みにみに団あらわる。



<オープニング>


「皆にへんな人達を懲らしめて欲しいのっ!」
 冒険者の酒場に集まっていた冒険者の一部を集めたルラルは、力いっぱい一生懸命な声を上げた。
「あのね、ユールユールって町でへんな人達が現れて、女の子達が困ってるの。その人達は手に手にミニスカートを持ってて、はけーはけーって迫ってるんだって!」
 マジですか。とりあえず、霊査士の彼女がそんな冗談を言うとは思えないので、冒険者たちは表面上マジメに聞いているポーズを取った。
「えっとね、被害にあった人達のお話だと、『ちらりは正義』とか『恥じらいの中にこそ萌えがある』とか『むしろ見せろ! でも恥じらいが無ければダメだ』って言われながら迫られて、着替えさせられちゃうんだって」
 なにそのダメな子達。
「……ダメなの? 他にも『ぜったいりょーいきとのさかいめ』とか『素直クール』とか言うのも聞いたんだけど」
 いや、それ容赦なくダメだろ。小首を可愛らしく傾げたルラルに、ずぴしとツッコミを入れる冒険者一同。一斉に渋面を作られた冒険者達を前に、ルラルはしどろもどろになりながら――
「ええと、そのへんな人達はみにみに団って名乗ってるらしいんだけど……そんな訳で女の子に無理やりミニスカートを履かせようとする悪い人達をやっつけて欲しいの!」
 あ、無理やりまとめた。

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参加者
想いの歌い手・ラジスラヴァ(a00451)
ウェイトレスの大魔術師・ルーシア(a01033)
贄花・モメント(a09083)
砂糖細工な箱入り子猫・イヴ(a13724)
月影の詩歌士・ミレイ(a29362)
借金王・ジークフリート(a35789)
輝きに意思を・ローラ(a36218)
詐術士・クルーエル(a36286)


<リプレイ>

●君のセーシュンは輝いているか?
 ダブルブッキングに気を配るのが手一杯な昨今、皆様いかがお過ごしでしょうか。
 とか語ってしまう語り部先生の居るユールユールの町では、ただいまみにみに団とか言うちょっとアレでちょっと困ったちゃんがダメ旋風を巻き起こしている訳ですが――その最中、立ち向かう勇者達が居たり居なかったり?
 最初に町入りした想いの歌い手・ラジスラヴァ(a00451)は、既に身支度を終え……準備万端である。
「防衛の為に予めミニミニのスカートを用意してきたんです」
 くるりと一回転しただけで短い布の向こう側にあるものが、ぶっちぎりで全公開。やー、専守防衛じゃなくて寧ろ打って出ましたか。でもこれ、紙一重っすよ。
 ま、ともあれ。他の冒険者達がみにみに団のダメな子達を確保した後に顔を出そう思ってた彼女、偶発的にみにみに団のナイスガイ1人とエンカウント。

「ちょっと待て姉ちゃん。別に俺達ゃ、既に着てる奴に中身見せて貰いたい訳じゃあないんだ。確かに中身は重要なんだがね?」
 ちっちっち、と舌打ちをすると同時に人差し指を立てて横に動かして見せる1人の男。え? と不思議そうな顔をするラジスに向けて、男は更に畳み掛けた。
「姉ちゃんは萌えって言葉を知ってるかぃ? 昔、野郎達の心の中を駆け巡ったって言うぜ、今も世の中駆け巡り。ぼさぼさしてると後ろからぱぎゅーんさ? とまあ、兎も角。わざわざ俺たちにその中身を見せに来た姉ちゃんのアクションにはそれがねぇ……分かるかぃ? どうよ?」
 ――どうよと言われましても。どう聞いたってこの人どこかへんな所と繋がってますよ、心が。どこかって言われると、きっと、その、なんだ。ダメ世界?(何故疑問系)
 ……とまあ、そんな感じの相手なので当然、彼女は困惑の色を隠せないわけで。まー、今回の彼女、もうちょいはたらこーよどーよな訳なんだけどね☆

 可愛らしく言ってもダメっぽいですね。

「恥じらいながら履くの良い訳であって、自分から履く奴を見たい訳じゃあない……それが萌えってモンさ」

 予定外の状況ながらも一先ず誘惑の歌を使おうか。ラジスは僅かの間、悩み――使いましょう。と、そう決めて彼女が顔を上げると、既に彼女の前から男は姿を消していた。それはもう、まるで疾風だ! とか言われちゃうくらいの勢いで。速さで。
「見切り早ッ! っていうか私の出番これで終わり!?」
 ユールユールの表通りに悲しみを含んだ乙女の絶叫が響き渡った。マム、イェス、マム! その通りですよヒャッハァー(酷)


●囮、おとーりー
 韻を踏むって重要だよね。とまあ、それは兎も角。
 先程のとはまた別口でユールユールの町に入った迷子の迷子の子猫さん・イヴ(a13724)を始めとした冒険者達は、役割分担を行って幾つかの班に分かれていた。
 組み合わせは、町に入って服屋に直行したウェイトレスの大魔術師・ルーシア(a01033)と贄花・モメント(a09083)の2人と、イヴとセイレーンの狂戦士・ローラ(a36218)の2班が囮。
 残った餓えるが故に狂い求む・クルーエル(a36286)と借金王・ジークフリート(a35789)の2人と漆黒の過去を憂いし者・ミレイ(a29362)が囮の班にそれぞれ付いて、囮のルーシア達におびき出されたダメな子たち、もといみにみに団の面々をとっ捕まえるという算段である。
 先程着替えたルーシアは町でもっとも短いミニスカートとハイソックスをゲットして装備は万端、共に動くモメントはメイド服を着、その下には魅惑の黒いアレを装備していたりする。アレの詳細はまあ……直ぐ分かるかと。
「モンスターに滅ぼされる村もあればミニスカに悩まされる町もある……つくづく同盟って広いって思うなぁ」
「ミニスカートは好きだけど、嬌声……じゃなかった強制はいけないな」
 言い間違いを取り繕うように、こほんと咳をした後。ちょっと変態のベクトルを変えないと、と呟いたルーシアは、バーレルで手に入れた下着の具合が落ち着かないのか、人差し指でゴムの具合を確かめる。
 一方、悩んだ仕草を見せるモメントのメイド服のスカートはぶっちゃけ長くない。ややミニと言ったところ。そんな少女らしい彼女の手には彼女の親(?)から手渡された紙一枚。
「これ、何書いてあるんだろう」
「も、もっと短いのがいいなんて邪道にゅ! 捕まえてワンピースにするのにゃぁvv」
 2人の様子にどっぷり本音を零すイヴ。そんな彼女の姿は黒で統一されたワンピースに大きなリボン、ねこの形の肩掛け鞄と世間のローボールヒッターにはそれはもう大ヒットな格好。
 とりあえずアレだ、飴くれるっていう変なおじちゃんにはついてっちゃダメ、絶対。そういう方向性。そんな世の中の病みに塗れた暗黒面に突入した人達ご推薦しそうなイヴと一緒に動く予定のローラはというと。
「はーい! ミニスカート履かされ隊でーす!」
 この中ではミニスカを履かないという、ある意味真逆を選びながら、むしろガチ対決なんて非常に漢らしい選択をしたローラさんは普段着のまま。
「にしても面白い展開だわね。私は着替えさせられるの嫌だからパスするけど」
 服の好みを押し付けられるのはご免だと、ミレイは深く溜息をついた。流石に着替えさせられるのは何とも承服しかねる。大体人に迷惑をかけるのはどうなのだ、と思っているのだが――
「やっぱりそういうおバカ達にはたっぷりお灸をすえないとダメよねぇ……」
 ミレイが思考の果てに辿り着いた結論を、ゆっくりと噛み締めるように呟いた。その結論はと言うと。
「拷問は最終手段よね……ああ、でもやっぱりどうしても言う事聞かないのなら仕方ないわよね、力ずくでも」
 ダメな子達がどのように泣いて懇願するかを想像してしまったミレイは、艶っぽい声を漏らすと共に、自分の背筋に走った抗い難いモノによってその顔を冷ややかな笑みへと変える。なんかもう、この時点でみにみに団の人が憐れな気持ちになってきました。
「同意だわ。でも私は面倒だからジークフリートに任せるけど」
 拷問とかいう単語に反応して、楽しそうな笑みを零すクルーエル。彼女の場合はどっちかというと教育とか調教とか……なんだやっぱりアレっぽい方面の人なんじゃ(禁句)
「フッ……比類無き美貌を持つ我が囮をしても良かったが、囮が多いとなれば已む無し。完璧な美とはつくづく罪なものだ、そうは思わんかクルーエル?」
「それじゃあ、打ち合わせ通りに。確保終わったらお仕置きって事でいいわね?」
 貴族っぽく優雅な素振を見せるジークフリートを爽やかにスルーしたクルーエルが告げると、その場にいた女性陣は声を揃えて。
「「「「「「おーっっっ!!!」」」」」」


●我をスルーするとは……!(ジークフリート談)
 女所帯に男1人だとそんなもんですよ。どこかから聞こえてくるそんな声に対し、滂沱と共に舌打するジークフリート。その隣にはクルーエルが居り、彼らからやや離れた前方には歓談するルーシアとモメントの姿。
「ん、もうっ……」
 時折吹く風に、可愛らしい抗議の声を漏らしつつ、ルーシアがスカートの裾を押さえてブロックする。勿論、囮役なので周囲の注意も怠らない。
「……クルーエルよ、どうやら早速かかったようだぞ?」
「と言うか……入れ食い?」
 前行く囮の2人の直ぐ後ろ……彼女らの後を、蜜に誘われてやってきた虫のように2人の男がふらふらと追っていた。恐らくは例の集団だろう。
「ああもう、見せたくないなら何故履くッ!? 畜生、ツボって物を分かってやがるぜあのお嬢さん……! さっきの全開ちゃんとは偉い違いだッゼ!!」
「いや、その隣のメイドさんもいいですよナラント君!」
 ツボってどのツボかしらー、とちょっとばかり遠い眼になりそうです。あ、今目標にナラント君が手にミニスカを手に持って突入しました!
「そこのメイドさん、貴女はミニスカを履く為に生まれてきた至高の存在ッ!?」
「わきゃあぁっ!?」
 街中でこんな声のかけ方したらそりゃあ逃げるよなあ。とまれ、モメントはメイド服の裾を捕まれて可憐な声を上げた。だが、それだけで済むのなら冒険者なんてやってられない。彼女は冒険者なのだから。
「え、えいーっ!」
「な……す、スパッツだとぉっ!?」
 裾を掴んだ腕を外した瞬間、メイド服の下に秘められていた黒。それが正体を現した。
「――スパッツ、それは魅惑の股間固定艶布。履くことによって股に出来る三角形の隙間、それはまさに神が生みし至高のトライアングル。
 そしてスカートの下に穿けば、女性をチラリの魔の手から守る、鉄壁のボディーガードとなる。
 スパッツ。これぞまさに、神が生みし芸術品、萌えの決戦存在なり!」

 羞恥心の混じったモメントの決め台詞が辺りに木霊した。

 一方その頃。先の2人よりも更にローボールヒッター限定兵器と称しても差し支えないイヴとローラ……こちらはモメント達よりも先にみにみに団のナイスガイと接敵していた。と言うか、既に熱い舌戦が始まっている。
「ちょっとそこのお嬢さんッ、貴女は自分の価値と言うものを正しく理解していないッ!」
「あ、あの……ボク、分かって無い?」
「ボクっ子がそんなパンツルックを標準装備なんて、神が許しても私が許しません! ええ許しませんともさ!」
 ズハッと右腕を横に広げた後、ずり下がった眼鏡をクイックイッっと妙な擬音を立てながら、ローラの説得についた小太りの男は熱の篭った言葉を向ける。その手には当然、彼女に良く似合うだろうミニスカが、神々しい輝きを持って握られていた。
 一番最初はどんな格好でも頑張るといきまいていたローラだったが、驚いた気持ちとは別に、興味を抱く心が彼からのミニスカを受け取らせてしまう。
「こ、これが神のミニスカ……! ば、ばっちゃん、ボクやったよ!」

(経過)

「ど、どうかなイヴさん。に、似合う?」
 足を露にしたお陰ですーすーと空気に触れる面積が増え、恥ずかしさもあって、もじもじと体をよじらせるローラの瞳は潤んでいた。これで上目遣いなどされようものならヒッターの兄貴達はまさに人間台風と化すだろう。
「うん、似合いますぅ……って、ぇと……ぉにーさん達、あんまりそぉいうことするとメーなのゅ☆」
 ぴしっ、と人差し指を立てながら小首を傾げ、イヴが先程の小太りの男にポーズを決めた。ひらりと黒いワンピースの裾が揺れ、縁の白いレースが陽光によって眩く光る。
「何と言うことだ! こちらのお嬢さんの事を失念するなんて! ポガンタ一生の不覚ッ!?」
 叫びと共に大袈裟に仰け反った男は、後ろからズパッと新たなミニスカを取り出すと、イヴの目の前へと差し出して見せる。
「いや、これは失敬。こちらお嬢さんにピッタリの黒のミニスカ……! これで貴女が絶対領域を装備すれば、最早貴女に敵はありません!」
 ダメだこの人。と一瞬思うイヴだったが、彼の言うある単語に反応した彼女は顔を真っ赤にして、動揺の表情を露にした。
「ぜ、絶対領域はたしかに素敵ですにゃ……あの、ニーソックスとミニスカートの黄金比の中央に輝く、太腿……」
「さあ、これを手に取るのです、すれば神殺しの称号をも得られましょう!」
「まさに輝く宝……ぢゃなくて、って……ぅにゃぁあぁぁあ」
 思考回路が熱暴走に突入したのか、イヴ、奇声。その直後、両方でみにみに団がミレイ達にゲットされたのは言うまでも無かった。追記するとクルーエルさんの鞭捌きが非常に眩しかったです。ご本人も素晴らしく輝いてました。えへ。


●だめなこばんざい
「あのあのおっさんは見えるか?」
「ア、ハイ。ミエマスボウケンシャサマ」
「実はな、あのおっさん。ズボンの下にミニスカ履いているのだ」
 ふん捕まったみにみに団は憐れ、ジークフリートの手によってミニスカ着用の上、マスクマンにさせられた挙句、ミレイに縛られて町の広場まで連れてこられていた。どう見たって公開処刑である。
「ま、まじっすか! っていうかそんな事言わないでくれぇぇぇぇ想像しちまうぅぅぅぅ……」
 どーも彼の『ダメな子の妄想力を利用』する作戦はヒットしたのか、捕まった3人はそれぞれバラエティに飛んだ悶絶の様子を見せている。ガクガク震えたり、じょばーと涙流したりとか。
「コレイジョウハイキテケナイノデタスケテクダサイ、マジデ」
 カクカクと壊れた人形みたいな様子の男に言われ、ジークフリートは周囲に視線を向けてみた。どーも野次馬が人垣を作ると踏んでいたのだが、あまりに痛々しいのか住人たちは避けて通っているようだ。
「……仕方ないか」
 不満げに言葉を紡いだ彼の傍に近づいて、そっとクルーエルは彼の腕を取って、きゅっと体を絡めた。そして、
「早く私達みたいに付き合える相手を見つけなさいね?」
 ざっくりとトドメを刺した。

 10分後、物凄い精神力で復活したみにみに団の男3人は、開放されると男泣きしながらその場にいた少女達に頭を下げた。
「……詰まらないわ」
 想像と違う展開にミレイは残念そうな声を出した。
「俺、貴女に誓います! 女性に無理やりミニスカ履かせませんッ! っていうかむしろスパッツ布教します……モメントたんマジ萌えっす、今度即売会でモメント本出しますよ!?」
 ナラント君の目、マジ光り。あー、とりあえず全年齢でお願いしますとメイド服のモメントさん、ぺこりと頭を下げるとナラント君、満面の笑顔でサムズアップ。
「おいちょっと待てよ、モメントたんは俺の嫁Deathよ?」
「抜け駆けはいけないなァ……ってお前ルーシアたんマジ萌えってついさっき言ってただろ! この浮気者!」
「何言ってるんだYo、どうせお付き合いはきびしんだから心の嫁認定くらいはバチ当たらないっしょ!?」
「いやいやいや、ここは正統派ロリっ子のイヴたんでこう、なんだ。イロイロと(わきわき)」
「色々って何だその手は」
 なんか今回、スペシャル可愛らしい冒険者お嬢様方の素晴らしき働きのお陰でイイ感じに壊れてるみたいですよコノ人達。とりあえず見えそうで見えないのは正義らしいです。
「矢張りまだ足りていないようだな。今一度貴様らのその惰弱な心根にしかと傷を穿ってやろうか?」
 それはもう悪役としか思えないようなイカス悪笑いを一つして、ジークフリートが道すがるおっさんを視界に捕らえると指差した。するとナラント達は小動物宜しくガクガクブルブルと体を震わせる。……どーやらそれなりにお灸は効いている様子。
「スイマセン勘弁シテクダサイ」
「ああ、でもクルーエルさんの鞭もまた捨てがたく……ッ!?」
 ……何か因業な人達がもっと深みに嵌った気がしますが、まあそれはそれで。とりあえず無理やりミニスカ履かす様な犯罪者から一応クラスチェンジして町は平和になったのでオールオッケー。あってる? いぇーい、だいたいあってるぅー。


マスター:石動幸 紹介ページ
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ウェイトレスの大魔術師・ルーシア(a01033)  2009年08月31日 21時  通報
絶対領域って視線の誘導みたいなものですよ。
女は布のあしらいがうまいからねー。
まさにマタドール。