鐘鳴らす者



<オープニング>


●鐘鳴らす者
「今回は、モンスターの討伐に向かっていただきます」
 冒険者の酒場に集まった冒険者たちに向かって言うヒトの霊査士・ゼロ(a90250)、その手首に付いた鎖が静かにしゃらんと音を立てて揺れる。
「モンスターはある集落から離れた草原に居座っているようです。障害物などは無いので地形で注意することは特に無いでしょう。その姿は……両方の手にそれぞれ大きな鐘を持った人形のような姿をしています。しかし霊査によると鐘がそれぞれ1体のモンスターとして独立しており、その人形はどちらかの鐘型モンスターの一部であるらしいのです」
 つまり……2体のモンスターが相手になるのか。 とつぶやく冒険者にゼロは頷く。
「はい。そしてその鐘の姿から……音を使った攻撃をしてくるようです。1体は周囲に混乱を与える音を、もう1体は肉体にダメージを与える音の衝撃波を放ちます」
 ゼロの話を黙って聞く冒険者たちに、ゼロは言葉を続ける。
「相手は2体ですので、片方に混乱させられた所をもう片方に攻撃されてしまうなど、連携して攻撃してくる可能性がありますから注意が必要です。人形とどちらか片方は繋がっていますので切り離せませんが……もう片方ならば人形の手元を攻撃すれば分断させられるかもしれません」
 ただ霊査では左右のどちらが人形と繋がっているのか、混乱と衝撃波のどちらの能力なのかまでは分からなかったのだとゼロは付け加える。
「混乱も衝撃波もどちらの音も、一定の距離までしか届かない様子ですので、届かない位置に回復アビリティを持つ冒険者の方に待機していてもらったり、危険ならば一旦下がって体勢を立て直したりするなど、作戦を立てるのもいいかもしれません」
 よく混乱した人を殴って正気に戻そうと試みることがあるらしいですが……殴っても正気には戻りませんので、混乱した人と同士討ちにならないようにしてくださいね。とゼロは言って冒険者たちを送り出すのだった。

マスターからのコメントを見る

参加者
グランパスブリーダー・リエラ(a00139)
緋天の一刀・ルガート(a03470)
夜駆刀・シュバルツ(a05107)
天殺星・ユキノジョウ(a14273)
路傍の花・セリンデ(a15599)
大地を翔ける蒼き翼・カナメ(a22508)
へたれ黒犬王子・レイ(a25187)
聖剣の王・アラストール(a26295)
馳蛟龍・イサヤ(a30041)



<リプレイ>

「うまくいけば良いのですが……」
 4体目の土塊の下僕を召喚し終えた路傍の花・セリンデ(a15599)が不安そうに呟く、その視線の先には両手に鐘を持った人形のような姿があった。こちらの存在に気付いているのかいないのか、今はまだ動かずにじっとしている。
「ベル型モンスターと人形ねぇ……混乱とかやっかいだな……」
 相手の動きを警戒するように睨み付けながら言う千見の賭博者・ルガート(a03470)、霊査士が言った情報では混乱を与えてくる鐘と衝撃波を撃つ鐘があるらしい。どちらがどちらの能力を持っているのか見極めるため、モンスターに向かう土塊の下僕の様子を見守る冒険者たち。
 がらーん♪
 モンスターが動いた、右の鐘を大きく振り鳴らす。同時に土塊の下僕たちの動きが止まり、土塊の下僕どうしでぶつかり合い始める。続けざまに左の鐘が振られると同時に、左側に居た1体の下僕が砕け散った。
「同士討ちだけは避けてぇな」
 馳蛟龍・イサヤ(a30041)は相手との距離をとって射程に入らないように注意をしていた。アビリティで即座に仲間の混乱を回復できるように控えているのである。
「混乱の鐘は……あっちだ!」
 悠悠自適黒犬・レイ(a25187)が叫ぶ、同時にルガートと剣誓の騎士・アラストール(a26295)が右の混乱の鐘に向けて地を蹴った。アラストールは射撃攻撃の線上に立たないように後ろにちらりと視線を走らせる。
 どん!
 しかし次の瞬間、ルガートとアラストールは同時にその場で転んでいた。モンスターが動いた様子は無いのに何が……と思う二人の足元に、引っかかるように土塊の下僕がくっついていた。混乱した土塊の下僕のことなど気にしていなかった二人は完全に不意打ちされ、バランスを崩してしまったのである。
「これは危ないですぅ」
 それを見たグランパスブリーダー・リエラ(a00139)が放った毒消しの風に包まれ、土塊の下僕が二人から離れた。その様子を見ながらその場でライクアフェザーを発動させる大地を翔ける蒼き翼・カナメ(a22508)。こちらの攻撃を当てるには相手の攻撃範囲に入らないといけない。警戒しつつ相手との距離をつめるカナメ。その横でレイがソニックウェーブを放つ!
 しかしソニックウェーブは鐘に届く前に消えてしまう。まだ互いの射程外だということを確認し視線を交わすレイとカナメ、二人が同時に混乱することの無いようにレイはその場で留まり、カナメが先に駆け出した。
「梁山泊が一星ユキノジョウ参るなぁん!」
 その様子を見ていた天殺星・ユキノジョウ(a14273)も混乱の鐘に向けて駆け出し、
「搦め手を使うモンスター……厄介だな」
 夜駆刀・シュバルツ(a05107)は射程外のまま留まる。内と外でそれぞれウェポン・オーバーロードを発動させる二人の冒険者。
 がらーん♪
 混乱の鐘目がけて動き出した冒険者たちの前で、その鐘が打ち鳴らされる。その音色に意識が混乱するのは……立ち上がったアラストールとルガート、土塊の下僕3体、駆け出していたカナメとユキノジョウである。
 手近に居た土塊の下僕を破壊するルガートとアラストール。カナメも駆けて残る1体を破壊した。
「らしくねぇけどな」
 少し笑いながらも急ぎ静謐の祈りを捧げるイサヤ。それを受けて冒険者たちは正気を取り戻す。
「気休めかもしれませんが、できる限りの手は打っておきましょう」
 そう言ってセリンデが発動させたフォーチュンフィ−ルドで大地からぼんやりと光があふれ出した。
「私も戦闘医術士として行きますぅ」
 そう言ってリエラは自身の両手杖にディバインチャージを掛けて鐘の射程内へと足を踏み入れる。
「受けてみろ! ソニックウェーブ!」
 混乱の鐘が鳴り終わったタイミングを見計らい、踏み込んだレイがソニックウェーブを放つ! しかし同時に左、衝撃の鐘が彼に振り向けられる!
「ぐぁっ! ……衝撃波マジで痛っ!」
 ソニックウェーブと鐘の衝撃波は交差してお互いに命中する、混乱の鐘がダメージで激しく揺れ、レイもダメージで膝をつく。
「卑怯と思うなよ」
 相手の射程外からホーミングアローを射出するシュバルツ。矢は混乱の鐘目がけて軌道を曲げて突き刺さる!
「雷盲風走りなぁん!」
 混乱の鐘が怯んだ隙を見逃さず、混乱の解けたユキノジョウが疾った! ウェポン・オーバーロードで刃が加えられた彼の斧、雷閃と旋風を居合い斬りで繰り出す!
 ぎぃぃぃん!
 鐘が歪む様に耳障りな音が響く、一瞬警戒する冒険者たちだが、まるで悲鳴のようなその音に混乱の効果は無かった。
「さっきはよくもやってくれたな!」
 混乱させられた怒りを乗せるように、名剣ヴァルトロードで達人の一撃を打ち込むアラストール。衝撃で混乱の鐘は人形の手を離れ、空中でぴたりと静止する。
 がらーん♪
 そして空中から鳴り響く混乱の音色、範囲外に居たイサヤ、セリンデ、シュバルツ以外の冒険者たちの意識が混乱した。混乱した者達がゆらり、と動き出す。
 どさっ!
 ユキノジョウがその場に倒れた。ディバインチャージの掛かったリエラの衝撃波をまともに受けてしまったのだ。続けて同士討ちが始まろうとしたその時、
「いけない、皆さん正気を……」
 セリンデの高らかな凱歌が響き、
「なんてこった……遅くなってすまん」
 続けてイサヤの静謐の祈りが、残らず正気に引き戻す。正気に戻ったリエラは急ぎユキノジョウを射程外に運び出した。
「射程外からの狙撃も立派な戦闘法だ、相手が悪かったな」
 高みの見物と言った様子の混乱の鐘に向けて、シュバルツのホーミングアローが飛来する! アビリティの矢に貫かれて揺れる混乱の鐘。
「いい加減にしてもらうよ」
 そこをカナメが蒼月華を振りぬいて放つソニックウェーブが捉える! 混乱の鐘のピンチに人形は慌てたように衝撃の鐘を振りかぶる! それを見たレイが自分の前にリングスラッシャーを召喚した。
 ぶぉん!
 衝撃の鐘が振り下ろされる! その目標は炎迅刀『ワラル』を振り上げて混乱の鐘に駆けるルガート!
「おおおおおおっ!」
 しかしルガートは衝撃波を浴びても怯まずに、お返しとばかりに闘気を凝縮したデストロイブレードの一撃を混乱の鐘に叩き付けた! がらん、と亀裂の入った鐘が地面へと落ちてそのまま動かなくなる。それを確認したルガートもがくりと膝をついた。
「頑張ってもらうですぅ」
 そこにリエラがユキノジョウとルガートを範囲に入れてヒーリングウェーブを使用する。手を上げて返事をするルガート、立ち上がり駆け出すユキノジョウ。
「倒したか、それじゃあ俺も!」
 混乱の鐘が動かなくなったことを確かめてから、イサヤがスピードラッシュで人形の手元を狙う。慌てて回避する衝撃の鐘とそれを持つ人形。その隙を見逃さずユキノジョウが走り込む!
「雷光一閃なぁん!」
 電刃衝を撃ちつけ駆け抜けるユキノジョウ、稲妻の闘気で動きが止まった人形をシュバルツのホーミングアローが貫き、カナメが鐘にソニックウェーブを放つ。
「人形もモンスターの一部だったな」
 言うシュバルツに親指を立てるカナメ。シュバルツも静かに頷く。しかし冒険者の連続攻撃によってヒビ割れ始めたにも関わらず、衝撃の鐘は再び振り上げられた!
 アラストールとレイが駆ける。しかし二人の冒険者が到達するよりも早く鐘が振り下ろされた!
「く……」
 衝撃に歯を食いしばるアラストール。その後ろからセリンデがヒーリングウェーブを即座に放った! 癒しの光に包まれてモンスターの元へと到達する。
「はっ!」
 気合と共に駆け抜ける二人、レイの握った太刀、零が鐘の部分を、アラストールの剣が人形の部分を見事に切り裂いていた。一瞬の間の後に地面に落ちるその体は、それきり二度と動かなくなった。

「……もしかしたらここに思い出があったのかも知れないですぅ」
 そういってひび割れ、動かなくなった鐘と人形をその地に埋葬し終えて。仲間たちと共にかつて冒険者だったものに思いを巡らせるリエラ。
「出来ればこの手のモンスターと戦うのは避けたい所だな」
 射程のある混乱の効果、それと戦った経験を忘れずに活かしたいと思うシュバルツ。
 そうして傷付いた冒険者たちは何とかモンスターの撃破に成功し、それぞれが帰路につくのだった。


マスター:零風堂 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:9人
作成日:2005/10/26
得票数:冒険活劇1  戦闘28  ダーク2  コメディ1  えっち1 
冒険結果:成功!
重傷者:緋天の一刀・ルガート(a03470)  天殺星・ユキノジョウ(a14273)  へたれ黒犬王子・レイ(a25187)  聖剣の王・アラストール(a26295) 
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。