【旬の美味なるパンプキンパイ】れっつ・くっきんぐ!



<オープニング>


 ――先日はありがとうございました。冒険者の皆さんのお陰で、無事にパンプキンパイ作りに取り掛かる事が出来ました。
 ひいては、今回もまた、手作りパンプキンパイ講座を開きたいと思っています。
 宜しければ大勢お誘いあわせの上で、私の工房までお越し下さい――――――――アリアより。

「……と、いう連絡が来てね」
 ストライダーの霊査士・キーゼルは、手にしたカードの内容を読み上げると、一度言葉を区切って。
「パンプキンパイ作り、興味があるなら行ってみないかい? 使うカボチャがかなり美味しいようだから、パイの味には期待できると思うよ。料理が苦手でも、ちゃんと作れるように付っきりで教えてくれるって話しだから、大丈夫だろうしね」
 そう冒険者達を見回しつつ、誘いかけるキーゼル。ちなみに本人は、作る事よりも完成品を食べる事を目当てに、行くつもりでいるらしい。
「パンプキンパイかぁ。今の季節にぴったりよね。美味しそう」
 キーゼルの話を聞いた、リボンの紋章術士・エルル(a90019)はパンプキンパイを思い浮かべながら頷くと、すぐに「行くわ」と即答した。
「お料理ですかー。上手にできるのか、どきどきなのです〜」
 エルフの重騎士・ノエル(a90260)も、とても楽しみだという顔で、出掛ける準備を始める。
「ま、たまにはパイを作って食べて息抜き……ってのも、悪くは無いだろ。良かったら、一緒にどうだい?」
 そんな二人の様子を眺めつつ言うと、キーゼルはもう一度改めて、冒険者達に誘いかけるのだった。

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参加者
NPC:リボンの紋章術士・エルル(a90019)



<リプレイ>

 この日、アリアという名の菓子職人が構えている工房には、五十を超える冒険者が集まっていた。
「先日は養鶏家の方もご安心いただけましたでしょうか? アリアさまのご依頼にお応えすることが出来まして嬉しゅうございます。此度は、美味しいパンプキンパイ作りを教えてくださいますか?」
 その一人、流るる蒼碧と射干玉の雫・メイファ(a08675)の言葉に、アリアは「はい、喜んで」と微笑み返す。
「パイ……って、初心者でも作れるか?」
「勿論です。一緒に作りましょう」
 おずおずと尋ねるドリアッドの紋章術士・ミネルヴァ(a29527)に、太鼓判を押すよう頷き返し、アリアは早速パンプキンパイ講座を始める。
「涼しくなったと思っていたら……もう、こんな季節になったのですね」
 隠遁者・アリエノール(a30361)は呟くと、あの方は喜んでくださるでしょうかと、ぼんやり考えながら作業に取り掛かる。
「じゃ、硬いカボチャは居合い斬りでスパスパッと♪」
 可愛いエプロンを着け、気合十分といった様子で蒼眼の黒鳥・エンジュ(a18575)は短剣を構えるが、アビリティなど使っては、すぱすぱどころか粉々に砕けると、エルルら周囲の者達が止めに入る。
「それっ!」
 その一方では、ヒトの吟遊詩人・アンシャス(a34766)が近寄り難さを感じるほどの豪快さで、カボチャをずばずば切ると茹でていく。
「カボチャさん……ヒナの、おててで……美味しく、美味しく、なぁ〜れ……♪」
 光に導かれし蒼き蝶・ヒナキ(a33413)はカボチャを手にすると、歌うかのように紡ぎながらパイ作りを始める。
「こー見えてもー、お料理は得意なんですよー。キャノンちゃん、頑張って作りまぁーす!」
 一見料理なんて全然出来なさそうな印象の、ビーム・キャノン(a35022)は、慣れた手つきで茹でたカボチャを裏ごししていく。
「この南瓜を裏ごしすれば良いのね?」
 食べるのは大好きだけど作るのは初めて、という戦巫女・アケヤ(a19308)も、しっかり作り方を覚えるべく、パイ作りに精を出す。
「上手に出来たら旅団に持って帰って、皆にも食べさせてやろう」
 泰然自若とした栗鼠・ガルスタ(a32308)も、料理を作るのは相手がいると楽しいものだと呟きながら、作業を進めていく。
「白餡を入れて、カボチャは荒く潰すだけ♪」
 幸樹を抱きし狩人・アイリ(a31666)は、結婚したばかりの旦那様のためにと気合を入れて、得意な料理の腕を生かし、手際よくパイ作りを進める。
「おいしいお菓子を作れるようになる事も、冒険者の嗜みのひとつ……ですわよね」
 自己流でしかパイを作った事が無いヒトの医術士・ジョゼフィーナ(a35028)は、この機会に他の者の作り方を学ぼうと、周囲を見つつ手を動かす。
「やはり本職の方はお上手ですね。僕も見習いたいものです」
 馨風・カオル(a26278)はアリアの手際の良さに感嘆の息をつきつつ、説明を聞きながら彼女の手順を真似する。
「♪♪♪〜」
 その隣でカボチャのペーストを作るのは、愛に生きるチキンレッグの女・カルメン(a35368)だ。但し、彼女は知ったかぶりして説明を聞かず作業しているため、かなり見当違いの方向に進みつつあったが。
「ノエルさん、調子はどうですか?」
 パイを作りつつ、過去を探す白き翼・セイカ(a33781)は友達を増やすチャンスだと、側にいたノエルへと話しかける。
「なかなかむずかしいのです。でも、がんばるのですよ〜」
 美味しいパイになるように……と笑うノエルと、セイカはあれこれ言葉を交わしつつ、手を動かす。
「次は……」
 緑風の探求者・アリア(a05963)はシナモンの代わりにオレンジジュースを使い、パイ作りを進める。大切なあの人が喜んでくれるように……心を込めて。
(「……懐かしいですね」)
 幼い頃の記憶を辿り、誰かにお菓子を喜んで貰いたいと思い立った、エルフの吟遊詩人・メイ(a34843)も、自分を迎え入れてくれた旅団の皆へ、お礼を兼ねてパイを作る。
「次はこう、っと……」
 舟木・ブラード(a14678)は、料理なんてした事ないからと丁寧に教わった手順を、しっかりメモしながら作業を進める。
「――しまった、入れすぎた」
 パンプキンパイが好きだからと参加したストライダーの忍び・ヴェロ(a35215)は、テンパっているからか失敗を連発し、その度に苦い顔でボールを見やると、また最初から作り直す。
「ちょーっと甘く……っと」
 お菓子作りが得意な、メロンに一番近い男・エルド(a28583)は、手際よくテキパキ調理しながら、少しだけレシピよりも甘みを加える。
「なんでこんなに手際よく出来るんだろう……」
 そんな様子に、料理は初めてだという、赤い瞳の邪竜導士・カルナ(a25291)は、ぽつりと呟きつつも精一杯頑張ってパイを作る。
「カムナ、そっちの……」
「……これが必要でしょうか?」
 士魂・トワ(a33691)が言い終える前に、邪竜の巫女・カムナ(a27763)は砂糖を差し出す。
 二人で協力して一つのパイを作っていた二人は、主に調理を行うトワをカムナがサポートし、息の合ったコンビネーションで、どんどんパイ作りを進めていく。
「さてと、次は生地の準備ですね」
 一方、飛梅・イブキ(a22442)は、息吹命・ミント(a21956)、月夜の朱紫・ラシェル(a25309)、飛・レン(a29140)らと並びパイを作る。ちなみにイブキはミントの陰謀によって、そのミントはイブキの反撃によって、それぞれ超ふりふりエプロン姿だったが、その辺はあまり気にしない方向らしい。
「何か手伝う事はないか?」
「じゃあ、ちょっと味見してみて貰えますか?」
 料理はまるで出来ないからと食べるだけにする事にしたレンは、でも何もしないのは気が引けると三人に問いかけると、ミントが振り返る。
 味見して「ん、美味しい」と太鼓判を押したレンは、パイの完成が待ち遠しいと漏らしつつ、早く食べたいとオーラを出す。
「私のも味見するか?」
 上手に出来た事が無いと不安そうなミントに、アドバイスしていたラシェルは、そんなレンに作りかけのパイを一口差し出す。
「えっとぉ……」
 彼らと反対側では、夢の中を漂う天使・リュミナーフィ(a34670)が、何度も失敗しそうになりながらも、一生懸命頑張ってパイを作っている。
「……♪」
 一方、とても楽しげな様子で、手際よく調理を進めているのは、霧に翳む闇夜の夢・ドーリス(a22835)。
(「甘い物が好きなようだから、目一杯砂糖を入れて……」)
 その隣では、岩本・ガルガルガ(a24664)がドーリスの好みそうな物を……と味を加減し、パイを、彼女の尻尾であり、好きな動物でもある、猫の形に整えていく。
 どちらも互いに互いの為に……二人は愛情をたっぷりと込めながら、パイを作りを進める。
「かぼちゃを裏ごしして、材料と混ぜー……次はパイ生地を〜」
 目で見て盗め! と花冠・カーシャ(a34758)は、周囲の作業を見物しながら作業を行う。……その側には、混ぜ忘れられた砂糖の山が見える。
「何か新しい要素をプラスしたいですわね」
 月下幻想曲・エィリス(a26682)は、栗やナッツを加え、パイの表面をカボチャのランタンのように飾っていく。
「私はカボチャと、それから……」
 その隣では、蒼月を抱きしめる涼風・アンジェリカ(a22292)がパイの表面に、カボチャと尻尾の長い猫の姿を描く。少々いびつだが、それもご愛嬌だ。
「みんな美味しいって言ってくれるといいわね……」
 料理は趣味の一つだという、ヒトの翔剣士・リュエル(a35233)も、そうわくわくしながら呟きつつ、パイ作りを進める。
「……やっぱり、食べる専門にしておけばよかった」
 ぽつりと呟くのは、古の銀の調べ・ヘルミオーネ(a05718)。食べる専門より作れるようにもなった方が、と挑戦してみたが、不慣れからもたついてしまい……それでも、めげずに頑張る。
「もう少し小さめの方が食べやすいかな?」
 プチパイを何個か作ってみた、翠成の弟子・シュコウ(a33109)は呟くと改良を加え、折角だからと表面にマークを付けてみる。
「ねぇねぇスゥたんは誰にあげるの?」
 千一夜を詠う・スゥ(a26772)から教わりながら作っていた、丹桂天仙・セイルフィン(a16701)は「僕はフィー君にあげるんだよ♪」とと口にしつつ尋ねる。
「………な、内緒……です……」
 途端、真っ赤になりながらスゥは俯きつつ……心を込めて、パイを作る。
「う〜ん、和菓子は得意なんですけどねぇ」
 洋菓子は……と、櫻の姫巫女・ミラ(a19499)はエルルを捕まえると、彼女に作り方のコツを尋ねつつ手を動かしていく。
「手際良いね……てか、ミラ……こうして見てると女の子みたい」
 隣では、甘い物は苦手ながらも恋人の為に……と頑張っている、戦慄の翼・ハクホウ(a23008)が呟く、その顔は、甘い匂いをどうにかやり過ごそうと頑張っているのもあってか、かなり険しい。
「エルル、パイ作り頑張ってな。自分はお茶を用意しておくから」
 朱い城塞・カーディス(a26625)は、出来上がったらパイを分けて貰う約束をしつつ、完成にタイミングが合うよう、湯を沸かしてカップを準備する。
「ぱぱぱ・ぱんぷき〜ん♪ ステキでステキなぱんぷき〜んパイ〜♪ ……ふにゅう、早くできないかにゃ?」
 そんなテーブルでは、スイーツハンター・カゲトラ(a28126)が待ちくたびれた様子で、今か今かと完成を待つ。
 そんな中、パイは一つ、また一つと次々焼き始められ……やがて、辺りには、とても美味しそうな香りが漂う。
「ん〜、ほのかに甘い香りが……」
 夢見る箱入り狐・ネフィリム(a15256)も、自分のパイを焼く前に立ちながら待ち……やがて、程よく焼けたパイを見て「出来上がりました♪」と微笑む。
「……良い感じだ。美味しそうに焼けたな」
 翠緑ノ月・サレスト(a27677)は満足げに頷くと、最後の仕上げにと粉砂糖を振る。
「お菓子を作った事なんて無かったが、無事に出来たか……」
 自由を求めし穏やかな風・レイル(a11154)も完成したパイを見やると、アリアを呼び止めて味見を頼む。形は少し崩れてしまったが、味は……?
「……大丈夫、美味しく出来ていますよ」
 一口食べたアリアは、指で輪を作りながら微笑む。
「キーゼルはん、良かったら味見してなー」
 一方では、遅刻ギリギリで滑り込んでパイ作りに参加していた、レディ・リーガル(a01921)が、パイを焼き始めつつキーゼルに声をかける。
「さて、っと」
 月夜に捧ぐ夜想曲・クレス(a16646)は、完成したパイを早速切り分けると、半分を持ち帰るために包み、もう半分は……。
「――あら? これって……?」
 やがて、しばらくして通りかかったエルルが見つけたのは、既に姿の無いクレスがメッセージを添えてエルル宛てに残したパイだった。
「ついでにカボチャジュースでも作って、カボチャ尽くしで試食といこうかな……?」
 パイを完成させた朽澄楔・ティキ(a02763)は呟くと、残っていたカボチャを使いジュースを作る。他にもお茶やコーヒー、ココアが並び、試食の準備はバッチリだ。
「お、出来上がったのか……」
 それまでずっと昼寝をしていた、ストライダーの武道家・クレハ(a35117)は、実にタイミング良く目覚めると席に着く。
「おっまたせぇ〜。アリア先生特製パイの出来上がりだよぉ♪」
 天嶺緋皇・シャムシエル(a19075)は、皆から提供された振舞って良いパイを配り歩く。
 ちなみに、アリアのパイを言い切ると語弊がありそうだが、アリアのレシピでで作ったから、誰が作った物でも嘘ではない……というのがシャムシエルの弁らしい。
「おいしいのね〜!」
 受け取ったパンプキンパイをひたすら食べまくっているのは、夜猫子・クッキー(a06505)。ものすごい勢いで、その胃袋の中にパイが収められていく。
「パンプキンパイ……ダイスキだよ……」
 その隣では、森の守犬・ユウ(a33194)が心の底からの声を出しながら、もぐもぐとパイを口に運ぶ。
「美味しい……ですか?」
 紅い空に響く歌・カユウ(a33452)は、美味しく出来ただろうかと不安をよぎらせながら、完成したパイを切り分け、椿の褥で甘美な夢を見る蝶・ヴィラ(a26144)の前に置くと、彼女の反応を見守る。
「ん〜、美味しい。やっぱりカユウは料理上手だよ。……カユウも、遠慮しないで食べなよ」
 大きく頷くヴィラに、カユウは嬉しそうに笑むと、一緒にパイへ手を伸ばす。
「うーん……」
 そんな様子を、少し離れた場所からそっと観察しているのは、パタパタ新米探検者・エリン(a18192)。パイを美味しく作れる秘密が、きっとどこかに隠されているはず……そう真剣なエリンだが、それらしき物はなかなか見つけられない。
「美味しく出来たのでどうぞなのですぅ」
 ドリアッドの医術士・クレア(a06802)は、試食してみたら、とっても甘くて美味しかったからと、切り分けたパイをエルルやキーゼル、ノエル達にお裾分けして回る。
「えと、幸運のしるし……です」
 微笑みの風を歌う者・メルヴィル(a02418)は、パイの中に仕込んだ壷の形のフェーブがキーゼルに届くよう、切り分けたパイを渡す。
「……おや」
 パイを食べている最中にフェーブに気付くと、キーゼルはそれを取り出しながら、口元に笑みを浮かべる。
「――皆さんに楽しんで頂けたみたいで、本当に良かったです」
 そんな様子を見ながら、アリアはとても楽しそうに言うと、またこんな機会を設けた時には、是非いらして下さいねと、冒険者達に微笑みかけた。

「おや……夕焼けの雲まで、パンプキンみたいになっちゃってますよ」
 ふと気付けば、窓の外に見える空は色を変えていて……温かな気持ちを運ぶ調理士・ミヤクサ(a33619)は、くすりと笑いながら言うと、冒険者達はそろそろ頃合だろうかと立ち上がり、アリアに礼を述べながら、それぞれの帰路に着いた。


マスター:七海真砂 紹介ページ
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参加者:57人
作成日:2005/10/23
得票数:ほのぼの39  コメディ1 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
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