<リプレイ>
「待ちやがれ、てめーらの好きにはさせんっ!!」 ブラボー眼鏡団を殴り倒して一般人から遠ざけたのは快傑ズガット・マサカズ(a04969)。 ギターが似合う眉毛の男である。 いい加減眼鏡眼鏡とうるさいブラボー(以下略)に飽きてきたのか、街の者達はブラ(以下略)にさして同情もせず、そくささとその場を離れていく。 だが、装備や身にまとう雰囲気からして明らかに冒険者であるマサカズを歓迎する者は、ほとんどいない。 街の平和を乱すという点では、彼もそれほどかわりがないからだ。 「?」 不審に思ったマサカズが眉毛を勢いよく跳ね上げる。 ブ(以下略)達は逃げるか、マサカズに口で反撃する(捨てぜりふを投げつけるともいう)か迷っていたが、急にその動きが止まる。 「そこまでぢゃっ!!」 天高くそびえ立つ領主の館。 その頂点に、陽光を背に深紅のゴスロリ服の姿があった。
●街の闇 マサカズがその街を訪れる2日前まで話はさかのぼる。 繁華街の奥の奥。 この街の闇が集っているはずの場所へと向かう、小さな影があった。 「秘密結社ペタンの一部門、ビッグペタン団の団員としてこのままにはできないよ」 冒険者旅団BP団の旅団長をつとめる幼き眩惑の狐姫・セレス(a16159)は、幼い顔立ちに不釣り合いなほど深刻な表情で、そろそろと足を進めていく。 ここは清潔な表通りとも華やかな繁華街とも違う。 淀んで腐りかけた気配が充満する、街の暗部そのものであった。 「むぎゅっ!?」 背後から、セレスの口がふさがれる。 不意をつかれ完全に抱え込まれたせいか、身動きができない。 かすかに感じられる男の汗のにおいに、セレスは頭の中が真っ白になるほどの恐怖を感じていた。 「私です、私」 が、聞きおぼえのある声がセレスの恐怖を打ち消す。 「事情を説明しますから、声を出さずにこちらへ」 幻燈料理人・キオウ(a25378)は、セレスの耳元にかすかな声でささやきながら、全く足音をたてずにとある建物の中に入っていく。 「遅かったじゃない?」 暁の鳥・シルル(a23790)が、山積みにされた男達を腰掛けてた挨拶する。 「あの……いったい何がどうなってるの?」 薄汚れた外見とは正反対に豪華な内装の建物の中で、セレスはすっかり混乱していた。 BP団を探して夜の街に出たら、これである。 彼女でなくても戸惑うだろう。 「最初は私が潜入捜査しようとしたのですが……」 いつの間にか伊達眼鏡をかけたキオウが、レンズをきらりと光らせる。 「冒険者であることに気付かれてね。最初から特に隠すつもりもなかったけど」 細くはあるが優美な肢体を艶やかな黒いキャミソールでつつんだシシルが、椅子役の男を踏みにじると、なぜか嬉しそうなうめき声が響いた。 「逃げようとしたから仕方なく蜘蛛糸で捕獲してここまで来たって訳」 シシルは肩をすくめて立ち上がる。 身長はともかく、年齢も体型もセレスとはほとんど変わらないのだが、未成熟な印象のセレスとは対照的に中性的な妖しい色気すら漂わせている。 胸元から取り出した細い眼鏡をかけると、蜘蛛の糸で捕獲された男女から「踏んでー♪」や「シシルさまー♪」という黄色い声まで聞こえてくる。 彼女は小さく息を吐いてから、黙らせるためにさらに蜘蛛の糸の糸を投げつける。 が、歓声はあっても悲鳴は無かった。 「BP団について、この方がセレスさんに話があるそうです」 てきぱきとブラボー眼鏡団の面々をロープで縛り上げていたキオウが、いつの間にか部屋の中にやって来たスーツ姿の女性を紹介する。 特に目立つ外見でもなく、眼鏡団の様などこか狂的な気配もない。 「こちらへおいでください。眼鏡団の頭目も、こちらにおりますので」
●BP団の真実 「いやぁぁぁっ! おかぁさまぁっ!!」 年端もいかぬ少女の叫びが響いてくる。 ぴしゃっ、ぴしゃっと肉を打つ音も。 「……」 が、冒険者ですらないスーツの女は、平然とした面持ちで廊下を歩いていく。 「こちらです」 彼女がセレスを案内したのは、精緻なつくりの等身大人形が立ち並ぶ少女趣味な部屋であった。 「セレス、ちょっと遅かったのだ」 さすらいのギター宣教師・フェイ(a02632)が、むやみやたらと豪華な椅子に座ったまま平然と挨拶する。 スカートを引っぺがされた生意気そうな少女……というよりほとんど幼女が、泣きべそを書きながらフェイの膝に乗せられている。 「ひぐっ、えぐっ……」 「泣いちゃ駄目なのだ。お前ののせいで、泣いても笑っても目が治らない人がいるかもしれないのだ」 フェイの手が、既に赤く腫れた小さな尻を打つ。 「ご、ごめんな、さいっ」 というわけで、いきなり眼鏡団の首脳部は壊滅していた。 「え、えーっと、その……。結局今回の件はBP団と関わりがあったのかな? 一部の暴走なのか、総意なのか……」 「今回の件にBP団は関係有りません」 セレスの問に、スーツの女はきっぱりと答える。 「秘密結社BP団はクーデターにより、犯罪組織と成り果てました。眼鏡団の要員募集と訓練には私を含む元BP団下級幹部が関わっておりますが、全員クーデター時点で組織を離れております」 「え、ええぇっ!?」 今明かされる衝撃の真実であった。 部屋の隅に黒こげになっていて転がっている光と影・セイ(a04257)の知り合いが、そのクーデターに関係した依頼をうけたことがある。 しかし、幸か不幸かこの情報はこれまで表に出てきていなかったのである。 「だったら僕等、これまで犯罪の片棒をかついで……」 「いえ。現在の秘密結社BP団は、とにかく冒険者を避ける傾向があります。冒険者旅団BP団には一度も接触していないと思いますが」 「うん、確かにそうだね」 セイが焦げてちりちりになった髪の毛を気にしながら、平然と立ち上がる。 「そっちにいる彼女なら知ってるんじゃないかな?」 セイの視線の先には、静かなる・プラム(a04132)がいた。 眼鏡団首領の目の前に立ち、いつも通りに無言で、スケッチになにやら書いては相手に読ませている。 「……」 セレスが覗き込んでみると、そこには眼鏡着用者を8つに分類し、それぞれの特徴と意義が冷静な筆致で『みっちりと』書き込まれいた。 基本的に普通人なセレスにはついていけない世界である。 「それにしても、まさかこういう年齢だだったとはねぇ」 セイはやれやれと肩をすくめる。 いくら有力者にコネをつくりたいとはいえ、自分の3分の1も生きていないヒトの娘に手を出すことはしない。 最初年齢を読み誤ってプラムに燃やされたのは、彼にとり痛恨のミスであった。 「ところで、そろそろお仕置きはいいのじゃないかな? このままだとよりディープな眼鏡マニアになってしまいそうだし」 プラムの静かで熱烈な教育(洗脳)は、かなり進んでいるようであった。
●眼鏡の街 そして話は再び現在に戻る。 「こ、ここは…ぱらいそ!?」 緋燕・ソルティーク(a10158)は、ショッピングを楽しむ少女達を見、己の心が激しく揺れるのを実感していた。 いっそこのままブ(以下略)を放置した方が良いのではないか、とすら思う。 「やれやれ……。そういうわけにもいきませんか」 彼は鋼の意思でその考えを振り払う。 眼鏡っ娘ヘヴンを求めながらそれを手にすることはできない。 誠に冒険者とは不自由な存在である。 「お嬢さん方」 普段より美形度5割り増しで、ソルティークが乙女達に迫る。 彼を見た乙女達の多くは頬を赤らめるが、感がよい極少数は、彼の持つ狂気(?)に気付いてしまう。 何故なら彼は……。 「そこの眼鏡の似合うお嬢さん、私専属の獣耳カチューシャ付のメイドになりませんか?」 手に獣耳付カチューシャを、背中にはメイド服を詰めたバックを持っているからである。 「ええいやめんか!」 殺迅姫・ルルティア(a25149)が巨大な鎌をソルティークの頭めがけて振り下ろす。 「危ないではないですか」 ソルティークは寸止めされた状態で平然と言葉を返す。 もっとも、こめかみからひとすじ冷や汗が流れてはいたが。 「そこの娘共。妾が来たからにはもう安心じゃ」 「みーゆさんの突撃隣の視力検査の時間なのですー」 小さな胸に巨大な自信を秘めたルルティアの背後から、何の脈絡もなく、小さなドリアッドの女の子、お茶と春風とあとてきとの少女・ミーユ(a25203)が現れる。 矢印が書いてある白いパネルを設置してから、娘達に片目を閉じて眼鏡を外して見るように指示する。 あまりに唐突かつ急な展開に、乙女達のみならずその場にいた街の住民(眼鏡着用者は9割以上)が次々に視力検査を受けていくこととなった。 「…………」 視力検査が進んでいくうちに、いつもにこにこ笑顔のミーユのこめかみに、青筋が浮かんでくる。 「ムキーッ! 全然目がいいじゃないですカー! 自分の視力に合ってない眼鏡をかけてる人は眼鏡没収なのですー!!」 いきなり爆発したミーユに街の人々は驚く。 「そうじゃの。眼鏡をかけている度が進んで、やがてはこんなものをかける羽目になりかねぬし」 ルルティアが、ミーユから預かっていたものを皆に示す。 それは強烈な度数が入った、いわゆる瓶底眼鏡であった。 もともと眼鏡の普及率は低く、従って正確な知識を持っている者も少ない。 自分の視力を危険にさらしていたことに気付き、あからさまに動揺する。 「ふっ……。気付かれたようぢゃの」 そこに、数名の男女を引き連れたゴスロリ少女が現れる。 「あなたが黒幕ですか! 自らの趣向のために眼鏡な人を量産するとは言語道断! めがねしっぷに則ってないのです!」 ミーユは自分とほぼ同年齢に見えるゴスロリ少女に、指、ではなく自身をモデルにした人形を突きつける。 そこれには、BP団の保護対象の証が燦然と輝いていた。 「その通り! 属性とは千差万別ッ! 決して強要する物ではないッ!! 第一、全員眼鏡にしてしまっては眼鏡属性の意味が失われるのが何故判らん……希少であるからこそ価値があるのだ。皆が同じ属性であれば属性自体の意味が無くなってしまうではないかッ!!!」 ルルティアが、一見正しいようでいてその実果てしなく明後日な方向に突っ走った極論を高らかに叫ぶ。 「というか、何で君らがそちら側にいるんだい?」 ようやく普段の態度を取り戻したソルティークが、ブ(以下略)首領の背後に控える男女に小声で問う。 「いや、なんというか、成り行きで」 伊達眼鏡を装着済みのキオウは、さらりと受け流す。 「確かにその通りっ!!!」 ゴスロリ服は、大多数の予想を反し、自らの非を認めた。 「こんなことでは、眼鏡の素晴らしさを世に広げることなどできぬ。冒険者達よ、礼を言う! よく私の目を開かせてくれた!!」 激動の2日間をくぐり抜けた少女は成長した。 「だが私は必ず戻ってくる。眼鏡の楽園をこの世に現出させるためになっ!!!」 プラムを初めとする冒険者の教育(洗脳?)が功を奏した(?)、らしい。 「我等がばらまいた眼鏡は、目の悪い者へ渡して欲しい。では、さらばぢぁっ!!」
●その後 かくして、約1週間眼鏡で街を支配した集団は、その姿を消した。 なお、その1週間の最後に流血の事態を引き起こした者もいたらしいが、謎の集団によって街の外へ連れ出されたそうである。

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参加者:10人
作成日:2005/10/15
得票数:コメディ18
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冒険結果:失敗…
重傷者:なし
死亡者:なし
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