山道に潜む樹木の魔物



<オープニング>


「樹木型のモンスターが現れました」
 ドリアッドの霊査士・シィル(a90170)が言った。モンスター退治である。
「場所は北にある、人の往来もある山道です。周囲の木と同化していきなり襲ってくるんですね」
 冒険者たちはむうと唸る。先制攻撃を受けるのも覚悟しなければならないかもしれないのだ。
「何本もの蔓を巻きつかせての攻撃が得意で、しかもそこからヌルヌルの粘膜を出してきます。捕まるといろいろ厄介なことになりそうですから、気をつけてください」

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参加者
降頻・レイン(a06389)
堕苦龍・ゾロア(a13695)
金色の大公爵・アスター(a13935)
女神に授けられし夜想曲・リフィス(a18780)
希望の剣を振るう医戦士・アリシアーナ(a19030)
不思議の国の・キリス(a20041)
斬空術士・シズマ(a25239)
微笑みを咲かせる・レイティア(a31226)
不思議黒翔剣士・ミスティア(a32543)
闇を斬り裂く守護蒼刃・クロス(a33237)
流浪の重騎士・バート(a33897)
魔術研究者・ルシエラ(a34138)


<リプレイ>


 ――通り道にモンスター出現の為、討伐完了まで立入禁止。
 昨日まではなかった立て札のはるか先、触れれば火傷しそうなほどの緊迫感をまとって冒険者たちが行軍する。今回の相手は樹木のモンスター、いかなる油断も許されないのはどんな敵であろうと当然だが、周囲の木々にまぎれて不意を打ってくるというのでは、こうして全周囲に睨みを利かし続ける以外にはない。気がつけば首を絞められているかもしれぬ。一滴の・レイン(a06389)と紋章術研究者・ルシエラ(a34138)の生み出した土塊の下僕に先導させているのも、万全の体制の表れである。
「まったく……判別するのが難しいな」
「ええ、こうにも木が多いとは。始まる前から神経が磨り減ります」
 翔け上がる蒼刃・クロス(a33237)と黒き凶星・シズマ(a25239)は警戒しつつも文句を漏らしてしまう。道の両側とも見事に木、木、木の行列である。事前に見破るのはまず不可能かと思われた。
「大丈夫か? 無理はしないほうがいいぜ」
 紅炎の護り手・バート(a33897)が笑顔絶やさぬ・レイティア(a31226)に声をかける。彼女は以前に負った傷がまだ癒えていない身だった。
「平気。倒すべき相手は倒さないとね」
 それに、と思った。レイティアの援護としてレイヴンがついている。心強かった。
 相変わらず静かな山道、敵の気配はない。土塊の下僕も今は何の反応もしない。しかし一瞬たりとも気を抜くなと心底で念じる。気を抜くな。気を抜くな。
 わずかヒュッという音がしたのと、土塊の下僕がジャンプして合図したのは同時だった。
 それが攻撃でなくて何か! 方向、右斜め45度。
 木々の隙間の暗がりから、3本の緑色の蔓が伸びている。本体の姿は見えない。蔓は隠者の爪弾く遁走曲・リフィス(a18780)のリュートに絡み付いている。今にも奪われてしまいそうだ。
「わ、とうとう来ましたね。引きずり出して――って私の力じゃ無理ですよう」
 腰を沈め、はちきれんばかりに腕に力を込めるリフィスだが、ビクともしない。それどころか蔓から透明な粘膜が伝い、ぬめる。とてもまともに持っていられなかった。
「なるほど、武器を奪う戦法ですわね? そうはさせませんわ」
 金色の大公爵・アスター(a13935)が放ったリングスラッシャーが蔓を断ち切った。勢いでリフィスが後方に倒れる。
 樹木のモンスターが山道に姿を見せた。天辺にはボサボサの髪のような樹冠、幹の中心に赤い目と牙を備えた大口がある。脇には腕のような枝が生えていた。そしてゆらゆらと揺れる蔓。
「わざわざ出てくるとはいい度胸だな。叩きのめしてやるぜ!」
 撃龍・ゾロア(a13695)がワイルドラッシュに行った。鈍い音を立てて続けざまにヒットする。だがさすがに固い。みっしり詰まった樹木の体は伊達ではない。
「……あまり堪えていないようだな。慎重に攻めよう」
 シズマがイリュージョンステップで、まずは防御を固める。
「行きますわよ皆さん! 先手必勝です!」
 不思議黒翔剣士・ミスティア(a32543)はチキンスピードを全員にかかる。
「ありがとう。ではセオリー通りに弱点を――」
 異邦人・キリス(a20041)が即座にスキュラフレイムを撃ち出す。モンスターの右腕に噛み付いて、指らしい小枝部分を吹き飛ばした。やはり炎が効くらしい。
 モンスターも黙ってはいない。空気を切る速度をもって蔓を繰り出す。今度は捕まえるのではなく、鞭のように叩きつける攻撃。
「むっ――!」
 レインの法衣をたやすく裂いて、一筋の傷を作る。力よりもむしろ速さの為せる業。あと一歩踏み出していたら、より強烈なダメージだったに違いなかった。
「本体は鈍そうだけど、アレは高速かつ精密ってわけね」
 ルシエラが蔓に向けてエンブレムシャワーを浴びせる。だがモンスターの蔓は次から次へと出てくる。そう簡単に減らすことはできないようだ。
「頑張って――」
 リフィスが高らかな凱歌で仲間を励ました。力を取り戻したレインは胸の傷を気にせずに緑の業火を撃ち放つ。
「何本でも来るがいい。すべて燃やし尽くそう」
 モンスターの左手を燃える木の葉が覆う。初めて悲鳴が上がった。
「聖なる力よ、武器に宿れ!」
 希望の光を求む女医・アリシアーナ(a19030)がディバインチャージで仲間の武器を強化する。
「今だ! モンスター風情には真似のできない連携を見せてやろう」
「うむ、これが私たちの力だ!」
 バートとクロスが接近戦を挑む。強化された武器による兜割りとファイアブレードの二連撃がクリーンヒットした。頭部の樹冠がバラバラと地面に零れていく。ダメージは決して小さくない。
 その時、離れようとしたふたりの体に複数の蔓が巻きついた。特にクロスは攻撃後の麻痺のせいで退避が遅れたのだ。
「――く、これでは」
 ブラックフレイムで追撃しようとしたレイティアの動きが止まる。と、彼女を別の蔓が襲撃する。その刹那、レイヴンのブーメランがすんでのところで切断した。
「あ、ありがと守ってくれて。もう一瞬の隙も見せないから」
 バートとクロスは依然として身動きが取れない。自力で脱出するのはとても無理そうだった。
 と、アスターがモンスターの背後を指差す。
「わたくしのリングスラッシャーがまだ生きていますわ!」
 それはさながら救世主のようだった。光を帯びる円盤は蔓を切り落とし、まずバートをを解放する。さらにアスターはソニックウェーブでクロスを捕まえていた蔓を断った。
「――ああ、仮に捕縛されても心配ないというわけか。頼もしい仲間たちだ!」
 ゾロアが堂々と正面から斬鉄蹴を仕掛ける。中途半端に真ん中から千切れていた蔓を根元からまるごとザックリと切り落とした。
「攻撃一辺倒なのは助かるな。パターンさえ把握すれば――難しくはない」
 シズマのスーパースポットライトが周囲を白熱させる。モンスターは重低な足音を響かせて愚直な体当たりを仕掛けたが、イリュージョンステップで捌き切る。
「あなたの攻撃手段断たせてもらいますわ! お行きなさいリングスラッシャー!」
 隙を突き、ミスティアがリングスラッシャーを撃つ。軽快な音と共に、蔓が敵の体から落ちた。無数にあるかと思われた蔓にも限界はあるようで、今や数本ばかりが頼りなさそうに揺らいでいるだけだった。
「絞められた痕が残っているわね。でも任せて」
「粘膜も取り除いておきます」
 キリスがヒーリングウェーブを、アリシアーナが毒消しの風を施す。バートとクロスの顔色がよくなった。
「じゃ、一番食らいたくないモノをくれてあげる……!」
「はい、これですよね」
 ルシエラの緑の業火とリフィスのブラックフレイムの二重炎殺! 頑丈な木の胴体も激しい火で覆い尽くされ、キナ臭い匂いが漂ってきた。
 ふと、モンスターが奇妙な動きを見せた。
 黒焦げた体を小刻みに震えさせている。とうとう倒れるのかと思ったその瞬間。
 パン!
 頭部の樹冠から木の枝が飛び出した。槍のように襲いかかる。
「蔓がなくなって戦法を変えたか」
 レインが緑の業火で迎撃するが、すべては燃やしきれない。冒険者たちは切り傷刺し傷を負う。
「だが身を削っている。あれだけのことをすれば自分自身もただじゃすまないはずだ」
 言いながら、バートが君を守ると誓うでレイティアを守護する。クロスが流水撃で枝を振り払いつつ叫んだ。
「それだけの犠牲を払ってすること――退却か」
 モンスターの脚がじりじりと後退している。つまりは牽制しつつ逃げようとしているのだ。
「そうはさせない。……必ず倒す!」
 レイティアが痛みを堪えながらブラックフレイムを発射する。相手の焦げた胴体をさらに焼いた。それでもモンスターは森へと逃げ込もうとする。
 その時、痛烈な衝撃音があった。
「――さっきもあったことなのに、学習していませんでしたのね」
 ミスティアのリングスラッシャーだった。まだ効力の切れていないそれが、モンスターの背中に食い込んだのだ。
 敵の動きが完全に止まった。勝利に向けて冒険者たちが猛進する。あとは一気に畳み掛けるだけだった。
 金属を擦り合わせるような耳障りな叫びが轟いた。天辺からひびが入り、樹木のモンスターは粉々になって絶命した。


 モンスターの死骸はその場で始末することで全員一致した。炎の攻撃ができるメンバーで、すべての破片を完全に焼却する。
「強い敵だったな」
 ゾロアが黒炭と化した敵を見下ろす。誰も致命の傷を受けなかったのは幸運だったといえるだろう。相手が単体だったのが最大の要因か。
「ともかく、終わったのだな。入口の立て札もこれで取り除ける」
 レインが背伸びをする。山の綺麗な空気が疲れた肺に染み渡った。
「ええ、無事討伐完了ですわね、また出なければいいのですけど……」
 と、ミスティア。アスターが言った。
「出たら倒す。それだけの話ですわ」
 突然、山風が吹いた。炭が舞い上がり飛ばされていく。
 冒険者たちは何もなくなった戦場に背を向けた。


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