睡蓮妃 −−錦秋



<オープニング>


 アーユヤ、アーユヤとたどたどしく森の名を呼ばわった幼子はもういない。
 兄である、焦げたパンのように真っ黒に焼けた少年も。
 息子を亡くした病床の母親は、病と自身を呪いながら失意のまま死んでしまった。

 雨季が去って水が引いても、24の睡蓮の侍女を従える蓮の女はまだそこにあった。
 翔剣士に似て攻撃を逸らす侍女の舞い。
 両手に真白の短刀を持つ侍女達は、吟遊詩人が剣もて舞うように獲物を切り裂く。
 睡蓮の中央に立つ女王然とした女の持つ剣は、何もかもすり抜けて身を削る斬撃を繰り出し。
 女が身に纏う長衣は硬く剣は素早く、未だ湿り気を帯びた土の上に戯れる睡蓮の花弁を解して獲物を拘束した。

 アーユヤと鳴く、緑から黄を経て橙で終る極彩色の鳥はもう飛ばない。
 生命そのものを意味する森の名は、今や死を意味している。
 蛙は取れない。
 実りの秋は、もう来ない。

「モンスターを退治して頂きたいのです」

 何も無い村から来た何も持たない男は、常磐の霊査士・ミカヤの前に立ち、そう言った。
 嘗ては父であり夫であった男の、艶の無い浅黒の頬が時折思い出した様に痙攣する。
 どんよりとした眼差し。白目は質の悪い豚の背油のめいて濁った黄白色をしており。
 忙しなく髪を掻き上げる仕草は、どこか病的な感じがした。
 男の言葉を受けて、ミカヤは「分かった」と応えを返す。
 他に掛ける言葉は無い。
 自分が彼でも、モンスターの討伐が成功という報告以外聞きたくは無いだろう。
 お願いしますと静かに告げて、男は立ち上がり酒場を後にする。
 男が抱いている痛みの一部をこれ以上に無く良く知るミカヤは、酒場の入口で深々と頭を垂れた。
 そのまま、男が見えなくなるまで頭を垂れ続けた。

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参加者
采無き走狗・スィーニー(a04111)
闇夜を駆ける蒼き刃・リスティア(a05300)
戦神の末裔・ゼン(a05345)
魔刃・ザンザ(a08648)
閃剣の蒼輝竜・ヒリュウ(a12083)
光輝の真名・アルル(a15166)
ちっぽけなエルフ・アルチェスト(a16871)
隷属者・リーゼノン(a17635)
馨風・カオル(a26278)
後方腐敗・カノン(a28346)


<リプレイ>

●酔夢
 夏――まだアーユヤの森に鏡面の如くに水が溢れ、木々を映して緑に煌いていた頃、1人の幼子が魔物に囚われた。
 救われる事無く幼子は死に、冒険者達は再び乞われてアーユヤの森を訪れた。
 季節は秋、しかし熱い風の吹くこの土地では森は変わらずに緑を湛えている。
 嘗ては生命の息吹に溢れたこの森に、今あるのは静寂ばかり。
 鳥も獣も、聡い動物達は逃げ出してしまった。
 抜け殻の森を吹き抜ける物悲しい風の音。蜥蜴や蛇が地と木とを這い、また虫が立てる微かな物音が時折聞こえ、それは森を取り巻く静寂を弥が上にも際立たせる。
 水が引き剥き出しになった黒い地面。繁り始めた下草を踏んで、冒険者は睡蓮の上に立つ女を目指していた。そして女を取り巻いて獲物を待ち受ける24の侍女を。
「再戦――か」
 桎梏夏臺・スィーニー(a04111)の口からぽつりと言葉が落ちた。蓮の女を倒したとしても、失われた何もかもは戻らない事を理解していたが、だからせめてと思う。せめて、この依頼は遂げたいと。青年の浅黒い顔に浮かぶ表情は厳しい。双眸に自責とも悔恨とも取れる色を浮かべて見遣る先には、酔漢の夢に出て来る女が纏う衣の様な、薄紅色が渦を巻いていた。
 風が低い場所を駆け抜ける。
 積もる蓮華の花唇はそよとも動かない。
 風が吹き止んだ後に思い出した様に吹き上がる薄紅の群れ。
 最も遠くに、地を割って直接生え出した様な大きな大きな睡蓮の蕾が、昼下がりの陽光を受けて、微かに翠掛かった花弁の白を一層輝かせていた。
 睡蓮は、死した者達が辿り着くどこかを想わせる。何故だろうか。名前が持つ柔らかな響きの為か、それ以外の何かか。
 嘗て大量の血が流れ、今また戦場と化すであろう場所の、白昼夢の様な風景を見遣り、闇夜を駆ける蒼き刃・リスティア(a05300)は茫と考える。それから、指先に引っ掛けた金剛羅漢を、重量を確かめる様にくるりと回した。
「気負ってばかりじゃ、巧く行く事も成功しなくなる。リラックスしろとは言わないけど、もう少し自然体で居ないとね」
 呟きを聞き止めたのか、光輝の真名・アルル(a15166)が顔を上げた。暫くじっとリスティアの顔を見、それからふいと睡蓮に目を戻す。
(「言うは易し――か。では僕は僕の役割を全力で果たしましょう」)
 そう、リスティアはチャクラムをもう一回し。金剛石が硬く透明な光を散らす。同じく弓を構えたスィーニーに習って、仲間達が次々と武器を構えた。前衛の者達が侍女等を相対した時、術が届く限界の位置に立っていたアルルの手を魔刃・ザンザ(a08648)がそっと握って促す。
「円陣の真ん中へ。俺達前衛が守る、後衛を危険に晒しはしない」
「――っ」
 驚いた様にザンザを見上げ、アルルは一つ頷いた。
「……必ず倒すぞ」
 前にアーユヤの森を訪れ、思いを遂げる事の出来なかった者達の悔恨の情は、ザンザにも痛い程伝わってきた。自然な覚悟を秘めて紡がれた言葉に、アルルはもう一度頷きを返す。
「けじめ……なの。彼女達を倒して……今度こそ終わらせる」
 償いと口にする資格など無いのだと、アルルは思っていた。
 出来る事はこの森から魔物を永久に去らせる事と定めて、蒼珠頂く杖エターナルブルーの柄を握り締める。
 全員が配置に着いた。
 スィーニーが弓を引き絞り、鏃に火を灯す幻の矢を宿らせた。
 弦がキリと鳴る。深く呼吸をしてから息を詰め、矢羽を手放した。
 鳴弦と共に飛び行く矢が、地面の上でたゆたう花弁の端に突き立ち、直後爆音が轟いた。
 飛ぶ鳥の羽音一つ聞こえ無い異様な静寂の中、微かな木霊めいた音が消える。
 ザッと音を立てて一斉に遠距離武器を構える冒険者達の目の前で、しゃらりしゃらりと巨大な睡蓮が花開き、目覚めたばかりのうら若い乙女の風情で、中央に立つ女が紅蓮の髪を波打たせた。翻る薄青の衣も何もかもあの時のままで、再びこの場所を訪れた者達には、その後何が起きるか容易に分かった。
「絶対に倒すよ。………絶対に」
 息子が死に、母もまた死んだ。父親の顔に笑みが無く、日常を返してあげる事は困難だ。
 悔しさと静かな怒りと。心に溜まる鉛のようなそれを言葉と共に吐き出して、睡蓮妃を睨む紫電の向日葵・アルチェスト(a16871)。
 中空が桜蓮色に煙る。それは、降り下りる無数の花弁。群れて人の形を成し、そして24の侍女達がずらりと並ぶ牙を見せて笑った。

●薄紅連舞
 侍女達の中心に火の花が咲いた。遠距離武器を持つ者達がナパームアローを掃射したのだ。群れ舞いながら此方へと接近して来る侍女達の隊列が爆炎の中、乱れる。
 機を合わせて、破壊を齎す邪竜の力を身の内に解放するルニアとナイアス。
「退きなさい……」
 隷属者・リーゼノン(a17635)が『蛇狩り』の異名を持つ弓を、分かたれた侍女達の無傷に群れに向ける。
「私が本当に倒したいのは……睡蓮妃、只1人なんですよ!」
 負けたままでいられる程強くない。だから魔物を、絶対に生かしたままにはしない。その為には確実に殺す。激情を越えて限界まで意識を集中し、リーゼノンが射た矢が飛ぶ。
 幻の炎を抜けて、真白の短刀を振りかざし迫る侍女達と、抜剣し、また身構えた前衛の冒険者達が相対した。
 もう一撃ナパームアローの掃射があって、更に分かたれた侍女達はそれでも、決められた舞の所作の様に冒険者達を取り巻いて展開する。
「花なら花らしく……散ってもらいましょう……」
 侍女達が特に密集している位置を見定め、戦神の末裔・ゼン(a05345)は一歩踏み出して斜め上から片刃の巨大剣を振り抜く。流れるような一刀に捉えられた侍女達の胸や腕に開いた傷から、羽枕を破いた様に羽虫めいた細かな花弁が散った。
 馨風・カオル(a26278)を背中に庇ったリスティアの手から放たれたチャクラムが、ほんの小娘に見える侍女の胸の小さな膨らみを横様に切り裂く。
 円陣を組んでいる場合には、アルチェストと背中合わせに立つ事に意味は無い。背中は、後衛の仲間達が守ってくれている。背中合わせに立つ事を諦めて、負け犬・カノン(a28346)は前方から接近して来る侍女の1体に意識を集中し、蹴りを繰り出した。
「邪魔なんだよ……どけぇっ」
 甚大な威力を秘めた爪先に腹を蹴破られ、侍女が血に似た色の花弁を吐く。
 アルチェストの掌底と蒼風の聖女剣士・ヒリュウ(a12083)の双剣が迫る侍女を迎え撃ち、そして円陣の中心で背中合わせに互いを庇うアルルとナイアスが見える範囲の侍女全てに術の力を叩き付けた。
 櫛の歯が欠ける様に、何体かの侍女がくず折れて、全身の穴と言う穴から花弁を噴出して死んだ。
 残った侍女達はいかにも召還された生き物らしく周囲の死には一顧も与えず、両手に真白の短刀を握り締め、一糸乱れぬ動きで切り掛かって来る。
 ヒリュウは幻惑するような動きで短刀を避け、反対にアルチェストはかわし難いその一撃を胸に受けた。大きく切り裂かれた傷口から血が迸り出て、黒く湿った地面に吸い込まれる。息を吸い、激痛を堪えて繰り出す拳は侍女を掠め、裳裾を破って宙に散らした。
 冒険者達は前衛が多い布陣であり、侍女達の攻撃は鋭く、傷ついた者達から甘く生臭い鮮血の匂いが立って、清かな森の香りを圧する。
 先の依頼で重傷を負った自分に、それでも出来る事がある、来て欲しいと言った彼女。同じくそう願ってくれた他の方達の為にも全力を――カオルの体から暖かな癒しの力が溢れて、ルニアの力と重なり合い、地を翔り傷ついた者達を包み込んで戦う力を取り戻させる。
 粘る白糸を放つザンザ。
 スィーニーが痛み無い腕で続けざまに矢を射て。
 元より素早い侍女の事、攻撃がかわされる事も多かったが、冒険者達の固い守りと整然とした攻撃に徐々に数を減らして行く。
 このまま押し切れば殲滅できる。
 残数が5になった時点で誰もがそう確信し。
 次の瞬間、ゼンが駆け出した。
 残った侍女の殆どが傷ついている。全部処理する必要は無い――ゼンはそう判じたのだが、周囲にしてみれば余りに突然の行動だった。
「ゼン!」
 叫ぶリーゼノンの傍らに、黒風が吹いた。
 それは翻るヒリュウの長い黒髪。
 絶対に、誰も失わないっ! ――決意をそのままにヒリュウは走る。
 ゼンが孤立した自身に気付く。
 睡蓮の上に立つ女が珊瑚の色の双剣をゆるりと構える。
 燃え立つ炎を思わせて女は髪を波打たせ、双剣を十字に振り抜いた。
(「……何でもいい。この身を盾に、この身を剣に……誰かの助けに――っ!」)
 迫る不可視の刃と不覚を悟って予測される激痛に耐えるべく身構えるゼンとの間に、滑り込む小さな体。衝撃に身が揺らぐ。春の終わりの桜の下めいて地面をくまなく覆う薄紅の上に、鮮やかな赤が飛び散った。
 強い瞳で女を見据えたヒリュウが疾風の如くに双剣を振るえば、女の胸にも十字が刻まれる。
 女の胸から沸くは紅蓮の花弁。
 動いたヒリュウの胸からも大量の赤が滴れ落ちる。
 血が落ちた場所から花弁が吹き上がった。
 女の形を取る魔物が、唇に刻む笑みを深める。
 例えば宿った木を絞め殺すアコウの木の様に、ゼンとヒリュウの体に花弁が連なって絡む。それは、前に訪れた冒険者達を苦しめた時と同じく、2人を拘束した。

●散華
 それから侍女達を倒し切るまでの時間、ヒリュウが倒れ伏すまでの時間は、ほんの一瞬とも、熱帯夜に見る悪夢のように長いとも思えた。
「――――っ!」
 聖衣の裳裾が翻る。アルルの杖の先端を飾る蒼珠へ触れられそうに濃密な力が漲る。言葉にならない言葉が力を呼ぶ音節となり、描かれた紋章へ杖を打ち下ろせば光が乱舞した。
 ナイアスの呼んだ針と、そしてアルルの手なる光の中で、残りの侍女達は惑いながら引き裂かれて地に落ちる。
「出るぜ!」
 スィーニーが叫ぶ。冒険者達が一斉に駆け出す。左右中央に分かれたリーゼノンとザンザ、そしてスィーニーが最も早くに射程の限界位置へ辿り着く。
 まず蓮の女の意識を逸らさねば。
 弓を引き絞るザンザ。簡素だが強靭な弓、構えるザンザの手の内に、闇色に透き通る矢が現れる。鎧を貫き通して身へ食い入る矢を、3人が同時に射た。
 左右から飛び来た矢に、花弁を踏んで迫る冒険者達から魔物の女の意識が一瞬逸れた。
「まず一発っ!」
 ぬかるむ地面が抉れる程強く踏み込んで、脇腹目掛けて繰り出されたカノンの拳は、切り払おうと睡蓮の女が振るった剣を辛うじて掻い潜り、強かに叩く。確かに痛みを与えた感触はあるが、破鎧掌の効果では女の体勢を揺るがす事は出来なかった。
 次いで、殆ど跳ぶ様にして駆け寄って来たリスティアが地を踏み切る。巻き上がる薄紅の中に鮮やかな緑。宙に浮いたかと錯覚する軽やかな跳躍の後、弧を描いて脚が撓う。鋼鉄を砕くと言われる威力を上乗せした足の脛の部位が女の肩口を叩いた。
 魔物の女の肩口がへこむ。それでも女は笑み止まず、動くのが不気味に思える程不自然な形に捻じ曲がった右腕がリスティアを襲った。切り裂かれて落ちる。地面に打ち付けられたが、反転して身を起せば既に術士達も駆け付けていた。
 それだけが出来る事だから、癒えよとカオルは祈る。癒えよ、解き放たれよと。祈りはゼンへと通じ、束縛が解かれる。己の不覚の為に傷ついたヒリュウへ報いる為、駆け出すゼン。治癒の力が後を追って戦場を洗った。
「ゼン、行くよ――」
 駆け寄る足音を聞き分けて、アルチェストが巨大剣を身に引き付けた。
 ゼン追い付き、並ぶ。信じられない程巨大な2振りの剣が、左右から睡蓮の女に迫る。
「あんたは人を悲しませすぎた! あたしはそれを許すわけには行かないよっ!」
「そう、その存在は許されない。……睡蓮の時期はとっくに終っているのです。何よりこの森には相応しい存在ではないようですからね」
 叩き込まれた剣から解放される闘気。視界が紅蓮に煙る。吹き上がる2条の花弁。舞い惑い、ひらひらと揺れ落ちて冒険者達を緋に染める。
 切る切られる。
 避ける避け切れず切り裂かれくず折れる。
 熾烈な応酬。
 しかし、拘束は祈りの前に役に立たず、前衛の攻撃の手は止まず、傷は癒され火球に焼かれる魔物の女に再度の勝利は訪れず。
「倒れろ倒れろ倒れろぉおっ!!」
 呪いの様に、祈りの様に、叫びながら放たれたリーゼノンの矢の一撃に喉を撃ち抜かれて、女は膝を折った。
 翻る緋色の髪が、消え行く炎の様に波打ちながら後を追う。
 ごとりと重い音がして、生気を失った珊瑚の剣が地面を打った。
 ぐらりと身が揺らぎ、横倒しになった魔物の女、睡蓮の妃はその後動く事は無かった。
 2度と。

●生は廻る環の如くに
「……終わった、の?」
 アルチェストがへたりと座り込んだ。
「亡くなった人に何か出来た訳じゃ無いけど、これでこれから先の犠牲者は亡くなったんだよね……」
「やっと終わった……な」
 呆然と言葉を紡ぐアルチェストの頭を、サービスだと思いつつぽんと叩いて、カノンが笑う。
 結局、各人が各人の役割を果たした。
 結果は付いてきたと、リスティアは死んだ女を見遣る。
「お疲れ様、でした」
 この森で失われた全ての命に黙祷を捧げていたカオルが、顔を上げて呟いた。
 歓喜と哀悼――万感入り混じった声音を聞いて、ザンザがカオルを振り返り頷く。
 力持たぬ人の剣として務めを全うした喜びと、救う事が出来なかった者がいるという事実が齎す悲しみの双方を上手く御しながら、ザンザはもう脅かす物の無くなった森の、未だ緑溢れる木々を見上げる。
 離れた場所の木の傍らに、スィーニーは独り立つ。
 幼子を包んで吊るしてあった木だ。
 ああ、倒せた。
 それだけ、思う。
 救う事の出来なかった命。
 眼前あったそれを掴む事が出来なかった事実。
 自責の念は変わる事無く、親しい友人の様に常に傍へある事を感じながら、スィーニーは木に手を当てて、目を伏せた。
 いつかは死の森に命が還るのかな。
 ……失われた命の分まで、命が紡がれる時が来るのかな。
 柔らかな午後の光の中で、疲労の余りまどろむ様にアルルが思い。
 リーゼノンは疲弊した体を押して、睡蓮の女の傍らに。睡蓮の女の手に半ば生えている珊瑚の双剣を切り取って、一振りを墓標代わりに地へと突き立てる。
 魔物の屍骸に一匹の羽虫が止まった。
 虫が卵を生み、孵化して遺骸を食らい、やがて死屍は朽ちて森に還る。
 孵化した虫を鳥が食べ、その鳥を獣が食らう。
 そうやって、魔物も何かしら新しく森へと芽吹く命の礎になるだろう。
 密林に風が吹く。まだ熱さを残しているが、秋の気配を孕んだ物悲しい風だ。
 その風に乗り、アーユヤ、アーユヤと鳴き声が聞こえた気がした。
 アーユヤ。
 緑から黄を経て橙で終る極彩色の鳥の鳴き声と、生命そのものを意味する森の名だ。
 彼方から響く幻の様なその鳴き声は、廻る命の先触れに聞こえた。


マスター:中原塔子 紹介ページ
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冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:10人
作成日:2005/11/01
得票数:戦闘27 
冒険結果:成功!
重傷者:閃剣の蒼輝竜・ヒリュウ(a12083) 
死亡者:なし
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