑顔で歌うイオ。

 しかし。
 可愛く元気な歌のメロディは後半、練習よりも早くなっていた。エストのベースが段々テンポをあげていたせいだ。
 フォルがついていくのでさらに曲自体が速くなる。
(「……あれ?」)
 歌詞が終わっても続くメロディ。
 勢いを増すベース。既に暴走状態。えーと、もしかして、アツくなりすぎてますか?
「俺の歌を聴けぇぇぇぇぇぇ!!!!」
 エストは舞台の上に立ち、シャウトを叫ぶ。もう誰も手に負えない。それどころか、スーパースポットライト発動。注目を集めながら、まだまだシャウト。あうあう、どうしよう。
「デストローーーイ!!!」
 さらに叫びながらエストは走り出し、茫然と見ていたフォルに楽器を振り上げ襲いかかる。命中。星が飛ぶ。マット……否、ステージに沈み込むフォル。逃げ出すイオとチェリー。ヒカリは見ている。折れたベースを振り回してやっぱり暴れるエスト。
 その時……黒い炎をめらめらとあげながらゆっくりとフォルが起き上がっていく。
「テメェ……ふざけてんじゃねぇぇ!!!!」

(しばらくお待ちください)
(ぴんぽんぱんぽん。ただいま大変お見苦しいシーンがありましたことをお詫びいたします)

「えーと……」
 暗転した舞台にぽつんと残ったイオがにっこり微笑み、最後の一小節をもいっかい繰り返す。
「キミと二人で黒笑顔☆ ねっ♪」

●ペールパープル
「……えーと。色々大変だった音楽祭もとうとう最後の曲となりました。
 それでは『ペールパープル』お願いしますーーー!!!」

 疲れきったチェリーの声に、舞台の中央に照らされる3人組。
 ソルトムーン(a00180)、スルット(a25483)、ユリーシャ。
 トリをつとめる彼らの曲は『ラップミュージック』。

 曲のテーマは冒険者の心意気。楽しく弾むリズムにあわせて、渋い声でソルトムーンが声を張り上げる。
 それに合わせて幼いスルットがくるくると舞い、ユリーシャと共にバックコーラスもつとめあげる。
 冒険者だから、いつも元気でいたい。いつも強くいたい。優しくいたい。
 沢山の思い。沢山の願い。
 繰り返すサビの部分はやがて客達も覚えて、最後には大合唱となった。

 何度も何度も繰り返す。音楽の力。こんなに思い知った夜はない。
 素敵な素敵なone night!

 ベルークス音楽祭はこの素晴らしい余韻の中で終了を迎えたのであった。

●エピローグ
「ん?」
 ライムは既に人気のない会場に、まだ人が残っている事に気がついた。
「あ……!」
 彼女はライムを見ると頬を赤くして、それから近づいてきた。
「あの……コンサート素敵でした。これからも頑張ってください!」
「え、ああ、ありがとう……」
 それだけ言うと駆けていく彼女。同じエンジェルの羽根がついていた。

「アスティルくん」
 星空を見上げていたアスティルは、呼ばれてルィンフィーネを振り返る。
 ウィスタリアは彼の背ですやすやと寝息をたてていた。
「……お帰りなさい」
 微笑みと共にルィンフィーネが囁く。
「ただいま……」
 アスティルも目を細め、そして不意打ちのように彼女にキスを返したのだった。
 ……星空のシルエットの中で。


マスター:鈴隼人 紹介ページ
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参加者:31人
作成日:2005/10/17
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